突如現れた偽物“ホロウナビ”の謎を追っていたネットセイバー一行は、新たなる敵の存在を知る。
ホロウの協力により「ホロウナビを制御する
犯人は偶然見つけたホロウナビの鋳造プログラムとコピーロイド工場を利用して「ホロウナビによる無限の兵隊」を作り世界を掌握しようと目論んでいた。
その野望を打ち砕くため進むネットセイバーたちの前に、コピーロイドに入ったホロウナビ軍団が迫る……!
工場の奥地へと向かうネットセイバーらの前に立ち塞がるコピーロイド。
それに対抗するため彼らはディメンショナルエリアを要請し、クロスフュージョンにより突破を図る。
しかし、個々の強さはともかくその数に押され中々前に進めない。
どうしたものかと考える彼らに、意を決してホロウが声をかける。
『お、れが、内部か、ら、
「それは……いや、今はそれが一番確実か」
「でも、ホロウもこの信号の影響を受けてるんじゃ……」
『だい、じょうぶ。い、ける。……行かせ、て、ほしい』
制御信号による思考ノイズは近付くほどに強まっている。それでも、今の状況を打開するにはこの手が最も有効なはずだと進言するホロウを信じて、彼らはホロウを電脳空間へ送り出した。
現実世界へ多くのホロウナビが向かっているためか、電脳内にいるのはセキュリティプログラムにより呼び出されたウイルス程度。
今回の目的はウイルスの駆除ではないため、通り道の邪魔になるものだけを撃ち払いながら〈コウガクメイサイ〉で気付かれる前に通り抜けていく。
ふと視界に入った小部屋に並ぶホロウナビの群れ。今は
……嫌な記憶が頭をよぎる。そんなことを思い出すのはこのノイズのせいだと脚を竦ませるような恐怖を振り切って、ホロウは電脳の奥地を目指した。
いくつかのファイアウォールを突破した先、最後のセキュリティプログラムを破壊して、ホロウは正面を見上げる。そこにそびえ立つのは電波塔のような構造データ。これが信号の発生源で間違いないだろう。
チリチリと思考プログラムを刺激するそれが強くなる。このままだと自我を持った自身であっても干渉されてしまうかもしれない。早いところ破壊しなくては、とホロウは〈スコープガン〉を構えた。
数発撃ち込んでみて概ねの強度を把握。通常弾だけでは難しいかと〈サーチグレネード〉を連投し、システムを保護する外殻を破壊する。
そうして作りだした亀裂へ向けて、ホロウは最大チャージショットを叩き込んだ。
もろくなった外壁ごとコアを撃ち抜いたことでシステムは沈黙。発せられていた
……先程の待機所の方面から、戦闘音が聞こえる。
やはり、この信号で制御されていたのだろう。その軛から解き放たれたそれらは、きっと互いを殺し尽くすまで止まらない。
こちらへ近付いてくる音を聞きながら、ホロウは〈スコープガン〉に手を添えた。
……突然同士討ちを始めたコピーロイドたちを横目に、ネットセイバーたちもまた工場施設の奥、犯人のいる最後の扉を蹴り開けた。
「ネットセイバーだ!」
「抵抗は辞めて大人しく投降しろ!」
ジャキ、とそれぞれが武装を突きつける先で、草臥れた白衣を着た男……どこぞの研究員だったのだろう擦り切れたネームプレートには「萌生」と書かれている……が、ガシガシと頭を掻きむしる。
「あ、ああぁぁ!なんで、なんで!もう少しだったのに……いや、まだ、まだだ、こいつさえ完成すれば、こんな奴ら……!!!」
ヒステリックに喚き散らしたかと思えば素早く身を翻しコントロールパネルへと飛びついて、何事かを打ち込み始める。それを静止させようと踏み込んだ彼らの前に現れたひとつのカプセル、その中に浮かぶホログラムが形作る姿に、皆が声を上げた。
「なっ……」
「アレは……スラー!?」
「どうして、地球にはあの時の記録は残ってないはず……」
「ひ、はは、時空タワーとかいう産廃設備の担当にされた時はふざけるなと思ったが、まさかこんなイイもんがあるとはな……この工場もコピー量産プログラムも、俺に運が向いてきてるんだ……奪われてたまるかよォ!!!」
笑いながら鋳造プログラムを走らせ完成を急がせる萌生。
それを止めようと放たれたCFサーチマンの威嚇射撃はバチン、と何かに弾かれる。
「チッ、バトルチップゲートのシステムまで……!」
張られた〈バリア〉を前に舌打ちをひとつ。この障壁程度なら抜けないこともないが、そうなれば生身の人間はひとたまりもないだろう。
萌生へのダメージを避けつつ障壁を突破しようにも、それを成すよりホロウナビ・スラーが完成する方が早い。
逡巡している間にも構築は進み、機材は低く唸りをあげる。
……ふっと、その音がだんだんと収まっていく。
「な、なんだ?どうして、構築が止まって……」
「おれ、が、止めた」
異変に気付き狼狽える萌生に、どこからか声が響く。
それと同時に放たれた弾丸がホログラムを映していたカプセルを、そこに接続されていた機材たちを撃ち抜き破壊していく。
ガシャリ、と装甲が擦れる音と共に姿を現したのは、緑の迷彩柄の装甲に覆われた狙撃手タイプのネットナビ。コピーロイドに入った
後頭部で髪をひとつにくくった彼が駆け一気に萌生へ接近。そのまま襟首を掴んで引き倒し、銃口を突きつけた。
「……鋳造、プログラムは、おれが、破壊し、た。ホロウナビ、は、もう、造れない」
男を見下ろしながら、ホロウは淡々と告げる。
こうして、唐突に訪れた危機は存外にあっさりと幕引きを迎えたのだった。
コピーロイド工場強襲から数日後。
事後処理も一通り終わり、戦いの傷も癒えた彼らはネットシティ裏の空間の亀裂……フォッサアンビエンス前に集まっていた。
空間の精査が無事に終わり穴を安全に閉じる目処がたったということで、そこが閉じる前に元の世界へと帰るホロウを見送るために集った彼らを前に、少し困ったような顔をする。
「お、れなんか、の、見送り、は、別、に必要、ない、のに……」
「そういうわけにもいかないよ!キミのおかげで今回の事件がスムーズに解決できたんだし……それに、知らなかったとはいえ……知らなかったせいで、色々と酷いこともしちゃったし」
ちらりと横へ視線を向けるロックマン。視線を受けたブルースがぐぬ、と唸り、小さく謝罪の言葉を口にした。
「そ、れは、気にして、いない。怪しむ、のは、当然だ、し……それ、に、狼狽、えて、うま、く、説明が、出来な、かった、おれに、も、原因、はある」
「それでも、だよ。急に知らない世界に飛ばされて混乱しない
だからごめんね、と続けるロックマンに、わかったと大人しく謝罪を受け取るホロウ。
ほにゃりと笑うロックマンからの握手の求めに応じながらこっそりとその背後を伺えば、同じ紅とと目が合った。
「ッ……」
別の存在であっても
そのまま顔を上げられず俯いたままでいると、おもむろに近付いてくる気配。
「え」
「は?」
ロックマンとブルースが困惑の声を上げる。
ぽすり、と頭に受けた軽い衝撃と、頭……厳密にはヘルメットの丸さをなぞるように動く感触。
……サーチマンが頭を撫でている、と気付いたホロウの思考回路は混乱していた。
「……え、と……あの……?」
「……ん?……! す、すまない。つい……?」
「い、いや……その、嫌、ではない、けど……驚いた、だけ、で……」
思わず漏れた声に、ようやく自分の行動に気付いたように慌てて手を離すサーチマン。
自分でも何をしていたのか分からない、と言った顔で自分の手とホロウを見比べるその様子に、完全に無自覚だったのか……と妙な空気感になる一行。
【……あー、ンンッ。別れの挨拶は終わったか?】
どこからか聞こえる音声にびくりと肩を跳ねさせる。
作業開始時刻が迫っていると伝えてくる八神の声は、もう別れの時が近いことを示していた。
穴の方へ向かうホロウは、そこから離れる一行の方へ一度振り返る。
「改、めて、協力、してく、れて、あり、がとう。また……いや。これか、らも、どう、か、息災で」
「うん、こちらこそありがとう!キミも元気でね、ホロウ」
またいつか、と言おうとして、もう二度と会えないんだと気付き言い換えた。
笑って手を振るロックマンたちに目礼して、ホロウはその亀裂の中へと飛び込んでいく。
中は何も見えないが、“あちら側”からの信号はまだ途絶えていない。それを手繰るように、ホロウは振り返ることなく進み続けた。
……懐かしさすら感じる、身に馴染んだ床パネルを踏み締める。
馴染みのプログラムくんや常駐のナビたちとすれ違いざまに挨拶を交わしながら、目的の電脳へ。
科学省の一角、個別研究室のとある電脳。Pコードをかざしセキュリティブロックを通り抜けその中へと踏み込めば、目的の
「ようやく戻ったか……ご苦労だったな、ホロウ」
そこに立っているのはコート状の外殻を持つ漆黒の長身。ボディに走る青いラインは淡く輝き、モノアイタイプのフェイスパーツもゆっくりと点滅している。
「ん。ホロウ、指令、通り、無事帰還、した。……ただい、ま、レーザーマン」
犯人は萌生(もぶ)。元科学省の研究員だったけど色々あって辞めさせられた男。
時空タワー電脳にギリギリ残ってたスラーの残滓データとか鋳造プログラムとかコピーロイド工場とかを偶然入手しちゃって気が大きくなった結果やらかしちゃった小物。
うちうちクロスという名のかわいい子(?)に旅(???)をさせるシリーズでした。
途中で中の人が状況に違和感を抱いてしまったことにより若干かわいそうなこと(見慣れた相手から不審の目を向けられる)になったけどかわいそうはかわいいのでヨシ!
最後の方はだいぶ趣味に走った。反省はしていない。
tips:ホロウの教育係はレーザーマン(バックアップ復旧製)
tips2:修復プログラム(シュシュ)を作ったのはリーガル(記憶喪失済み/科学省所属)