トライガンゲイル・オンライン   作:ばうむくうへん

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bullet 2 プラントの声

その惑星には二つの歴史的事件があった。

 

一夜にして大都市ジュライが「地図から姿を消した」ロストジュライ。

 

惑星上に点在する5番目の月に「大穴を穿った」フィフスムーン。

 

惑星史上最大規模の惨劇と恐怖を齎した二つの事件にはある共通点があった。

 

それぞれ発端となった場所である一人の男の存在が目撃されていたのだ。住人の一部から悪魔(ディアボロ)と畏怖されたその姿は、たなびく金髪を天を貫かんばかりに突き立て、真紅のコートを身に纏う。

 

破格とも言える賞金をその首に掛けられた男は「600億$$(ダブドル)の男」として、世界中の賞金稼ぎからその命を狙われ続けた。そして人類史上初の局地災害指定を受けたその男の異名は「人間台風(ヒューマノイドタイフーン)」と呼ばれ、時を重ねるごとに通り名は変化していく。

 

しかして男の真の名は・・・・。

 

 

 

 

「・・いててて!・・あ~あ、随分深くまで落とされちゃったなぁ・・。」

 

男が頭上を見上げると、先程までいた場所と思われる光がほんの少しばかり照らしていた。登って行くにはとても無理な高さである。これほどまで深部に身を落とされながらもほとんど無傷でいられたのはその身に纏う耐熱・耐寒・耐衝撃素材コートの性能と男自身の身のこなし、そしてまるでこの場所に導かれるかのように開けた空間に降り立っていたことだった。

 

「・・・・・・。」

 

男は無言のまま迷わずに歩を進める。突然の暗闇で夜目が効いてないにも関わらず、指示されたかのごとくその足を動かしていた。やがて男は足を止める。その目の前には一つの「命」があった。

 

「・・『プラント』・・!?こんなところにまだ・・!?」

 

男が呼ぶ『プラント』とはこの劣悪な環境の星において人間が生活するうえで必要不可欠な生産ユニットである。プログラミング次第で無から有を生み出すその奇跡とも呼べる技術は大変重宝され、大都市には必ずといっていいほどこのプラントの恩恵を預かった人間たちが富を得、生活を豊かにしていった。そのプラントが何もない荒野の地下洞窟において静かにたたずんでいたのである。

 

「こんなところに一人ぼっちで・・寂しかったろ・・『兄弟』。」

 

男がプラントの外郭であるガラス面に触れた瞬間、機能を停止していたと思われていたプラントが突如稼働を始める。

 

「・・・あなたを・・待っていました・・。」

「・・・意識が・・!?・・・『自立種』・・なのか・・!?」

 

プラントから発せられた声に男は驚く。プラントとは只のエネルギー源ではない。それ自体に意志があり、命がある。故にプラントを扱う上で人道的な問題や宗教的な問題まで発生し、時には争いの火種ともなっている。

 

「俺を待っていたとは・・どういうことだ?」

「・・もうすぐ・・この世界は・・消滅します・・。」

「・・なっ・・!?」

 

プラントからの返答に男は目を見開く。プラントが語る「世界の消滅」とは決して飛躍した表現や揶揄ではない。無から有を生み出すことのできるプラントは「世界」をも創造できる。だがしかし世界を誕生させるほどのエネルギーは到底計り知れない。ただ一つ確かなのはこの惑星を含め、惑星から遠く離れた地球、その全てを巻き込み、そして終わらせるほどのものであることだった。

 

「あなたを呼んだのは他でもありません・・私を止めてください・・。」

「俺が・・止める・・!?」

 

男はその一言ですべてを理解した。プラントを止める・・それは一つの命を奪う事であった。その為にこのプラントは自分を呼んだのだと。『同胞』である自分を。

 

「あなたに頼むことは酷であることを承知しています・・。ですが・・。」

「・・・俺に・・引き金を引けと言うのか・・!?」

 

この世界の全ての生きとし生ける者、それらの命とたった一つの命。命の重さを天秤で図ることができるのであればその結果は明々白々。だがしかし男は腰に掛けた銃を手にすることはできなかった。

 

「俺には・・できない・・!」

 

男にはある誓いがあった。この星に生ける者、いや全ての人類の母とも言うべき女性に向けたある誓いを。その決意が男の指を動かせずにいた。いや、動かさなかった。

 

「俺には選べない。彼女が愛したこの世界も、君も・・!・・だから!」

 

男はプラントの外郭に両手を翳すと、自身の意識を集中させる。

 

「まさか・・『共鳴』を・・!?あなたの力で抑え込もうと言うのですか・・!?」

 

何故男にプラントと意識を共鳴できるのか。それはこの男自身『プラント』だからに他ならない。その昔、ある船団で『自立種』として生まれ落ちた男は長年この惑星に身を置き、人類を見守り続けていた。

 

「おやめなさい・・!このままでは・・あなたもろとも・・!」

「やってみなくちゃ分からないだろ・・!それに世界が生まれるってことは新たな命が生まれるって事だ・・なら!」

 

そして男は極限まで意識を集中させる。この男の天秤には秤がもう一つあったのだ。この世界に生きる全ての命、目の前にいるプラントの命。そして世界が誕生することで生まれる新たな命。そのどれもを男は諦めていなかったのである。

 

「あなたは・・なんという・・!」

「おおおおおぉぉぉぉぉぉ・・・・!!!」

 

そして眩いばかりの光が周囲を包み込んだ。その光景は世界の終焉か、プラントの命が尽きるのか、どちらの光なのかは定かではない。

 

光が収まったその場所に残されたのはプラントのみだった。この世界は救われ、またプラントの命も救われた。しかしその場に男の姿はなかった。

 

「あなたは・・新しい世界にいったのですね・・。」

 

意識を一時的に共有していた為か、プラントには確信があった。男は生きていると。そして男が新しく誕生した世界へ向かったことを。

 

「あなたがその世界に行くこともまた巡り合わせなのでしょうか・・。」

 

「・・・ヴァッシュ・ザ・スタンピード・・。」

 

 

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次回からGGOの世界に行きます。
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