仮面ライダーブートレグ   作:志村琴音

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第8話です。
「尊い!」と言っていただけるように頑張りました。
感想や読了報告等くださると筆者の励みになります故、何卒宜しくお願いいたします。
書いてくだせぇ!



【イメージED】
King Gnu - 破裂

【イメージST】
牛尾憲輔 - Chainsaw Man Original Soundtrack Complete Edition - chainsaw edge fragments -


08 - 人攫いゲーム(S)

『つまり、狙いは絵麻ちゃんだということか?』

「はい! スコーピオンユーザーの正体は樋口っていう絵麻のストーカーみたいなやつです!」

 

 万太郎に電話をしながら優司は病院の駐車場まで走る。一刻も早くユーザーズストライカーに乗って、奴を止めないといけない。その一心だ。

 

「きっと奴は、何かの方法で人を集めて首輪を着けさせて、『外してやるから絵麻を攫え』とでも言ってやらせたんですよ。自分は今から、彼等がいそうな場所を探しに行きます」

『分かった。こちらも諸々調査して早急に報告する』

 

 通話が切れ、ユーザーズストライカーに優司が跨った時、今度は優司の方に着信が入った。

 電話の主を確認すると、それは武史だった。

 

「もしもし?」

『優司君? 大変だ! 今、チンピラ達が2階の部屋を襲って、絵麻ちゃんが(さら)われた!』

 

 恐れていた事態が起きた。

 奴等はゲームと称して本当に絵麻を攫って行った。

 

『しかも……花蓮ちゃんも襲われたのか、倒れたまま倒れていて……。何が何だか……」

 

 きっと彼等は樋口に脅され、無理矢理にでもそうさせられたのだろう。だがそんなことは関係無い。問題なのは、絵麻が攫われ花蓮が襲われたという事実だ。

 ヘルメットを被った優司の両手が、ぎゅっとハンドルを握る。

 そしてすぐに法定速度ギリギリの速度でバイクを走らせた。

 

 走り出したは良いものの、何処に彼等がいるのか、まるで見当はつかなかった。

 防犯カメラの確認などさせてもらえる筈が無いため、試しに通行人達に訊いてみたりしたところ、それらしきチンピラは見かけたらしいのだが、やはり口頭だけの情報というのは厄介なもので、正確に何処に向かっているのかは全く把握が出来ない。

 だが1つだけ分かったことがある。それは南の方に向かっているということだ。そこまで分かっていたとしても、南部の何処にいるのか探すのは至難の業だ。

 

 数時間後、万太郎から再度電話がかかってきた。

 

『防犯カメラを確認した結果、数年前に廃業した給食センターの廃工場に集まっていることが分かった。恐らく、絵麻ちゃんもそこにいる』

 

 

 

────────────

 

 

 

 絵麻が目を覚ました時、彼女は両手を手枷に嵌められた状態で天井が吊られていた。辛うじて足はつくのだが、ジタバタしても全く身動きが取れない。

 自身を囲む黒い首輪を着けたヤンキー達の中で、自身の目の前にいる男の顔に既視感を覚えた絵麻は、目を見開いて驚く。

 

「樋口……! どうして……!?」

「どうしてって、お前を俺のものにするために決まってるだろ。あんな陰キャといつもイチャイチャしやがって、絶対俺の方が良いに決まってるのに……!」

 

 怒りと歪んだ愛で満ち溢れた樋口を絵麻は恐れる。両手を拘束されて身動きが取れない彼女は、きっとこれから樋口が自らにするであろうことに身を委ねるしか出来ないのだと、絶望に近いものを湧き立たせる。

 

「何言ってるの! アンタなんかより優司の方が絶対良いに決まってる!」

「ふざけんな! だったら……!」

 

 すると樋口は絵麻の方まで寄り、ライドボットの身体だからこそ出来る強い力を使い、両手で絵麻のセーターを左右に引き裂いた。結果、彼女が着けている白い下着と、それに包み込まれている大きく実った2つのものが顕になる。

 樋口は笑いが止まらない。

 

「俺のものにしてやるよ」

 

 樋口の手が絵麻のものに触れた。乱暴に掴んで引っ張られ回される感触に、絵麻は強烈な嫌悪感を示して涙を流す。

 初めては彼が良かったのに。こんなことなら最初から素直になって、もっと自分の想いを伝えておけば良かった。そうすればきっと彼は自分を受け止めてくれたかもしれない。

 けれどももう遅い。全てが遅いのだ。

 

 薄汚い唇を絵麻の方に寄せる樋口。

 きっとこれは、彼にいつも辛く当たってしまったが故の何かの罰なのだと思った絵麻は、ギュッと目を閉じた──。

 

 

 

 

 

 ガラガラと扉が開いた。開かれた場所から光が一気に差し込んで来る。

 そしてそこから誰かが入って来た。顔は影に隠れてしまっているが言わずもがな、絵麻が待ち望んでいた男だ。

 

「優司……」

「何だよ、折角良いところだったのに邪魔しやがって」

「邪魔するに決まってるじゃないですか。彼女が貴方なんかに襲われてるんだから」

 

 樋口は舌打ちをして絵麻の胸から両手を離すと、腹部にユーザーズドライバーを出現させ、右手に暗紅色のガジェットを乗せる。ガジェットは(はさみ)の付いた両腕に頭部、鋭い尾が伸びていて、表面に『06』『SCORPION』と白く印字されている。

 

「良いぜ。お前を倒してから、コイツの身体をじっくり楽しんでやるよ」

 

 両腕に頭部に尾を仕舞い込んだ樋口は、ドライバーのスロットにガジェットを装填する。

 

06(ZERO-SIX)

 

 マリンバにビブラフォーンが華やかに鳴る中で、ドラムやティンパニが重厚感を出す。

 

「変身!」

『変身シークエンスを開始します』

 

 レバーを下げた瞬間、樋口の身体が黒くなってバラバラになり、巨大な怪物の姿となる。

 優司が狙うべき、憎むべき敵だ。

 

 すると扉の間から独特な羽音を立てながら、狐色のワスプガジェットがやって来た。

 右手の中で翅と頭部と針を収納し、スコーピオンユーザーを睨みつける。

 

「ぶっ殺してやる……!」

 

 優司の眼光は鋭く、僅かに入る光は全て目に集約されてキラキラと輝かせる。

 けれどもそれと彼の言動は今まではありえないものであったため、スコーピオンユーザーを始めとする敵の群や、救われる対象である絵麻であっても恐怖を覚えてしまう。

 

 そんなことなどつゆ知らず、優司はガジェットをドライバーのスロットに装填した。

 

05(ZERO-FIVE)

 

 (しょう)*1の音色から始まり、三味線の音が激しく鳴り響く。

 その中で優司はレバーに手をかけ、小指から順に指を絡める。

 そして前を見据えながら呟き、レバーを下ろした。

 

「変身……!」

『変身シークエンスを開始します』

 

 優司の身体が黒くなって全く違う姿になり、色が付いた。

 狐色の身体の上から蜂の絵が描かれた黒い羽織を着、口元には蜂のと同じような銀色のクラッシャーが装着されている。更に右手には黒い鞘に包まれた剣が握られている。

 

『WASP』

 

 和を基調とした狐色の戦士──仮面ライダーブートレグ ワスプフォームの誕生だ。

 

「すぐにトドメを刺してやる……」

「そうはさせねぇよっ!」

 

 スコーピオンユーザーが尾から紫色の液体を次々と噴射する。

 ブートレグは羽織を展開して美しい翅のようにすると、宙空に浮かび上がることによって回避。急降下して刀で標的の両腕を叩き斬った。

 図体の大きなものでは小回りの効く敵に苦戦する。そんなことは口にしなくても分かることであったのに。

 先程の威勢はどうしたのかと言いたいくらいだ。

 

 だが多少の慢心がブートレグにあったのやもしれない。

 敵が放った液体がブートレグの刀に掛かったのだ。

 これによって武器は溶けて無くなる。ただライドボットが分解されるわけではなく、溶かされるのだ。相手に手ぶらになる。だから勝ち目はある。

 スコーピオンユーザーは早くも勝ち誇った。

 

 けれども少しだけ早かったようだ。

 

「!?」

 

 溶かすことが出来たのは()()()()だった。黒い鞘の部分が溶け、姿を見せたのは銀色に光る剣心であった。

 流石に不味いと思ったのだろうが、もう遅い。

 

『WASP FINISH』

「ハァァァァァッ!」

 

 ブートレグの刀がスコーピオンユーザーの頭部に突き刺さる。

 剣をゆっくりと上げることによって、突き刺さったものは中空で踠く他無くなってしまう。

 そしてスコーピオンユーザーの身体が徐々に黄色く染まっていき、全体に行き渡ったところで崩壊をした。

 

『Rest in peace. 次の人生に、ご期待ください』

 

 行き場を失ったスコーピオンガジェットが床を歩く。それをブートレグが左手で拾うと、大人しくなって手の中に収まった。

 同時に刀を使って絵麻が繋がれている鎖と手枷を斬り、更に羽織から細かい針を周りのヤンキー達に飛ばして気絶をさせた。

 

「え、ちょっ……」

「大丈夫。急所は外してるから、もう少ししたら目覚める」

 

 変身が解除された。

 先の挙動を見てからというもの、随分と彼に対して怯えてしまっている。今俯いて顔を見せてくれない彼が何を思っているかだなんて、知る由も無い。

 すると優司はゆっくりと右手を差し出し、聞こえるのか聞こえないかの瀬戸際の音量で、彼女に言った。

 

「……帰ろうか」

 

 

 

────────────

 

 

 

 万太郎から連絡があった。樋口が病院の中で心筋梗塞によって死亡した。

 元々が意識不明の重体だったため、そのような終わり方をしたとしても疑われることは無い。しかも万太郎達によってユーザーズドライバーを回収されたことにより、彼がショッカーと関わっていたとする証拠は何も残っていない。

 

 優司は不謹慎ながらホッとしてしまった。

 これでもう絵麻を苦しめる奴はいなくなる。少しは安全に暮らせる。

 

 ──けど、自分は?

 目の前で無惨にそいつを殺した自分は、彼女のところにいちゃ迷惑なんじゃないのか……?

 

 ──僕は、いて良いのかな……。

 

 

 

 

 

「じゃあ、おやすみ」

 

 後数分で12時になる。既に武史は仕込みを終えて就寝、花蓮も自室に戻ったため、少ししか灯りが灯っていない2階の廊下にいるのは、優司と絵麻の二人だけだ。

 それぞれがパジャマを着ていて寝る支度はもう済んでいるのだが、到底寝られる気がしない。特に絵麻は毛嫌いしている男に屈辱を与えられたのだから。

 それでも何とか横になろうと努力をするため、優司がそうやって切り出した。

 

「うん。おやすみ」

 

 絵麻が薄らと笑みを浮かべて自室のドアノブに手をかける。

 

「ごめんね。何も出来なくて……」

 

 ドアノブを下げた状態で手が止まってしまった。

 どうして優司が謝っているのか。理由が分からなかった。

 

「何でそんなこと言うの……?」

 

 振り向くこと無く訊いた絵麻に、優司も立ち止まった。

 

「だって、僕が早く倒していれば絵麻があんな目に遭う必要は無かったし、目の前で僕が樋口を殺すのを見る必要も無かった。……全部、僕が弱くて何も出来ないからだよ……」

 

 優司がドアを開いて部屋の中に入ろうとする。

 ここで何かを言わなければ後悔する。今回はまだ優司が助けてくれたから良かった。けど、どうせどうにかなると思ってそのままにしていれば、今度こそ取り返しがつかなくなってしまう。

 

 もう迷うことは無かった。

 

 優司が自室の中に入ろうとした瞬間、絵麻は彼の部屋の中へと手を引き、そして部屋の角にあるシングルベッドの上に優司を押し倒した。

 突然のことに思考が追いつかない優司。

 

「ど、どうしたの、絵麻──」

「さっきの言葉取り消してよ……。何も出来ないってやつ……」

 

 声のトーンが低い。

 顔は前髪で隠れていて確認出来ないが、明らかに怒っている。

 

「何で……何でそんなこと言うのよ……! 私は、アンタに救われたんだよ……! 守ってもらったんだよ! 何も出来ていないなんて嘘だよ……!」

 

 涙を浮かべて優司の胸を叩きながら訴える絵麻。

 それでも優司の表情は浮かばれない。他人に何を言われたとて、無力であることは自分が一番分かっているからだ。

 

「けど……僕みたいなのが君の隣にいちゃいけないよ……」

 

 その一言でとうとう堪忍袋の緒が切れた絵麻。

 すると優司の頭を両手で優しく包み、彼の唇に自信の唇を重ねた。

 ジタバタと多少の抵抗を示した優司であったがそれは最初だけで、唇が糸を引いて離れるまでの残り数秒は、絵麻のものの柔らかさと快楽に身を委ねてしまう。

 

「だったら、私がアンタにずっと隣にいて欲しいって思ってること、全身で教えてあげる」

「そ、それって……!? 駄目だよ、好きな人とじゃないと──」

「好きな人、今私が押し倒してるんだけど」

 

 まさか。信じられない気持ちが襲ってきた。

 自分がこんな幸せになって良いのか。これまで何人もの人を殺めてきた自分に、こんな幸福なことがあって良いのかと、ある種の罪悪感に苛まれる。

 

「それとも、優司は私とじゃ嫌……?」

 

 答えは一つしか無かった。

 

「……そんなこと無いよ。寧ろ……嬉しい」

 

 ようやく絵麻が笑みをこぼしてくれた。

 彼女の顔を見てホッと安心する優司。

 

 そして全てを始める前に絵麻は言うのだ。

 ずっと言えなかった一言を。

 

「──大好きだよ、優司」

 

 

 

 

 

 正直、優司と絵麻の部屋に避妊具と経口避妊薬を置いておいたのは正解だと思った。

 どうせピンチを乗り切った、しかも互いに想いを馳せている男女がそういうことをするのは、ベタではあるが流れとしては予想出来るものであったからだ。

 今隣の部屋からは、若い男女の盛った声が聞こえてくる。それを聞いていると、花蓮は幸せな気持ちになれた。

 良かったね、絵麻ちゃん。自分の気持ちに正直になれて。

 

 では、自分の中にあるもう一つの気持ちは何だろう。

 優司は彼女を愛することを決めた。めでたいことではないか。なのに、どうしてこんなに胸が締め付けられるんだろう。どうしてこんなに切なくなるんだろう。

 

 まだ花蓮には理由が分からない。

 きっと寝れば忘れる。否、忘れなくてはいけない気がするのだが、本能的にそれを許してくれるとは思えないように感じる。

 けれども今は眠って意識を飛ばすのが最善の策だと考え、椅子から移動しようと試みた──。

 

 

 

 

 

 だが、

 

「?」

 

 動かない。

 指一本もその場から動くことが出来ない。身体をビリビリと電流が走る感触が襲うだけだ。

 

 ──まさか、あのスタンガン……?

 

 何よ。あの程度の電流だったら大丈夫な筈じゃない。話が違う。

 ここで不平不満を思ったとて仕方が無い。発散するための身体が微動だにしないのだから。

 

 諦めがついた花蓮は椅子に座ったまま、窓から差し込む新月の光を正面から浴びて目を閉じた。

 

 

 

────────────

 

 

 

 その頃、野宮ホールディングスの社長室では、野宮と白い怪人が向かい合っていた。

 

「──つまり、まだ彼には諸々バレてない、ってことだよね?」

「そうね。そうなる」

 

 妖艶なポーズを決めながら受け答える怪人。

 少しだけ吹き出した野宮は微笑を浮かべた。

 

「それにしても、若者というのはお盛んなものだね」

「そうね。まぁ、私もまだまだ年齢的には女盛りなんだけどね」

 

 はいはいそうだね、とやり過ごされた怪人は、じっと野宮を睨む。

 まだピチピチのレディなのに。

 

 すると野宮はスマートフォンを取り出して、メールの中うち一つを開封する。

 件名は『GによるSの買収について』。思わず溜息が出てしまう内容だ。

 

「計画は、一応は順調ってわけね」

「そうだな。全ては彼をこちら側に招き入れるため。……()()()()が見限られる前に事を終わらせないとな……」

 

 新月の光が差し込む。

 老けた野宮の顔と怪人の白く透き通った肌を艶やかに照らし、そして暫くして雲の間に隠れた。

*1
雅楽に使われる管楽器の一種。




【参考】
ハチオーグ(変身後)|仮面ライダー図鑑|東映
https://www.kamen-rider-official.com/zukan/phantoms/1690

最終的に優司にはどっちと結ばれて欲しいですか?

  • 花蓮
  • 絵麻
  • どっちもって手もあるんじゃないか……?
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