ポケットモンスター金銀クリスタル 【水縛りの冒険】/ポケモン 作:美容室
マツリ side
コガネジムの門のドアを開けて中に入ると、そこは色鮮やかなアトリエみたいな内装になっていた。
「ほぇーー?」
真正面にはカベ。
左側には通路、右側には階段。
まるで迷路みたいだねー♪
「アカネちーーん!こんにちはーーー!」
アカネちんを大きな声で呼んでみたけど、反応がなかった。いないのかなぁ〜?
「誰かいますか〜〜!?」
アタシは左側の通路を進みながら、留守なのかな?無人のジムの中を歩き回る。カラフルで明るいピンクや赤や紫の床やカベが、まるでブロックのように、迷路をかたどっているみたいだね♪
しばらく進むと、また分かれ道が。
正面には上り階段。
左側には通路、右側にはトンネル。
「ん〜。どっちがいいかな〜。」
アタシは悩んでは進み、分岐点があればまた悩みながら、ジムを巡回して歩きつづける…。
アカネ side
「アカネさん!チャレンジャー入りましたよー!」
「よっしゃ、みんな配置についてや。」
さって、今日一番の仕事やで。
ウチはジムの中央フロアにて待機し、ジムトレーナーの子らを所定の位置に配置させる。ウチのジムは、最初の人なら誰しも目を回すような大迷路になってんねん。チャレンジャーがここに到達するまで、待ち受けるジムトレーナーや道を阻む壁にイライラしながら進む道理っちゅう訳や。
今日はマツリが挑戦者として挑む日。
昨日のポケスロンでは一泡吹かされてもうた。結果では優勝は出来たものの、内容では負けとる部分が多々ある。昨日からウチのミルタンクが一睡も寝ずにいきり立っとんのはそのせいや。
楽しみやで、マツリ。あんたの負けて悔しがる顔見るのが。
ウチは時計をみた。
「(…せやな…だいだいここに到達するまで20分ってとこか?)」
ウチはウォーミングアップを開始し 「アカネちーーーーーん!!!やっほーーーーーー!!」
………………。
あの子がジムに入ったと聞いて1分弱。
朝から元気な笑顔を振りまいてやってきたマツリは、迷路のブロックづたいから顔を出して、こっちに手をブンブン振っていた。
ウチは、ひきつりながら笑顔で手を振り返す。
マツリは高さ2m以上あるブロックをよじ登り、ウチの居るフロアに飛び降りる。
そしてウチの元へ走ってきて、こう言った。
「えへへ〜♪来ちゃった♪」
「……ウチも、ジムの仕事始めて3年になるけど、入口から壁よじ登りながらやってくる人は初めてや………。」
「へぇへへ〜〜、アタシ方向音痴だからさぁ、高い所から見下ろせば解るかなって思って壁登ったら、アカネちんがここに居たから、来ちゃった♪」
「………次から鉄条網つけるわ。」
「てつじょーもー?」
「ま、そんな事さておき!ここまでよう来たな!ウチがコガネジムリーダーのアカネ!ノーマルタイプの使い手やで!」
「知ってるよ?」
「…あ、煽り文句やから言わせとけ!」
目の前でのほほんとした雰囲気を醸し出す少女は、マイペースに腕を交差しながらストレッチしとる。
この子は水しか使わへん。
せやけど……、今目の前にいるのが、元チャンピオンの娘やと聞いとる。
「いっとくけどウチ、めっちゃ強いで?」
ウチはポッケからボールを取り出し、構えた。
「勝負や!」
「よーーーーし!負けないよ〜〜〜!」
アカネ side out
マツリ side
ジムリーダーのアカネが勝負を仕掛けてきた!
アカネはピッピを繰り出した!
アタシはボールを取り出し、高らかに前方のフィールドに投げる!
「ゼル!いっくよーーー!」
アタシはゼルを繰り出した!
ゼルとピッピが、互いに静かに対峙する。
「使用ポケモンは2体!交換は自由、道具厳禁やけど持たせるのはオッケー。互いに瀕死になるまでやる。それでええな!?」
アカネちんがアタシに確認をとり、そのルールにアタシは大きく頷いた。
ポンッ!!
ほえ? アタシのポケットからボールが開き、中からおやぶんが出て来た?
「おぉ、始まったか?」
外に出てきたおやぶんは、バトルフィールドの端に座って、観戦し始めた。
「マツリ。今日勿論、そのマリル使うんやろ?」
アカネちんが言った。
「んーん。今日はゼルとワニッペで勝負だよ〜〜。」
アタシはそう言い返す。おやぶんはバトルに参加しない約束だからね〜♪ んでも、こうして応援やアドバイスはしてくれるんだよ〜♪
ポンッ!!
「ミルーーー!!?」
あ!ミルタンクだ!
あれれ?なんか怒ってない?
アカネちんのポッケのボールから、ひとりでに飛びだしてきたミルタンクは、顔を真っ赤にして唸り声を上げている。
「ミルミル!!ミルミルミル!!?」
ミルタンクがおやぶんにズイズイ近づいて、何か叫んでる?
「ほぇ?おーやぶーん!ミルタンクなんて?」
「…………わるいが、俺はバトルには参加しねぇ。そのリベンジ精神は認めるが、俺の相手じゃねぇな。」
「ミル………!!」
「ミルタンク!こっち戻りぃ!」
「一言忠告しといてやる。」
「…ミル?」
「……あいつらを見くびらねぇ方がいいぜ?……もし、あいつら2匹を倒せたら、俺が相手してやる。」
「…………………。」
おやぶんはそれっきり、ゼルの試合を傍観しようと口を閉ざして動かなくなる。
ミルタンクは、鼻を鳴らしてアカネちんの所へ帰っていった。
「ごめんなぁ、昨日からずっとこの調子やねん、ミルタンク。」
アタシはミルタンクを見た。
昨日のポケスロンでも凄いスピードとパワーを見せてたけど、改めて目の前で確認してみると、すごく圧倒される。
すごく強そう。
「(でも、コッチもいっっっっぱい特訓したんだから!)」
使える技
ワニッペ(水鉄砲、アクアジェット)
ゼル(水鉄砲、アクアジェット、うずしお、みずあそび、バブル光線)
ワニッペは技の数が少ないけど、パワーや体力がある! ゼルはたくさんの技を使え熟せて、スピードを生かして攻撃できる!だから最初はゼルで勝負を挑む!
アカネちんとのバトルが始まった!
「ピッピ!ずつきや!」
「ゼル!バブル光線!」
ゼルのバブル光線!
ピッピの体力が一気に下がる!ピッピの素早さが下がった!
ピッピのずつき!
ドゴッ!
「……ッ!……ブイ!」
ゼルはピッピの頭突きをものともしなかった!
「(……!……予想以上に硬い!このブイゼル、よぅ育っとるわ。)」
「どんどん行くよーーー!」
「……ならこれはどうや!ピッピ!歌うんや!」
「ゼル!うずしおーーー!」
ゼルのうずしお!
ザザザザザァァァァ………!
ピッピは大きな渦に巻き込まれた!
ゼルが放水した大量の水が、ピッピを飲み込み、小さなダメージを与えていく。
ピッピの歌う!
〜〜♪〜〜♪〜♪〜〜〜♪
「……!……ブ、イ………!」
ゼルの動きが止まった!まぶたをゴシゴシしながら、必死に眠いのを我慢している!
「ゼルーーー!寝ちゃダメーーー!」
アタシは大きな声で起こそうとしたけど……。
コテン。
「zZZ……。」
あぁーーー、寝ちゃったーーー!
「うちのピッピの歌声は心地ええやろ?ピッピ!ふるいたてる!」
ピッピのふるいたてる!
ピッピは攻撃と特攻を上げていく!
「ゼーーールーーー!!起きろーーー!!」
寝息を立てて、ぴくりともゼルは動かない。
……むぅ、全然起きない。
アタシは相手のピッピを見てみる。……あれ?
「(え!?うずしおのダメージが効いてない!?)」
うずしおは、持続攻撃として少しずつ相手にダメージを与えていく技。なのにアカネちんのピッピはケロリとしていた。
「ふっふ、どないした?驚いた顔して?」
アカネちんが意地悪そうに言ってきた。
「特性、【マジックガード】っちゅーねん。直接攻撃以外のダメージは一切効かへん。ひとつ勉強なったなぁ?」
「まじっくがーど?」
「せや、折角やからオモロイの見したるわ。」
アカネちんがそう言った直後の出来事だった。
ピッピは毒を浴びた!
「ほぇ?なんで?」
ピッピはいつのまにか、身体を毒に侵されている。………でも、なんか変?………毒じょうたいなのに、元気そうだった。
「ピッピに『毒々珠』を持たせてん。自分を『毒』状態にする危険な道具やけど、【マジックガード】を持つピッピにとったら、免疫みたいなもんやで。」
えっと、じゃああのピッピは毒だけど、体力は減らないんだーーー?
「……ブ、ブイブイ!!」
ゼルが目を覚ました!
「あ!ゼルが起きたーーー!」
「ブイゼルが起きるよう、敢えて長々説明したんや……さぁ、見せたいのはこっからやで!」
アカネちんがニヤニヤと不敵な笑みを浮かべた。
「ゼル!バブル光線!」
「からげんきや!」
ゼルのバブル光線!
ズバババババババ……!
ゼルの放つ無数の泡がピッピに襲い掛かり、直撃する! ……まだピッピは倒れていない。
ピッピのからげんき!
「ピィィィイイイ!!」
ピッピが唸り声を上げ、ゼルに突撃する!
ドゴォォオオオオ!!!!
「ブイーーーーーー!?」
うわあ!?
ゼルは相手の繰り出した技に耐え切れず、衝撃で吹き飛ばされた!?
「ゼルーーー!大丈夫ーーー!?」
「………ゥ、……ッ、ブィ!」
辛うじてゼルは立ち上がれたけど、足がおぼついていない……!限界が近い……!
「今の技を耐えるんかぁ。なかなかやるやないか。」
からげんきって、どんな技だったっけー……? たしか、ピンチの時に威力が強くなるっておやぶん言ってたような……?
※【からげんき(威力70)は、状態異常時に発動する事で威力が2倍になる技です。今回ピッピは『ふるいたてる』で攻撃力も上げています。】
「次で決めたる!」
「むぅ……!(よっし!負けないよ!)ゼルーーー!おもいっきしバブルこうせーーーん!!」
ゼルのバブル光線!!
ゼルは余力を残すことなく、全開の一撃を咥内に溜め込み、ピッピに解き放った!
ズバババババババァァァァ!!
散弾のような水泡がピッピに直撃する!
ピッピはまだ立っていた!
「ピッピ!雷パンチや!」
「ほぇ!?か、かみなり…!?」
ピッピの雷パンチ!
バチバチバチ……!!
ヒュッ………
ドゴォォオオオオ!!!
「ブイーーーーーー!!?」
効果は抜群だ!!
ゼルは倒れた。
「どや、おどろいたか?」
アカネちんとピッピが勝ち誇りに満ちた顔で言ってきた。
アタシは倒れたゼルを心配そうに見つめる。
そして、チラッとおやぶんの方へと、おそるおそる振り向く。
ジム戦の日の早朝
アカネちんに挑戦する日、日が昇る前にアタシとワニッペとゼルとおやぶんは、コガネシティの南のどうろで、ジム戦開始ギリギリまでトックンしていた。
「おやぶん。」
「あん?」
「ホントにいいの?課題終わってないのに?」
「………マツリ。俺の出した課題『トレーナー10連勝』に、なんの意味があると思う。」
「へ?う〜〜〜〜〜ん……。体力をつけるため?」
「それなら走ったり泳いだりすりゃいいだろ。」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜ん……。実践力を身につけるため?」
「ならポケモンセンターで回復しながら交流バトルとかでもすりゃいいだろ。」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん……。」
「あのなぁ、この課題で一番大事なのは、てめぇの『研究力』だ。」
「けんきゅー?」
「お前がこの街に着いて課題を始めてから、既に半月が経った。毎日北の道路で、ほとんどおなじメンツのトレーナーに相手して貰って、水技のみで回復無しで10連勝目標にバトルして、結果何連勝だ?」
「最大7連勝だね♪あの時は惜しかったなぁーーー♪」
「惜しかったなぁーーー♪じゃねぇんだよ馬鹿。いいか?水タイプばっかで毎日毎日挑んでたら、対策とられちまうだろうが?」
「うん、この辺のトレーナーさん、次の日にはみんな草ポケモン手に入れてたからねぇ〜♪」
「そしてその日負けたお前はまず何をした?」
「トックンした。」
「ワニッペ達の話じゃねぇ。お前自身は何してた?」
「えっと……いっぱい調べたよ。ナゾノクサとかヒマナッツとかフシギダネとか。どうやったら勝てるか、ずっと調べて考えた。」
「……ポケモンバトルはなぁ、相性で決まると考える人間もいる。確かにワニッペやゼルのような水タイプが、電気や草相手に立ち往生できるわけでもねぇ。
だがよ、お前らトレーナーは違うだろ?
てめぇら人間には、考える力がある。例え相性が悪くとも、勝たせてやる義務がある。現にてめぇの親父はそれでジョウト1になってんだぜ。」
「うん。………ねぇ?」
「あん?」
「アカネちんに勝てると思う?」
「………俺の推測が正しけりゃ、現地点のワニッペとゼルのレベルで、10連勝できる確率は………ほぼ100%だ。」
「ええ!?そうなの!?」
「だが、その100%をてめぇがダメにしてるんだぜ?」
「そう……なのかな……。」
「そうだよ。」
「………。」
「……………勝てるかどうかじゃねぇよ。勝て。……その為に今まで準備してきたんだろうが。」
「………えへへ♪そだね♪」
おやぶんは真剣な眼差しで、倒れたゼルをじっと見つめている。そして………、
ニッと、アタシに向かって口端を綻ばせていた。
それを見たアタシは安心し、つられてニッと笑いながら、バトルに集中する。
「ゼル!アクアジェットーーー!」
「ブイ!!」
ゼルは咄嗟に起き上がり、身体を水流で纏いはじめた!
「なんやて!!?」
「ピィ!?」
ゼルのアクアジェット!!
バッシャァァァアアアア!!!
ピッピは倒れた!
「やったぁああーーーーーー!!」
「ブイ!!」
ゼルと勝利のハイターーーッチ!!
「ちょ!ちょっと待たんかい!?なんやねん今の!?雷パンチ喰ろうてなんでそんなにピンピンしてんねん!」
アカネちんが驚いきながら言った。
「えへへ〜♪秘密〜〜♪」
「ブイ!」
アタシとゼルは、これぞと言わんばかりにイヤラシイ顔でニヤニヤする。
えっへへへへ〜〜〜♪
今朝早起きして『ソクノの実』を採ってきてよかった〜〜〜♪
※ソクノの実は、持たせると受けた電気技を弱める効果があります。
「………ブ、ブイ……。」
「あ!大丈夫?ゼル?」
ゼルがフラフラしながら立ち眩む。
「(……全く効かなかった訳やなさそうやな。……ウチはきちんと調整した。ブイゼルが雷パンチで瀕死する様に。……さては、ソクノの実やなぁ?)」
アカネちんがボールを構えた!
「出てきぃ!ミルタンク!」
アカネちんはミルタンクを繰り出した!
「ンモォオオオ!!!」
うわぁ!たてものの中がピリピリした!
「本番は……こっからやで!」
アカネちんが言い放った。
「よーし!ゼル!頑張ろーね!」
「ブイ!」
「ミルタンク!転がるや!」
「ゼル!バブル光線ーーー!」
「バカ!!」
え?
ミルタンクの転がる!
ドゴォォオオオオ!!
「ブ………ブイ……。」
ブイゼルは倒れた。
は、早かった……。
おやぶんが突然怒鳴り、何かと思った瞬間、相手のミルタンクがゼルに間を空けず素早い動きで攻撃し、ゼルはとうとう動けなくなる。
「(マツリの馬鹿、ミルタンクの素早さを調べてねぇのかよ。いくらゼルが速かろうが、ミルタンクの素早さはそこらのポケモンより郡を抜く。ゼルでアクアジェットを撃ってワニッペに繋げるのが定石だろうが……。)」
「ええで!ミルタンク!」
アタシはゼルをボールに戻した。
「ゼル、お疲れ様〜。」
そして、アタシはあの子のボールを手にとる。
アタシはグッとボールを握り、宙に放り投げた!
「ワニッペ!いっくよーーー!」
アタシはワニッペを繰り出した!
「ワニワニーーーーーー!」
ワニッペは、目の前のミルタンクに対して、少しビクビクと怯えながらも、唸り声を上げている。
「一気に決めたる!いてもうたれぇミルタンク!」
ミルタンクの転がる!!
ドゴォォオオオオ!!
「ワニャ…!!」
ワニッペがミルタンクの転がるをまともに受けた!
「おっ返しだ〜〜!ワニッペ!水鉄砲!」
ワニッペの水鉄砲!
バッシャアアアァァァン!!
ミルタンクに小さなダメージ。
「焼石に水とはまさしくこの事やな。ミルタンク!もういっぺんや!」
「ワニッペ!水鉄砲ーーー!」
ワニッペの水技はこれしかないけど、この『水鉄砲』は掛け替えのないワニッペの技だから、これをずっと磨きをかけてきたから、精一杯撃つようにワニッペに命じた!
ミルタンクの転がる!
ドゴォォオオオオオオオオ!!
「ワニャアアア……!!」
ワニッペはミルタンクの加速する猛進に耐えれずに、何度も吹き飛ばされた。
そして、何度も起き上がり、ミルタンクに技を打ち込む!
ワニッペの水鉄砲!
バッシャアアアァァァ!!
ミルタンクに小さなダメージ。
「あんなぁ、ウチらに火力勝負で勝とうなんて100年早いで?」
アカネちんが言い放つ。そして肝心のミルタンクは、どんどん転がるの威力が増大していく……!
「(おやぶんが使ってる『転がる』と一緒だ……当たれば当たるほど、与えるダメージが大きくなっていく。)」
この勝負、誰が見ても勝敗はレキゼンかも知れない。
ミルタンクは威力を増していくなか、ワニッペは段々と体力が減っていく。
ミルタンクの転がる!!
ドゴォォオオオオオオオオオオオオ!!
「ワニャーーーーーーーーー!!?」
あ!!
ワニッペが大きく飛ばされた!
壁にぶつかって、ワニッペの身体が崩れ落ちていく!
「ワニッペーーー!しっかりーーー!」
「ワ………ワ、ニャ……!」
「マツリィ!指示をしろぉ!」
ワニッペが辛うじて、フラフラと立ち上がる中、おやぶんがアタシに怒鳴った。
「う、うん!ワニッペ!水鉄砲ーーー!」
ワニッペの水鉄砲!
バッシャアアアァァァ!!
ミルタンクに小さなダメージ。
「なかなかタフやないか、そのワニノコ。せやけど………次で5発目や。」
アカネちんが少し怖そうに見えた。
アタシの中で一瞬、こう思った。
『水鉄砲じゃ、勝てない』と……。
「ワニノコ一匹でよぅウチのミルタンクの体力ここまで削れたなぁ。お礼にドでかいの一発食らわせたるわ。」
「ンモォオオオ!!」
ミルタンクの最大出力の転がるが迫ってくる!!
「えと…ええと…(もう水鉄砲じゃ倒せない…!でもアクアジェット使っても…!)」
ワニッペ side
………痛い。
……………こんなに痛い思いするのは、生まれて始めてだった。
そして、こう思った。『恐い』と。
ジムリーダーのポケモン、ミルタンク。
何度水鉄砲を使っても止められない、何度ぶつかって抗っても止まらない。
ポケモンって、なんてこんなに怖くなれる生き物なんだろう。
そして、なんでこんなにも痛み合いながら、戦い続けるのだろう。
僕もいずれかこうなるのだろうか?
………あれ?
待てよ? そもそも僕、なんでリーダーさんやおやぶんさん達についてきたんだっけ?
食らい過ぎたダメージのせいで、モウロウとした意識の中、敵のミルタンクが僕にもの凄いスピードで向かってきた。
「ワニッペ!!思っきり水鉄砲ーーーーーーーーー!!」
…………思い出した。
僕はあの時誓ったんだった。
ヨシノシティから坂を登った所にある池。
そこで溺れていたコクーンを助けた。
そして、泣きながら喜んでお礼を言ってくれた小さな女の子。
誓ったじゃないか、ちゃんとあの時!
もし僕が、悲しみから笑顔に変える力があるのなら………その為にその力を使いたい!大きくしたい!
誰かを傷つける為に強くなるんじゃなくて、誰かを助ける為に強くなりたい!
「(一体誰だ、僕の仲間のゼルを傷つけて……!!)」
僕の腹の底から、生まれて初めての感情が芽生えた。
そしてそれは、技となった。
僕は、『いかり』を覚えた。
だけど、リーダーさんは『水鉄砲』を命じている!
だから、張り裂けそうな怒りを噛み締めて、僕は、咥内にパワーを溜めて、思いっきり吐き出した!!
ワニッペ side out
マツリ side
「ワニッペ!!思いっきり水鉄砲ーーーーーー!!」
壁によりかかっているワニッペに迫ってくるミルタンクが、唸りをあげて5回目の『転がる』を発動する!
アタシは結局、これしか言えなかった。
…ゴメンね、ワニッペ。
「勝負もろたで!」
アカネちんの声が響いた。
ワニッペの『熱湯』!!
ザバァァアアアア!!!
「ンモォオ!!!?」
ミルタンクは火傷を負った!!
「「「!!?」」」
ミルタンクの転がる!!
ドゴォォオオオオ!
しかし、火傷の効果でダメージは軽減した。
「ワニッペが…ワニッペが新しい技覚えたあああーーーーーーーーー♪」
「(今のワニッペのレベルで『熱湯』だと!?………あの土壇場で何か覚醒しやがったなぁ、ワニッペのヤツ。)」
「ね、熱湯やとぉ……!?」
ミルタンクは火傷でダメージを負っている!
「あ、アカン!ミルタンク!ミルク飲みや!」
ミルタンクのミルク飲み!
ミルタンクは体力を回復した!
「スキあり〜〜!!ワニッペ!!熱湯だぁぁああーーーーーー!!」
ワニッペの熱湯!!
ザバァァアアアア!!
「ンモォォ……!!」
よっし!効いてる!
ワニッペの『激流』が発動してる!
「ワニッペ!!ガンガン攻めるよーーー!!」
「ワニッ!!」
「ミルタンク!メロメロや!」
ミルタンクのメロメロ!
ワニッペはメロメロになった!
「ワニッペ!大丈夫!?」
「ガンガン来れるモンなら来てみぃ!ミルタンク!踏みつけ!」
「ワニッペ!熱湯!」
ミルタンクのふみつけ!
ワニッペにダメージが重なる!
ワニッペはひるんだ!
「もう一発ふみつけ!」
「ワニッペ!熱湯!」
ミルタンクのふみつけ!
ワニッペはひるんだ!
ワニッペは膝をついた!
えええ!?全然攻撃出来ない〜〜!?
「(アカン、火傷のせいで全然キレがあらへん。火傷のダメージもあるし、一旦回復させよか?)」
アカネちんは一呼吸置いて、指示を出した!
「ミルタンク!いやしの鈴や!」
ミルタンクのいやしの鈴!
ミルタンクは状態異常を回復した!
「ワニッペ!熱湯!」
ワニッペの熱湯!
ザバァァアアアア!!
「……ミルゥ!!」
ミルタンクは火傷を負った!
「んなアホな……!」
「ワニッペ!熱湯!」
「……ぜ…絶対負けへんで!ミルタンク!のしかかりや!」
ミルタンクののしかかり!!
ズドォォオオオオ………!
「ワ……ニニ……!」
ワニッペはなんとか踏み止まる!!
火傷の効果でなんとか耐えれた!もう次喰らったらおしまい!
ここで押し切るよーーーーーー!!
ワニッペの熱湯!
ザバァァアアアア!!
「ミルーーーーーー!!?」
急所に当たった!!
ミルタンクは膝をついた!
「ミルタンク!ふみつけや!気張りぃ!相手は弱っとるで!」
アカネちんが焦りながら声を張り裂ける!
「ワニッペ!決めるよーーー!アクアジェットーーー!!」
「ワニャーーーァァァアアア!!」
ワニッペのアクアジェット!!
バッシャアアアァァァ!!!!
ミルタンクはギリギリ持ちこたえた!
「ほぇ!?」
「ワニャ!?」
「気合いのハチマキや!いったれミルタンク!!」
ミルタンクのふみつけ!!
ズドォォオオオオ!!
しかし、ミルタンクの攻撃は外れた!!
「な!なんでやぁぁあああ!」
アカネちんが頭を抱えて叫んだ。
「なんでや!そもそもなしてそんな動けんねん!さっきメロメロしたやん!なんでメロメロ効いてへんのや!」
その言葉を、アタシとワニッペは、ニッと笑って答えた!
「秘密ーーー♪」
「ワニャ!」
「(…!?…さては……ビスナの実やな!)」
※【『ビスナの実』は、メロメロ状態を治す非常に希少な木の実です。】
「ワニッペ!!アクアジェットーーーーーー!!」
ワニッペのアクアジェット!!
ザバァァアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーー!!!!
ミルタンクは倒れた!
ジムリーダーアカネとの勝負に勝った!!
「いぃいやったああああああああ!!」
「ワニャーーー!」
やったやったやったやった!!
アカネちんに勝ったーーーーーー♪
アタシはワニッペと両手でハイタッチして、笑いながら抱き合った!
「……………………。」
アカネちんが、倒れたミルタンクをボールに戻した。
「……………………ぅ。」
ほぇ?
アカネちん?
「うわあああああ〜〜ん!!」
え?えぇ?
な、泣き出しちゃった?
「ど、どしたの?アカネち 「あ〜〜ん!あ〜〜ん!なんでやぁ〜!なんで勝つねん!?ソッチ水ばっかやん!なんで水しか使わへんのに勝つん!?ひどいわぁ!うぅぅわあああぁぁぁ〜〜〜!!」
まるで火がついたように泣き出したアカネちんに、アタシは少し慌てながら、どうすればいいのかたじろいだ。
「あらら、まーた始まったのね…。」
あ!ここのジムの人かな?
アタシと同い年くらいの女の子が数人やってきて、泣いてるアカネちんを宥め始めた。
「アカネって負けず嫌いだからさ、いつもこうなのよ、ごめんなさいね。もうちょっとしたら落ち着くと思うから、待っててくれる?」
アカネちんはジムの子達に連れられて部屋を出ていき、アタシとワニッペ、ゼル、おやぶんは、さっきまでアカネちんと戦っていた部屋で、静かに待っていた。
「マツリよぉ。」
「んに?」
「……おめぇ、この先アイツみてぇに気概とプライド持ってやってかねぇとつまらねぇぞ?」
「むっ、どーゆー意味?」
「勝負に負けて、あそこまで泣いた事今まであんのかよテメェ。勝っても負けてもヘラヘラしやがって……。」
「……おやぶんってさぁ、いっつもなんで褒めてくれないの?」
「……んだとテメェ。」
あ…、おやぶんがキレた。
ギロリとアタシを居座った目で見据えて、アタシの胸倉を掴もうとゆっくり近づいてくる。
「ワニワニ!」
「ブイ。」
ワニッペとゼルが、慌ててアタシ達の間に入って仲裁してくれた。
「……ち、いいかマツリ。今日勝ったからって課題が免除されるわけじゃねぇからな!」
しぶしぶおやぶんが座りながらそう言った。
あーあ、おやぶん最近怒ってばっかり…。
15分後……。
「あ、アカネちんかえって来た!」
部屋の中に入ってきたアカネちんは、目を真っ赤に腫らして、ちょっと啜り泣きながらこっちに歩いてきた。
「ゴメンな、マツリ。………ふぅ、泣いたらスッキリしたわ。」
「ほぇ〜〜……。」
「それはさておき、勝負はマツリの勝ちや。受け取りぃ。」
アタシはレギュラーバッジを手に入れた!
「にしし〜〜♪ありがと!アカネちん!」
「ええかマツリ!今回ウチは負けたけど、このまま泣き寝入りせぇへんからな!ポケモンリーグでぶつかったらリベンジしたる!」
「…………ほぇ?アカネちん、ポケモンリーグ出るの?」
「出るのて……、ウチらジムリーダーは毎回出てんねんで?シードで。」
「ええ!?そうなんだー?」
「それぐらい知っとけ!」
おやぶんが声を荒げた。
その後、アカネちんとポケギア登録をして、ジムを離れた。
その日はしっかり休養をとり、次の日からおやぶんの課題クリアの日々がスタートする。
一日、そしてまた一日経っても、なかなか10連勝出来ずにいた。
ある日、奇跡的に恵まれた出来事が起きた。
ザァーーーーーーーーー。
水ポケモンが恩恵を受ける気候、雨が降り始めた!
小さくて、しっとりした、水ポケモンが喜ぶ雨。ドシャ降りじゃないから、外にいるトレーナーさん達も少なくなかった♪
水技が1.5倍になるっておやぶんが言ったから、アタシ達は元気よく外にでてバトルをした。
そして、ようやくとうとう念願の10人目を倒す事が出来た!
約28日15時間42分。アタシはワニッペとゼルで抱き合いながら喜んだ。
いつもアタシのバトルに付き合ってくれたトレーナーさん達が、暖かく拍手をくれた時は、すごく嬉しかったなぁ♪
でもやっぱり、おやぶんのひとことは。
「けっ、まぁまぁだな。」
だった。
えへへ♪ そっちの方が、おやぶんらしくて良いけどね♪
そして次の日、アタシ達はヒワダタウンに向けて、南へと進行した。
マツリ side out
次回、ちょっとおまけ回に突入します。