先出しした部分とはちょっと変わっています。
「……ナンバーズ支援機、
そう言ってその場に控えた、自分と同型の機体が起動したのが約半月前。
そして今、進行方向の先ですい、と通路の奥に消えていく影。
……また、だ。
また視界から避けるように姿を消したそれに、知らず
──明らかに避けられている。
回収したコアを元に、
最初の顔合わせ以降、メタルマンはまともにその顔を見ることすらできていなかった。
……いや、支援機としての役割は十全に果たしているのだ。
実際に自分を含めたナンバーズたちの負担は軽減しているし、どこか普段の任務でも“動きやすくなった”という認識はある。
ただ本当に、その姿を見ることがないというだけで。
まあそれに関しては、エチュード自身が博士のおられるこの研究所から離れることが現状ないため、必然的にこの研究所に来る機会の少ない彼らが遭遇する機会がないというだけだろうが。
そう考えると、同じくこの研究所に常駐している
「(……会いたい、と思っていたのは俺だけだったのだろうか)」
無駄に気分を落ち込ませながら、メタルマンは自身のやるべき作業をこなすために再び歩みを進めるのだった。
「……という相談を受けたわけなんじゃが、申し開きはあるか?」
「……………」
突然呼び出しを受けて、そんな話を振られたエチュードの動きが止まる。
向けられた視線がふらふらと泳ぎ出す──これはエチュードが思考する際の癖のようなものだ──のを観察しながら、ワイリーは返答を待った。
「……解答。当機は、各ナンバーズへの適切な対応が解りません」
「ほう?」
「事前入力したデータに従うのであれば、当機はナンバーズにおいて“弟”もしくは“後輩”、あるいは最初期の設定に従い“姉”となるものと判断します。しかし、今現在まで安定していた集団に対し“密接な関係性を保有する新たな要因”を加えることは不和を招く危険性がある、とデータベースに記録されていました」
ドクターも新たなナンバーズの制作の際、元々いる部隊に加えるのではなく新たに部隊を新設していますし。と付け加えるエチュードに、ワイリーは僅かに唸る。
確かにそうだ。作戦行動における機体数の調整の意味合いもあるが、我が強いもの同士を分けておくという意味合いも無くはないのだ。一部が絶対面倒なことになるので。
「そのため、当機は現在既に完結しているコミュニティに対し接触を最低限にするべきと判断しました。ですが、それが別の方向で問題を生じさせているのならば、この対応は間違っていたものと思われます」
「ふーむ……なるほどのぅ。ならばどうする?」
「対応を変えるべきであると判断します。しかし、突然変更し不信感を抱かれる可能性を考えると、どのタイミングで切り替えるべきか判断ができません」
「ほほう……と、言うことらしいが」
す、と自身の背後に向けられた視線を追い振り返ったエチュードの目に映ったのは、赤い装甲を持つ自身の同型機の姿だった。
「!メタルマン……」
作戦行動時ほどセンサー類の感度を上げていないとはいえ、ここまで接近されていて気付かないとは……と表情に出さず驚くエチュード。わざわざ機体識別コードを隠してまで、支援機の背後を取ろうとするとは思わなかった。
「ま、あとはお前さんらで上手く折り合いをつけるんじゃな。ワシはお前たちの行動には不必要に関与するつもりは無いからの」
ひらひらと手を振り退室していくワイリーの背を目線で追い、改めてお互いの目の前に立つ機体を見据える。
「……エチュード。今の、話は」
「……肯定。当機は、当機の意思でナンバーズへの接触を絶っていました。……それが間違いであることは、今認識しましたが」
「そうか……俺はてっきり、お前が俺達のことを嫌っているのかと」
「否定。それはありえません。当機は支援機として、各ナンバーズに対して拒絶の意思を持つことはありません」
きっぱりと宣言されたのは“機械として”の言葉。
あくまでプログラムに従っている、とも取れるそれに眉をひそめたメタルマンの聴覚器に、さらに言葉が続く。
「いえ、それだけではありません。……当機は、貴方々セカンドナンバーズがまだ設計段階の頃から電子頭脳が起動していました。機体そのものはなくとも貴方々の存在を認識し、共に立てる日を待ち望んでいました。……その機会は一度失われましたが、今当機はこうして貴方々と……片割れとも呼べる貴方と共に在れることを、とても喜ばしいことと認識しています」
控えめに、そろりと伸ばされた手が相手の手に触れる。
「故に、当機は貴方々を、貴方をいとしいと思いこそすれ、厭うことは決してありません」
相手を真っ直ぐに見据えて、エチュードはその意思を吐き出した。
そうしてしばらく見つめ合い、突然ふいと視線が逸らされる。
「……………訂正。今、すごく恥ずかしいことを言ってしまった気がします。忘れてください」
「いや、ちゃんとメモリに保存して保護をかけた。これは永久保存だな」
「メタルマン……!」
ぐ、と握る手に力が込められると同時に、機体の内部システムに侵入者アリとの警告がメタルマンの電脳内に現れた。
「おっ……と、許可なく他機体に接続するのは、感心しないぞ?」
「なら、そのデータを、っ消してください」
内部で攻防を繰り返しながらの口喧嘩。
以前の関係のままであれば絶対に起こりえなかったであろうそれに、メタルマンはマスクの下でひっそりと笑う。
共に在れる喜びを感じていたのは自分だけではなかったことに安堵して、しつこく侵入を繰り返してくる弟に対し改めて向き合うのだった。
基本放任だけど相談は聞いてくれるし必要ならセッティングもしてくれる系お父さんことワイリー博士(自作DWN限定)とブラコンメタル。
メタルマンの一人称、私も俺もいいな……となった結果公私で使い分けてもらうことにしました。一粒で二度お得!