型式番号、MS-06G。陸戦高機動型ザク。
元々は最前線で戦果を上げ続けるアルマ・シュティルナー少尉の腕前に、従来の陸戦型ザクⅡでは反応が追いつかなくなった事から始まった現地改修機。全面的な性能向上は勿論、彼女の近中距離で機動力を活かした戦闘スタイルに合わせて、脚周りの強化。脚部の動力パイプを内蔵した他、補助スラスターを増設する事で大幅な機動力の強化が試みられている。増強したスラスター分のエネルギーを賄う為にランドセル*1を大型化する事で対応する。また当機には当時、開発途中であったグフの最新技術も組み込まれている事もあり、陸戦型ザクⅡの性能強化版と言っても過言ではなかった。
この機体に搭乗したアルマ少尉は北米戦線で猛威を振るう事になり、北米を守る連邦軍の将兵に多大な心的外傷を植え付ける。
アルマ専用陸戦型ザクⅡとも呼ぶべき当機の最も優れていた点は、改修が簡単というところにあった。
モビルスーツを1から作る生産施設の整備には時間が掛かる。しかし陸戦高機動型ザクの改修キットとしての生産であれば、話は幾らか簡単になる。部分的に陸戦型ザクⅡの後継機であるグフの部品も扱っている為、グフの生産ラインを段階的に整える意味でも悪い案ではなかった。手頃な戦力強化、モビルスーツの質を上げる事でパイロットの生存率向上。次世代機に移行する為の前準備。真にアイデアと呼べるものは、たった一つの発想で複数の問題を解決できるアイデアに限られる。
ガルマは、これを承認。グフが本格的に生産されるまでの間、希望者の中から戦果の高い者の順に陸戦型ザクⅡは陸戦高機動型ザクに改修されていく事になる。
「ふわあ~!」
私の目の前には今、紫を基調に白のアクセントを付けた専用カラーのモビルスーツが立っている。
ノイジー・フェアリー隊の仕様に塗装されたアルマ専用陸戦型ザクⅡ。つまりは、始まりの陸戦高機動型ザクだ。その隣には、ハーピーの異名を持つキリー・ギャレット少佐の愛機である通常の陸戦型ザクⅡ。噂によれば、自分の陸戦型ザクⅡを改修する権利を譲る形でアルマの陸戦型ザクⅡを改修して貰ったとの事だ。そして最後の一機は強行偵察型ザクをベースに重力戦線で運用を想定した上で狙撃任務用に改修したザクⅡ[狙撃型]だ。
彼の隊は、三機編成。三機共にエース仕様の専用カスタム機となっていた。
実際、ノイジー・フェアリー隊は三人共にエースで編成された小隊だ。
彼女達が叩き出す獅子奮迅の活躍は、公国軍のメディアでも報道されている程であり、ガルマ少将の名と共に北米の英雄として名を知られている。北米大陸で戦う誰もが彼女達の事を英雄視し、羨望の眼差しを向けるのだ。彼の機体には、どのような改修が為されているのか。メカニックの一人として気にせずにはいられなかった。
「こういう時、カナリアさんが居れば……機体の整備士から話を聞けるんですけど」
プロト・ゼロ少佐の名は、公国民であれば誰もが知っている英雄だ。
カナリア・ザビの名は、養子とはいえザビ家の一員だ。
自分も興味があるからと私の手を引いて話を聞き出してくれる。
そんな頼れるカナリアは今、私の隣には居なかった。隣に誰も居ないのは落ち着かない。開戦後、カナリアは何時も一緒だった。寝食を共にするのは勿論、浴室に入る時も一緒である事が多い。互いにほくろの位置まで知っている程度の仲、足の隙間まで洗いあった事もある。そんな彼女と戦闘行動以外で三十分以上も離れる事は戦時中、初めての経験だった。
そんな半身とも呼べるカナリアは今、ジオニック社の若き天才メイ・カーウィン技術少尉と共に新しい機体の調整に明け暮れている。グフ・フライトタイプがジオニック社の特殊な機体である事を考えれば、それも仕方ないと理屈では分かっていた。
でも、なんか釈然としない。
なんで私がカナリアの事で苛々しなきゃいけないのか訳が分かりません。
そんなモヤッとした気持ちを紛らわせる為に今、私は格納庫まで足を運んでいる。
ハンガーにズラリと並べられたモビルスーツ、そんな圧倒される光景を前に気を落とす。今の私は、私用のモビルスーツがない。可愛がっていた私のモビルスーツはカナリアに壊されてしまった。過保護な友人は必要以外で私を戦場に連れ出してくれないので、まあ良いのだけど、別に気にしてる訳じゃないのだけど。私の大切な友人を守ってくれた愛機には、感謝しかないのだけど。それでも今は、私からヅダを奪ったカナリアの事が恨めしかった。
カナリアなんてジオニック社と懇ろになれば良いのだ!
いちゃいちゃしてれば良い!
はあっと大きく溜息を零す。
ちゃんと分かってる。私からカナリアを奪ったメイに嫉妬しているのが一番の理由で、それを認めてしまうのが癪に障るだけの話なのだ。少し気を緩めると機嫌が悪くなる。
むすっと頬を膨らませる。
これも全てカナリアのせいである。私にとって都合の悪い事の九割方はカナリアのせいだ。特に関係がなくても微粒子レベルで存在する可能性に賭けてカナリアのせいだ。何もかもの全てがカナリアのせいになる。アカシックカナリアスゴクワルイレコード。全てがカナリアに収束する。一緒に風呂に入ると必ず胸を揉んでくるし、モビルスーツの訓練を終えた後なんか手が疲れたって指を食い込ませる。ついでにお腹も摘まんでくる。あと紙オムツの交換の練習とかいって羞恥的な事を強要してくる。
ただのクソガキだ。最低です、カナリアさん。
八つ当たりのように頭の中でカナリアを罵倒し続けていると「あら?」と私を見た女性が声を零す。
「……貴女はツィマット社のミア・ブリンクマン?」
戦場に舞う妖精。死を振り撒く事にも掛けてキラー・ハーピーとの名で呼ばれるスペシャル。
「キリー・ギャレット少佐……で、あります、か?」
公国軍が誇るエースパイロットが朗らかに笑ってみせた。
格納庫に隣接して設置された休憩室。
置かれたベンチに腰を下ろす私の前には、自動販売機で缶ジュースを購入するキリー少佐の背中がある。「少し話していかないかしら?」と誘われた私は流されるままに話に付き合う事になった。彼女は購入した二本のジュースを手に「どちらが良い?」と問い掛ける。缶珈琲とスポーツドリンク、私がスポーツドリンクを指で差せば、彼女は笑顔で手渡してくれた。
何が目的なのか。キリー少佐を注意深く観察する。
そんな私の視線を知ってか知らずか、彼女は私の隣に座って缶珈琲の蓋を開けた。
「貴女がツィマット社からの推薦で公国軍に従軍する事が決まった時、私の部隊に来るように手を回していた事があるのよ」
先約が居たと聞いて肩を落としたわよ、と彼女は珈琲を呷った。
「これは公国軍に限った話じゃないけども……今の御時世、男尊女卑の傾向にある。ガルマ少将は、あまりそういう事を気にしないけども、それだって軍の末端まで行き届いている訳じゃない」
もし人間関係に悩んでいるのなら、とキリー少佐は柔和な笑みで告げる。
「なにか相談に乗れる事もあるかも知れないわ」
油断してるとコロッと騙されそうな笑顔、私はジトッとした目で問い返す。
「……私、引き抜かれてます?」
「あら、察しが良いわね」
「勘の良い友人を持っていますので」
彼女の笑顔は完璧だ、人当たりが良くて心の内を明かさない。
良くも悪くも感情に素直なカナリアの笑顔を見て来たから、それが作られたものだって事は直ぐに分かった。
そしてまともに会話をしても敵わない事も察する。
カナリアの周りには、こういった駆け引きが得意な人間が多く存在しており、カナリアもまた距離感を測るのが得意な子だ。私が嫌がることをして来ない、一緒に居て居心地の良い相手だ。
まあ今は一緒に居ない訳なんだけど、ばーか。
「もし良ければ、今からでも私の部隊に来てくれないかしら?」
あっさりとした勧誘に僅かながら心が揺れる。
ここで私がキリー少佐の誘いを受けたら、カナリアはどんな反応を見せてくれるだろうか。
ちゃんと取り返してくれるかな、とクスリと笑みを浮かべる。
「人間関係で悩みはあります。でも、その原因は分かっているので大丈夫です」
想像するだけ、実際にそんな事をしようなんて欠片も思わない。
あらあら、と笑みを深めるキリー少佐に私は首を傾げた。
「ミア~? ねえどこ行ったの~、ミア~?」
そんな時、休憩室の外から聞き慣れた声がした。
少しすると部屋の扉が開け放たれて、奇抜な仮面を付けた少女ことカナリアが姿を現す。
彼女は私を見て、満面の笑顔を浮かべた。
そしてキリー少佐の存在に気付いた彼女は、敵愾心を顕にして睨み付ける。
「……なんの話をしてたの?」
静かに問い掛ける。
「二人だけの秘密の話」
にんまりと笑みを浮かべるキリー少佐にカナリアは私を抱き寄せる。
何時もよりも力強くて、ちょっと痛い。パイロットのカナリアは意外と筋力があった。
「私のミアだよ、誰にも渡さない」
あれ、これってもしかして守って貰ってる?
急な展開に頭が付いて行ってないのだけど、ちょっと嬉しくって口の端がにやける。
キリー少佐は、意地悪に笑ってみせた。
「私のミア? 束縛し過ぎるのも嫌われるわよ?」
「だから口を出すなって? それはキリー少佐の都合でしょ?」
私と彼女の都合が入ってない。と、彼女は不機嫌に告げる。
抱き寄せたまま、ふんす、と立てられた鼻息が頬に触れて少し擽ったい。
ここまで思われているのは悪い気がしなかった。
「……そこの貴女も守られているばかりで良いのかしら?」
「え、いや、私は……」
「自立を考えても良いんじゃない?」
確かに私は彼女に守られている節はある。
私がカナリアの部隊に配属されたのは、カナリアの我儘によるところが大きい。必要以外で戦場に出す事をしようともしないし、私が快適に過ごせるように自分と同じ部屋に詰め込むことで特別扱いを受ける事があった。それが煩わしく感じる事もある、引け目を感じる事もあった。
でも、私は彼女の側を離れたいとは思わなかった。
「安全の保障もないのに? 明日死んでもおかしくないのに?」
キリー少佐は、ジッとカナリアを見つめた。睨み返すカナリアの横顔は凛々しかった。
「私はツィマット社の皆に頭を下げて彼女を預かってる。彼女を無事にツィマット社に戻すのが私の責任、過保護でも構わない。越権行為なんて知らない。煩わしく思われても構わない。彼女は私の特別、私のミアなんだよ」
私がミアを守るんだ。と告げる親友に私はボソッと不満を口にする。
「勝手に死のうとした癖に……」
「……ミア? あ、大気圏突入でのこと? あれは生きてたんだから……」
「そこまで想ってくれているなら最後まで守ってくれないと嫌です!」
トン、と私の事を抱き締めていたカナリアを突き放す。
困惑した声、狼狽する親友を逆に私の方から抱き締めた。
「死ぬ時は一緒です。貴女が死んだその夜に私も一緒に死んであげます」
「えっ? ちょっと重たくない?」
「……そうやって何時も余裕を見せつけてっ!」
カナリアを真正面から見つめる。
まだ戸惑いの方が強い顔、相手の心を見透かしてるような余裕が今、彼女にはなかった。
この時はまだ迷いはあった。
本当に? と、現実を直視できてない彼女の逃げ場を塞ぐ意味も込めて、半開きになった唇を狙って顔を近付ける。ゴチッと額同士がカチ合った。「あだぁっ!」という彼女の悲鳴が上がる。予想外の痛みに一瞬、意識が飛んだ。目敏いカナリアは私の腕から逃げ出そうとする。もう意地だ、絶対に逃がしてあげないとより一層に腕に力を込める。
今度こそは、とカナリアの唇に私の唇を乱暴に押し付けた。
どうだ! ざまあみたかっ! 私にとっての初めて、やってみてから少し後悔した。でも今更、引き返せない。と力一杯に彼女を抱きしめる。
にゅるっと冷たい感触、口の中に何かが滑り込んできた。
「ひッ! あ、舌!? なんで……舌を入れてくるんですっ!?」
「ちょっと甘い味がしたね。ミアのなら嫌じゃないよ」
ペロリと口元の唾液を舐めとる親友の姿、私は致命的に選択を間違えた気がした。
なんで私は同性とキスしてるのか。なんで舌を入れられなきゃいけないのか。
その大半の理由が私にあるのは分かっているのだけど、
せめて、こんな事をした目的だけでも達成しないとやってられなかった。
「せ、責任! そう責任です! 責任を取ってください!」
「良いの? 取っちゃうよ、責任」
「えっ? ……あ、いや、やっぱりなしです! なし!」
「私の初めてだったのに……ミアは責任取ってくれないの?」
よよよ。と酷く悲しそうな顔で泣き真似をする。
揶揄われている。少し前まで私の方が優勢だったはずなのに、もう彼女のペースになっていた。
だから私は主導権を奪いたくて、ギリッと歯を噛み締めてから叫んだ。
「勝手に死なないでください!」
「えー? ミアが居ないと同じことして死んじゃうかも?」
「でしたら一生、私が貴女と一緒に居ますっ!」
「責任は?」
「取りますっ!」
「一生?」
「一生ですっ!」
何も考えずに勢いのまま断言する。
ふんす、と今度は私の方が鼻息を立てた。親友を睨み付ける。
「わかった!」と彼女は満面の笑顔で答えた。
「フラナガンが言ってたけど、クローン技術の応用で女性同士でも子供って作れるみたいだよ?」
「えっ?」
「あ、私は現場に出ることが多いから産むのはミアに任せるね」
「ふえっ?」
「私の遺伝子から作った精子で受精した卵子を子宮に戻せば良いらしいよ?」
「はわわっ!?」
親友は存在を忘れていたキリー少佐の方を振り返り、満面ドヤ顔で告げる。
「これでミアは私のものだね、誰にも渡さない」
呆気に取られた顔をしたキリー少佐は失笑し、余裕を見せつけるように首を横に振る。
「お幸せに」
そういって彼女は休憩室を後にした。
残されたのは私と親友の二人だけ、とりあえず距離を取ろうとした私を彼女は逆に抱き寄せた。
カナリアって同性愛者だったっけ? たぶん違った気がする。
「ちゃんとキスしよう、うん。あんな形のキスが初めてなんてお互いの為にならない。あとキスって練習した事がないから、ちゃんと数を熟しておきたいし」
その顔は恋する乙女というよりは、捕食者のものだった。
私は全力で逃走を図った。しかし本職軍人の腕から逃れる事はできなかった。
◆
清掃中の看板を立てかけた後、携帯端末にガルマ少将からの呼び出しがあった。
少し物音がした後、静かになった休憩室を後にする。最初は本気で引き抜こうとした、ミアがゼロ少佐の配下になると知った時は目を付けていた子を取られた腹いせに少し揶揄うだけのつもりだったのだけど、とんでもない事になってしまった。責任が取れない事態への発展、ならせめてもと邪魔者が入らないようにしてあげるだけだ。
遠い昔の誰かが言った、終わりよければ全て良し。
ならば、終わりを良くしてあげれば良い。そう思う事にした。
あとは野となれ、やまとなでしこ~。
◆
「貴女がキラー・ハーピーか。お初にお目にかかる」
「ええ、赤い彗星。受賞式で見ましたわ」
「これは申し訳ないことをしてしまったかな?」
「いいえ、遠くから眺めてただけですもの」
カナリアがミアを私室にお持ち帰りしている時、
キャリフォルニアベースの会議室では、ガルマ少将の他に副官のダロタ中尉。シャア少佐、彼の副官であるドレン少尉。そして最後にキリー少佐、副隊長のバルバラ中尉が席に着いた。
呼び出した五名が揃った事でガルマ少将が「相談があって呼び出した」と告げる。
「皆も知っている白い木馬が、一時休戦を申し出てきた」
一時休戦? と如何にも几帳面な顔をしたバルバラ中尉が問い返す。
「ああ、民間人を降ろしたいそうだ。どう思う?」
「気に入りませんな」とシャアが答える。
「しかし、準備はできますわ」
キリーの言葉にガルマとシャアが頷き返す。
「それならイアン中尉の小隊も間に合うんじゃないか?」
「シャア、彼らはミデアと交戦して被害を受けてしまったよ」
不足分は戦車で賄うしかないな、とガルマが不機嫌に零す。
マゼラ・アタック、設計段階で不採用となった兵器のひとつだ。「第二次世界大戦から何を学んだのだ!!」と机をバンバンと叩きながら訴えるギニアス技術准将に技術本部の人間がドン引きする事件もあり、「有視界戦闘で視界が悪くなった為、視野を広く取る為に砲塔を突出させた!? ふざけるな! その分、相手から見やすくしてどうする!? 被弾面積も増えるだろうが! 有視界戦闘では視野よりも隠蔽性を重要視しろ!」や「戦闘機として脱出可能だと!? ふざけるな、被弾が多くなるのはどう考えても突出した砲塔部ではないか! その資金で素直にドップを量産しておけっ!!」といったありがたい言葉の下に再設計される事になった。
そうしてマゼラ・アタックの車体部分であるマゼラベースを基礎に誕生したのがマゼラベルファーという自走迫撃砲であったり、マゼラ突撃砲という名の通り突撃砲となる。
マゼラ・アタックの名は歴史の表舞台に立つことなく消え去る事になり、マゼラトップの名はマゼラアタックを開発していた時の副産物として生み出されたマゼラトップ砲というマゼラ突撃砲の主砲として名を知られている。
閑話休題、
戦車*2を運用する上での問題点は、モビルスーツと比べて展開が遅いという事だ。モビルスーツはスラスターを吹かして即時展開できるのに対して、戦車は履帯でキュラキュラと荒地を走破するしかない。
故にモビルスーツが充実している公国軍では、戦車は待ち伏せ以外の用途では使われて来なかった。
「一時休戦する時間があれば、装甲部隊の展開もできるな」
しかし、とガルマが首を横に振る。
「待ち伏せが当たれば良いが、外せば相手に包囲突破の好機を与える事にもなりかねないな」
「その通りだ、ガルマ」
だから、とシャアが言葉を続ける。
「敵を追い込む役割の者が必要になる」
「ふむ」
ガルマがシャアとキリーの二人を見据える。
三名のエースパイロットが集まったノイジー・フェアリー隊。
赤い彗星が率いるザクⅡとヅダの混成部隊。
シャアが手を挙げる。
「私が言い出した事だ。相手の戦力も分かっている、追い込む役目を私が担おう」
シャアの言葉にガルマは頷いた。
木馬の提案を受ける事で話はまとまり、次は作戦について話し合いを始める事になった。
シャアは静かに笑みを浮かべる。
この場にアルマが居れば、気付いたかも知れない。
カナリアが居れば、一発だ。
しかし、彼女達は居なかった。
シャアの目論見に誰も気付かぬまま、会議は続けられる事になる。
◆
「カナリアさん!」
キャリフォルニアベース、某ホテルの一室。
ミアの困惑の入り混じった怒声が響き渡る。
「洗濯籠の中に女物の下着ッ! というかシャワールームに誰かいるんですけど!」
「あ、それ? メイだよ」
「なんでっ!?」
「汗を流したかったんだって、お風呂好きなんて女の子だよね~」
にへら、と笑うカナリアの脳天にミアはチョップを叩き込んだ。
悲鳴を上げるカナリアに「呼んだ~?」とバスタオルを巻いただけのメイが顔を出す。そして敵愾心を丸出しに威嚇してくるミアの姿を見たメイは悪戯っぽい笑みを浮かべた後で「カナリアって凄いのよ。もう一生、離れられない」とバスタオル姿のままでカナリアを抱き寄せた。勿論、テストパイロット的な意味で。
怒り狂ったミアはカナリアを奪い取って「私のです!」とカナリアに唇を落とす。
「え!? ええっ!?」
この展開に付いていけなかったメイは顔を真っ赤にし、部屋から逃げ出すことを考えた。しかし自分が今、衣服を着てない事に気付いた彼女はホテルの一室から逃げられない事を悟る。そうこうしている間にもカナリアとミアが熱烈な接吻を交わしており、何故かミアの方が骨抜きとなってベッドに倒れ伏した。
「勝った」
ドヤ顔で口周りを舐めとるカナリアを見たメイは、唖然としたまま小便を漏らす。
「た、食べないでくださいぃ!?」
「食べないよ!?」
某ホテルの一室は、混沌に満ち満ちていた。