そこここで爆音と剣戟の音が響き、狭い電脳が揺れる。
無様に逃げ回るオレをわざわざ追うものはいないらしい。それでも飛んでくる流れ弾は当たり所によっては致命的、足を止める訳にはいかない。
すぐ背後で炸裂したボムの爆風に吹き飛ばされ、受け身も取れずゴロゴロと地面を転がった。
直撃を受けたらしいコピーナビの腕が目の前に落ちて、ばらりとパーティクル化し分解されていく。
“次はお前だ”と示すようなそれに、オレは音にならない悲鳴を上げて身体の痛みも構わず起き上がり駆け出した。
がむしゃらに走り回っていたら、いつの間にか見覚えのない場所にたどり着いていた……そもそもオレはあの
しばらく周囲を見回して、こちらへ近づいてくる足音に慌てて物陰へ身を隠す。
……複数の足音はそのまま通り過ぎていった。ほう、と息を吐いて再び周囲の確認へ戻る。
周囲にはデータブロックが積み上げられ、いくつも山になっていた。おそらくはデータの集積場……のようなものなのだろうか。
……遠くで、戦闘の音が聞こえる。
音のした方へ目を向ければ、勝手にその音の発生源が“視えた”。この身体は、少しだけ目がいいのだ。
……複数のコピーナビと、“誰か”が戦っている。
どうやら、それらの相手をさせるためコピー達があの部屋から放出されているらしい。
オレは気付かないうちにそこを通って部屋の外へ出ていたようだ。
つまり、さっき通っていったやつらもその相手をするため向かっていったのだろう。
ならしばらくは戻ってくることは無さそうだ。緊張状態から解放され、身体から力が抜けた。
物陰に隠れたまま傷ついた身体を引き寄せて、膝を抱えて縮こまる。ひとつひとつは小さな傷でも、累積すれば無視できないダメージが溜まっていく。
休んだところでデータで構築された身体は時間経過で修復されることはない。
今のうちに遠くへ逃げてしまった方が。ここからどこへ逃げるっていうんだ。
ぐるぐると思考が巡り、どうすればいいかが定まらないまま時間ばかりが過ぎていく。
オレはそこから動けないまま、抱えた膝に顔を埋めた。
……再び足音が聞こえて、ぎくりと身体が強ばった。
今度はそのまま通り過ぎることはなく、こちらへと確実に近付いてきている。
ガチャリ、と装甲が擦れ合う音が少しづつ、少しづつこちらへと迫る。
震える手でグレネードを手に取って……爆風でちぎれ吹き飛んだコピーナビの記憶が頭を過ぎり、慌ててピンを抜く手を抑え中身のプログラムを書き換える。
もう距離は無い。ピンを抜き、カウントを数え、炸裂するギリギリで相手の足元へと転がした。
炸裂音とともに広がる煙幕。
狭い小部屋いっぱいに白が広がり、視界が塞がる。
幸いこの目は煙幕の中でもある程度は見通してくれる。一気に物陰から飛び出し、部屋の出口を目指して駆け出した。
──視界の外で、こちらへ向けられる銃口が、嫌にはっきりと“視えた”。
反射的に横に飛ぶ。
ギリギリ急所を外したが、脇腹の装甲を抜いてその内側を僅かに抉っていった感覚。
痛みに足がもつれて目の前のデータブロックの山に突っ込んだ。
ガラガラと崩れたブロックが身体を打ち、息が詰まる。
痛みを堪えながら腕に力を入れるが、上に降り積もったデータブロックに阻害され身体を起こすことは叶わない。
……足音が近付く。焦りで手が床を滑る。
ついに、その足元が視界の内へと入る。
緑の迷彩柄の装甲をゆっくりと辿りながら、恐る恐る顔を上げる。
真っ直ぐに向けられた銃口の向こうで、オレと同じ顔をしたそいつと目が合った。
(……あ)
──はっきりとした意思を宿す目、揺るぎない立ち姿。
(無理、だ)
──オレたちなんかとは違う、圧倒的な存在感。
(
(オリジナルすら、越えられない──)
これがオレの“オリジナル”なのだと理解した瞬間、オレの芽生えたばかりの自己はあっさりとへし折れてしまった。
コピーサチ、オリジナルに即落ち屈服するの回(言い方)
発生したばかりのぴゅあぴゅああかちゃんな自我が秒で殺し殺され蠱毒パーリナイ()に晒された上圧倒的強者(コピー視点)オリジナルに脳焼きされてしまったらそらぁメンタルなんて極細ポッキーより簡単に折れますって……