トライガンゲイル・オンライン   作:ばうむくうへん

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前回より大分お待たせしてすみませんでした。
ヴァッシュVSキリト お届けします。


bullet 26 GUN×SWORD

「ソードアートオンライン」

 

仮想空間による限りなく現実に近い世界を体感できるVRMMORPGというジャンルの祖にして爆発的人気を誇ったゲームである、それまでの端末を直接操作するのではなくあたかも自分自身の体を使って動く、話す、攻撃すると言った革新的な機能を持つVRマシン、ナーヴギアの性能を活かした今作品は既存のゲームを全て過去の遺物にせしめるほどのものとなった。

 

次いで発売された「アルヴヘイム・オンライン」はソードアートオンラインでは存在しなかった「魔法」や「飛翔」といったファンタジーの要素を取り込んだことにより幅広いユーザー層を獲得、VRMMORPGの認知度をさらに拡大・波及させることになった。

 

その二大作品においてプレイヤー間で伝説的扱いを受けている者が存在することは両作品のいずれかをプレイしたことがある者であれば知らぬ者はいないとされている。

 

「黒の剣士」という異名を持つその名の通り全身を黒づくめに纏い圧倒的な剣技と速さを持って史上最速でSAO・ALOを攻略した伝説のプレイヤー、元来パーティやギルドに所属して攻略を進めていくゲームをほぼ独力で制覇したその姿は猛々しい大男であるとも死神のような不気味な雰囲気を纏うとも噂話に尾ひれがつきその実態は誰にも知られていない。

 

だがその正体は年端もいかない少女である、GGOほどでないにしても男女比が激しいSAOにおいて彼女は顔立ちの整った少年のようなアバターを使って剣技のみの格闘必至の世界を勝ち抜いてきた、その常人離れした反応速度による剣戟は他を寄せ付けず、ALOにコンバートしてからは魔法の世界においてもその身一つで大地を、空を駆け抜けた。相手に出来る者は敵CPUはおろか他のプレイヤーただ一人として存在しない、少女はあまりにも強すぎた。

 

 

プレイヤー名「キリト」と名乗る少女は特別な人間ではない、ごくごく平凡な少女である。体が少しだけ弱く機械いじりが得意という少女らしからぬ趣味を持っていたことと実の家族だと思っていた父、母、兄が自身が幼い頃に死別した両親に代わり引き取った親戚であるという事実に気付くまでは。

 

そんな彼女が現実と隔絶されたVRMMORPGである「ソードアートオンライン」に傾倒することは至極当然の成り行きとも言える。病弱な自分が周りの人たちと遜色なく活動できることがたまらなく嬉しかった。

 

欲を言えば性別も男に変えて何もかもを現実世界の自分と切り離してしまいたかったが、異性のまま長時間VRMMORPGをプレイすることは精神衛生上推奨できないと行政機関より指摘があったため、その願いは叶わなかった。

 

せめてと思い少女が自身のプレイヤー名に選んだのが「キリト」という名であったがその名が彼女が思慕を寄せている義理の兄の氏名を縮めたものだという事実が皮肉にも彼女が女性なのだという最も強い表れでもあった。

 

 

……………

 

瞬く間にヴァッシュに接近したキリトは体を大きく捻りながら光剣(フォトンソード)を握った右腕を真っ直ぐに突き出す、SAOでソードスキルと呼ばれる特殊な剣技の一つ「ヴォーパルストライク」という突進技であるが、当然規格の異なるGGOにおいてその技を発動させることは不可能である。

 

だが類まれなるセンスと経験を経たキリトにとってモーションを再現したその技はとても模倣と呼べるものではなかった、その光の剣筋がヴァッシュの胸を貫くとそのまま後方の岩盤を粉々に打ち砕く。

 

それは銃という遠隔武器が主体のGGOでは無用の長物と化している光剣(フォトンソード)カゲミツG4の性能とキリトという伝説のプレイヤーの実力を示すには十分過ぎるほどの光景であった。

 

だがキリトはヴァッシュの胸を貫く直前に1発の銃声を聞いていた、そして胸を貫いたはずの剣に感触がないことを不思議に思い周囲を見渡す、とその背後で前転途中の体勢で寝転んでいるヴァッシュが目に付いた。

 

「…流石ですねぇ、剣が刺さる直前に発砲の反動を利用して避けるなんて」

「お褒めに預かり光栄だよ、…もう帰っていいかな?」

「ええ、どうぞ、そのままじっとして頂ければすぐに終わりますよ」

 

冗談めいた言葉を聞いたキリトはそのまま寝込んだ姿勢のままのヴァッシュを追撃すると、身を起こしたヴァッシュがキリトの剣を左に身をよじって躱すがそれを予知したのか自動追尾するかの如く剣筋の軌道を変えた刃が迫る。

 

懐に飛び込んだキリトの剣がヴァッシュを今度こそ捉えたと思われたが乾いた荒野に閃光とともにバチバチと激しい音が鳴り響く。ァッシュが握る回転式拳銃(リボルバー)の銃身でキリトの刃を防ぐと、二撃目、三撃目と両者の間で稲光が響き渡る。

 

その立ち会いはさながら二人の剣士による決闘と思わせる程でありモニターからその様子を伺う観戦者もGGOにおいて未だかつてない戦いぶりに恐怖を纏っていた目を再び輝かせた。

 

キリト自身GGOで自分の剣を銃身で受け止める相手に目を開く、初撃ならいざ知らずその後の神速とも言える太刀筋を毎々見切り反応するヴァッシュにかつての世界でここまで自分の剣を防ぐ相手はいなかった彼女にとって、連撃を一つ、また一つと防がれる度にその表情は笑みに包まれていった。

 

一方のヴァッシュには余裕がなかった、先手を取った一撃を防がれその直後の反撃から現在の連撃に至るまで守勢に回っているものの一向に反撃の糸口を掴めずにいた為である。かつて「サムライ」と呼ばれる剣士とあいまみえた際にも感じたことではあるが、遠距離武器に対し接近戦を挑む相手とは銃という本来の射程範囲の最たる位置に構えている。故に挙動に対してダイレクトに反映してしまうためにキリトの舞うような剣戟に照準を合わせられずにいた。そしてなによりもこのキリトの「疾さ」がヴァッシュに急所を外して発砲させるという選択を許さなかった。

 

「ほらほら、守ってばかりじゃ勝てないですよ」

 

息もつかせぬ連撃を浴びせながらもキリトにはまだ相手を挑発させるだけの余裕があった、モニターを介してヴァッシュの戦いを見守るイクスとダインも今までにないヴァッシュの余裕のなさに息を呑んだ。

 

やがてキリトの剣が徐々にヴァッシュの身体を捉え始める、直撃は避けてはいるものの掠めた頬の肉が灼け耐熱素材のコートは肉体にこそ届かないものの表面温度の上昇によるものか蒸気を立ち上らせる。

 

キリトがヴァッシュを仕留めるのは最早時間の問題と思われた時ヴァッシュは一つのことを「信じて」銃を構える、向かう銃口の先にはキリトの顔があった。

 

 

 

低く重い銃声が一発、両者の間に響く。

 

 

 

キリトは光剣を縦正面に構えていた、外傷は見られない。至近距離からのヴァッシュの射撃すら反応し咄嗟に防いでみせたのだ。いや正確には「防がされた」のだ。キリトがカゲミツG4を正面に構えて銃弾を防いたことにより生じた一瞬の視界情報の途絶、その隙にヴァッシュはキリトの間合いから大きく脱し逆に自身の間合いへとキリトを追いやる。

 

「…驚きました、貴方は急所を狙わない方だと思っていたので」

「…君なら必ず防いでくれると信じていたからね」

 

もしキリトが防いでいなければ確実にヴァッシュの銃弾はキリトの眉間を撃ち抜いていた。それはヴァッシュにとって自身の命を投げ出すことと同義といっても過言ではない。裏を返せばそれ程までの賭けをしなければこの均衡を崩すことができなかったとも言える。危機を脱したヴァッシュであるがその表情からは一切の余裕が感じられなかった。

 

「…一つ聞いていいかな?君もさっきの男の最期を見ていたはずだ、それでもまだその剣を人に向けて振るうのかい?」

 

銃を構えつつ問うヴァッシュ、それを一時の時間稼ぎとも取れるがこの男がそんなつまらない真似をするはずがないことはキリトも重々承知している。

 

「質問の意味が分かりません、暴力表現はどうあれここはそういうゲームなんですよ?」

「…やっぱりそうなのか…、シノンも君も皆…そうなんだよな…そりゃそうだよな」

 

キリトからの答えをまるで予期していたかのようにヴァッシュはだらりと首を落とすとから笑いをする。一つ目を離せばその挙を突いて再びキリトが眼前に飛び込まんとも知れないなかであまりに隙だらけの挙動であったがキリトにはその一歩を踏み出すことがどうしても出来なかった。

 

目の前の男が放つ殺気とも怒気とも異なる様子を感じたためである、いうなればそれは哀愁それもとても物悲しさの。

 

何故そんな悲しそうな顔を浮かべるのか、ここは仮想世界のゲーム、現実とは隔絶された世界。だがヴァッシュの瞳が現実の満たされない自分、想いが届かない自分と重なるとそれまでVRMMORPGで決して浮かんでこなかった感情がキリトを包む。

 

「なんで…そんな目をするんですか…?ここは仮想世界で!現実じゃなくて!何でも出来る、許される世界なのに!」

 

ヴァッシュは何も応えない、それはキリトが望む答えを与えることができないからではなく、キリト自身に気付いて欲しいと願いを込めた無言の意思。そして言葉を返す代わりに装填を終えた銃をホルダーに収める、キリトもまたカゲミツを握る右手の力を強める、この男(ヴァッシュ)を倒すことで例えようのないこの胸のザワつきを沈めたかった。

 

そして両者が最初に交えた時と同様の状況、キリトはヴァッシュの瞳を見る、先の一幕ヴァッシュの銃撃を両断したのも銃口が向かう先の視線を追っていたものでありそれは常人では到底不可能な反応速度を持つキリトだからこそ可能な見切り、たとえそれが刹那の速度であろうとも捉えられぬものなどないと絶対の自信を持っていた。

 

ヴァッシュがホルダーの銃に手をかける、サングラス越しの視線はキリトの右肩を捉えておりヴァッシュが引き金(トリガー)を引ききる前にカゲミツを右肩の前に翳す。そして第二射の前には再びヴァッシュの懐に飛び込み自身の持つ「最大最強の火力」を叩き込む、そう算段した彼女は右肩に剣を構えたまま右足を踏み出した。

 

 

 

だが彼女の体はまるで磁石に引き寄せられたかのように後ろへと傾く、その事に彼女が気づいたときには視線は空を向いていた。

 

一体何が起こったのか視界に飛び込んだ夕暮れの空を見上げながらキリトは考える、確かに初弾を防いだはずの右肩が何かに押し戻された、次いで踏み出していた右足、左肩、左足と相次いで押し戻され気づいたときには空を仰いでいた、自身の身体を見た彼女は両肩両太腿から流れ出る赤黒い液体を見るとようやく状況を理解した。

 

 

ヴァッシュは先程を遥かに上回る速度、刹那をも超えた銃撃でキリトが光剣を持つ右手を掲げた際には既に右肩、右足を撃ち抜いていたのだ。常人を遥かに超えた反応速度を持つキリトの領域すらも容易く超えた一連の挙動はモニターを覗く観客らは突然キリトが後ろに飛び退いたと思えば次の瞬間には両手両足から流血している状況に到底理解が及ばない、回線接触不良のラグが発生したのかと疑うほど本来目にするべき光景の何コマが抜け落ちていた、いや飛び越えていたのだから。

 

「くぅ…!あぁぁぁっ…!い、痛い…痛いぃぃ…ッ!」

 

キリトは空を見上げながら徐々に出血箇所から昇る痛みと熱の奔流に苦悶の表情を浮かべる、彼女にとって銃撃を受けた衝撃すらも覚えがない、それに加えて運営の規制解除によるものなのか迸る痛覚に初めて恐怖を覚えていた。

 

「…ごめん、痛かったよね?ごめんよ、ごめん」

 

ヴァッシュは只ひたすらに頭を下げて詫びた、その態度がキリトにはとても恐ろしくまた堪らなく許せなかった。発砲は4発、残弾2発もあれば地にひれ伏す自身など容易に始末することが出来たはず、そうしなかったのは男の甘さかそれとも自分が「女」だからか。いずれにせよキリトはそれまでに味わったことのない感情・感覚を一瞬にしてその身に心に叩きつけられたことでヴァッシュに対して明確な殺意を向けた。

 

「貴方は…倒す、私が…倒す!」

 

両手両肩から止めどなく流れる血も全身を蝕む痛みも忘れる程の激情を持って彼女は突貫する、それは先に繰り出したヴォーパルストライクほどの突進力はないが左右に緩急を付けた動きでヴァッシュに迫ると瞬く間にヴァッシュの懐に飛び込む、振るった刃を銃身で受け止めたヴァッシュはそのまま銃身を滑らせるように光剣をいなす、そしてそのまま彼女の動きを封じようと構えるが目の前で彼女が取った挙動に一瞬、ほんの一瞬だけ反応を鈍らせた。

 

光剣を握っていたキリトがその手を返すと円を描きながらカゲミツが宙を舞う、自ら武器を放ったことで降伏の意思を示したのかとヴァッシュは空に舞ったカゲミツに目をやったが直後に自分の足元から迫る殺気に視線を戻す。

 

中腰の姿勢から左手を腰に回していたキリトが手にしていたのはもう一つの光剣カゲミツG4。起動させ立ち上る光の柱と共に彼女は低く小さくこれから始まるであろう剣戟の「技」を口にした。

 

 

 

「…スターバースト…ストリーム…ッ!」

 

 

 

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文字数が目指していた半分ですみません。。
年内にあと1話キリのいいとこまで書いてお届けしたいと思います。
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