一応時間軸的にはBEAST+終了後、熱斗くんらが卒業~中学入学ぐらいの時期。
ふわっと解説
牧師さん→相変わらず科学省非常勤。非常勤の割にだいたいいつもいる気がする。
紬ちゃん→CFメンバー。研究者志望もあって科学省によく出入りしている。
以前の話(Stream~BEAST期)は深く考えないものとする。
科学省の研究ブースに運び込まれたサーチマン……のような姿をしたネットナビ。
損傷が激しいため今は修復プログラムを適応されているが、まだ意識は戻っていないようだ。
ある程度の修復がなされれば解析のためにデータスキャンに入ることもできるだろう。
会議ブースの一室で待機しているネットセイバーの3人が口にする話題は、やはり彼や偽物ナビの話だった。
「しっかしまた偽物なんてなー。パパが言うにはキャッシュデータが元になったファントムナビでは無さそう、って話だったけど……」
『傷を負っても崩壊しなかったしね……それに、確かに戦っている感じ、ファントムナビみたいにこちらに悪意を持ってるような様子はなかったよ。むしろあれは……』
『……何も無い。ただ、“戦うというプログラムを実行しているだけ”のように感じました』
「そうか……」
偽物のカーネルとの戦闘をモニタリングしつつ確認していた光博士と、それと直接相対していたナビの言葉に嘘はない。
やはり、新たな問題が起きているのだろうか……と考え込む炎山は置いておいて、熱斗は先程から口を閉ざしたままのライカへと顔を向けた。
「ライカ?やっぱあのサーチマンのことが気になるのか?」
「……ああ。ダークブルースやダークロックマンのようなそれ、というわけではなさそうだが……いったい、奴は何者なのか」
『……少なくとも、奴らのようなダークオーラは検知できませんでした』
「うーん……やっぱり詳しいことは解析待ちかぁ」
べしゃ、と机に伸びる熱斗に『行儀が悪いよ!』とお小言を入れるロックマン。
そんなこんなでしばらく待機……という名の休憩時間が過ぎた頃、唐突に扉が開く音に3人が振り返る。
「はえっ……し、失礼します……」
「あれ?紬さん?」
入室してきたのは私立中学の制服を身につけた女生徒だった。
紬、と呼ばれた少女は、ノートパソコンを抱えたまま3人の元へ近付いていく。
「今この会議ブースは使用中になっているはずだが……」
「えっと……例のサーチマンに付いていた外部プログラムの解析を頼まれたんですけど、念の為問題が起きてもすぐに対処できる人がいる場所でやってほしいからって、ここに……」
「外部プログラムだと?」
「はい。彼のシュシュ……髪飾りが、どうやら圧縮保存されたプログラムになっていたみたいで。何かあるといけないから、別個で解析することになったんです」
少なくとも危険性が低いことは確認できているそうなので……と席についてノートパソコンを開く紬。
その画面には展開された解析プログラムとそれに通されるシュシュのデータが表示されていた。
黄緑地に黄色いスポット模様のついたそれは、傍目に見ればただのドレスアップチップで付与される飾りと大差ないように見えるが……内部構成には、確かに何らかの圧縮データが隠されているのがわかる。
『紬ー、大丈夫だって、なんかあったらオレが壊してやるから。これにかかってるロックだってちょいっと……』
「ダメだよ、壊すのは最終手段だからね……?」
ちょいっと、とドリルで突くジェスチャーをするクラッシュマンを窘めながら、紬は解析プログラムを稼働させた。
ヴヴン、と低く唸りながらシュシュの周りをパーティクルが周回し、そのたびに読み取られたデータがコードとしてウインドウに流れていく。
「……ロックの解除はこれで大丈夫。プログラムは解凍せずに基礎構築を読み取って………あれ?」
「どうした、速見」
カタカタとキーを叩き解析記録をとる紬がふと声を上げた。
なんだなんだと画面を覗く彼らに、紬はプログラムコードの一部を指し示す。
「いえ、その……このコードって」
「……修復プログラム、か?」
「〈リカバリー〉のような一時的な修復ではないな……補修と……補填?何の……」
「んー……つまり、あいつがケガしたらすぐ直せるようにって誰かが付けた、ってコト?」
「そう……なりますね……オペレーターかな……いえ、それなら普通にログアウトさせて修復する方が確実だし……」
『……うだうだ悩んでるけど、修復プログラムなら解凍しても別に問題ないんじゃないのか?』
ブツブツと考え込み始めた紬の肩にホログラムで現れ、その頬をつつくクラッシュマン。
確かにこの解析コードが正しければ危険性はないし、上手くいけば例のナビの修復に役立つかもしれない。
顔を上げた紬に頷きつつも、彼らは自身のPETを掲げた。
「一応、俺たちのナビをそのパソコンにプラグインさせ待機させておこう。その方が何かあった時に対処しやすいだろう」
「あ……そ、そうですね。クラッシュマンも、お願いできる?」
『おー、任せろ!』
それじゃあ、とノートパソコンを動かし、プラグインさせやすいように端子を皆の方へ向ける。
すぐにPETから赤いラインが放たれ、4体のネットナビがPC画面に現れた。
「では、解凍しますね……」
カチリ、とプログラムを起動させ、圧縮データの解凍を開始。
シュシュの3Dモデルが徐々に解けていき、パーティクル化したそれが新たな姿を形作っていくのを、固唾を飲んで見守る。
現れたのは半球状の頭に雫型の胴体……単純な図形を組みあわせて作られた、黄緑色の2等身の人型。
ぱちり、とおそらく目であろう場所が開かれ、頭上に生えた耳のような黄色いパーツがひょこ、と揺れた。
『ダイジョウブデスカ ホロウサン!……アレ?ホロウサン?ホロウサーン?』
ぴょ、と飛び上がったそれが、キョロキョロと辺りを見回す。
クラッシュマンはその前にずかずかと近付き、顔を覗き込むようにかがみ込んだ。
『おい、お前』
『ヒョワッ!?ドチラサマデスカ!?ワタシ ワルイプログラムジャ ナイデスヨ!』
オタスケ~!と情けない声を上げながら右往左往するそれが、クラッシュマンの後ろに控えていたナビたちに気付きぴゃっと飛び上がって走り寄っていく。
『ヒエ~ッ タスケテクダサイ サーチマンサァン!!!』
『は、なん……?』
急に名指しされ一瞬動きを止めたサーチマンに構わず、それはぴゃーっとその足元にまとわりつき、盾にするように身を隠した。
突然の展開に背景に宇宙を背負うナビとオペレーターたち。
「……え、えぇと……」
「おー、なんかすごいことになってんな」
「ひゃわーっ!?」
呆けている時に背後から急にかけられる第三者の声に飛び上がって驚く紬。
その悲鳴に我に返った熱斗たちも、慌ててその声の主へと顔を向ける。
そこに立っていたのは、科学省には不釣合いな黒いカソックを着込んだ男だった。
「や、八神さん……驚かせないでよ……」
「いやー、みんなして画面に釘付けだったもんでつい……にしてもなるほど、修復プログラムだったか……しかも自律稼働するタイプ、と」
うんうんとひとり納得するように頷く八神に、何をしに来たんだという視線を向ける炎山とライカ。
それに気付いた八神は、そうだったと呟いて親指で出入口を指し示しながら口を開く。
「例のサーチマンに関してわかったことの報告と……まあ、ちょっとした問題というか……実際見せた方が早いな。速見嬢はそのプログラムもつれて来てくれ」
「は、はい。わかりました……クラッシュマン、一度プラグアウトを」
「そうだな、ロックマンたちも戻ってきてくれ」
『了解!』
PC画面から消え、PETへと戻りホログラムとしてそれぞれの元へ現れるナビたちを確認して、八神は彼らを連れ立って研究ブースへと向かう。
会議ブースから大して離れている訳でもないそこでは、観測対象となっているそれの状態がリアルタイムで計測されていた。
中央メインモニターに映るのは、電脳内の台に寝かされたサーチマン……と瓜二つのネットナビ。
大きく損傷した右腕は大量の負傷パーティクルで覆われ、全身にも細かな傷が確認できる。
「……やっぱり、見れば見るほどサーチマンだよなぁ……」
「……修復プログラムが動いていないようだが、何かあったのか?」
「それに関してだが、これを見てほしい」
ライカの指摘にコントロールパネルを叩いて別ウインドウを表示させる八神。
そこに表示されたのは彼の構造スキャンデータだ。
「基本の設計構造自体は普通のネットナビ……というか、多分これサーチマンと同じ設計データが使われてるな。どっかで流出したか?……いやそれは置いといて、問題はこれを構築しているデータの方だ」
「これは……バグ、ですね……すごい、奇跡的なバランスで成り立ってる……」
「そうなんだよ。バグ構造体でわかりやすいのっつったら……ゴスペルとか、あとはフォルテか?まあアレは究極プログラムっていう核があるからあんな無茶苦茶な構造を保ててる訳だが、こいつは違う。ナビの構造プログラムとバグを緻密に組み合わせることでこの形を維持しているんだ」
「……なるほど、だから修復プログラムを適応できないのか。この修復プログラムはナビ内部のバグを修正……削除してしまうからな」
バグが削除されてしまえば、構造を維持できなくなったこのナビは個を保てない……下手をすればそのまま消えてしまうだろう。彼が現状における唯一の手がかりである以上、それは避けなければならない。
「それでまあ、どうしたもんかと困ってたんだが……そこでそのプログラムだ。それはこいつに付けられていたもの……つまり、専用の修復プログラムである可能性が高い」
『ソウデスヨ!ワタシハ ホロウサンノタメノ プログラムクン ナノデス!』
「わわっ……」
ガタガタと画面に迫るプログラムくん、と名乗ったそれに驚きながら、紬は八神のやろうとしていることに気付いてノートパソコンに接続用のケーブルを繋いでいく。
そうして研究ブースの機材へと繋いだ瞬間、PC画面から即移動していくプログラムくん。
『ホロウサァ~ン!オイタワシヤ……スグニシュウフク シマスカラネ!』
ホロウと呼ばれたナビの周囲をくるくると周り、傷口を頭に生えた耳のようなパーツで撫でていく。
ただ触れているだけに見えるが、確かに修復が成されているようで放出されるパーティクルの量は確実に減ってきていた。
「はー……すごいなこれ。データの修復速度もだが、バグ部分もちゃんと補填する形で直してるわ……」
「これって、バグの増幅能力なんですかね……?それでもちゃんとバランスが崩れないように調節しながら、他の部分も修復して……」
「なるほど、専用と言うだけのことはあるな」
リアルタイムで計測されるデータを見ながら感心しきりの彼ら。
みるみるうちに安全圏にまで回復したそれに意識回復の兆しを見つけ、データウインドウからナビへと視線を向ける。
『………ぅ、ん……?』
ふるりと瞼が震え、ゆっくりと開かれていく。
どこかぼんやりと焦点の合わない瞳が揺れて、右腕に触れるプログラムくんの姿を捉えた。
『ホロウサァン!ダイジョウブ デスカ?ドコカ ヘンナコロハ アリマセンカ?』
『ぁ……傷、直って……ん、大丈夫……ありが、と』
身体を起こし、自身の状態を確認する。
修復率は60%ほど、
そっとプログラムくんの頭を撫でて礼を伝えれば、エヘヘと笑うそれにつられてホロウも笑みをこぼす。
【……あー、戯れ中にすまんな。少しいいか?】
ゴホン、と咳払いをして八神は電脳内部へのスピーカーをオンにし、声をかけた。
それにびくりと肩を跳ねさせて、慌てて周囲を見回すホロウ。そうしてモニター越しにこちらを見る視線にようやく気付き、驚いて後ずさる。
……それほど広くもない台の上、下がれるような場所はない。後ろにつこうとした手が空を切って、身体が傾ぐ。
「あっ」
『ひぃッ……え、あ、~~~ッ!!!』
『ホロウサン!?』
そのまま綺麗にぶち落ちたホロウは、いつぶりかの後頭部の痛みに悶えることになるのだった。
プログラムくんと戯れるホロウ(外見サーチマン)、絶対かわいい 確信。
ちなみにずっと耳(のような)表記なのはアニメ勢視点寄りだからです。知らんかったらあれ手とは思わんでしょう……
思ったより書きたいところが多く……でも最長5話以内で収めたい……収まるか……?