空狙 1
は、と何かが噛み合ったように、一気に自己が確立する。
周囲に立ち並ぶのは“誰か”が強者と定め、かき集めたデータから複製された
そうだ、“オレ”は……オレも、それらと同じく自己を持たないコピーだったはずだ。
そう、そして、これからコピー同士で殺し合い、喰らい合い、
──ざり、と、無意識に足を引いた音が、静かな電脳空間へ嫌なくらいに響く。
──ぐりん、と、無数のコピーたちの視線がこちらへ向けられた。
……音声プログラムが搭載されていれば、ひゅ、と喉から引きつったような音が漏れていただろう。
なんの
それは、ただひたすらにココロを支配する“恐怖”だった。
協力要請を受け、機密データ盗難の容疑がかかる研究所への突入。
現実世界側と同時に研究所の電脳に突入した彼らの前に現れたのは、盗まれたデータから構築されたのであろう無数のコピーナビたちだった。
恐れも怒りも、感情すらなく淡々と、プログラムされた通りに“敵”を排除するだけの抜け殻たち。
自分たちの姿を持つそれらの見た目にこそ戸惑うものはいたが、その力はオペレーターを持つオリジナルには及ばない。数だけは厄介だが、それでも彼らの足を止めるには至らない。
研究所の広い電脳を制圧するため、彼らはそれぞれの電脳ブロックへと分かれていった。
的確に急所を撃ち抜き、次々とコピーナビたちをデリートしていくサーチマン。
セキュリティなのか複雑な経路を持つ電脳空間をひとつづつクリアリングしていく中、集音プログラムがふと小さな物音を捉えた。
物音を検知したのは乱雑にデータブロックが山と積み上げられた領域の奥。見通しの悪いその空間の物陰にナビ反応を検知して、サーチマンは〈スコープガン〉を構え直す。
あちらは動く気配がないようだが、警戒は解かずに歩みを進め……
──カン、と足元に転がったそれが炸裂する。
一瞬確認できたそれは〈サーチグレネード〉と同形式ではあるが、どうやら破壊力のない煙幕による目くらましの爆弾のようだ。炸裂までのカウントが短かったのは、ピンを抜いたあとギリギリまで保持されていたからだろうか。
突然の事ではあるが、その対処は慣れたものだ。慌てることなく〈スコープガン〉を構え、煙幕の中を駆け遠ざかろうとする“それ”を撃つ。
狙いは誤たず命中。急所は避けられたようだが、回避で随分と無理な体勢を取ったらしい。そのままバランスを崩して積み上げられたデータブロックに突っ込んでいった。
……コピーナビにしては、動きが妙な気がする。
先程まで相対していたそれは、標的を認識したら手足が吹き飛ぼうが構わず愚直に突き進み武器を振るうようなものばかりだった。
己の命が尽きようと構わず命令を実行するだけの
それがこんな小手先の策を用いたり、ましてや敵前逃亡をするような個体が存在するのだろうか。
煙幕の効果が切れたのか、崩れ落ちた山に半ば埋もれた“それ”の姿がゆっくりと露になる。
ダメージにより一部がパーティクル化した、迷彩柄の装甲。
指貫グローブ状のアームカバーに覆われた手が床パネルを掻いて、崩れたデータブロックから抜け出そうともがいている。
銃口を向けた先、ゆっくりと上げられた顔の横で、肩にかかる程度に揃えられた髪パーツが揺れた。
……どこか怯えたように顔をひきつらせ目を見開いた
「……動くな。両手を頭の後ろに、そのまま床に伏せろ」
投降を促せば、びくりと肩を跳ねさせながらも指示に従う素振りを見せる。
どうやらこちらの言葉も通じているらしい。これも他のコピーナビとは違う点だ。
ちらちらとこちらを伺うように視線を向けはするが、抵抗の意図はないようで大人しく伏せたままのコピーナビ。
『サーチマン。上からの要請だ。そいつを無力化し確保しろ』
「了解」
転送された拘束・転送用プログラムを手に、それの下半身を埋めるデータブロックを蹴り払う。
未だ怯えを見せ震えるその身を手早く拘束し、武装プログラムにロックがかかっていることを確認してそのまま転送プログラムを起動した。
マジで夢で見たネタの回でした。続きは未定。