ポケットモンスター金銀クリスタル 【水縛りの冒険】/ポケモン 作:美容室
マツリ side
「は〜るの〜〜、うら〜らの〜〜、す〜み〜だ〜が〜わ〜♪」
アタシ達はヒワダタウンに向けて元気に進行中!
関門を抜けるとそこは日向も遮る薄暗い森だった。おやぶん曰く、ここは『森の神様』がいるんだって。
アタシは先頭に立って、陽気に歌でも歌って明るくムードを出しながら歩いていく。
「か〜いの〜、しず〜くも〜、はな〜と〜散〜る〜♪」
「……少なくとも夏に歌う曲じゃねぇな。」
「ワニャ?」
「ブイ。」
「そいえばさぁ、おやぶん。」
「あ?」
「……このヒモ、ほどいていい?服がシワになるよ〜。」
アタシは自分の身体の腹部に二重にも三重にも巻きついている荒縄を指さして言った。
おやぶんはというと、その荒縄から伸びている一本のヒモをガッチリと掴んでいる。
「断る。このヒモは命綱だ。こんな広い森におめぇみたいな方向音痴を放し飼いできるわけねぇだろ。」
「ワニ。」
「ブイ。」
……ワニッペやゼルも『当然』と言わんばかりに揃ってコクコク頷く。
「いやぁ、ごめんどーおかけしますねー♪」
「五月蝿ぇ、さっさと歩け、犬。」
「わんわん♪」
えへぇ〜♪ いぬーのさんぽだよーっと♪
なんか、後ろのほうで溜め息が聞こえたような気がしたけど気のせーかなぁ?
野生のナゾノクサが飛び出してきた!
「ワニッペ!水鉄砲!」
「ワニャー!」
ワニッペの水鉄砲がナゾノクサに当たる!
効果はいまひとつのようだ…。
ナゾノクサの痺れ粉!
「ヷ…ニ゙……!」
ワニッペが麻痺状態になった!
「ワニッペ!これ食べて!」
アタシはクラボの実をワニッペに与えた!
ワニッペの麻痺状態が治った!
「ワニャ……。」
ほにゃ?どしたんだろ?ワニッペ?
「おい!ボサッとすんな!来るぞ!」
ナゾノクサの吸い取る!
「ワニッペ!水鉄砲ーーー!」
…なんとか野生のナゾノクサをやっつけた〜〜♪
「ワニ、ワニ〜〜。」
「おやぶん、ワニッペ何て言ってるの〜?」
「……マツリ、次からクラボの実は控えてやれ。コイツ辛いのが苦手みてぇだ。」
「え!そーなの!?ワニッペごめ〜ん!」
「ワニ〜。」
アタシはワニッペを抱きかかえながら背中をさすった。
「むぅ…、与える道具にもアイショーがあるんだね〜。……あーあ、ポケモンの気持ちが解ればなぁ〜〜。」
そうすれば、ワニッペやゼルとももっと仲良くなれるし、いっぱいお話聞けるもん。
「ねーおやぶん。ポケモンて、みんなアタシ達人間の言葉、全部わかるのかな?」
よく考えてみればふしぎな事だった。
アタシはワニッペやゼルの言っている事は、よくわからない。でも、なんとなく、言いたいことは分かるんだよね〜。
逆に、アタシが『水鉄砲ーーー!』と言えば、ワニッペ達はちゃんと技を繰り出してくれる。
ワニッペ達はちゃんとアタシ達の言葉を理解しているショーコだった。
「……テメー、んな事も知らねぇでトレーナーやってんのか?」
おやぶんが呆れた様に息をはいた。
「お、知ってるの?おやぶん?」
「あのなぁ、『波導(はどう)』って知ってるか?」
「あんこ?」
「『は・ど・う』だアホ!
俺達ポケモンやテメーら人間はなぁ、生まれて死ぬまで、誰しもその波導っていう生命力の波、いわゆる波長を放出している。テメーらがよく使う言葉でいう『気』の事だ。」
「き?」
アタシはおやぶんの説明におうむ返ししか出来ない。
「テメーら人間は俺達ポケモンが、人間の言葉を理解できると思ってるが全然違ぇ。俺達はあくまで『波導』を感じ取ってるんだ。」
ん〜〜っと、ここからおやぶんの話が長くなるんだけど……、
よ〜するに、例えばアタシが『ハンバーグ食べたい!』って声に出したら、その『波導』が言霊(ことだま)になるんだって。アタシの頭の中で美味しそうなアツアツのハンバーグをイメージして、食べたいな、食べたいなって思いながら声に出したら、それが言霊にのって、ポケモン達はアタシ達の波導を読み取るんだって〜。
だからポケモン達は言葉を聞いているんじゃなくて〜、その言霊を聞いてるんだって〜。
だからポケモン達には『ハンバーグ』って単語はよくわからなくても、『おいしそうなもの』っていうふうに感じとるんだって〜。
「そしたらおやぶん!どうやったらアタシもワニッペやゼルの『はどーー』が読めるようになるのーー?」
「人間には無理だ。」
冷めたように言い放つおやぶん。
「ぶぅ、なんでー?」
「テメーら人間は脳ミソの機能がでかすぎて、波導ってのがうまく掴めねぇんだよ。おそらくな。」
「ふ〜〜ん?……ねえねえ!」
「んだよ。」
「ポケモンと一緒にお話ができる日が、きっと来るといいね♪」
アタシはおやぶんとワニッペ達にこれでもかと微笑む。
「さぁな。」
「ワニワニ!」
「ブイ!」
……ふぃ〜、森を歩くこと3時間。
疲れてはないけれど、腕が痺れてきちった。ずっと縛られたまんまだもん〜。
「おやぶん〜〜、コレ外しちゃダメ?」
「たりめーだ。森抜けるまで我慢しろ。……洞窟や山岳地帯でもコレ使うからな。」
「ええ〜〜!おやぶんのイジワル〜〜!」
ちょっと汗をかいて、衣服がしっとりしてくる。
森がざわざわと音を出すと、風が吹く合図。
びゅん、と風が身体に当たり、アタシは少し震える。つべたくって気持ちいい風だった。
「あり?」
アタシは足を止めた。
「なんだ、どした?」
「ワニ?」
「……?」
アタシは木々の分け目から、何かを見つける。ポケモンかなぁ?
道端に並ぶ木をじっと見つめ、もいちど確かめてみる。
すると……。
ガサガサガサ……!
「クワ!」
「おおお!アヒルだ!」
「カモネギだろうが!どうみても!」
「カモネギ?」
目の前に飛び出してきた茶色い羽のポケモンは、背中にネギをしょったまま、アタシ達を素通りしてサクサクと森の奥へと行っちゃった。
あれ?こんどは何だろ?また何かが近づいて来る……?
ガサガサガサ……!
「ど、どこまで逃げるんだよ〜〜、って、あ。」
そこに現れたのは、少し年上の知らないおにーさんだった。
「あ、君達、今さっき、カモネギ見なかったかい?(な、なんでこの子、縛られてるんだろ……。)」
「ほぇ?カモネギならアッチ行ったよーーー。」
アタシは薄暗い森に続く小道を指差した。
「ええ!あんな所まで!?うわぁ、おやかたに怒鳴られる〜〜!」
「おやかた〜?」
「ワニ?」
その人のお話を聞くと、おにーさんは炭を作るお仕事をしていて、炭を切る係のカモネギが逃げてったから、探すのを手伝って欲しいらしい。
アタシは元気に手を上げて言った!
「じゃあ!アタシが連れてきたげるーーー!」
「ほんとに!?ありがとう、俺ポケモン持ってないから、これ以上立ち入れなくて……。でも、大丈夫かい?」
カモネギが何処に行ったのか、どうやって探すのか。そんなの簡単だよ〜♪
こんな時こその、おやぶん♪
「にしし〜♪だいじょぶ〜♪おやぶんの耳があれば、カモネギのいる所、すぐわかっちゃうからね〜♪」
アタシはおやぶんに目配せをする。
「………。」
「ほぇ?おやぶん?」
「……リルリル〜♪」
ああ!この時のおやぶんは…、ぜんぜんやる気0のおやぶんだ!
「こーーーらーーー!おやぶん!人が困ってるのにーーー!」
「リルリ〜?」
目を潤ませながら首を傾げるおやぶんは、今はもう既に、普通の可愛らしいマリルになりきっている。
おやぶんは一度こうなると言うことを聞かない…。めんどくさくなったり、アタシになすりつける時はいつもこうなる。
「ん〜と、じゃ〜おにーさん。このマリル置いとくから、ここでカモネギ来るの、見張っててねーーー♪」
アタシははにかみながら、ワニッペとゼルを連れて、森の奥へと走って行った。
「おやぶんの役立たず〜…。」
アタシはおやぶんに聞こえないように小声でそう呟いた。
バシャァァアア!!
「ひぎっ!?っ冷たーーー!!」
アタシは背後から水鉄砲をおみまいされた。
「……ワニッペ、ゼル。……おやぶんのワルクチ言うと、こうなるよ。」
アタシは濡れた髪や服を気にしながら、もっと小さな声で、ワニッペとゼルに言い聞かせた。
「ワニ……(し、知ってます……。)」
「ブイ…。(やれやれ…。)」
カモネギ探しを始めて30分……。
「ワニッペーーー!そっち行ったよーーー!」
「ワニー!」
「カモカモーー!?」
小さな細道が続く林道に、カモネギがすばしっこく逃げ回る。
さっきから何度も何度も、あとチョットという所で逃げられてしまう。
「むむ〜、今度はどっちだ〜。」
アタシは遮二無二(しゃにむに)にカモネギを追いかけ、見失い、再び見つけては走って捕まえようにするも、なかなか捕まらない。
ワニッペ side
……炭職人のカモネギを探す手伝いをする事になり、そのカモネギを見つけたのはいいけど……。
カモネギとの鬼ごっこのやり取りが始まって30分。
「ねぇ、ゼル。」
「なんだ。」
僕は側にいるゼルに確認してみた。
「あのカモネギ……ひょっとすると、同じ場所をグルグルしてるだけなんじゃ……。」
「……私もそう思う。」
ゼルも気づいていたみたいだけど、うちのリーダーさんが何度もカモネギを追いかけ、僕らもその後を追い、幾度とみた場所を何度も行き来しているのに、リーダーさんは全然気づいていない……。
「リーダーさんに教えた方がいいのかな?」
「どうやってだ?」
「あ…そうか、今おやぶんさんがいないんだった……。」
「何かとおやぶん、ネゴシエートしてくれてたお陰で、リーダーとうまく連携できていたのだな…。」
「うん。………でも、なんとか伝えてみるよ。リーダーさーん!!」
僕は大声で鳴いて、リーダーさんを注目させる。
「んにゃ?どしたのーーー?」
リーダーさんが振り返って首を傾げた。
僕は、『カモネギは何度も同じ場所を行ったり来たりしてるから、挟み撃ちしましょう。』と伝えたく、なんとか僕なりに身振り手振り、ジェスチャーしてみる事にした。
マツリ side
「ワニ!ワニワニワニワ!ワニワニワニ!」
ワニッペが何かを言ってる〜?
ワニッペはアタシに何かを伝えたいのか、身体を動かしながらアタシを見ている。
ワニッペはというと、両手をパタパタとばたつかせ、走るマネをして、ぜぇぜぇと息を切らせる。
次に、首を横に振り、アタシに指をさして、コッチへ指をさす。そして、ワニッペ自身に指をさして、アッチへ指をさした。
…………う〜〜ん……。
アタシは顎に手を置いて考える。
両手パタパタ………ぜぇぜぇ疲れる……。
「あ!わかったーーー♪」
「ワニャ!」
「ワニッペ!お腹すいたんだねーーー♪いやぁ、そいやお昼ごはん食べるのスッカリ忘れてたよね〜〜♪」
「………。」
アタシはかばんから、オレンの実を2つ取り出して、ワニッペ達にあげた。
「とりあえずー、次の町に着くまで、それで我慢してねー♪」
ゼル side
「……ふっ…ふふふ……!」
「…(通じなかった……。)」
ワ、ワニッペあんなに頑張ったのに、見事に空回りした様子を目の当たりにし、可笑しくて笑わずにいられない。
「ゼル、笑いすぎ…。」
目を虚ろにしながら、ガックリとうなだれるワニッペ。
「ふふ、すまないな。……だがワニッペ、伝える事項が長すぎるのではないのか?うちのリーダーにそのような緻密な作戦、思いつくはずもない。」
「…と言うと?」
「私にまかせてもらってもいいか?……リーダー!!」
「んー?なーにゼルー?」
うちのリーダーが再び振り向く。
リーダーに伝える内容はこうだ。
要するに、カモネギをうまく誘導し、おやぶん達の所へ帰ればいいだけの話。
『カモネギを追いかけ、おやぶんと合流する。』これしかない…!
ワニッペよりも簡潔に、シンプルに、画期的に伝えてみせよう。
マツリ side
「ブイブイブイ。ブイブイ、ブイ!」
ほえ〜?今度はゼルが身振り手振り、アタシに何かを伝えようと喋りかける。
アタシはゼルを観察する。
ゼルはというと、アッチの方を指さし、その指をゆ〜〜っくりとあたりの森をぐるりと指しながら、今度は反対の指で、向こうの方向へと指をさす。
ん〜〜、今度はワニッペの時とは違う。なんだろ〜〜。
アッチへ……ぐるっと……向こうの方といえば………おやぶん達の所……。
「あ!分かった!そういう事だったんだーーー♪」
「ブイ!」
「えへへぇ〜〜♪」
アタシはかばんから、たくさんの木の実を取り出し、ひとつずつ大きく間隔を空けながら、道に置いていく。
「こーしてエサを置いてって、おやぶん達の所にカモネギをおびき出すんだねー♪」
ゼル side
「おおおおお!!」
「ふ、どうだ見たことかワニッペ!」
私のジェスチャーも捨てたものではない。私の意思をうまく疎通できた所か、リーダーは更に『エサ』でおびき出すという発想に繋げてしまった。
「すごいよゼル!」
「まぁ、発想の転換だな。」
私は達成感に酔いしれながら、リーダーの後に続く。
リーダーが木の実を置きながら、一本道に差し掛かった時だった。この道は確か、距離は長いがこの先におやぶん達が待機しているはずだ。
すると……。
「クワッ♪クワ♪」
早速来たようだ。遠目でカモネギが、リーダーの置いた木の実をついばみながら、こちらに誘導されているのに気づきもしない。
この調子でなんとかおやぶん達と合流でき 「ああ!カモネギ発見!待ぁぁてぇぇえええ!」
「クワァ!!?」
………………。
リーダーが、カモネギを目視した瞬間、反射的にカモネギに向かって一直線に走りだす。
当然、カモネギは一目散に逃げる。
「…………………。」
「………。」
ワニッペが、ポンと肩を叩いてくれた。
「ワニッペ。」
「え。」
「……人間とポケモンが…いつか話せる日が…来るといいな。」
「そ、そうだね…あはは…。」
私とワニッペは、ふたつの影が森の奥へと消えていくのを、その場で呆然と眺めていた。
結局、カモネギを捕まえられたのはその3時間後、森に迷ったリーダーを探しだすのに2時間後。
森を抜けた頃には、月が浮かんでいた。
ゼル side out
次回、ヒワダタウン到着です。
そして、新たな水ポケモンが仲間となります、愛くるしいあの子にご期待下さい!