NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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13.儘ならない。

「ガデム大尉。少しの間、この艦を預かってはくれないだろうか?」

 

 ファルメルの艦橋にて、私の言葉にガデムは目を見開いて振り返る。

 私達が補給の時、白い木馬の奇襲を受けた後の話だ。カナリア率いる元海兵隊の面々がルナツーへの侵入作戦を決行し、しかし成果は得られなかった。その結果、程なくしてルナツーから白い木馬が姿を現す。上官のドズル中将に援軍を要請し、コンスコン艦隊が準備を始めた矢先の出来事である。

 カナリアからの報告により、白い木馬には妹のアルテイシアが乗り込んでいる事が分かった。どうして連邦軍に手を貸しているのか分からない。というよりも彼女は何時、軍属になったというのか。地球連邦軍の徴兵に巻き込まれてしまったのかも知れない。いずれにせよ、私とカナリアの間で白い木馬を撃墜するという選択肢は失われた。鹵獲が最優先、決断は私情から来ているが、公国軍の利に沿っていない訳ではない。

 今更、敵の新型モビルスーツを破壊した所で大した意味はない。

 それは新型の開発データは、既に司令部へと受け渡されている事が予想される為だ。少なくとも途中経過の報告は入れているはずであり、現物が完成している以上、その情報のほとんどは司令部と共有されて然るべきであった。故に破壊したところで、同じ新型が新たに建造されてしまうか。もしくは新型を改良した機体、量産機の開発が既に進められているはずである。

 よって公国軍が求めるのは新型機の破壊ではなく、新型機の鹵獲。もしくは、開発データの確保になる。

 

 以上の理由を以てコンスコン艦隊と合流した後、直ぐにルナツーに攻め入るだけの価値があった。

 わざわざ木馬を撃墜するまでもない、それが目的ではない。だが白い木馬がルナツーから出て来たとなれば、話は別だ。ルナツーに攻め入る意味はなくなり、まだ準備中のコンスコン艦隊を待っている時間も失われた。

 動くは今、即席で相手の大気圏突入に合わせた奇襲作戦が実行に移される流れとなる。

 

 W・コムに搭載できるモビルスーツは4機。故に出撃できるモビルスーツも4機だ。

 私、キャスバル・レム・ダイクンことシャア・アズナブルもまた愛機の赤いザクに搭乗して出撃する事になる。他には、黒いヅダのニムバス・シュターゼン准尉。赤いヅダのペッシェ・モンターニュ准尉。ノーマルカラーのザクのパイロットであるクラウン曹長。設定した臨界点を突破する前にW・コムへと戻る手筈だ。

 目的は、ジャブローに降下すると予想される木馬を公国軍の支配下に落とさせる事にあった。

 そうなれば、後は如何様にでも料理する事ができる。あわよくば角付きの出撃を待って、大気圏の中に放り込む事も作戦に組み込んであった。

 角付きは二機もいる。一機、撃墜した所で問題はないし、なんなら二機共に破壊してしまっても良い。

 木馬を鹵獲すれば、新型の情報も手に入る。それで十分だ。

 

 当然だが、この作戦を決行した後、コムサイに乗船する者はそのまま地球に降下する事になる。

 W・コムにはドレン少尉も乗せる予定がある為、今、乗っている艦であるファルメルを指揮する者が居なくなってしまうのだ。半ば放棄したようなものだ。ドズル中将が適当な人材をファルメルの艦長に当てるのであろうが、この艦に愛着がない訳でもない。今まで世話になった部下の事も含めて、どうせなら知った人間に艦を任せたいというのが嘘偽りない心情だ。

 能力は勿論、人柄も信頼できるガデムにファルメルを任せたかった。

 

「私の無茶に半年間、付き従ってくれた者達だ。歴戦のガデム大尉には物足りないかも知れんがな」

「……艦を失ったばかりの人間に、任せるというのか?」

「敵将にジオンは兵なしと呼ばれるような国だ、貴殿のように有能な人材を遊ばせている余裕があるとでも思ってるのか?」

「少佐も人が悪い。少しは老骨を労わってくれても良いのだぞ」

「老後の楽しみは、戦後まで取っておいて貰おう」

 

 次の艦長が決まるまでは面倒を見てやる、とガデムは観念して笑ってみせた。

 野戦任官に近いものであるが、ドズルならきっと良いように取り計らってくれるはずだ。ガデムにまた指揮を振るって欲しいのは、ドズルの方なのだ。このままなし崩しで正式にファルメルの艦長に任命するのは目に見えていた。そして戦時における将兵は、腕の良い上司に指揮を執って欲しいと思うのは当然の事。

 ガデムが戦線に復帰するのは最早、確定事項と言っても良かった。

 

 アルテイシアの事は、まだドズルには伝えていない。

 公国軍の艦艇に装備された通信機は、全て記録に残ってしまう為だ。

 カナリアとの通信でも、アルテイシアの名前は出さなかった。

 

 もし仮にドズルに伝えるのであれば直接、顔を合わせた時を於いて他になし。

 まあ尤も、私個人としてはドズルに伝える気はなかったりする。

 それは彼が一軍の長である為だ。今の彼は、私事の為に判断を覆す男ではなかった。

 余計な心労は掛けない方がお互いの為だと考えて、

 アルテイシアの事は、私とカナリアの二人でどうにかすると決意する。

 

 戦後、私は軍を抜けるつもりだ。

 今でさえも惰性で続けているようなものである。

 アルテイシアと二人で、できればカナリアと三人で戦いとは縁のない生活を送りたい。

 それが許されるのだとすれば、きっと私達がダイクンの遺児である事を隠し通せた時だ。

 だからダイクンの遺児を理由に、軍を動かす事はできなかった。

 もし、助けを求めるにしても、それはやれるだけやった後の話になる。

 

◆

 

 どういう訳か、俺はまたホワイトベースに乗艦している。

 格納庫の横にある休憩室にて、自販機で手に入れた飲み物を片手に溜息を零す。

 正直、この問題だらけの艦からは手を引きたいと考えていた。どう考えても戦闘に民間人を関わらせるなんて、正気の沙汰ではない。艦長であるブライト・ノア少尉は経験不足な事もあり、突飛な行動を取る事があるし、ミライ・ヤシマという民間人が彼の相談役を気取っている事も気に入らなかった。

 だから、ルナツーで艦を降りた時は、ホワイトベースと縁を切る良い機会だとも考えた。

 

「ユウ少尉、戻らないのですか?」

 

 ホワイトベースの出航が決まった時、俺にリュウ曹長が問い掛ける。

 リュウ曹長とジョブ伍長の二人は、ホワイトベースを自分の帰る艦だと思っていた。だから当たり前のようにホワイトベースに戻る事を受け入れている。しかし俺は、二人のように物事を簡単に考える事はできない。二人はまだ18歳、学費の免除と毎月の生徒手当に惹かれて軍学校に入学した口である。

 モビルスーツパイロットの適性試験で基準値を満たした二人は、パイロット候補生として今回のホワイトベースの遠征に従軍している。モビルスーツに触った事もなければ、何回かシミュレーターに乗った事があるだけだ。リュウ曹長はルウム戦役にて、偵察用に換装したセイバーフィッシュで出撃し、撃墜された戦歴を持っている。

 リュウは戦争を経験している。しかし、二人は23歳の俺から見ても若過ぎた。

 年齢ではない、考え方の話だ。楽観的過ぎる。

 

「……思えば、あのブライトって奴も19歳だったな」

 

 艦一隻を任せるには、余りにも若い。

 どうせ送り出すのであれば、ルナツーから艦を任せられる人材を出して欲しいものだ。これはマゼラン級宇宙戦艦で出撃する際に、ルナツーの司令官であるワッケイン自身が乗り込んでいた事から期待はできない。それを抜きにしても人事異動には手続きが必要だ。地球連邦は法治的な制度を取っている為、法律を超えた動きをすることは難しい。その上、ワッケイン司令は、階級の上では少佐である。尤も、こんな事を言い始めれば、独断による民間人の現地徴用も越権行為ではあるのだが。他に生き残る手段がなかったといえば、それまでの話とも言える。

 兎も角、公国軍の襲撃を受けた直後、出航しなくてはならなくなった今となっては手続きを取る時間が足りなかった。

 悩める俺に、連邦兵の一人が俺に伝令を伝えに来た。

 足早に案内を受ける。部屋にはワッケイン司令、ベッドで横になったパオロ中佐が待ち構えていた。

 

「ユウ・カジマ少尉。命に従い、入室します」

 

 敬礼を取る。楽にしてくれて良い、と言われたので敬礼を解いた。

 この部屋でパオロ中佐が俺に言ったのは、ホワイトベース隊の皆を守って欲しいという事だ。無責任な事を言ってくれる、と思った。しかし、あの艦に残っている戦闘員の中で最年長なのは自分だ。俺以外に頼れる人間が居ないのもまた分かっている。そもそもだ、連邦のモビルスーツパイロットに軍歴はほとんど関係ない。連邦軍が開発したモビルスーツの実用化が進められたのは、ルウム戦役以後の事であり、モビルスーツ同士の戦闘は鹵獲したザクとザクの戦闘しかない。

 今の連邦軍で最も熟練したパイロットは、自分だという認識はあった。認め難い事ではある。

 

「……それで、厄介払いですか?」

 

 ただで死にたくはない。と言外に告げる。

 ワッケイン司令は苦笑する。

 

「君達には、ガンダムに蓄積された教育型コンピューターのデータをジャブローに持ち帰って貰わねばならない。ここで回収しても良かったのだがガンダム試作機1号は、仕様とは大きく異なっていたようでな。2号に着手する前に公国軍がルナツーに潜入して来た。これ以上、時を掛ける訳にはいかない」

「……ホワイトベースを追い出してでも守りたいものが此処に?」

「勘が良いな、連邦軍の急所とだけ言っておくよ」

 

 君達を簡単には見捨てない。とワッケイン司令は答える。

 実際問題、教育型コンピューターのデータは膨大だ。通信回線では、長い時間を必要とする。ミノフスキー粒子の散布下に紛れてしまえば、通信が途切れてデータを壊さずに転送する事が難しかった。そもそもの話として、最重要の軍事機密を通信回線を開いて送信する事が大きなリスクだ。

 ワッケイン司令から正式な命令を受けて、ホワイトベースをジャブローに輸送する?

 いや、違う。俺達はパオロ艦長の命令に従って、ホワイトベースをジャブローまで運ぶのだ。

 

「見捨てないでくださいよ」

 

 もし仮に、そうなってしまった時に民間人が暴動を起こす可能性がある。

 地球に降り立った後、命惜しさに連邦軍の新兵器をジオン公国に明け渡そうと考える者は当然、出て来るはずだ。そうならない為にも、連邦軍は俺達を見捨てていない。という証が必要になる。

 それも見えやすく、分かりやすい形で。

 ワッケイン司令もその辺りの事は分かってくれているのか、静かに頷き返してくれた。

 

「命令に従います」

 

 俺がそう告げた時、ワッケイン司令が僅かに気を緩めたのが分かった。

 

 部屋を出る、整えていた身なりを崩す。

 安堵の息を零す。何故、安堵したのか。

 ああだ、こうだ、と言った所で、

 結局の話、俺はホワイトベースに残る理由を探していただけなのかも知れない。

 

 モビルスーツパイロットを志した時を思い出す。

 俺は無力なまま、味方が倒されている光景を見ているだけだったのが嫌だった。

 だから力を求めて、モビルスーツパイロットに志願した。

 根本には、それがある。今の俺には、力がある。

 

 ホワイトベースに戻った後、休憩室で水分を摂取した俺は拘束帯が取り外されたガンダム試作機1号のコックピットに乗り込んだ。

 モニターに触れる。画面が光り、NTロリ娘のロゴが浮かび上がる。

 

『おはようございます。ユウ、待っていました』

 

 とりあえず、このロゴの変更をBBに要求する。

 結局、俺はガンダムを手放したくなかっただけの浅ましい男なのかも知れない。

 口には出さない。例え、それが本心であったとしても口に出すべきではない。

 俺が、助けるんだ。

 ホワイトベースに乗っている連中で、俺が一番、年上だから守る。

 公国軍の連中に、好きにやらせてやるものか。

 

「……ユウさん。それ、人工知能なんですか?」

 

 BBに機体のチェックをさせている時、天然パーマの少年が話しかけて来た。

 

「ハロなんかよりも、ずっと高度ですよね、それ」

『はじめまして。独立型戦闘支援AI、BBと申します』

「えっ? 僕を認識している?」

『貴方のお名前もお聞きしてもよろしいでしょうか?』

「凄いな、意思疎通もできるのか……」

『お名前は?』

「ああ、ごめん。アムロ・レイだよ」

『アムロ・レイですね。失礼ですが、レイ技術主任の御家族でしょうか?』

「そんなことまで分かるのか」

 

 目の前に俺がいるにも関わらず、アムロは嬉々としてBBに話しかけ始めた。

 未知の人工知能を前に目を輝かせる少年の姿を見て、若いなあ。と俺は溜息を零す。

 程なくして、地球降下が始まる。

 赤い彗星による奇襲が知らされたのは、すぐ後の事だ。

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