NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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10.突撃、隣の軍事拠点!

 ルナツー、それは地球連邦軍にとって宇宙での最後の砦。

 というのが表向きの理由だ。

 

 V作戦がサイド7で研究、開発が進められた理由の一つには、ルナツーから最も近い場所に建造されたコロニーという点がある。

 それはルナツーが地球連邦軍、宇宙艦隊にとっての本拠地であり、謂わばサイド7は連邦軍の御膝元と呼べる立ち位置にあったのもあった。だが、最大の理由はルナツーで採れる鉱石にある。

 月の環境下で採れるチタン系鉱石。これは希少ではあっても他でも採れる鉱石であったが、ルナツーのチタン系鉱石は良質でもあり、V作戦で開発したモビルスーツには、この鉱石を用いた合金が幅広く活用されている。V作戦の集大成とも呼べるガンダムの開発は、ルナ・チタニウム合金の研究と同義であると言っても過言ではない。

 ガンダムの持つ強大なパワーと機体強度は、ルナ・チタニウム合金あっての性能である。

 

 V作戦で開発したモビルスーツがジオン公国の性能を凌駕したのは、ルナツーで採れる資源の恩恵が大きい。

 

 ジオン公国にとって良質なチタン系鉱石は希少な資源だ。

 その為、公国軍はルナ・チタニウム合金を贅沢に使うような研究を進める事が出来ず、ミノフスキー粒子を用いた核反応炉の構造材として活用するのが精一杯であった。よって公国軍には、RXシリーズ*1に用いられた装甲材に何が使わているのか皆目見当も付かない状況だ。特にルナ・チタニウム合金は、ルナツーで採れる良質な鉱石を使う事で漸く少量の量産に成功している代物である。

 

 今はまだ公国軍にとってのルナツーは、宇宙要塞以上の価値はない。

 しかし、モビルスーツ開発において、連邦軍が公国軍にアドバンテージを取り続けていられる唯一の理由が、このルナツーで採れる良質なチタン系鉱石だ。ルナ・チタニウム合金は核反応炉の構造材でもある為、その品質はダイレクトに核反応炉の性能にも影響を与えている。装甲は勿論、関節部等の負荷の掛かりやすい箇所にルナ・チタニウム合金を用いる事で強い負荷にも耐えられるようになり、結果的にジオン公国のモビルスーツでは耐え切れないパワーを出す事も可能となっていた。

 連邦軍のモビルスーツ開発史は、ルナツーと共にあるといっても過言ではない。

 

「その事をジオンに知られるのは拙いのだ」

 

 ルウム戦役の手痛い敗北の後、ティアンム中将が提唱するビンソン計画に基づいて宇宙艦隊の再建に勤しんできた。

 しかし、それも公国軍の宇宙支配を脅かさない範囲での話だ。まだ対モビルスーツ戦の有効な手立てもない現状でドズル率いる宇宙攻撃軍に目を付けられてしまっては、連邦軍は為す術もなく公国軍にルナツーを明け渡さざるを得なくなる。それは来たるべき反攻作戦の橋頭堡を失うだけでなく、良質なルナ・チタニウム鉱石を公国軍に渡すことを意味する。

 そうして公国軍がモビルスーツの装甲材として、ルナ・チタニウム合金の開発に成功した暁には、連邦軍は公国軍に抗う術を永遠に失う事にもなりかねない。

 

「パオロ中佐。何故、ルナツーに逃げ込んで来たのですか?」

 

 振り返り、移動式ベッドで横になるパオロを睨み付ける。

 ルナツーの重要性を公国軍に知られてはならない。その状況下で彼はV作戦の軍事機密そのものであるホワイトベースに民間人を乗せてルナツーまで避難して来たのだ。頭が痛くて仕方ない。民間人を収容して欲しいという話をブライト少尉がしていたが、それも難しい。制宙権*2を公国軍に取られている今、地球との連絡も満足に付けられない。出来るだけルナツーの戦力を小さく見せる為に物資輸送も必要最低限に留めており、食料の余剰分なんてルナツーにあるはずもなければ、ルナツーの資源惑星としての価値もまた民間人にも知られてはならない軍事機密の塊であった。

 今はまだ民間人をホワイトベースから降ろすことすらも許していない。

 

 最善は、V作戦に関わる全ての機体を封印して隠す事だ。

 しかし強襲揚陸艦であるホワイトベースをルナツーの中に隠しておけるだけの空間もなければ、装甲材にルナ・チタニウム合金が使われている彼の艦船は、処分する事も難しい。装甲材の欠片ひとつが既に軍事機密である為だ。

 そして艦艇と機体を封印したところで民間人の扱いが残っている。

 中立宣言をしたサイド6の適当なコロニーに難民として受け入れてもらうのが一番だが、サイド3以外のコロニーは自活できるだけの設備が整っていなかった。百人程度の民間人。細かく分散するにしても、その手続きをする間はルナツーに拘留し続けなくてはならない。高々、百人程度。さりとて、百人。軍事機密に触れさせず、収容し続けるだけの場所を確保するのも難しい。

 本当に厄介事を持ち込んでくれたものだ。

 ホワイトベースがルナツーにあるというだけでも公国軍の警戒は高まっている。

 

「そういえば、あの若い士官。赤い彗星がムサイ級で攻め込んでくると言っていたな」

 

 そんな馬鹿な真似をするはずもない。と一笑に付す。

 もし、やるとするならば、V作戦の全容を暴く為にルナツーに潜入してくるはずだ。

 相手がホワイトベースやガンダムを狙うだけであれば、問題ない。

 備えておけば、良いだけの話だ。

 しかし、その過程でルナツーの実情を暴かれる方が問題であった。

 何故、V作戦がサイド7で計画されていたのか。

 その真意に辿り着かれては、ならんのだ。

 

「……ワッケイン君、子供達を…………」

「あの子達も巻き込まれて気の毒だと思いますが、軍法会議に照らせば銃殺刑は免れないでしょう」

「…………どうにか、ならんか?」

「無自覚であっても、彼らのやった事は重罪です」

 

 少なくとも戦時中の解放はありえません、と私はパオロ中佐から目を逸らした。

 拘束した民間人は、アムロ・レイ。カイ・シデン。セイラ・マス。ハヤト・コバヤシ。ミライ・ヤシマの計5名。いずれも軍事機密に関わった者達だ。軍人で拘束したのはブライト少尉の他数名、奇襲に賛成した中で下士官以上の階級の者に限る。ユウ・カジマ少尉。リュウ・ホセイ曹長。ジョブ・ジョン伍長の三名は、軍事機密に触れていたが艦長代理であるブライト少尉の指示に従っていただけだと判断し、今回は拘留を見送った。

 

「もし手立てがあるとすれば、彼らを連邦軍に取り込んでしまう事です」

 

 しかし、と私は続ける。

 

「それをするのであれば、最初から地球を目指しておくべきでした。私も軍人です、軍人としてルナツーを守る義務があります。ルナツーを守る事と拘束した民間人を解放する事は相反する事なのです」

「……君は、頑固だな」

「そうでなくては、ルナツーを守り切る事はできませんよ」

 

 自分の階級は少佐、軍事拠点の司令官としては分不相応な肩書きである。

 しかし、それには理由がある。ジオン公国から見たルナツーは、四方を敵軍に囲まれて孤立した軍事拠点。まだ宇宙の全ては公国軍の手に落ちていない、という体裁の為に維持を続けている無意味な要塞。宇宙攻撃軍が攻撃を仕掛ければ、少なくない損害を被るかも知れないが、落とす事だけを考えればそう難しい話でもない。そんな場所に司令官として派遣されたのは、少佐の若造だ。侮るよりも先に同情されているかも知れない。

 まだ佐官の若造が派遣された場所が、ジャブローに匹敵する連邦軍の急所だとは今日までバレずにいる。

 

◆

 

 ブライト少尉が拘束を受ける事になった。

 逃げる選択があったにも関わらず、勝手に軍事機密を作戦に使ったのだから当然だ。戦場で功績を上げたからといって好き勝手やられてしまっては規律を保つことができない。逆に作戦の責を末端の将兵に担わせない事は、規律を維持する上で重要な事だ。尤も連邦軍の最高機密を知る俺達が軟禁に近い扱いになってしまうのも仕方ない話。ブライト達と比べて、少しマシといった程度だ。

 上層部と通信を取り、自分達の扱いが決まるまでは軟禁は続くのだろうな。

 

「俺達、どうなってしまうんでしょうね」

 

 ジョブ伍長の言葉に「ブライト達の事も気になるな」とリュウ曹長が飲み物を口にする。

 銃殺刑とまでは行かずとも軽くない処分が下されるはずだ。また民衆の心情的にも民間人を拘留し続ける事もできないだろうし、戦時中は非戦闘員としてルナツーで雑用をさせられる事になるんじゃないかな。

 立場的に民間ボランティアとして。俺とジョブ伍長、リュウ曹長は適当な部隊に配属となるはずだ。

 

 ガンダム試作機1号は、どうなるのだろうな。

 所詮、機械。所詮、人工知能。そんな事は分かっている。

 そこに情を持つのは一兵士として愚かだ。

 だが、あのBBと名乗ったAIは、道具にするには少し人間味があり過ぎる。

 封印はさておき、破壊される事になるのは嫌だな。と少し思った。

 

◆

 

 改ザンジバル級機動巡洋艦リリー・マルレーン。

 特殊任務用に再設計された本艦は、機動力を重視した設計となっており、艦橋周りが最新で高性能な装備に一新されている。搭載しているモビルスーツは7機。ヅダが3機、ザクが4機だ。ヅダ1機は予備戦力であり、ミア専用となっている。私の愛機であるゴールデン・ヅダはまだ故障中、もし次に戦闘があった時はミアのヅダを貸して貰う予定だ。

 そして今はキャスバルと合流する為に急行中、相手が襲撃と勘違いしないように微速前進だ!

 艦長室、煩わしい仮面を放り投げた私はベッドで就寝中。ファルメルの時とは違って、リリー・マルレーンの皆は私の正体を知っている。まだ15歳の私の配下になる事も抵抗はない。まあ実際に本艦の指揮を執っているのはシーマ大尉だし、むしろザビ家の後ろ盾が得られて安心だと皆、笑っていた。

 実際問題。誰かの上に立つなんて柄じゃない、お飾りで良いのだ。

 

「ま、意思決定権は私にあるけどね」

 

 元海兵隊の皆は、ジオン公国よりも私個人に忠誠を誓っている。

 偉そうに上から物を言うだけの簡単な仕事、艦橋に居る必要すらない。私がやりたい事を口にすれば、後は周りが勝手にやってくれる。手筈と準備を整えてくれる。同室のミアを抱き枕にしたいと言えば、彼女は生贄に差し出される。モビルスーツ戦となれば、私が最前線で戦うのだ。メンタルケアは大事なのである。

 ベッドから目覚めた時、頭はボサボサだった。

 手入れが面倒なので、仮面を付けない時は髪を括っている。お父さんと一緒に暮らしていた時はお母さんが髪の手入れをしてくれた。ザビ家に居た時は使用人が私の髪を梳いてくれた。今はミアとシーマがやってくれる。二人とも忙しい時は、頑張る時もある。今回は頑張れなかった、それだけの話だ。ボサボサ髪をポニーテールにまとめる。自分でやる時は高めのポニーテール、うなじが涼しいからだ。ミアとシーマがやる時はローポニーテール、偶に髪を編んだりされる時もある。ローポニーテールよりもハイポニーテールの方が好きなんだけど、自分で綺麗に結ぶ方が面倒なので二人の為すがままだ。

 こういうのはやりたいようにやらせておくのが良いとお母さんで慣れてしまった。

 

「髪の毛洗うのも、乾かすのもめんどくさ~い……切りた~い……」

 

 うつらうつらとする頭の中、適当に身嗜みを整えて部屋を出る。

 

「あっ」

「おや」

 

 ばったりと出くわしたのは190センチ超えのシーマ様。

 なんと私との身長差40センチメートル以上。別に様付けする必要はないんだけど、なんとなく様付けしたくなる男勝りな御姉様だ。彼女はまだ寝惚けている私を脇に担ぎ上げると、そのまま出た部屋に連れ戻されてしまった。椅子に置かれる。髪は解かれて、寝ぐせ直し用のスプレーを吹きかけられた。ほわほわとした気分のまま、髪にブラシを当てられる。毛先から順々に整える。最後はローテールにまとめて解放された。

 まだ頭の中がぽやっとする。寝起きは苦手だ。一生、寝て過ごしたい。

 ねえ知ってる? 二度寝が一番、気持ちいいんだよ。

 

 シーマに好き勝手された後、ぽやぽやした頭で部屋を出る。

 洗面所で顔を洗って、歯ブラシでシャカシャカ。くちゅくちゅっとペーッてしたら少しは頭も冴えてくる。

 ちょっとすっきりとした気分で扉に手を掛ける。

 

「あっ」

「ん?」

 

 タオルで口元を拭きながら廊下に出ると可愛い顔を煤と油で汚した相棒の姿があった。

 ミアは私の顔をジッと見つめた後、私の手を引いて洗面所に連れ込んだ。彼女は先ず自分の顔と手を洗った後、濡らしたハンカチで私の目元を拭い取る。その後、化粧水を馴染ませた両手で顔全体をパンパンと叩かれた。その後、保湿クリームを顔全体に塗りたくられる。石鹸と化粧水に混じって、少し鉄と油の臭いがする。

 特別、美容に興味がある訳じゃないのだけど、そういう事で手を抜く事をミアは許してくれなかった。

 というか自分の事よりも入念に世話されている気がする。髪を解かれる。三つ編みにまとめた後、改めて髪留めのゴムで括られた。ここでの正解は静観。適当な事を言うと面倒な事になるのは、過去の経験から学んでいる。

 ミアが満足気に頷く、漸く開放された。

 ギューッとお礼のハグをした後に艦橋に足を運んだ。

 私が寝ている間に起きた事の報告を耳に入れて、キャスバルが補給で奇襲を受けた事を知った。リリー・マルレーンの皆は私の正体を知っているけども、キャスバルの事までは知らない。知っているのは私の他にシーマだけだ。キャスバルは今、戦闘に使ったモビルスーツの調整に追われている。

 ヅダは信頼性に欠ける、と愚痴を零していたというようだ。

 失敬な、ザクの信頼性が高過ぎるだけなんだよ!

 

「今はルナツーで補給と修理をしている所でしょう、ルナツーを出た所で攻めますか?」

 

 ブリッジクルーの言葉に、結論を出した私は軽い調子で口にする。

 

「それじゃあルナツーに潜ってみる?」

 

 その瞬間、艦橋の皆は驚愕に私を見つめた後、満面の笑顔を浮かべた。

 あらほらさっさとノリノリで準備を始める戦闘狂の皆々様、まだ艦橋に来ていなかったシーマが事態を把握し、ズカズカと艦橋に入って来た。

 そして「一言、相談しな!」と私の脳天に拳を叩き込むのだ。

 まだ決定した訳じゃなかったのに! 勝手に勘違いしただけだもん!

 潜るけど。

*1:
ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクの三種。ガンキャノンとガンタンクはV作戦用にルナ・チタニウム合金を用いたモビルスーツとして再設計されている。

*2:
制海権、制空権の宇宙版。

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