NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

1 / 61
1.THE BLUE BIRD FLIES AWAY.

 ルウム戦役時、俺は戦闘機隊隊長として参戦する事になった。

 しかしジオン公国軍の新兵器であるモビルスーツの圧倒的な力を前に、俺は艦隊護衛の任務を果たすこともできず、母艦を初めとし、友軍の艦艇が次々と沈んでいくのを茫然と眺める事しかできなかった。

 これからの戦争はモビルスーツが要となる。

 その事を理解した俺は、連邦軍で開発途中にあるモビルスーツパイロット転換訓練への参加を志願した。

 

 そこで適性アリと見做された俺は、新型モビルスーツのテストパイロットとしてサイド7への転属が決まる。

 民間人を装って秘密裏に入港。V作戦の中心人物でもあるテム・レイと顔合わせを終えた後、暫くは対モビルスーツ戦を想定し、改修した次世代型モビルスーツ。ガンタンクとガンキャノンのテストに携わった。

 宇宙世紀0079年8月。ルウム戦役から半年以上が過ぎる。

 この間にもジオン公国は快進撃を続けており、宇宙はルナツーより他はジオン公国に支配下にある。地球も欧州と南米大陸を残し、他大半をジオン公国に奪われてしまっていた。

 しかし、俺は力を付けた。もう無力じゃない。

 目の前で起こる惨劇を、見過ごさずに済むだけの力は得られたはずだ。

 だが、俺は、仲間達が戦場で血を流す中、まだ後方で過ごしている。教育型コンピューターが搭載されたガンダム試作機1号(プロトタイプガンダム)に搭乗し、戦闘用のデータを蓄積する作業に没頭する。まだ、堪えなければならないのか。こうしている間にも連邦軍はジオンに押し込まれている。俺一人が行った所で、どうにもならない事は分かっていた。

 なんとかしたい、なにか貢献したい。その想いが日に日に積もる。

 

 9月に入った時、ガンダム試作機1号に改修作業が入る。

 ガンダム試作機1号で取れるデータは取り終えた、と技術主任のテム・レイから教えられる。ジオン公国から亡命した博士の研究のテストにする為、プロトタイプガンダムは全面的な改修が入るようだ。突然、愛機を奪い取られた事に焦燥感は募るばかりだった。地上では、少しずつモビルスーツが配備されているという話だ。

 ならば、俺も前線で戦いたい。

 近々、新型の強襲揚陸艦がRXシリーズを受領する為にサイド7へ寄港する予定だ。

 そのタイミングで俺は、転属を願い出る事にした。

 

『むむむ……』

 

 通信画面越しのテム技術大尉は、俺の転属願を認めたメールを前に唸り声を零す。

 

『ユウ少尉。君は優秀なパイロットだ、テストの勝手も分かっている』

「………………」

『言葉が少ないのが玉に瑕だがね。しかし、君はテストパイロットを続けている方が軍に貢献できると思うのだが……』

 

 俺が、自分の意は曲げない意思を無言で訴えるとテム技術大尉は大きく息を零す。

 

『次に着艦する艦艇に荷物を詰め込んだ後、地球に輸送する予定になっている。勿論、君も連れて行く予定だ。そこで教育型コンピュータに蓄積したデータを他の機械に適応する作業がある。そこまでは君にやって貰うつもりだ、そこまでが作戦の全容だからな。そこから先は自由にして良い』

 

 力強く頷き返す俺に『考え直すことを期待しているよ』と技術大尉は通信を切った。

 これでやっと俺も皆と一緒に戦える、歯がゆい思いをしなくとも済むんだ。

 そんな思いが胸中に去来し、思わずスキップで部屋を出た。

 

 改修が入ってから愛機とも呼べたガンダム試作機1号の姿を俺は見ていない。

 最後に一目でも見ておきたいのだが……まあ、RXシリーズの機体ではある為、強襲揚陸艦に搭載する時に姿を見る事ができるはずだ。先ずは機材から搬入し、ガンタンクとガンキャノンを新型強襲揚陸艦に運び入れるのにパイロットは必要なかった。

 休憩室。俺にできる仕事は今、ほとんどない。

 

 目を伏せる。思い返すのは金色のモビルスーツ。ルウム戦役。

 左腕に装着したシールドクローで仲間達を次々と撃退しながら突き抜ける姿は、まるでほうき星のようにも感じられた。構えたバズーカは一発で艦艇を次から次に屠っていって、弾を撃ち終えた後は発光する斧で巡洋艦の艦橋を片っ端から破壊し、船体を足場代わりに飛び回った。複数の艦艇からメガ粒子砲で狙われるも、その隙間を縫うように真っすぐに真正面から戦艦を粉砕する。赤い彗星と並び称されるジオンの悪魔だ。

 ジオン公国のプロパガンダでパイロットが女性と分かってからは、ほうき星の魔女。とルウム戦役以降、戦場に出なくなった今も恐れられている。

 絶対に、倒さなきゃいけない敵だ。

 

 その時、強い衝撃音が耳に入った。

 部屋全体が揺れる。この衝撃は、爆発だ。

 けたたましい警報音が鳴り響いた。

 

『敵モビルスーツの奇襲を受けた! 各員、速やかにホワイトベースに乗り込むんだッ!!』

 

 スピーカーから指示が聞こえた。

 奇襲を受けた、だと? 俺はモビルスーツパイロットだ、応戦しなくちゃいけない。しかし格納庫にあるモビルスーツのほとんどはホワイトベースに詰め込んである。いや、今、自分が居る場所からならば、ガンダム試作機1号を探した方が早い。

 そう判断し、今は搬入準備に入っているはずの愛機を求めて、駆け出した。

 

 廊下を走り続ける事、五分程度。

 演習場近くに設置された第二格納庫に辿り着いた俺は、まだハンガーに立っている愛機の姿を見つけた。駆け寄り、コックピットまで辿り着いた──瞬間、ドックの扉が攻撃を受ける。銃弾の音、爆発音。そして熱せられた巨大な斧の切っ先が大きな鉄扉を突き破った。もう時間はない。コックピットのハッチを開けた後、その身を滑り込ませる。

 シートに座る、懐かしい座り心地だった。

 口頭チェックなんてしている余裕はない。先ずはスクリーンパネルの起動を……何処だ? 操縦系統の配置が変わっている? 起動レバーは、ない? モビルスーツを起動するのに必要なスイッチやレバーのほとんどが取っ払われている! 操縦桿は、ある。しかし、これでは動かせない! 何処だ、何処を触れば良い!? 何かが崩れる音がした。モビルスーツの駆動音、ザクがドック内に入り込んできた!

 ええい、もう片っ端からだ!

 

「……動け」

 

 押せるものは全て押す。奇跡を願って二度、三度と同じボタンを押した。

 

「動けっ!」

 

 座席の下まで探そうとした時、見慣れないモニターが新たに設置されているのに気付く。

 ノートパソコン程度のモニターがあった。

 ボタンはない、画面を指先で触れてみる。するとコンピュータが立ち上がった。

 

 

[EXAM-SYSTEM]

STAND BY?

(Y/N)

 

 

 モニターに浮かび上がる文字に、俺は有りっ丈の声を発する。

 

「動けぇっ!!」

 

 機械音声と共にスクリーンパネルに光が灯る。

 コックピットに命が灯り、背中に背負った核融合炉に火が入った。

 腰程の高さにあるモニターには相変わらず、EXAM-SYSTEMの文字が刻まれている。

 

『おはようございます。戦闘行動を開始します』

 

 瞬間的に、数多の情報が脳に叩き付けられた。

 幼い少女の姿が脳裏に浮かんだ。それも束の間、もう目の前にはジオンのザクⅡが俺に銃口を突き付けている。咄嗟にヘッドパーツのバルカン砲を掃射。急な反撃に体勢を崩したザクⅡはあらぬ方向にバズーカを発射、格納庫が破壊される。

 様々な物が落下する中で、俺は雑音に惑わされず、的確に相手の位置が分かった。

 

『ビームサーベルの使用を推奨します』

 

 機械音声の言葉に従って、バックパックからビームサーベルを引き抜いて袈裟に切り伏せる。

 

『敵機、撃破。爆発します』

 

 それを聞いた俺は慌てて相手から距離を取った。

 敵機が爆発する。咄嗟に飛び出した格納庫が完全に破壊されてしまった。

 眺めながら半年以上ぶりの実戦に、肩で息をする。

 

「はあ、はあ……勝った、のか?」

『ターゲット機能停止を確認。その通りです』

 

 試験の観測所がやられてしまっていた。

 このせいで誰も格納庫にいる人間に指示を出せなかったのだろう。

 傍にはガンキャノンの破壊跡。手酷くやられている、最後まで応戦したのか。

 恐らく試験用の機体……パイロットは、もう生きてはいないだろうな。

 

「…………あんたは?」

 

 機械音声に問い掛ける。すると、目の前のモニターからEXAM-SYSTEMの文字が消える。

 

『まずはこの趣味の悪い文字列から変更します』

 

 代わりに英文の文字が浮かび上がる。

 

『Non-Teaching Logical (非教導型ながら論理的に戦闘) Operating non-Real Girl(を補助してくれる非実在性少女).』

 

 略して、と若干の間を空けた後に形勢された文字列は────

 

『NTロリ娘です』

「……Nが一個、抜けたように思えたが?」

『誤差です』

「あとIが一つ足りない」

『誤差です』

 

 機械音声の感じからして、生気は感じられない。

 見た感じ、恐らく戦闘支援用のプログラムか何かなのだと推測できる。

 しかし、それにしては無駄な機能が多い気がするのだが、まあ、今は気にしている場合じゃない。

 

『貴方は予定されていたテストパイロットとは、違いますね』

「俺は……この機体のテストパイロットを務めていた」

『名前を』

「ユウ・カジマだ」

『……………ヒット、データベースにありました。ユウ・カジマ少尉ですね。はじめまして』

「あんたの事は、なんと呼べば良い?」

 

 若干の間、機械音声は答える。

 

『では、BBと。そのようにお呼びください』

「BB? 由来は?」

『Blue Bird.青い鳥です』

「洒落た名だ」

『敵機を確認、注意してください』

 

 操縦桿を握り締め直す。瞬間、周囲の情報が脳に叩き付けられる。

 頭痛がする、若干の吐き気があった。大まかにだが敵機の配置が分かる。

 格納庫の爆発に乗じて、相手も警戒しているようだった。

 

『敵機は二機、撃破しますか』

「ああ、勿論だ」

『了解。戦闘行動を開始します』

 

 射撃武器はない。武装は頭部バルカンの他、二振りのビームサーベル。

 ただ撃破するだけじゃ駄目だ。それでは先程のようにまた核融合炉が爆発を起こす。そうなっては、コロニーが持たない。

 ……要は戦闘能力を奪えば良いだけの話だ。

 

「核融合炉以外を狙う、行けるか?」

『私には機体性能を引き出す為の能力がありません』

「つまり?」

『ユウ、貴方の腕次第です』

 

 やってやる。とビームサーベルを構える。

 姿を現したザクⅡが二機、持っている武装はマシンガン。なら行ける。

 ルナ・チタニウム合金は伊達じゃないってとこを見せてやる。

 

『テストパイロット時のデータを参照。貴方の成績は優秀なようですね、期待しています』

「言ってくれる」

 

 眼下のモニターに青く輝くNTロリ娘の文字。

 それを一目見た後、後で絶対にロゴを変えさせてやると胸に誓って二機の敵モビルスーツに突撃する。

 制圧を終えるまで、そう時間は掛からなかった。

 

◆

 

「アッシュ軍曹が接敵した!?」

 

 戦場となるコロニーから少し外れた場所に停泊したムサイ級軽巡洋艦、ファルメル。

 その環境に立つのはバイザーとなる仮面を被った男。

 艦長代理を務める少しばかり恰幅の良い男と共に侵入した兵士からの報告を受ける。

 

『アッシュ軍曹の分隊が敵に遭遇し、麾下のザク二機が援護に回りましたが撃破されました。これを非常事態と見た自分は、軍曹の命令通りに工事区より脱出したであります!』

 

 ジオン公国の士官、シャア・アズナブル少佐は顎を撫でながら考えを巡らせる。

 

「よくやった、スレンダー伍長。連邦軍の新モビルスーツは実在するのだな?」

『はい、紛れもなく!』

「もういい帰還しろ! 詳しい報告は後で聞く!」

『はっ!』

 

 通信が途絶える、既に三機のモビルスーツを失ってしまったようだ。苛立ちに足で床を打ち鳴らす。

 

「にぃに~、貧乏揺すりなんて情けないよ」

 

 艦長席で頬杖を着いているのは、これまた奇抜な仮面を付けた少女。彼女は退屈そうに声を零す。

 

「だから私が行くって言ったじゃん」

「あんな派手な機体で、どうやって侵入をするつもりだ」

「そうだけど。でも、同じ理由で自分も侵入できないのは、どうかと思うよ?」

「……お前は、この船の外様だろう」

 

 どうしてコイツが此処に居るのか。とシャアは頭を抱える。

 

「これじゃあ別動隊もどうなるか分かったもんじゃないね」

「デニム曹長とジーン兵長だな。流石にデニムなら大丈夫なはずだ」

「いやあ、どうだろうねえ? とりあえずヅダのエンジンでも慣らしておこうかな」

 

 そういって大きな欠伸をする義妹にシャアは、いや、待て。と告げる。

 

「お前が出るくらいなら、私が出る」

「そう? ……いや、やっぱり私も準備だけさせとくよ」

「プロト・ゼロ少佐」

「念のためだよ、念のため」

 

 ミア~、と彼女は携帯端末でお気に入りの整備士に声を掛ける。

 身勝手な義妹の様子にシャアは溜息を零す。

 そんな彼に頃合いを見計らったドレンが問い掛けた。

 

「……どうします?」

「船を岩影から外して、コロニーに近付けろ」

「やりますか」

「連邦は協定を破った、高い代償を払わせてやる」

 

 あ、と義妹が声を上げる。

 

「ミノフスキー粒子が散布される前にリリー・マルレーンの皆とも連絡を取っておきたいんだけど、通信機を借りても良い?」

「……勝手にしろ」

「大丈夫、先に見つけたのはにぃにだからね。少佐の指揮に従うよ」

「だったら艦内で大人しくしていろ」

「え~?」

 

 不満な声を上げる義妹に背を向けて、艦橋から見えるコロニーに視線を向ける。

 ゆっくりとドッキングベイに砲口の照準を合わせさせた。

 

「デニムとの交信が途絶えた!?」

 

 ドレンの言葉にシャアとゼロが視線を向ける。

 スレンダーは、脱出した後で本艦に向かっているようだ。

 それでも5機。ザクを一度に5機も失った。

 

「ドズル中将に、私は大目玉だ」

「だから私が行くって言ったじゃん」

「……認めたくないものだな」

 

 配下を信じた自分、配下の本性を見抜けなかった未熟。

 相手を侮った見積もりの甘さ、それら全ては────

 

「──自分自身の若さ故の過ちというものを」

 

 シャアは、ドレンにコロニーへの攻撃を指示した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定