NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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2.かくして、ガンダムは大地に立つ。

 地球連邦軍の中でも最強と謳われていたティアンム艦隊。

 その艦隊はブリティッシュ作戦の時、地球圏に落とされたコロニーを食い止める為に全身全霊を尽くす。「空が落ちて来た」と後に語られる絶望的な質量を前に艦隊司令官のティアンム中将が怒号を飛ばす。「ジオンの屑共なんか気にするな、全砲門をコロニーに放てッ!」という命令が記録に残っており、公国軍の護衛艦隊に無防備を晒したままコロニーを迎え撃ったのだ。

 逃亡は許されなかった。背後には自分達の故郷、20億人。不法住居者も含めれば、倍以上の人口が地球にいる。

 自分達は地球の守護者である。如何に地球連邦政府の高官が腐敗していたとしても、スペースノイドが圧政を受けていたとしてもだ。それを理由に何億人、何十億人という数の人類を無差別に虐殺しても良い理由にはならないのだ。軍事における全滅とは全体の3割以上の損害、壊滅が5割以上の損害。一般的に組織の維持が不可能とされる基準値を超えて、尚も抗い続けた無敵のティアンム艦隊は七割の損害を出した。

 本来、落とすだけであれば、コロニーの耐久問題はクリア出来ていた。

 しかし公国軍の攻撃を無視したティアンム艦隊の決死の抵抗がコロニーの空中分解を誘発し、地球に与える衝撃を分散し、被害を半分程度に押し留める。ジオン公国の高官も、護衛艦隊も、まさか攻撃を無視されるとは思っていなかった。完全に無視していた訳ではない。コロニーに打撃を与えられない艦船や戦闘機は、他の艦船の護衛に回されている。しかし、それでも攻撃を食い止められるものではない。味方の艦艇が次々と撃ち落とされる中で、それでもティアンムはコロニーを撃ち続けるように指示を出し続けた。

 だが、コロニーは落ちた。

 ティアンムは守れなかった地球を、宇宙から眺めた。地球連邦政府の高官は、ジャブローを守れた事に作戦成功の賛辞を送った。

 しかしティアンムの顔は晴れなかった。

 彼は英雄だ、それは紛れもない事実だ。ティアンム艦隊の決死の抵抗が被害を最小限に抑えた。もし、仮に空中分解を起こさないままジャブローに落ちていた時、ジャブローだけではなく、地球全体が駄目になっていた可能性だってあったのだ。

 彼と彼が率いた艦隊の名は、地球を守った英雄として人類史に刻まれる事になるだろう。

 

 ティアンムは残存戦力を掻き集めた後、艦隊を再編する。

 この時点でティアンム艦隊は、経験豊富な将兵の多くを失っている状態となっている。サイド2とサイド6の残存戦力を取り込んで、辛うじて数だけは揃えた状態となっている。

 後詰めのレビル中将が率いる本隊だけが彼の頼みの綱となっており、自分はレビル艦隊の到着までの時間稼ぎだと割り切った。この時、レビルとティアンムの考えは一致しており、合流後に公国軍を撃滅する事を二人は決めていた。

 この決断には、ジオン公国の御前会議の情報がリークされていた事も影響している。

 

 ザビ家の力を削ぎ落とす為、過激なダイクン派に資金援助を続けていた高官の一人が連邦軍に情報を流したのだ。勿論、連邦軍は諜報機関を使って裏付けを取っている。

 

 リークされた情報。つまり、公国軍の作戦は以下の通りだ。

 先ず、キシリア率いる突撃機動軍がレビル艦隊を撹乱して時間を稼ぐ、その稼いだ時間でドズル率いる宇宙攻撃軍がティアンム艦隊を撃滅。その後に宇宙攻撃軍と突撃機動軍でレビル艦隊を挟撃する。

 この情報を仕入れたのでティアンムは、堅守を崩さなかった。

 レビルは、強行軍での合流を図った。

 

 しかし、これは公国軍の罠だった。

 公国軍の目的は、最初から連邦軍本隊への奇襲。ティアンム艦隊に一当てした後、レビル艦隊に急行する。

 他にも細かい作戦は多々あった。ミノフスキー粒子散布下での通信障害による情報伝達の不備、有視界戦闘の不慣れ。緻密な計算に偶然が重なった結果、ジオン公国は一世一代の大博打に歴史的勝利を収める。

 こうして連邦軍は八割近い損失を被る事になり、レビルは捕虜になった。

 

 裏でサイド6を介した休戦条約の話が進められる中、表では公国軍がルナツーとサイド7を除いた全ての宙域を制圧する。

 

 連邦軍が宇宙戦力の大半を失った今、あえてコロニーを落とす必要はない。

 マスドライバーを用いて岩塊を撃ち出す戦術は、相手に十分な艦隊が居れば、簡単に迎撃される。しかし、今の地球に守ってくれる連邦艦隊は存在していない。

 故に公国軍は、マスドライバーで地球の防空施設を狙撃する。

 

 これは地球侵攻作戦の第一歩。まだジャブローの位置は特定できていない為、ジャブローへの布石となるキャリフォルニアベースと資源地帯であるオデッサを優先して攻撃が行われた。

 

 以上の事は休戦条約が結ばれなかった時の保険でもあるし、地球連邦政府に対する圧力でもあった。

 

 地球連邦政府は、この横暴な振る舞いを非難した。

 しかしジオン公国は休戦条約を締結するまでは戦争状態が継続していると反論し、攻撃を止めて欲しければ、今すぐに提示した条件を飲む事を要求する。「まさか軍を再編する時間を稼ごうとしているのではないな?」とジオン公国のギレン総帥は相手を脅す。

 これに地球連邦政府の意見は真っ二つに分かれる事になった。

 

 徹底抗戦か、もしくは休戦か。

 

 議会は踊る、されど進まず。

 なによりも地球に住む大半の民衆は、戦争の継続を望んでいなかった。というのも地球の環境が滅茶苦茶に壊された今、自分の事で精一杯で戦争どころではなかったのだ。今もマスドライバーを用いて射出された岩石が次から次へと投下され続けている。大気を割いて、地上に落下する岩石の衝撃が民衆の心を蝕んだ。

 厭戦感情が蔓延する、心情的にも限界が近かった。

 

 今、語る。レビル中将は、戦争屋ではあるが、戦闘狂ではなかった。

 彼は政治が苦手だ、腹芸が得意ではない為だ。感情で人を惹きつけるような性根をしておらず、軍人として実直な人間であった。

 その為、軍人としては極めて合理的な思考を持っている。

 

 捕虜であるレビル中将を助けたのは、ザビ家の横暴を許せないダイクン派の人間であった。

 最早、彼らはジオン公国の事よりも反ザビ家の感情のみで動いている。思想は枯れ果て、自分達が不幸になったのは全てザビ家の専横のせいだと決めつけていた。過激なダイクン派の人間から見た世界は暗く、狭い。我が世の春を満喫していた頃と比べて、世界は日に日に悪くなっていくかのようだった。何もかもが思い通りにならない錯覚、自分を爪弾き者にする世界が嫌で嫌で仕方なかった。

 だから、こんなクソみたいな世の中を変えたくて、立ち上がったのだ。

 こんな世界を変えてくれるのであれば、誰でも良かった。ザビ家を打ち倒してくれるのであれば、それが敵でも構わない。ジオン・ズム・ダイクンの信奉者である自分達が政権を取れば、絶対に世の中は良くなるはずなのだ。ビバ、ジオン! ビバ、ダイクン! 自分達はジオン・ズム・ダイクンの敬虔な信徒なのだ。正しい思想の下に集った自分達が政権を握らずして、なんとする。

 それは彼らにとって、ジオン公国が敗北する事よりも重要な事であった。

 

 敗北する、その意味を彼らは何も分かっちゃいなかった。

 ただ今よりも少しでも良くなると信じて、己の信条に従って突き進む他の道を彼らは知らなかった。こんな事なのでザビ家も、ラル家も彼らの懐柔に拘らず、排除することに徹したのだ。

 奪還作戦の音頭を取ったワイアット中将ですらも「売国奴」と罵り、嫌悪感を隠せずにいた。

 

 かくしてレビルは、虜囚の身から脱する事となった。

 ゴップ大将が南極で行われる休戦協定に関わる交渉の準備が行われる裏で、過激なダイクン派の手引きと地球連邦軍に所属する特殊部隊の活躍によってサイド3を脱したレビル中将はルナツーへと護送される。

 そのままレビルはゴップ大将とワイアット中将に連絡を取った。

 ただの確認だ、傍受されても良い。南極での交渉が始まる三十分前の出来事になる。

 

「待ちわびたぞ」とワイアットが紅茶を啜る。

「間に合わないかと思ったよ」とゴップが大きく息を零す。

 

 そんな様子を映像越しに見たレビルは二人に問い掛ける。

 

「時間もない。単刀直入に聞くが、継戦で構わんな?」

「当然だろう」とゴップが告げる。

「そんなことを聞く為に呼び出すな」

 

 不満顔で告げるワイアットに、レビルは深く頷き返す。

 地球連邦は最早、戦争を継続できる状態にない。そんな事は三人共に分かっていた。休戦協定で時間を稼ぐ意図がある事も分かっている。

 しかし休戦協定を結ぶ事は、そのまま相手を国として扱うも同義だった。

 

 即ち、これはジオン公国を連邦と対等な国家として認める事にも繋がる。

 

 だが勘違いしてはいけない。

 三人は、決してジオン公国の独立そのものを否定している訳ではない。宇宙戦力の大半を失った今、民衆を守り切れない事は理解している。コロニー落としで大打撃を受けた地球の現状を鑑みれば、此処で講和を結ぶ事が最善だ。壊滅した宇宙軍を再編し、体勢を立て直す時間を作る為にも今、休戦を認めることが合理的だという事は皆が理解している。

 今、ジオン公国と戦争しても負ける事なんて、レビルが一番よく知っていた。

 

 しかし、それでもだ。地球連邦は戦わなくてはならない。

 

 本当は休戦協定を結びたい、縋りたい。

 だが、地球にコロニーを落とせば、独立できる。

 そんな前例を作らせる訳にはいかなかった。

 

 コロニー落としを認めてはならない。

 かつて地球が核の抑止力で守られていた時のように、核兵器を保有している。その事実そのものを交渉の材料に使われてはならないのだ。核兵器を撃つと脅しを掛けられて、屈する訳にはいかない。撃たれれば、撃つのだ。スペースノイドがアースノイドを屈服させる手段の一つとして、コロニー落としがあると学ばせてはならない。コロニーを落とされたから地球連邦は徹底的に抗戦する、と世界に発信しなくてはいけなかった。

 それは脅しの材料にはならない、と地球連邦は世界に訴え続ける必要があった。

 

 故にヨハン・イブラヒム・レビルは、徹底抗戦を訴える。

 ジオンに兵なし、そんなものは詭弁だ。だが、民衆を奮い立たさねばならない。再び連邦軍を立ち上がらせねばならない。現在、南極において休戦条約の交渉が行われている事は知っている。しかし、それは休戦ではなく降伏であると訴える。条約を結ぶという事は、ジオン公国が独立国家であると認める事と同じだ。コロニー落としは単なる悪行であり、交渉のカードにしてはならない。アレは絶対に許されざる蛮行である。

 故に地球連邦軍は、ジオン公国を泥沼の戦場に引きずり込む道を選んだ。

 

 徹底抗戦。休戦条約は破棄されて、南極条約が締結される。

 

 ここから先の三四半年で地球の事情は大きく変わった。

 今、ジオン公国の戦力は圧倒的だ。連邦軍も必死の抵抗を試みたが、ルウム戦役以降は戦争っていうものさえ起らなかった。

 宇宙がジオン公国のものになるまであっという間だった。

 地球の半分以上がジオン公国の占領下になっている。

 

 V作戦は、もう佳境に入っている。

 ルウム戦役において、ミノフスキー粒子散布下でのモビルスーツの有用性を学んだレビルが起こしたモビルスーツ開発計画だ。既に連邦製量産型モビルスーツであるジムを量産できる体制に入っている。これを動かす最後の欠片となるのがRX-78-2「ガンダム2号機」の教育型コンピューターにある。

 モビルスーツパイロット、ケンプ中尉。改め、アムロ・レイ。

 

「命令を無視するのか、貴様!」

「シャア少佐だって、戦場で手柄を立てて出世したんだ!」

 

 別動隊として動いていた二機のザクⅡ。その内の一機が突出し、隊長が援護に回る。

 まだ15歳の民間人であるアムロの操縦は覚束なかったが、二機のザクの撃破に成功する。モビルスーツの性能による勝利と言っても過言ではない内容だった。しかし、一機目のザクⅡを撃破した時に誘爆した核融合炉の爆発でコロニーに穴を空けてしまった後、二機目のコックピットを狙いすましたビームサーベルの一撃はセンスの為せる技であった。

 かくして、ガンダムは大地に立つ。

 

 宇宙世紀の歴史がまた1ページ……

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