ふわっと死ネタっぽいけどそこはあまり重要では無い。
ガシャン。
手元から滑り落ち床に叩きつけられたマグカップの残骸を見下ろして、八神はひとつ息を吐く。
カップを持っていた形のまま静止していた手を何度か開閉する。……目の前で動いているはずなのに、どこか膜一枚挟んだような感覚。
やはり、中身が“
日に日に遠くなっていく現実世界。最近はパルストランスミッション設備を使わずとも意識が電脳空間へ飛んでいるような錯覚すら覚える。
「……まあ、ここまでよく持った方、か」
どこか自嘲するように呟いて、八神は後始末のためにその場を後にした。
──数日後。
“
あの
“俺”が“八神聖司”となって20年が経過した、とある日の話であった。
………………
…………
……
──データ解凍完了。起動……エラー。この拡張子は使用できません。
………変換プログラム起動。データ変換を行います。………エラー。一部データへのアクセスが遮断されました。このデータを除いたデータの変換を再試行します。…………完了。
プログラム
──HELLO WORLD
ふっと意識が浮上する。目を開いた先は知らない電脳空間。
周囲に浮かぶ様々な解析プログラム……見覚えのないそれらを横目にデータポッドから出る。やはりそれにも見覚えはない。
興味本位でプログラムのひとつへ手を伸ばし、中身を読み取る。……見たことの無い構築に拡張子。
【おはよう。気分はどうかしら?】
ヴン、と目の前に展開されたウインドウへ表示されたのは、ひとりの老女だった。
二股に別れた白髪に眼鏡をかけた、穏やかそうな人物というのが第一印象だろうか。……そのシルエットがそこはかとなく見覚えがあるように見えるが、きっと気のせいだろう。多分。
「あー……システム上の不備はない……ように感じます。……えー」
【あら、ごめんなさいね。私はヨイリー。あなたを起こした張本人よ】
にこにこと笑いながらとんでもない爆弾発言をぶちかまされて一瞬息を飲む。
自身の記録によれば、そうそう起こされることのないようにかなり厳重なロックを掛けられていたはずなのだが……いや、周囲のプログラムを見る限り現在であればそれほどでもないのだろうか……基準がいまいち分からない。
【それで、あなたのことを教えてもらえるかしら? おそらくは旧世代のネットナビを元にした何かだとは思うのだけれど】
「ネットナビが旧世代? ……あー、それだけ時間が経過してるってことか……」
かしり、と髪……いや、それを覆う硬質なメットを掻いて、標準電波データを取得する。……最終計測時から200年経過していることに思わず遠い目になった。そりゃ旧世代とも言われるわ……
「んー……どこから説明したものか……」
【そうね、それじゃあまずはあなたの名前を教えてちょうだい?】
「名前か……あ、ダメだ。メモリのパーソナルデータに欠損がある。固有名称の記録がない……んー……型式名称:エグリゴリtype.∑……そうだな、《シェム・アザ》と名乗ってみようか」
【ふふ、いい名前じゃない。よろしくお願いするわね、シェムちゃん】
「ちゃん!? ちゃんかぁ……」
こうして俺は、プロトタイプウィザード《シェム・アザ》としてこの世界へと降り立ったのだった。
次回『牧師でハッカーで転生者だったウィザード』
連載未定!!!!!
続きません!!!(流星にわか)(エグゼもにわかだよ)
▼八神聖司(享年35) BEAST+終了から5年後にぽっくり逝った。
さすがに複製データなのでガタが来た。だんだん肉体と精神の感覚が乖離していき……みたいな感じ。
まあちゃんと最後まで終わったからええか……と思っている。
▽シェム・アザ
八神がパルストランスミッションし続けたことで発生した残留データを《
流石に厄ネタすぎる(人道的な意味で)ので封印されていたが、200年後にひょっこり起こされる。
現状はウィザード(の構想元)として自由気ままな電波体生活を満喫している。
最近色々やって自身の周波数を変えて実体化する機能を得た。逆電波変換なので色々特殊枠として「変換ID:EX シェム・アザ」と登録されているらしい。なお実体化中は「
外見はセレストの素体フレームに入った白髪赤目の八神。実体化中はカソック姿が多い。