ネタメモのまとめ   作:星茸

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夏ですね。作者は浜辺で貝集めです。水砲戦たーのしー!


空狙クロス 3

 

 

前にもこんなことあったな……と後頭部の痛みに悶えながら、オレは起動したばかりの鈍い思考を無理やり回す。視線だけで周囲を確認すれば、電脳内に配置された計測機器や解析プログラムが浮いているのが見えた。

見覚えのない電脳。ホロウカーネルとの戦闘後、彼らが気を失った(シャットダウンした)オレを運び込んだのだろうか。

 

オレが寝かされていたらしい台の影から、そっと様子を伺う。モニター越しにも突き刺さるような視線の雨に思わず身を隠した。

確認できたのはロックマン達とそのオペレーター。それに光博士の姿もあったように見える。

……それらは見知った顔なのに、その目はやはり“知らないもの”に向けられるそれで。

僅かな望みをかけてデータの照合を繰り返すが、何度やったところで結果は変わらず相手が“本物”であることを示している。

 

一体、何が起きているのだろうか。まるで、オレだけが存在しない世界へ来てしまったような……

 

「ホロウサン ダイジョウブデスカ?」

 

プログラムくんが、そっとこちらを労わるように背を撫でてくる。

今、オレのことを唯一知ってくれている存在はこれだけだ。足元が崩れていくような不安に流されないよう、縋るようにその手を握った。

 

【……驚かせたようですまんな。皆、同じ姿の別存在というものに少し思うところがあって警戒しているだけなんだ】

 

先程の声と同じ、オレの知らない人間の声がかけられる。

再びそろりと頭を出せば、モニター越しにマイクの前に立つのは黒衣の男だけになっていた。

 

【こちらにはお前を害する意図は無い。少しでいい、話を聞かせてくれないか?】

 

 

 

 

 

研究ブースを出て、八神は大きく息を吐き出した。

それを目ざとく見つけたのは、すぐ近くの休憩用ベンチに座っていた熱斗。八神さん!と駆け寄ってくるその姿に会議ブースで待っていろと言ったのに……と少しだけ小言が漏れそうになるが、まあ些細な問題かと飲み込んだ。

 

「八神さん、あの、あいつは……」

 

「あー、まあ、一応落ち着かせて話は聞けた。報告するからいったん会議室に行くぞ」

 

熱斗の肩を掴み方向転換。そのまま押しやるように皆の待つ会議ブースへと共に向かう。

 

 

 

──あいつ、視線にビビってるな。人が多すぎるんだ。

 

そう言って他の者を退室させ、1対1(タイマン)で話を聞き出した八神……プログラムくんは数に数えないものとする。

その会話データを再生しながら、八神は補足解説のため口を開いた。

 

「例のナビ……ホロウ、と名乗った彼の話を聞く限り、彼はビヨンダード……しかも、以前繋がった世界とは別の世界から来た可能性が高いのではないかと」

 

「……にわかには信じ難い、が」

 

「“ネットナビ(プログラム)は嘘をつけない”。たとえそうプログラミングされていたとしても、思考プログラムには必ず波形の乱れとして現れる。……それが見られない以上、ホロウの言葉に嘘はないだろうな」

 

モニターに広げられた各種計測データは、ホロウとの会話中に取られたものだ。

最初の方こそ感情や精神プログラムに酷く乱れた様子が見られるが、会話を重ねるうちに落ち着き段々と平坦になっていく様子が見て取れる。

 

「そっか、あいつは別の世界から来たんだ……」

 

『僕たちを見た時の反応も、あちら側の僕らと知り合いだったからなのかもしれないね』

 

「ほぼ確でそうじゃないか?……そんな顔見知りに初めて会ったような顔されるわ、あまつさえ武器向けられるわ……そりゃ精神も不安定になって当然だわな」

 

ちらり、と視線を向けた先で言葉を詰める炎山とそれがどうしたと腕を組み直すライカ。

まあ、不審な相手に対する行動としてはまったく間違いというわけではない。ただ相手が悪かっただけだ。

 

「まあ、その話はともかく。俺としては彼が通ったという穴……フォッサアンビエンスに関して早急に調査を行うべきであると考えますが。それに、こちらへ流入したという偽物……“ホロウナビ”への対処も急いだ方がいいかと」

 

「なるほど……確かに、それがまたどれ程の影響をこちらへ及ぼすか確認する必要があるな。名人、ネット警察に連絡を入れておいてくれ。私は以前集めたビヨンダード関連のデータをさらってこよう」

 

「了解」

 

忙しなく動き始めた大人たちを横目に、八神はひとつ手を叩いて子供たちの前へと立つ。

 

「……さて、これからの方向性は決まった訳だが、本格的に動くのはおそらくは明日からだろう。調査のための準備なんかは必要だし、案内役の回復も待たにゃならん」

 

「案内役……まさか、奴を使うのか?」

 

「まあ……直接案内してもらう方が早いからな。とにかく、今日はこのまま解散ってことだ、お疲れさん」

 

こっちも忙しくなってきたし、と慌ただしく動く博士たちの方を見て呟く。彼らへの指示が終われば自分もあっちに参加することになるんだよな……と若干疲れたような顔で息を吐いて、八神はひらひらと手を振りながら合流のためその場を去っていった。

 

 

 

翌日、再び集合した彼らは挨拶もそこそこに、フォッサアンビエンスがあると思われるネットシティへと向かう準備を始めた。

ネットセイバーの三人と紬は先んじてナビを転送ポートへと向かわせている。管制モニター越しにその様子を確認した八神は、自身が手にしたPETへと視線を移す。

 

「……とりあえず、リンクナビシステムは良好。各種観測系も問題なし……悪いな、ホロウ。こんな監視みたいなことして」

 

『問題、ない。必要な、のは、わか、ってる、から』

 

PETから聞こえるホロウの声。

リンクナビシステムを応用し一時的にPETと連携、対象のナビを監視下に置く……本来であれば保護観察中のナビに対する処置として研究されているものではあるが、まさかこんな使い方をすることになるとは。現在諸事情によりナビのいない自分がPETの保持者になったことも含めて、少しばかり想定外だなと八神は息を吐いた。

 

「はは、まあ……ちょっと大袈裟な迷子紐みたいなもんだと思ってくれ。それじゃ、ネットシティへ送るぞ」

 

『わか、った』

 

 

 

 

 

データ転送時特有の浮遊感が途切れ、急にかかった重力に少しだけよろけながら着地した。

事前に探知機能は少し抑えていたから、先日のように目が眩むようなことはない。

周囲を見回して、すぐそこに集まっている彼らの姿を見つけたオレは、自らそこへと歩み寄っていった。

 

「あ、こっちだよ!今日はよろしくね、ホロウ」

 

「ん……こちら、こそ」

 

オレに気付いたロックマンがこちらへ駆け寄り声をかけてくる。その後ろに立つのはブルースとサーチマン、それからオレには見覚えのなかった……クラッシュマン、と名乗った重装甲のナビ。

そのうちふたりからこちらに向けられる視線は変わらず……多少、鋭さは緩和されたような……警戒の色を含んでいるが、事情を知ったことで昨日ほどのショックはなかった。

 

「もう、2人ともやめなよ!」

 

「い、や……大丈夫、だ。……お、れの知、る、彼ら、と別な、のは、理解し、ている……から」

 

だから大丈夫、と重ねて自分に言い聞かせる。

まだ不満そうなロックマンは置いておいて、今回の目的を自分から切り出した。

 

「……そ、れで、おれ、が通、った穴、へ、案内す、ればいい、のか?」

 

『ああ、そうだ。頼めるか』

 

「わ、かった。……あっち、だ」

 

再び周囲を見渡して、ここに来た時の記憶を重ねて位置を判別、方角を指し示す。

……近くに行けばあっちから流してくれている信号が検知できるはず。それまでは脳内マッピングが頼りだ。

 

 

 

「……えぇ、と……掲示、板、がそこ、だから……こっち、の、通りだ。……たぶん」

 

「随分と曖昧だな」

 

「まだ、マッピング、が、でき、てない、から……でも、もう少、し、近付、けば、……だいじょ、うぶ、合って、る」

 

通りに踏み込めば、微かに届いた信号がセンサーを刺激する。ここまで来ればもう迷う事はないだろう。信号を頼りに足を進め、少し先に目的の横道が見えてきた時だった。

 

「ッ……!」

 

ざわり、と背筋が泡立つ。

飛来する“それ”に対して思い切り腕を振るえば、展開された(〈シールド〉)がそれを受け止め、弾き返す甲高い音が響いた。

 

「な、何!?」

 

「あそこだ!」

 

突然の襲撃に浮き足立つ中で、サーチマンが素早く索敵を終え下手人を指し示す。

その先に立っていたのは、打ち返された斧の刃を受け止めた一体のナビ。

……データ照合、ホロウナビ:トマホークマン。

 

「……っ、」

 

周囲に視線を巡らせる……(ナビ)が多すぎる。しかも、突然のことに皆動きを止めてしまって逃げる様子もない。

このまま戦闘になれば被害が広がってしまう。それはたとえ別世界であっても避けたいことだった。

 

だが、相手がホロウナビであれば……確実に、オレ(ホロウナビ)が狙われるはずだ。さっきの攻撃も、オレを狙ったものだった。

ならばやることは簡単だ……オレを囮にすればいい。

 

「っ、ホロウ!?」

 

「待て、何を──!」

 

止める声を振り切って走り出す。

ホロウトマホークマンの視線がオレにだけ向いていることを確認して、そのまま目の前の横道へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

「おいおいおい何やってんだあいつは……!」

 

モニターとPETの画面を交互に見ながら、八神は思わず毒づく。

視線の先では、ほかのナビには目もくれずホロウを追うトマホークマン……ホロウナビの姿が映されていた。

 

「クラッシュマン!ホロウくんを追って!」

 

『わ、わかった!』

 

迷いなく自身のナビへと指示を出す紬。

普段の性格からは想像もつかないが、彼女の判断の速さと的確さは皆の認めるところだ。

 

「ロックマン、俺たちも……」

 

ホロウの後を追うように、と続くはずだった台詞は、突如響き渡ったアラートにかき消される。

何事かと原因を見れば、ネットシティ内の複数箇所で何者かが暴れているという。

 

「こんな時に限って……!光少年たちは先にそっちの対処を!ネットシティには避難勧告を出す!速見嬢はそのままホロウの追跡!現在地を共有するからちょい待て」

 

「り、了解!」

 

それぞれがにわかに慌ただしくなる中、八神はかつりとPETをタッチペンで叩き、3Dウインドウを展開させる。

表示されたマップデータとそこを移動する光点を見つめながら、大きく息を吐いてチップフォルダを広げるのだった。

 

 

 




思った以上に牧師さんが動かしやすすぎる件について 紬ちゃん&クラッシュマンの活躍は……次回……次回あるから……タブンネ

あと紬ちゃんは性格で隠れがちだけど割と本質は即断即決型指揮官タイプだということをうっかり忘れていたのでちょっと修正を入れました。

tips:ホロウのナビカスは〈バグストッパー(改造)〉〈アンダーシャツ〉〈シールド〉〈オートリカバリー〉、隙間を〈チャージMAX〉〈ラピッド+〉〈HP+〉で埋めている なお6基準
バグのバランスが崩れると危険なのでナビカスバグは起こさないように組まれています。
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