ポケットモンスター金銀クリスタル 【水縛りの冒険】/ポケモン   作:美容室

8 / 12
ポケスロン スピード種目
ハードル走終了時の順位

1、ミルタンク〔15ポイント〕
2、ワニッペ〔10ポイント(マイナス1)〕
3、バタフリー〔10ポイント〕
4、ゼル〔9ポイント〕
5、オオタチ〔7ポイント(マイナス1)〕
6、オヤブン〔7ポイント〕
7、ブルー〔5ポイント(マイナス1)〕
8、コータス〔3ポイント(マイナス2)〕
9、マグカルゴ〔2ポイント(マイナス2)〕

ストライク、スピアー、バクーダ〔0ポイント〕

採点方法
・各順位に応じてポイントを付与。12匹の参加なので、一位なら12ポイント、2位なら11ポイント、最下位なら1ポイント。(ただし今回の場合、一位には15ポイントを固定。)
・ハードルに接触または転倒の場合、その回数に応じてマイナス1のペナルティ。
・もし、ゴールまで到達できない状態になった場合、そのポケモンは失格とし、ポイントは0とする。



げんざいの順位
アカネ 27ポイント
マツリ 26ポイント
タクヤ 10ポイント
トウドウ 5ポイント



ポケスロン大会(後編)

ポケスロン 二回戦

 

 

ゼル side

 

 

実況『さあ、200mハードル走が終了し、現在の順位は、27ポイントのアカネ選手、26ポイントのマツリ選手僅差となっております。そして大きく離れてタクヤ選手10ポイント、トウドウ選手が5ポイントとなっております。次の二回戦で挽回が訪れるのでしょうか?』

 

 

・・・まさかの展開に私も驚いた。あのタイミングでミルタンクが高速ジャイロボールでゴールするなんて・・・。

 

さすがはジムリーダーのポケモン。一筋縄ではいかなそうだ。

 

私は、やるからには勝ちたい。そんな一心で二回戦を待ち続けた。

 

「おいゼル。二回戦の競技はなんだ?」

 

私達の巨匠、おやぶんが私に質問した。

 

「次の種目はビーチフラッグだ。各チーム、エリアに散らばっている旗を敵チームよりも多く集めて陣地に持って帰り、数を競い合うんだ。ただし、拾いに行けるのは1チームにつき1匹のみ。他のメンバーは陣地で待機しなければいけない。」

 

「一匹しか出れねぇのか?」

 

「交代は可能だが、その時は、陣地内でポケモンとタッチしない限り、交代は認められない筈だ。」

 

「・・・よし。ならワニッペはベンチにして、俺達でローテするぞ。」

 

私は先程から寝ているワニッペを見る。

さっきの200mで、彼は奮闘して2位という実績を得た。かわりにその代償は大きく、無理が祟ったのだろう、疲弊してスヤスヤと眠っていた。

 

「いい気なモンだぜ。」

「だが、彼のおかげで一位と僅差だ。」

 

ワニッペの努力を無駄にするわけにはいかないな・・・。

 

次の種目では、ワニッペを温存させて、2匹のみで挑む。

 

実況『さあ、二回戦の準備が整いました。選手はポケモンを開始線に並ばせてください。』

 

 

私は競技場トラックの足場を離れ、砂地のエリアに足を踏み入れる。

 

まず、私が先発で出る。

開始線に立つと、他のポケモン達が並んだ。

 

「(ストライクにバクーダに、オオタチか・・。)」

 

比較的素早いメンバーを出してきたな。

 

・・・オオタチと目が合った。

 

オオタチ「なに見てんのよ。」

 

挑発気味に雅やかに言い放つオオタチ。

 

「・・・ふっ、何でもない。品定めをしたつもりだったが、無駄に終わった。」

 

目線を正面に向け直して、凛と言った。

 

オオタチ「・・・喧嘩売ってんの、アンタ?」

 

「買う価値もない。」

 

オオタチ「・・・!!」

 

 

 

ジムリーダーのポケモン。

私の隣で怒りに震えてるオオタチが、どれほどの実力者か定かではないが・・。

 

これはバトルではなく、スポーツ。

 

私は徒競走には自信はないが・・・。

 

 

実力『さあ、各ポケモンが出揃いました。目の前には広大な砂浜。そして点々と置かれた幾数もの旗。各ポケモン、制限時間内に旗を多く集める競技、やはり素早いポケモンが先発で登場しています。

 

・・・では、用意!』

 

 

タクヤ「ストライクー!取り返せー!」

トウドウ「バクーダ!頑張れ!」

マツリ「ゼーールーーーーー!」

アカネ「(オオタチ、作戦通りいきや・・・。)」

 

 

ストライクは羽を鳴らし、

バクーダは煙を燻し、

オオタチは四肢を折り曲げる。

 

 

私は、仁王立ちで腕を組んだ。

 

 

 

 

実況『スタート!!』

 

 

バンッ!

 

 

銃声が鳴った刹那、

私は高速移動を発動した。

 

ストライクやバクーダ、オオタチを一気に抜き去り、旗が散らばっているエリアへと瞬時に向かう。

 

 

実況『さあ、スタートしました。開始直後に駆けて行ったのはマツリ選手のブイゼル。素早い高速移動で一番奥のエリアへと進みました。そしてストライクとオオタチは、スタート地点周辺の旗を回収しています。おっと?バクーダの動きがありません。どうしたのでしょう。』

 

 

「(・・誰も来ていないな。・・ならこのエリアの旗を全部掌握する!)」

 

私はここら一帯に広がる砂地を見据え、片っ端から旗を素早く手に入れていく。

 

 

実況『この種目のルールは、制限時間5分の中で、どれだけ旗を陣地に持って帰れるかを競う競技です。なので、ポケモンが旗を手に入れるだけではカウントされません。きちんとスタート地点に戻ってこなければ得点に加算されない上、メンバーの交代も出来ません。』

 

 

 

開始から1分が経過した。

 

私は8つの旗を手に持ち、遠目でスタート地点の方を視た。

 

「(・・・ストライクが4点、オオタチが7点、バクーダは・・さっきから全く動かないな?)」

 

この種目は交代制が起用されている。

スタート地点に戻れば、他のメンバーとバトンタッチが可能だ。

 

「(もうじき、奴らもこのエリアにやってくる筈だ。・・・私もそろそろ戻ろう。)」

 

 

私は高速移動で、スタート地点へと帰還する。

 

おやぶんが待機しているスタート地点の白線まで、あと少しの時だった。

 

 

オオタチ「おっかえり〜♪」

 

オオタチのだましうち!

 

ドゴォ・・・!!

 

「がはっ・・!?」

 

オオタチの攻撃を受けた私は、手に持った旗を全部落とした。

 

 

オオタチ「悪いわね。頂くわよ〜♪」

 

く・・・、予想はしていたのに・・。

 

 

私が持ち帰った旗を8本、オオタチの手中に収められていく。

 

 

実況『おっと、スタート地点にて早くも妨害作戦が決行されています!オオタチのだましうちが決まりました!ブイゼル、うまく避けようとしましたが、相手の必中技をかわせず、そのままダウンしてしまいました!』

 

 

オオタチ「ふふ、いくら素早くても、かわせなきゃ意味ないでしょ♪」

 

オオタチは自分の陣地へと旗を持ち帰って行く・・!

 

 

「くそ・・!」

 

おやぶん「ゼル!早く来い!代われ!」

 

おやぶんが大声で呼びかけ、手を伸ばして白線に待機している。

 

私は倒れた体を起こし、高速移動でおやぶんさんにタッチした。

 

「すまない・・・。」

 

おやぶん「詰めが甘いんだよ。で、うまくやったか?」

 

おやぶんは、私の謝罪を気に咎めず、そう言い放った。

 

「あぁ、指示通りやったよ。」

 

おやぶん「ご苦労。」

 

そういうとおやぶんは、その場から姿を消した。

 

おやぶんが発案した作戦。それは、その後の勝負展開を、まるまる覆すものだった・・・。

 

 

おやぶん side

 

 

 

俺はアクアジェットでオオタチを狙う!

 

ドゴォォォ!!

 

・・・ち、電光石火でかわしやがったか。

オオタチは俺の先制技を回避した。

 

オオタチ「あ、あぶなかった〜・・。」

 

 

実況『オオタチが陣地に戻り、得点が加算されます。アカネ選手15点!残り3分30秒、タクヤ選手8点、そして未だ0点のマツリ選手とトウドウ選手!逆転なるか!?』

 

 

マツリ「がーんーばーれーーー!」

タクヤ「スピアー!一番のポケモンを狙え!」

トウドウ「・・・。」

アカネ「オオタチよぅやった!いったれブルー!!」

 

 

オオタチと交代して出てきたのは・・・、ようせいポケモンのブルーだな。

 

俺はブルーをシカトし、スタート地点の近くの旗を回収していく。

 

 

ブルー「おい!ダルマネズミ!」

 

「あ゙ぁ!?」

 

・・・こんのボケ犬がぁ、俺はブルーと対峙する。

 

ブルーの恐い顔!

 

しかし、うまくきまらなかった!

 

ブルー「な!?効いてない!?」

 

「・・・ほぉ、俺の素早さを下げる作戦か。・・・いいかぁ、『恐い顔』ってのはなぁ・・・こうやんだよ!!ガァアアア!!」

 

俺はブルーに恐い顔を発動する!

 

ブルー「ひぃ・・!」

 

ブルーの素早さがガクッと下がった。

 

「ざまあみろってんだ。」

 

俺は再び旗を集めようと踵を返したんだが・・・妙だな?

「(・・・風向きが怪しい?)」

 

地面に積もってある砂が、粉塵となり、強い風に吹かれて渦をまく。

 

「この技は・・・砂嵐か?」

 

 

 

バクーダの砂嵐!

 

辺りは砂嵐に巻き込まれた!

 

実況『なんとトウドウ選手のバクーダ、砂嵐を発動しました!先程まで不動だったバクーダは、砂嵐を起こす準備をしていたようです!これで各ポケモンの視界が悪くなりました!』

 

 

アカネ「(ち、めんどうな技使うてきたなぁ。)・・・ブルー!一旦戻りぃ!」

 

アカネが指示し、ブルーをスタート地点へと帰らせた。

 

俺もその間に旗を3本手に入れ、スタート地点へと戻る。

 

俺は電光スクリーンを確認する。

 

『残り2分20秒、アカネ15点、マツリ3点、タクヤ8点、トウドウ0点。』

 

 

・・・それにしても砂嵐かぁ。あのトウドウって野郎、なかなかいい判断しやがるぜ。

 

目の前の光景を改めてみると、ほぼ視界は茶色の風に遮られ、まめに俺の体に砂がぶつかり、少しずつダメージが重なる。

おまけにこの風だ、地面の砂に刺さってた旗まで、宙に飛ばされていた。

 

トウドウ「バクーダ!マグカルゴと代われ!マグカルゴはスタート地点にステルスロック!」

 

マグカルゴのステルスロック!

 

スタート地点の辺りには、ビッシリと尖った岩が生成された。

 

 

 

「(・・・成る程、トウドウの狙いは・・・虫タイプの奴らか。)」

 

競技開始から旗を集めまくってるストライクやバタフリーから、旗を奪うってわけだ。

 

奴らは飛行と虫タイプ。砂嵐で視界が悪いから、ステルスロックに気づかねぇ。そして大ダメージを被り、旗を落とすって寸法か。

 

「(しかも砂嵐の効果で、あのマグカルゴの特防は上がってる。水タイプの俺達にも対策してやがるぜ。)」

 

 

 

 

案の定、スピアーがマグカルゴの罠に嵌まり、大量の旗を落とした。

 

マグカルゴの熱風!

 

効果抜群は抜群だ!

 

スピアーはその場で動けなくなる。

 

 

実況『マグカルゴの熱風がスピアーに炸裂ー!スピアーの動きを封じましたマグカルゴ!早くもこの競技場を支配したかのよう、トウドウ選手。スピアーの旗を奪って陣地に帰ります、これでトウドウ選手9点です!タクヤ選手を上回りました!』

 

 

タクヤ「スピアー!しっかりしろ!頑張って陣地まで来い!」

 

タクヤの激励は虚しくもスピアーに届かず、スピアーはその場で倒れて動けずにいた。

 

 

 

 

俺はゼルとタッチし、ゼルに言い聞かす。

 

 

「いいかゼル。残り30秒だ。残り30秒を切ったら、例の場所へ突っ走れ。そして、逆転だ。」

 

「ああ、わかってる。」

 

 

目の前の砂塵やステルスロック。予想外の障害はあるものの、この俺の作戦が成功すりゃ、二回戦は頂いたも同然。

 

電光スクリーンを見る。

 

『残り2分01秒、アカネ選手16点、マツリ3点、タクヤ8点、トウドウ9点。』

 

競技場では、ミルタンクが齷齪(あくせく)と旗を探し、スピアーがはいずりながら陣地へ戻ろうとし、マグカルゴがスタート地点で、敵を迎え撃つ準備をしている。

 

俺とゼルは、スタート地点の白線の後ろで、静かに待機した・・・。

 

 

 

ゼル side

 

 

 

実況『・・さて、残り時間50秒となりましたが・・得点に動きはありません。アカネ選手16点、マツリ選手3点、トウドウ選手9点、タクヤ選手8点。このまま時間切れとなれば、アカネ選手の勝ちとなりますが・・・、誰ひとりとして、旗を集めようとしていません。スタート地点で、相手の旗を奪おうと意気込むマグカルゴ。ミルタンクやバタフリーはエリアを隈なく巡回している様子は伺えますが、何故旗を持ち帰らないのでしょう?

 

そして気になるのが、マツリ選手のマリルとブイゼル。現在最下位の彼等は、スタート地点にて先程から動く気配はありません。この勝負諦めたのでしょうか?』

 

 

 

マグカルゴ「・・・ミルタンクめ、逃げ切るつもりか?・・・だが、砂嵐で体力がもう限界の筈だが・・・?」

 

 

私は、マグカルゴが愚痴を零すのを何となしにに聞いた。

 

・・・ふふ、あれは逃げ切っているわけではないさ。

 

 

 

おやぶん「・・・そろそろだ。」

 

おやぶんが低い声でささやいた。

 

「ああ。」

 

電光スクリーンを見る。

 

『残り35秒。』

 

 

 

私は、高速移動を発動する準備をした。

 

すると、スタート地点に、ミルタンクとバタフリーが戻ってきた。

 

それぞれ、自分の陣地へ一旦戻るミルタンクとバタフリー。旗を持ってないと分かっていたマグカルゴは、迎撃をしなかった。

 

 

・・・砂嵐が収まった。

 

視界が回復し、競技場の砂地が鮮明に見えはじめた。

 

 

実況『ここで砂嵐が止んだようです。ようやくステージの様子がよく見えるようになりまし・・・あぁ!これはどうした事でしょう!?旗が、旗が一本も見当たりません!砂嵐によって飛ばされたのでしょうか?競技開始直後には100本近くあった旗が、影ひとつなく消えています!?』

 

 

オオタチ「ちょっと、旗はどうしたの?」

 

ミルタンク「はぁ、はぁ、・・・旗がどこにもないわ。」

 

ブルー「な、なんで!?」

オオタチ「ちゃんと奥の方を探したの?」

 

ミルタンク「探したわよ!手前のエリアは全部取ったんだから!奥のエリアの旗が一本もないの!」

 

 

 

 

 

「・・・ふっ。」

 

おやぶん「よし行けぇ!ゼル!」

 

『残り30秒。』

 

 

私は高速移動とアクアジェット使った!

 

バシュ・・・ゥゥウン!!!

 

ズバババババババァァアア!!

 

「ハァァァアアアーーー!!」

 

 

私はこの競技場の奥のエリアへと全速力で駆けていく。

例のあの場所を目指して・・・!

 

 

 

 

 

《競技開始5分前・・・。》

 

 

 

 

おやぶん「妨害もありか?」

 

「ああ、自分で旗を拾って陣地に持ち帰るのが基本だが、この競技では、相手が持っている旗を奪う事が許されている。つまり、競技中は各ポケモン、技の使用が許可させるんだ。」

 

おやぶん「んじゃあ、スタート直後に全員ぶっ倒しゃいいじゃねーか。」

 

「いや、これはあくまでスポーツだから、相手を瀕死に至らしめた場合は、その場で即失格となる。」

 

おやぶん「・・・成る程。」

 

「だから、私とおやぶんで、アクアジェットを使って旗を回収していくのがセオリーだろう。アクアジェットのスピードが、攻撃や回避に生かされるだろうからな。」

 

おやぶん「バーカ、無駄だよ。」

 

「!?・・・む、無駄とは?」

 

おやぶん「・・・アカネの所のオオタチやブルー、虫使いのストライクも電光石火を使うんだぜ?俺はともかく、テメーは力負けして旗を落としちまう。・・・ルール上は、スタート地点に戻らない限り、得点は手に入らねぇんだ。総勢がスタート地点固めて、旗持って帰って来た奴を狙うだろうよ。」

 

「・・・私は素早さに自信がある。」

 

おやぶん「ジムリーダーのポケモンを舐めるな。下手に目立つと生殺しに合うぞ。・・・もし俺がテメーの敵なら、『マヒ』『混乱』にして、瀕死にならない程度にボコボコにして地面に埋める方法を遂行する。」

 

「・・・・・(ゴクッ)・・。」

 

おやぶん「・・・・・・・・ぉお!いい作戦を思いついたぜ!」

 

「な、なんだ?」

 

おやぶん「アカネん所の奴ら、前半はスタート地点辺りを張って攻撃してくるからよ、俺達は一番遠くのエリアの旗を掌握しよう。」

 

「・・・なぜ、そんな事が解るんだ?」

 

おやぶん「今向こうでアイツラ(アカネ達)が話してるじゃねーか。『最初はスタート地点の近くの旗を集める』ってよ。」

 

「・・・・・・・へ?」

 

おやぶん「俺は耳がいいんだよ。筒抜け筒抜け!ギャーーハハハハハ!!」

 

「・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

おやぶんの作戦!

 

それは・・・!

 

『いいかゼル!スタート開始前に、アカネのポケモンを挑発しろ!いかにもコッチは素早さに自信があると見せかけるようにだ!

 

そしてスタート開始した瞬間!奥のエリアの旗を全部隠せ!!全部だ!!』

 

 

 

 

実況『おぉっとーー!残り25秒でようやくブイゼルが走り出しました!物凄い速さでエリアの奥の方へと走って行きます!』

 

 

アカネ「・・・まっさか・・!」

 

 

私は、競技場の奥のエリアの隅へたどり着く!

 

私はその地面を掘る!

 

その地面の中には、『私が自ら隠した旗』が大量に埋まっている!

 

私は旗を20本取り出し、スタート地点へと駆ける!

 

 

「「「ワァアアアアア!!」」」

 

 

実況『場内大歓声です!これは驚きましたーー!ブイゼルが競技開始直後に、奥のエリアの旗を全部取って隠すという荒業を成し遂げました!!

残り時間15秒!ブイゼルは20本近くの旗を持ってスタート地点へ急ぐ!間に合うか!そこには幾多の敵がいるぞーーー!』

 

 

私は全速力で走りながら、前方を見た。

 

 

目的地のスタート地点の白線まで、あと50m。

 

 

 

3匹のポケモンが、血相を変えて私に突撃してきた!

 

マグカルゴに、ストライクに、そして・・・オオタチ!

 

「(望む所だ!ここが正念場だぞ!)」

 

私に襲い掛かる3匹猛攻の中へと、私は100%の力を振り絞り、走り出す!

 

 

 

マグカルゴの火炎放射!

 

「遅い!」

 

真っ先に目が着いた、マグカルゴの放った火炎放射をひらりとかわし、マグカルゴを抜いた!

 

ストライクの燕返し!

 

ヒュッ・・ズバッ!

 

「くぁあ!?」

 

しかし、またしても必中の技を食らい、私は砂に倒れてしまう。

 

ストライクが私の旗を全部拾った!

 

「(くっそ!このまま終われるか!)」

 

私は奮起して立ち上がる!

そして逃げるストライクを高速移動で一気に迫ろうとしたその時・・・!

 

オオタチのめざめるパワー!

 

バキィ・・・!

 

ストライク「ぐわぁぁああ!?」

 

ストライクはオオタチの攻撃に対応できず、地に伏せる。

 

オオタチが、ストライクの持っていた旗を全部奪い取った。

 

オオタチ「ふふ、安心して♪私が持って帰ってアゲル♪」

 

オオタチが陣地へと急いだ!

 

私は電光スクリーンを見る!

 

『残り7秒!』

 

「オオタチィーーーーーー!!」

 

私は怒声を上げながら、高速移動とアクアジェットで、オオタチを追いかけた!

 

 

 

実況『残り6秒!オオタチ!ブイゼルの旗を奪い取って逃げ切るか!ブイゼル追いかける!ブイゼル速い!執念の追撃です!ブイゼルのアクアジェットが迫るーーー!!』

 

 

 

 

・・・今までで、一番速かった。

 

今までの私の中で、最速だった。

 

 

きっと、マツリと出会わなければ、おやぶんと出会わなければ、ワニッペと出会わなければ、今の私は此処にはいない。

 

 

速さに自信があった。

それはかつて、自分の天性に驕っていたのだろうな。今ではよくわかる。

 

 

初めて、仲間の為に命を燃やした。

 

それが、こんなにも。

 

こんなにも身体が動いてしまう。

 

 

・・・ありがとう。みんな。

 

私は、此処に居てもいいんだな。

 

この試合に勝ち。

 

私は、此処に居続けよう。

 

 

 

 

 

 

 

オオタチ「・・・バカね♪」

 

オオタチの不意打ち!!

 

 

 

 

しかし、オオタチの不意打ちが決まらなかった!

 

オオタチ「な!なんですって!?」

 

 

 

 

おやぶん「残念賞!!」

 

おやぶんのアクアジェット!!

 

バッシャアアアァァァァ!!

 

オオタチ「きゃああああ!?」

 

 

 

 

 

 

実況『タ、タイムアーーップ!!第二回戦勝者はなんと!まさかの逆転劇を繰り広げました!マツリ選手ーーー!!!』

 

「「「うおおおおぉぉぉ!!」」」

 

「「「わああああぁぁぁ!!」」」

 

 

アカネ「・・・んな、アホな。」

 

マツリ「ゼーールーーーー!!おーーやぶーーーん!!」

 

 

 

 

「はぁ・・、はぁ・・。」

 

ス、スタート地点で私は、疲弊した身体を砂に預け、息を整える。

 

「(あ、危なかった・・・、あのままオオタチに攻撃していれば・・・、私は・・いや、私達は負けていた・・・。)」

 

 

実況『最後の場面でまたしてもマツリ選手のブイゼルが驚かせてくれました!残り3秒!ブイゼルのアクアジェットがオオタチに迫るのを誰もが予想しました。しかし、オオタチの不意打ちを読み取ったブイゼルはアクアジェットの素早さを生かして自分の陣地へ向かい、マリルとチェンジ!そしてマリルの超高速アクアジェットでオオタチを撃破!旗を奪い返し、自分の陣地へ戻った時には既に残り時間は0.2秒というギリギリのタイム! よって得点はマツリ選手が23点、アカネ選手が16点、トウドウ選手が9点、タクヤ選手が8点となりました。集計まで、今しばらくお待ちください。」

 

 

私は身体を起こし、地面に座る。

 

隣におやぶんがやって来た。

 

 

「な?言った通りだったろ?」

 

 

おやぶんは歯を見せてにこやかに笑う。

 

 

「・・ふふっ、でもギリギリだったぞ?」

 

「演出よ、演出。・・・ゼル。よくあの場で『不意打ち』を読めたな。これ以上ない判断だったぞ。」

 

 

・・・なんだろうか、このむず痒さは・・////

 

「テメー何顔紅くしてんだ?」

 

「いや・・その・・褒められたの、初めてなんだ・・・。」

 

「・・・けっ、調子にのるんじゃねぇよ。」

 

 

 

あの時、私はあの緊張感と焦燥感の中で、相手の『不意打ち』を読めるなんて芸当は、不可能だった。

 

ただ。

 

私はひとりで戦ってはいない。

 

ひとりで生きているわけではない。

 

そう気付いた私は、なんとなくおやぶんに託した。それだけさ。

 

 

 

「ゼーールーーーー!おやぶーーーん!」

 

「よぉ、マツリ。暇そうだなテメー。」

 

「凄い凄ーい!!ゼル速かったー!よかったよーー!」

 

うわわっ!

私はマツリに抱き上げられ、胸に押し付けられた。

 

「ゼル!カッコ良かったーー!」

 

マツリがそう言った瞬間、私は顔から火が出るほど恥ずかしくなり、顔をマツリの胸に更に埋めた・・・。

 

 

 

 

 

ゼル side out

 

 

 

 

 

 

 

 

ポケスロン 三回戦

 

 

マツリ side

 

 

実況『先程の二回戦の点数がレザルトに加算されます。現在トップはマツリ選手の49ポイント。そしてアカネ選手43ポイント。タクヤ選手18ポイント。トウドウ選手が14ポイントとなりました。マツリ選手とアカネ選手のデットヒートとなります、次の三回戦。初登場で水タイプの力を発揮する事が出来るか、片やジムリーダーの意地を見せつけれるか。場内のボルゲージは沸々と高まっております。では、3回戦の準備が整うまで、しばらくお待ちください。』

 

 

 

・・・凄いね。ワニッペとゼル。

 

 

本当は、物凄く飛び上がりたいほど嬉しい気持ちで一杯なんだけど。

 

ワニッペとゼルの事を、心の底から、静かに賞賛し、褒めてあげる。

 

 

他のトレーナーさん達は、応援しながら『右に行けー』とか、『たいあたりだー』とか、色んな細かな指示をしているのに。

 

アタシは『がんばれーーー!』としか言うことが出来ない。

 

まぁ、おやぶんがついてるからダイジョブだとは思うけどね。

 

 

「(・・・アタシも、頑張らなきゃ!)」

 

 

アタシは大きく息を吸い、声を発した。

 

 

「ワニッペーーー!ゼーールーー!おーやぶーーーん!頑張れーーー!!」

 

 

アナウンス『繰り返し放送します!マツリ選手、マツリ選手!三回戦が始まります!至急召集場へお越しください!』

 

 

ありゃ?

アタシのこと?

 

すると、隣にいた男の人が、アタシの肩をトントンと叩いた。

 

「えっと、あんた、選手じゃないの?召集されてるよ?」

 

「ほぇ?アタシ選手だよー?」

 

「早く行きなって!ここは観覧席だから!」

 

「・・・・おお!」

 

「『おお!』じゃない!」

 

 

 

 

 

私は観覧席を抜け、競技場へと走って行く!

 

既にみんな集まってるみたい。えへへ〜♪

 

「すみません〜!遅れました〜!」

 

おやぶん「どこほっつき歩いてんだテメェ!!」

 

おやぶんが私を叱しつけた。

 

「いや〜、トイレ行って戻ろうとしたら、観覧席で応援してたんだよね〜♪」

 

おやぶん「が・・ぐがが(ず、頭痛が・・・ここが公衆の面前でなけりゃ、叩きのめしてやるのに・・・!)」

 

ワニッペ「ワニワニ・・(おやぶんさん、大丈夫ですか?)」

 

ブイゼル「(心中察するぞ・・・。)」

 

 

アカネ「(・・・やっぱ喋ってんなぁ、あのマリル。)」

 

 

 

 

実況『三回戦の準備が整いました。スピード種目、最後の競技となります、『400mリレー』。競技場トラック一周400mをリレー方式で競走し、ラストのアンカーで一位を獲得できれば、高得点が付与されます。1位で【40ポイント】、2位で【30ポイント】、3位で【20ポイント】、4位で【10ポイント】。ですので、現在最下位のトウドウ選手にも、逆転のチャンスがあります。それでは、選手はポケモンの順番を決めてください。』

 

 

タクヤ「お、お約束すぎる・・・。」

 

トウドウ「・・・はぁ、パワー種目で出ていれば・・・。」

 

 

アカネ「マツリー。」

 

あ!アカネちんだーー♪

 

「アカネちーーーん!」

 

 

アカネ「ウチ、あんたの事見くびっとったわ。対したモンやで〜。」

 

「えへへへへ〜♪いやーそれほどでもないよ〜♪」

 

ジムリーダーに褒められちった〜。

 

アカネ「せやけど、まだ勝負はこっからや。ウチもぼちぼち本領発揮させてもらうからなぁ。覚悟しときぃ。」

 

そういうとアカネちんは、不敵な笑みを浮かべながら、その場を後にした。

 

「アカネちーん!三回戦もがんばろーねーーー!」

 

アタシは立ち去るアカネちんに向けて激を放った。

 

アカネ「(もう勝ったつもりでおるやん、その余裕も今のうちやで・・・。)」

 

 

 

 

 

アタシはワニッペ達のいる所へと近づく。

 

「みんなーー!あとちょっとでユーショーだね♪」

 

アタシは側にいたワニッペの頭を撫でながら言った。

 

おやぶん「おぉ、大将。最後の種目に差し当たって、こいつらにビシッと一言。」

 

「ほえ?」

 

おやぶん「大将として何か言えっつってんだよ。早くしろ。」

 

「みんな頑張れーーー♪」

 

おやぶん「・・・アタマいてぇ。」

ワニッペ「ワニニ。(長生きするなぁ、リーダーさん・・・。)」

ゼル「ブイブイ。(・・・悪気はないんだ、大目にみよう、おやぶん。)」

 

「えへへ〜♪ワニッペもゼルも!みんな凄い頑張ってるね!」

 

アタシは無垢な表情を浮かべて笑う。

 

だけど、少しその表情を崩し、ジト目になって言い続けた。

 

「頑張ってるのになぁ〜、ふたりはイッシウケンメー走ってるのになぁ〜。」

 

アタシのジト目の視線の先には、おやぶんをとらえていた。

 

そのおやぶんはというと、すこ〜し冷汗をかいている。

 

アタシは間髪つかずに言った。

 

「・・・おやぶん。まだ本気だしてないよね?」

 

ワニッペ「ワニ!?」

ブイゼル「・・・!」

 

ワニッペとゼルが慌てておやぶんを振り返る。

ふたりは気付かなかったかもしれないけど、アタシには解る。長い付き合いだしね。

 

「おやぶんの悪い癖だよね〜。頑張ったフリして〜。」

 

私はジーーーッとおやぶんを据わった目で睨む。

 

おやぶん「・・・テメーなぁ、俺は既に現役じゃねーんだぞ。バカ言ってねぇで、定位置に戻れ!試合始まるぞ!」

 

「あ!ホントだ!よっしみんな!ユウショー目指して頑張ってねーーー♪」

 

 

アタシはおやぶん達から離れ、トレーナー指定の位置に戻っていった。

 

 

 

 

 

ワニッペ side

 

 

・・・あぁ〜、やっちゃった・・・。

 

 

「(ちょっと寝てたつもりが・・・起きたら二回戦が終わってた・・・。)」

 

 

目覚めた瞬間、早速おやぶんさんに『のしかかり』を、ゼルに『たたきつける』をお見舞いされた・・・。

 

 

あとで聞いた話だと、二回戦は僕が寝ている状況でも、ふたりで一位を勝ち取ったらしい・・・。

 

それを聞いて、少し寂しい思いもあったけど、改めてふたりを凄いなと認識した。

 

 

おやぶん「さて、400mリレーの先発だが・・・これはもうワニッペで決まりだな。」

 

「僕が・・・先発ですか?自信ないけど、頑張りまってえええええぇぇいやいやいやいやムリムリムリ!!?」

 

僕は必死に拒否合図を送る。

 

おやぶん「・・・二回戦寝てたヤツが何言ってやがるのかねぇ〜。」

 

「うっ・・・。」

 

ブイゼル「責任重大だな。寝ていた分、それ相応の力を見せてもらいたいものだ。」

 

・・・ゼルって、いつからこんなあくどい性格になったの?

 

ゼル「では、私は中継ぎを行こう。」

 

「いやだーーー!先発なんて無理ーーー!」

 

おやぶん「じゃあ俺はアンカーだな。」

 

「む、無視・・・?」

 

僕は、ガックリと肩を落とした。

 

 

 

あ、そういえば気になる事が・・・。

 

「あの〜、おやぶんさん?」

 

おやぶん「あ?」

 

「えっと〜〜、その・・・・、あ、いや、何でもないです!」

 

聞きづらい!

リーダーさんの言っていた、おやぶんさんが本気を出してないっていう事が気になったけど、めっちゃ聞きづらい!

 

おやぶん「・・・テメー、俺がまさか手ェ抜いてやしねぇか詮索してんのか?」

 

「いやいやいやいやそんなコトアリマセン!断じてなイデス!」

 

 

ゼル「(・・・相手の心が読めるんだろうか、おやぶんは・・・?)」

 

おやぶん「伊達に長生きしてねぇからなぁ。」

 

ゼル「・・・へ?」

 

 

ワニッペ side out

 

 

 

 

パーーパパパパーーー、パパパパーーー、パパパパーーーパーパーパーパーーー(♪)

 

 

実況『三回戦開幕のファンファーレが鳴り響きます。こちらはポケスロン会場。まもなく、各ポケモンの出走となります、400mリレー。ここでルールの説明を致します。通常のリレーと差ほど変わりはありません。走者が次の走者に引き継ぐバトンのような物は用意されていないので、走者が丁度トラックを一周(400m)走り切れば、次の走者がスタートします。ただし、フライングは即失格となりますので、注意が必要となります。』

 

 

第一走者

・スピアー

・バクーダ

・ワニノコ

・ブルー

 

ワニッペ「(めちゃ恐ろしぃぃいいい!)」

 

 

第二走者

・バタフリー

・マグカルゴ

・ブイゼル

・オオタチ

 

ブイゼル「・・・ふん。」

オオタチ「チッ・・・。」

 

 

第三走者

・ストライク

・コータス

・マリル

・ミルタンク

 

おやぶん「ふわぁ・・ねみー。」

 

ミルタンク「見てたわよさっきの試合、アンタ強いのね。」

 

おやぶん「あ?おー、ジムリーダーのポケモンか。」

 

ミルタンク「残念だけど、この勝負は勝たせて貰うわよ。」

 

おやぶん「たいした自信じゃねぇか。結構結構。」

 

ミルタンク「・・その見下した態度、気に食わないね。」

 

おやぶん「どうでもいいんだよ。俺は成り行きで参加したからよ、この年でムリがたたるぜ。」

 

ミルタンク「私はね、オオタチやブルーと違って甘くないわ。私は『一流』っていう看板背負ってるの。アンタみたいなどこの誰か知らない田舎のポケモンに、負けてたまるもんですか!」

 

おやぶん「(あいつらにも見習わせてやりてぇぜ、コイツの闘志をよ・・。)」

 

 

 

実況『そしてこの競技の特別ルール、『各ポケモンは一匹につき、一回のみ技の使用を許可する』が適応されます。もちろん相手を妨害、自分を強化等、用途は問いません。ただし、相手を瀕死に至らせるような技を使用した場合は、即失格となります。

 

それでは、400mリレー、開始です。

 

では、第一走者、用意!』

 

 

 

お、ワニッペが走るな。

 

俺達第二、第三走者はトラックの内側にて待機している。第一走者がスタートすれば、次の出走ポケモンはスタンバイするってわけだ。

 

 

 

実況『スタート!』

 

パンッ!

 

 

「「「ワァァァアアアーーー!!」」」

 

 

 

かわいた銃声につづき、耳が痛い程うるさい場内歓声が響き渡る

 

第一走者のスピアー、バクーダ、ブルー、ワニッペがトラックを疾走する。

 

 

 

 

実況『さぁ、スタートしました。おっとワニノコが大きく出遅れるました。400mリレー、次へバトンを繋げようと全ポケモン飛ばして行きます。おぉっとここで早くも技を使ってきましたバクーダ、『ニトロチャージ』!徐々にスピードを上げていくバクーダは、先頭スピアーから2m感覚をあけて中団独占します。』

 

 

 

俺はぐぐっと背伸びをし、欠伸をする。

 

「(ふわぁ・・・、なんか釈然としねぇなぁ。)」

 

 

 

かつては、ジョウト地方のチャンピオンだった自分が、今ではこんな地域の運動会みたいなまつりごとに参加している事に苦笑する。

 

「(・・・ヤキが回ったもんだな、俺も。)」

 

 

クドーが死に、マツリの世話を請け負い、もうじき4年が経とうとしている。

アイツも父親を超えようとがむしゃらに頑張っている。

 

 

目の前を見た。

 

懸命にゴールへと目指して走っているワニッペ。

それを応援するゼル。

 

今の若い世代の奴らの猪突猛進ぶりを見ていると、昔の俺とかぶって見えた。

 

 

 

「おお…、貴方は『水撃のマリル』では?」

 

 

あ?誰だ?

 

俺は声のした方向を見ると、そこには俺と同じくアンカーで走る、コータスがいた。

 

「どうも…、当時、私は貴方のファンでしてな。」

 

「お?ぉお。いやいや。その昔名で呼ばれるのは久しぶりだからよ。いやぁ、まさか未だにファンがいてくれるとちーっと小恥ずかしぜ。」

 

「やはり…。こうしてお話できて光栄です…。」

 

 

歳老いた感じで話す目の前のコータスは、昔を懐かしむように話す。

 

 

実況『先頭のスピアー、200mを通過しました。その後方からバクーダ、ピッタリと先頭に付いていきます。少し下がってブルー、ワニノコの順となっておりますが、ワニノコ、少し勢いが足りません。前半での試合の疲れが残っているのか。あっとここでブルーが技を使った!『こわいかお』です!暫定一位のマツリチームのワニノコの素早さを減らしました!ワニノコスピードが激減しました!』

 

 

 

俺はけたたましい実況や試合経過を気に留めず、コータスと談笑していた。

 

 

コータス「私も…、この年になると無理がたたるのか…、腰が痛くて。」

 

「ヘルニアか?だったらザロクの実が効くぜ?寝る前に飲んでみな?」

 

コータス「………こう、目の前で若い世代を見ていると…、若い頃に戻りたくなりますね…。」

 

「違ぇねぇ。触発されるっつーか、見てると若い頃の血が騒ぐっつーか。」

 

コータス「あなたは…、あのジョウト大会で一目置かれて以来、目覚ましい活躍をされていました。」

 

「今じゃあ、ガキ共の子守ときたもんだ。」

 

コータス「ほっほ…。」

 

 

当時、クドーとギルドを設立し、全国のあちこちから集まったギルドの同志を鍛え上げ、ポケモンレンジャーとの締結、海域や島の調査、災害派遣や救助活動、一時期は『ポケモン大使』とか呼ばれながら人間とポケモンとのコミュニケーションを取っていた事もあった。

 

実況『さぁ第一走者先頭、350mを通過しました。先頭スピアー、その後ろにバクーダとブルー。更に大きく離されてワニノコ。スピアー達がゴールに近づきます。そして第二走者がスタートしました!先頭にバタフリー!そしてマグカルゴとオオタチ!おっとマグカルゴの『ロックカット』です!自分の素早さを上げてきました!なんと!バタフリー『高速移動』!そしてオオタチも『高速移動』を展開します!3体同時にスピードアップ!優位を争います!』

 

 

「確かに若い頃は色々やった。んでもよ、未だに捨てきれねぇモンがあるんだ。」

 

コータス「…おそらく、…私もです。」

 

 

ミルタンク「ふん、競技中に年寄り同士で昔話?勝負舐めてんのかしら?」

 

「あん?」

 

鼻で笑うミルタンクを見据えた。

 

ミルタンク「ごらん?貴方のところのワニノコ、最下位よ?」

 

俺はすかさずトラックに目を向けた。

 

 

先頭集団から離れる事100m。

ワニッペは、未だにゴール出来ていない。

 

「(あいつ、様子がおかしいぞ!?)」

 

ワニッペは腕をを振り、ピッチを上げるも、いつものスピードが出せていない。

 

 

マツリ「ワニッペーーーーーー!あとちょっとーーーーーー!」

 

ゼル「ワニッペ!此処まで来い!急ぐんだ!」

 

 

実況『ブルーの『こわいかお』に当てられたワニノコは、未だにゴールに到達しません、あと50mと言った所か?それどころかスピードがたちまち落ちている様に思えます。……さて、先頭にはバタフリーとオオタチとマグカルゴが抜きつ抜かれつを繰り返しています、まもなく150mを通過します。』

 

 

ミルタンク「弱いくせに出てくるんじゃないわよ。いい笑い者ね、おたくのチーム?」

 

ミルタンクは鼻を鳴らしてその場を立ち去り、ウォーミングアップに入る。。

 

俺はミルタンクの言葉をシカトし、ゴール前へ駆け付け、ワニッペを見据えた。

 

残り50m。にも関わらずワニッペは辛苦の表情で、息をぜぇぜぇと切らしながら、ゴールをがむしゃらに走る。

 

…アイツは既に、目の焦点が合ってない程困憊していた。

 

 

 

次の瞬間、ワニッペは技を発動する。

 

 

ワニッペのアクアジェット!

 

バッシャャャアアアァァァーーー!!

 

 

実況『残り50mでワニノコがアクアジェットを使いました!しかし技に勢いがありません。水タイプ最速技も、疲労に大きく影響している模様です。』

 

 

「(あのバカ、あの状態で50mを突っ走る気か!?)」

 

ワニッペは加速、減速、そして加速と減速を繰り返し、ゴールまでの距離を縮めていく。

 

ゼル「ワニッペ!よせ!お前の身体がもたないぞ!」

 

 

ゼルが大声で呼び掛ける。ゼルはよく知ってるようだが、アクアジェットは一気に敵の間合いを詰めて攻撃する瞬発技。本来長い距離で使える技じゃねえ。今のワニッペの様に、残った体力もないのに50mをぶっ飛ばす事は無謀に等しい。

 

 

……だが、ワニッペは倒れる事なく前進する。

 

 

ワニッペ「……っは!!……ぅああ!!……っ!!」

 

 

奇声を発しながら、身体にムチを打ちながら、倒れずに、アクアジェットを続けていく。

 

 

 

……こんなに見てられねぇ程ひん曲がったアクアジェットは生まれて初めて見たぜ。……だけどよ、こんなに負けず嫌いで生き生きしたアクアジェットを見たのも初めてだった。

 

 

 

………そしてワニッペは、50mを切った。

 

 

実況『ワニノコようやくゴールイン。第二走者ブイゼルがスタートしました。3着から4着との間は100mと言った所でしょうか?これはもはや挽回はムリでしょう、歴然な差がついています。』

 

 

第二走者のゼルは、ワニッペの渾身の努力を無駄にするまいと真摯な表情で、グラウンドを駆けて行った。

 

 

 

 

俺は倒れ伏しているワニッペの元へ急いだ!

 

「おい!しっかりしろワニッペ!ったく、誰があんな距離からアクアジェット出せと……」

 

ワニッペ「はぁ!はあ!……ぅ、うああ!」

 

「(か、過呼吸か!?)おい!落ち着け!落ち着いて呼吸しろ!」

 

仰向けに倒れながら荒々しく呼吸を立てながら、吸い過ぎた酸素に苦しむように大声を出すワニッペ。

 

 

過呼吸は、激しい運動の最中に、精神的に追い込まれる事で発症すると言われている。おそらく、ワニッペの性格だ。結果をださなくてはと責任を感じすぎたのだろう。

 

「おい救護係!タラタラすんな早く来い!」

 

俺は近くへトテトテと駆けてくる救護係のラッキーを呼びつける。

 

 

再びワニッペの様子を見た。

 

 

………………?…

 

 

「………ワニッペ、お前泣いてんのか?」

 

 

 

つらそうに息をしながら苦しむワニッペの表情は、ワニ特有の無感情な顔立ちからわかりづらい。

 

……だが、ワニッペは泣いていた。

 

 

ワニッペ「ぁうう……くそ!…くそぉ!」

 

 

 

俺はワニッペを見て、若かった頃の自分を少し思い出した……。

 

 

 

「…ワニッペ、悔しいのか?」

 

ワニッペ「…お、おやぶんさん……す、すいません…。」

 

「気に病むこたぁねぇ、しっかり走ってたじゃねぇか?」

 

ワニッペ「……でも、全力で走っ…たのに、一生懸命走ったのに……途中から、全然走れなくて……足を引っ張って、すいません……!」

 

「…………疲れてんだから休め休め。」

 

泣きながら謝るワニッペの背中をなでて、ラッキーに措置を任せる。

 

 

 

 

実況『さぁ!第二走者の先頭が帰ってきました、オオタチ、バタフリー、そして少し遅れてマグカルゴ、更に100m後退してブイゼルが後を追います。』

 

 

ミルタンクが飄々と交代地点へと向かいながら、俺に話し掛ける。

 

ミルタンク「あんたのトコのチームが49ポイント。ウチのチームが43ポイント。このレースで私が優勝して40ポイントを獲得する。……勝負ありね♪」

 

 

ミルタンクはオオタチと交代した。

 

 

ミルタンクの転がる!!

 

 

ドドドドドドドォォォォオオオオ!!!

 

 

実況『さあ先頭アカネ選手のアンカー、ミルタンクが出走しました!そして繰り出した技は『ころがる』です!その巨体をタイヤに擬態させるようにグラウンドを滑走!!速い!恐ろしく速いミルタンク!優勝候補の勝利確定なるか!?』

 

 

アカネ「(『ころがる』は後半につれて威力スピード倍増すんねん。もう誰にも止められん。勝負もろたで!)」

 

マツリ「ゼーールーーーーーー!!!」

 

 

 

 

続いて虫チームのアンカー、ストライクが出走し、その場に残ったのは、俺とコータスだけだった…。

 

 

コータス「そろそろ…ですな。」

 

「……なぁ。」

 

コータス「はい…?」

 

「……さっき、心残りがあるって話したよなぁ。……あんたの心残りってのは何だ?」

 

間もなくコータスの中継ぎ、マグカルゴが帰ってくる。そんな引き際に俺は確認してみた。

 

コータス「……果たして、このまま年老い、死んでいいものか。それだけです。」

 

「死が怖いのか?」

 

コータス「……死は怖くはありません。……1番怖いのは……この先10年、或いは100年経ち、自分が忘れ去られる事が怖いのです。」

 

 

 

……同じだった。

 

 

 

俺はトラックの第三コーナーを黙視した。

 

ゼルが走っている。ひたむきに、全力で、俺に襷を渡そうと必死な面持ちで駆けている。

 

 

「……だがよ、コータス。年寄りがいまさらジタバタしても、それはただの自己満足だ。」

 

コータス「……あなたの……心残りは?」

 

「ねえ。」

 

 

 

俺は言い切った。

 

 

 

「心は…若い奴らに残していく!」

 

 

 

 

やがてコータスがスタートした。

 

 

 

実況『先頭ミルタンクが150mを切ると同時にトウドウ選手のアンカー、コータスがスタートしました!不動の1位を守るミルタンクの遥か後方のストライクを追いかけるコータス!2位と3位の争いが注目されます。……さていまだ4位のマツリ選手。ポイント累計で勝ってはいますが、この試合でアカネ選手に負けた地点で、マツリ選手とアカネ選手の優劣が入れ替わってしまいます。第二走者ブイゼルが、スタート地点へ急ぎます。』

 

 

ゼル「はっ!はっ!はぁ!……はぁぁああ!!」

 

 

ゼルのアクアジェット!!

 

バッシャャャアアアァァァーーーーーー!!

 

 

 

実況『なんと残り50mでブイゼルアクアジェットを発動です。ワニノコと同様、同じ距離で同じタイミングで同じ技で、ゴールをする模様です。なかなか面白いデモンストレーションですね。』

 

 

 

 

 

俺はもう…年をとった。

 

夢へと突っ走る時間は終わり、やがては消えゆく運命だろう。

 

 

だが。

 

クドーが残した、マツリという宝がいる。

 

かつて俺の同期だったポケモン達の、ワニッペ、ゼルという後輩がいる。

 

時代は、こいつらが引き継いでくれる。

 

俺達が生きた時代を、こいつらが受け継ぎ、新しい時代をつくる。

 

 

 

俺の生きた証を………。

 

俺の生き様を……。

 

この場にいる奴ら全員に………!

 

 

 

 

 

おやぶん side out

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼル「はああああーーーーーー!!」

 

ゼルがゴールした。

 

実況『見せてくれましたブイゼルの50mアクアジェット。そして倒れ込むブイゼルと代わり、最後のアンカー、マリルがしゅっそ……? おっとどうした事でしょう?マリルがスタートしません。スタート地点にて立ち尽くしたまま。勝負を投げたのでしょうか?』

 

「おい!走れーーー!」

「デフネズミ!ふざけんな!」

「しょんべん漏らしたかぁ!?」

「ぶーーーーーーー!!」

 

ポケスロン会場の競技場から、罵詈雑言を浴びるマリルは、自前の大きな尻尾を揺らしながら、スタート地点で立ち呆けている。

 

タクヤ「なんだぁ?」

 

トウドウ「降参か?あの子?」

 

アカネ「……ま、どっちにしろウチの勝ちや。」

 

 

 

マツリ「(…………おやぶん……ひょっとして……。)」

 

 

 

ゼル「はぁ!はぁ!……お、おやぶん!?い、一体!?」

 

 

本来なら出走権はアンカーに移り、既に走っていなくてはならない状況の中、ゼル達の主将はスタートする処か、微動だにしていない。

 

おやぶんの丸い後ろ姿から伸びたギザギサ尻尾がゆらりゆらりと振れ、その先の水球が不規則に動いている。

 

ゼル「…お…おやぶん!何をしている!」

 

おやぶん「ゼル、ワニッペ、マツリ。」

 

ゼル「……は?」

 

おやぶん「見とけよ。」

 

 

 

 

 

マツリ「(おやぶん……本気だ……!!あの尻尾の揺れ方!おやぶんが本気を出すときだ!)」

 

 

 

 

 

おやぶんのアクアジェット!!!!

 

 

刹那!

 

 

……ッ!!

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォ!!!!!!!

 

 

「「「「「「!!!!?」」」」」」

 

 

 

 

 

爆発音。爆風。

 

不気味なほど立ち込める霧。

 

そして、スタート地点には、おおきな水溜まりが残る。

 

そして、会場に居た人達が、アレを確認した時は既に。

 

 

 

………ストライクを抜いていた。

 

 

 

ズバババババババババババババババババババババ!!!!!

 

 

マツリ「おーやぶーーーーーーーーーんっっ!!!行っけぇええーーーーーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

タクヤ side

 

………へ!!?

 

……………ナニアレ!?ナニコレ!?

 

か、カメラどこだっけ!? っていうかなんであのマリルあんなに速いの!!?

 

 

 

トウドウ side

 

………いかん。

 

とうとう幻想が見えはじめた。

 

帰ったら精神安定剤飲んで寝よう。

 

 

 

ワニッペ side

 

ええええええええええええええええええええええええええええ!!!!?

 

 

 

ゼル side

 

………ホントに、何者なんだおやぶんは。

 

「見とけよ。」と声をかけられたと思えば、急に水を被せられ、濡れた顔を拭った時には既に、そこにはおやぶんはいなかった。

 

目の前の直線コースにも、コーナーにもいない。

 

まさかと思いながら、トラックの向かいを確認すると……。

 

そう、まるで魚雷。

 

先頭のミルタンクを追尾ように、激しい魚雷が凄まじい速さで、轟音を上げながら、グラウンドを削りながら突き進む。

 

こんなアクアジェットは、初めて見た。

 

そして、私はとんでもないトレーナーと出会ったのではないのかと、改めて身震いした。

 

 

 

 

ズバババババババババババババババババババババ!!!!

 

 

 

 

実況『………あ、あまりの衝撃に絶句してしまいました……。マツリ選手のアンカー、マリルがスタート直後に技を発動。あれは……アクアジェット……ですよね?数秒前までは3位と差が100m以上ありました。……現在、2位を奪取し、先頭のミルタンクに迫りつつあります………って!おかしいだろ!あのマリル!なんだあのポケモン!?データないのかデータ!?』

 

 

 

 

アカネ side

 

…………聞いてへんで。

 

聞いてへんでウチ!?なんやねんあのマリル!? あれ卑怯やろ!?

 

さっきまでビリやったやん! おかしいやろが!?

 

ウチはミルタンクとマリルを交互に見定める。

 

「(ゴールまで残り150m!あのマリルがいくら速かろうと、まだミルタンクはベストスピードと違う!なんとしても逃げ切りぃ!!)」

 

 

 

 

「「「ワァァァアアアアアアーーー!!!!」」」

 

 

実況『場内割れんばかりの大歓声です!!たったいま入りました資料によりますと、マツリ選手のマリル、かつて15年前のジョウトリーグにて優勝した元チャンピオン、『クドー』の主力!!そしてあの伝説のギルド『トップシー』の創設者のひとり!なんと今回出場しているマツリ選手は、クドーのひとり娘との事です!!父親の血はしっかりと子へ伝わり、今再び、伝説が再稼動しようとしています!!!』

 

 

 

 

ミルタンク side

 

 

 

……な、なに、この異様な空気は?

 

 

何故200m切った途端、大歓声が聞こえるの?

 

後ろのストライク? もうひとつ後ろのコータス? それとも………。

 

 

私は、後ろを振り向きたい衝動に刈られるも、我慢して走りに集中する!

 

 

「(嫌な予感がする!……でもね、振り切ってやるわ!私のこの滑走に勝てるポケモンなんて、この世にいないのよ!)」

 

 

ころがる最大出力!!

 

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!

 

 

 

実況『さあ最終コーナー曲がったところでミルタンク『ころがる』最終段階に移行しました!凄まじい速さで2位以下を引き離します!しかしそうは問屋が卸さない!後方から猛烈な勢いで駆けてくるアクアジェットの青い影!『水撃のマリル』!残り50m!デッドヒートです!ミルタンク逃げ切るか!マリル追いつくか!ミルタンクかマリルか!マリルかミルタンクか!ジムリーダーかチャンピオンの子か!』

 

 

 

 

勝利の白線が見えた!! 私を邪魔する奴は誰もいない!!

 

 

「貰った!!」

 

 

私はゴールをした!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………そこから先は、覚えていない。

 

 

ミルタンク side out

 

 

 

 

 

 

おやぶん side

 

 

 

実況『ゴーーーーーーール!!!

 

ミルタンクとマリルが一斉にゴールしましたが………これは……衝突でしょうか?アクシデントが発生しました!ゴール直前にマリルがミルタンクを追い抜いた様に見えましたが、運悪く互いに接触!判定までいましばらくお待ちください!』

 

 

 

「………っかぁぁあああ!!惜しかったぁぁ!!……あと1コンマ時間がありゃぁなぁ……!」

 

 

俺は腕や肩、足首を回して、倒れ伏しているミルタンクの元へと向かう。

 

ミルタンクは、ゴールの白線を踏み越え、身体を地面に埋めて気絶していた。

 

 

「思いっきりぶつけちまったぁ……、大人気ない事して悪かったなぁ。……おい!ラッキー!こっちだこっち!」

 

倒れて動けないミルタンクを搬送するよう、近くの救護係に声をかけた。

 

 

 

実況『判定の結果が出ました!発表します!ポケスロン大会スピード種目!第三回戦400mリレーを勝ち取ったのは、アカネ選手のミルタンク!よって優勝は、優勝候補のアカネ選手となりましたーーー!!』

 

 

アカネ「あ、あ、あっぶなぁ〜〜。」

 

マツリ「うわぁぁ〜〜!惜しかったのに〜〜!」

 

 

 

その後。

 

見事パワー、スピード、テクニック、ジャンプ、バランス競技を制したアカネは、ポケスロンオールスターの出場権を会得した。

 

閉会式を終えた直後、俺やマツリはマスコミに追い回される羽目になった。

 

未だにクドーの名前が廃れてない事に少し誇りに思うが、試合後なんだから空気読んでくれ、と心の中で叫んだ。

 

なんとかマスコミを撒いた俺達は、コガネシティのポケモンセンターへたどり着いた。

 

ワニッペもゼルも疲れただろうよ。俺はこいつらを労いながら、受付にボールが渡されるのを見届ける。

 

 

 

マツリ side

 

 

「お疲れ様ーーー!!」

「おーう。」

 

 

アタシはおやぶんとカンパイした!

 

アタシはオレンジュース!おやぶんはナナの実のジュースで!

 

ポケモンセンターの宿舎の部屋のテーブルには、ポテチやチョコ、おせんべやメロンパンが散らかっていた。

 

 

「ワニッペとゼルも連れてこよーか?」

 

「疲れてんだから、休ませてやれ。」

 

 

おやぶんは自分の身体の節々を揉みながら、メロンパンをかじっている。

 

 

「みんな頑張ってたもんねー♪アタシも出たかったなー♪」

 

「………それはさておき、約束は約束だ。優勝出来なかったから、予定通り10人抜き出来るまでジム戦禁止だからな。」

 

「うーーい。……んでさぁ、おやぶん。今日最後に走ったのって、全力?」

 

「……全力出してたら今頃全身筋肉痛で動けてねぇ。」

 

 

……結局おやぶんは、実力のろく割しか出していなかったみたい。

 

 

「……ジーーーーッ。」

 

「んだよ。」

 

「………わざと負けたの?」

 

「……………あのなぁ、何度も言うがこれはお前自身の旅だ。俺はあんまり関与はしねぇ。ここで俺だけ勝って、ワニッペやゼルの為になるわけねーだろ?」

 

「………おなじ仲間なんだよ?」

 

「仲間と言える程の実力を示せ。実力を。」

 

 

 

ジリリリリ。

 

んにゃ?部屋の電話が鳴ってる?

 

アタシは受話器を取って耳に当てた。

 

 

「もしもしー?」

 

『あ、マツリさんでしょうか?こちらフロントですけれども、あのー、緊急という事で、お話されたい方がいらっしゃっていますので……。』

 

「おはなしー?」

 

『ええ、今からそちらの方と代わります。…………聞こえるか?ウチやウチ、アカネや。今日はお疲れやで〜。悪いな疲れとる中こんな遅ぅに。………マツリ?……聞こえとる?………もしもーし!………なんや、通じてへん 「アカネちーーーん!!」

 

「どわぁ!?フ、フロントにやって来たーーー!?」

 

「えへへ〜♪来ちった♪」

 

「お…おぉ、呼び出して悪いなぁ。」

 

 

 

 

 

「アカネちん、今日はおめでと〜♪ハイこれあげる〜♪」

 

アタシは部屋から持ってきたお菓子をアカネちんに差し出した。

 

「おぉ、ありがとぉ!『胡麻煎餅』や!帰ってジムの子とお茶すすって…って渋すぎやろがぁ!」

 

「おぉ!ボケツッコミ!」

 

「それを言うならノリツッコミやろが!」

 

「えへへぇ〜♪」

 

「褒めてへん!」

 

「はうっ!?」

 

「さって、冗談は置いといて、話入るけどな…。」

 

真剣な顔でアタシを見つめるアカネちん。なんだろ〜♪

 

「明日、ジム開けるさかい、ジム戦せぇへん?」

 

「へ?明日?アカネちんと?」

 

「せや、マツリもウチとバトルしたい言うとったし、ウチも明日だと都合つくし、利害一致やろ?」

 

「うーーーーーーーーーん。」

 

アタシは眉にしわを寄せて、腕を組んで考えた。

 

おやぶんが何て言うかな〜。

 

アタシはアカネちんとバトルしたいけど、まだトレーナーと10連勝してないし〜、むぅ〜〜〜。

 

「なんや、マツリの事やから、返事ひとつでオッケーくれる思ってんけど。」

 

「明日じゃなきゃ、ダメなの〜?」

 

「……ウチのミルタンクが熱り立ってんねん。今日の試合、一応は勝てたけどウチもあの子も納得はしてへん。一度バトルでマツリと勝負してシロクロはっきりしときたいのが本音や。

 

……明日を逃せば、色々予定が詰まっててなぁ。どやろか?」

 

 

明日だめだったら、忙しくてバトルできないんだーーー?

 

 

「んーーー、おやぶんに聞いてみ 「ダメだ。」

 

あ、おやぶんがやってきた。

ちょっとしかめながら、アカネちんとアタシに近づいてきた。

 

「こいつにジム戦は時期尚早だ。…マツリ、てめぇは課題を終わらせない限り、ジム戦は許可しねぇ。」

 

「んー。えへへ♪ゴメンねアカネちん♪」

 

あーあ、はやくジム戦したいのにー。

 

「課題って何なん?」

 

アカネちんが聞いてきた。

 

「んーとね。『トレーナーと10連勝!水技だけで倒す!』って課題なんだけどねー、かれこれ2週間ずっとやってるけど、なかなかクリアできなくってさぁ〜♪」

 

アタシは頭をかきながら笑みをこぼす。

 

「そっかぁ、……あかんなぁ、明日やれへんのやったら、3ヶ月後になってまうで、ウチ出張あんねん。」

 

「えええ3ヶ月も!?」

 

 

 

「…………明日以外はどうしてもダメか?」

 

あれ?おやぶんが珍しく考え込んでる?

 

「せやなぁ。明日も予定削ってジム開けよう思ってんねや。」

 

「……………………よし、マツリ!」

 

「ほぇ?」

 

「やれ、明日ジム戦。」

 

「へ?いいの!?」

 

「その代わりジム戦終わったら課題に取り掛かれよ?」

 

「やったぁぁぁあああ!おやぶん大好きーーー!」

 

「痛痛でででで!!馬鹿野郎!筋肉痛なのに抱き着く奴があるか!!」

 

「えへへ 「黙れ。」 「はうっ!?」

 

「(なんか、見てておもろいなぁ。さっきの試合の走りの時とは思えへんわ……。)」

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

晴天霹靂の午前。

 

コガネシティ コガネジム前。

 

試合の準備を整え、ジム戦にチョーセンする!

 

「マツリ。戦う時のルールを言ってみろ。」

 

「はーい!水技以外を使わないでーす!」

 

「よし、行け。」

 

「おじゃましまーーーーす!!」

 

アタシはジムの門を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 




ラスト競技は原作の『障害物レース』と少し異なり、400mリレー方式にしてみました。
おやぶん最強説の一端を垣間見えるシーンをお届けしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。