NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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22.戦場は荒野

 公国軍が地球上でモビルスーツを展開させる手段は意外と多かったりする。

 モビルスーツ搭載艦として改装を施したダブデ級大型陸戦艇は、最大8機のモビルスーツを搭載する事が可能であるし、ギャロップ級高速陸戦艇は最大3機のモビルスーツを乗せて戦場を駆け回る事ができた。海路はモビルスーツを搭載して運用するマッド・アングラー級巨大潜水母艦とユーコン級潜水母艦が存在しており、空路はファット・アンクル級輸送機とガウ級攻撃空母を併用している。更に細かい事をいうのであれば、サムソンと呼ばれる大型輸送車が1機のモビルスーツを輸送できるし、ド・ダイYSは1機のモビルスーツを搭載して飛行できるし、ルッグン偵察機はモビルスーツを懸下する事で短距離輸送が可能とされていた。

 公国軍の充実したモビルスーツの輸送手段は、そのまま公国軍の戦術ドクトリンがモビルスーツと共にある事を意味している。戦場の主役はあくまでもモビルスーツにあり、通常兵器はモビルスーツのサポートという位置付けだ。その為、如何にモビルスーツを素早く展開できるか。という点に着目して開発が続けられていたと云える。

 サブフライトシステムもモビルスーツを素早く展開する為の手段であり、モビルスーツを搭載したまま戦えるのは「そういう事もできる」といったおまけの機能に過ぎない。

 

 現場では、白兵戦仕様のグフをド・ダイYSに載せて戦うという話を聞いたギニアス技術准将は「モビルスーツを載せたまま戦うのは、現場に辿り着く前に捕捉された時用の緊急時の対応であり、空戦を当たり前の運用だと思われるのは真に遺憾である。ましてや仕様外に運用をしてクレームを言うのは以ての外だ」としかめっ面を見せた。

 

 そうなった裏事情には、軍部にド・ダイYSの機能を説明した者が営業の人間だった事が上げられる。

 ド・ダイYSが採用される少し前、ルッグンが単なる偵察機としてではなく、モビルスーツを懸下して短距離輸送ができるという売り込みで受注数を伸ばした事がある。そこでド・ダイYSの営業者は、モビルスーツを搭載したまま戦闘もできる画期的な新機能として、サブフライトシステムを大々的に売り込んだのだ。その結果、軍部はド・ダイYSをモビルスーツを載せたまま戦える新兵器として認識する事になった。

 実際には「推力に余裕あるし、上にモビルスーツを載せて飛ばすこともできるんじゃね?」といった設計者の思い付きであった。とってつけた機能の方が注目される事は、こういった業界には多々ある事だ。それでシェアを伸ばしたのだから文句の付けようがない。

 後日、酒の席でド・ダイYSの設計者が「違うんだよ、そうじゃないんだよ。あれは爆撃機なんだよ」と愚痴を零すだけの些細な犠牲で済む話だ。

 

 閑話休題、

 ガルマ少将が数ある輸送手段の中でガウ級攻撃空母を多用するのは、展開力を期待しての事だ。

 キャリフォルニアベースから広い北米大陸をカバーするには、ちんたらと陸路を走っている訳にもいかない。海路を使うにも中米は激戦区、大量輸送の為にパナマ運河を利用するのは余りにも危険であった。かといって、数でカバーする事も難しい。公国軍と連邦軍とでは生産力は元より、人的資源にも致命的な差があった。

 なので少しでも数の不利を抑える為にガルマ少将は即時展開を重要視している。

 

「木馬が着陸した。指定通り、ポイントαの台地上だ」

 

 木馬からの提案である一時休戦の申し出は結局、受け入れられた。

 指定のポイントまで誘導し、木馬が避難民を降ろしている間に公国軍が誇る陸空の輸送力をフル活用して部隊を展開する。包囲できるだけの戦力はない。精々、待ち伏せをするのが関の山。その味方が待ち伏せするポイントまで木馬を誘導するのが私、シャア・アズナブルに任された役目だ。

 ガルマが、私の肩に手を乗せる。

 

「シャア、僕は地上で指揮を執るので先に艦から降りるよ」

 

 地図を見る。木馬に指定したポイントαは、ミード湖の南東部の事だ。

 ミード湖の西にはラスベガスがあり、公国軍が軍事拠点のひとつとして活用している。またロサンゼルスの近くには、地球攻撃軍の本拠地であるキャリフォルニアベースがあり、逃走中の木馬は是が非でも近寄りたくないはずだ。故に木馬は海に逃げ込むのであれば、ミード湖を突っ切って北西に舵を取ると予測される。

 なのでガルマ達が待ち伏せるのは北西の湖岸、待ち伏せに気付かれない内に木馬の尻を叩くのが私。ミード湖そのものを大きく北に迂回されないように北西の湖岸で待ち構えるのがノイジー・フェアリー隊になる。

 

「これで勝てねば私は無能だな」と私の肩から手を放し、手を振ってみせる親友に問い掛けた。

 

「精々、牧羊犬として働くとしよう」

「犬だって? 君がか?」

 

 そう言って彼は腹の底から笑い声を上げる。

 

「なら僕は飼い犬に手を噛まれないように気を付けないといけないな」

 

 彼は気障っぽく前髪を指先でくるりと絡めてみせた。

 そんな親友の姿を見て、私は、少し、後ろめたく思って会話を続けた。

 

「君は何に乗るつもりだ?」

 

 特に意味のない話だ。

 

「待ち伏せなら空を飛び回る訳にもいかないからな。通信能力の高い指揮官用ザクに乗ろうと思っている」

 

 ガルマ少将は一応、自分用のカスタム機を持っている。

 それは象徴的な意味合いが強い。ドズル中将は戦闘能力にも拘っていたが、ガルマは自分がモビルスーツに乗って戦う事を想定していなかった為、武装は自衛ができる程度、戦闘能力よりも指揮能力を重視した装備を注文した。本当はいらないんだけどな、と一度、零したことがある。

 さておき、そうか。ガルマがモビルスーツに乗るのか。

 ガウを近場に停めておくことを考えれば、遠距離通信はガウを経由する事になる。

 つまり、それは、私との通信にはガウの通信能力が必要だという事だ。

 

「死ぬなよ」

 

 そう親友に告げると「ああ」と彼は笑って艦橋を出て行った。

 周囲を見る。周りから意識を向けられていない事を確認し、手早く通信機のプラグを外して接触不良を起こす粉を振りかけた。そして元に戻す。

 ──自分が部隊から独立して動ける機会は、そう多くはない。

 ホワイトベースを降伏させる。撃破せず、航行不能にさせるだけで良かった。

 あの木馬には、アルテイシアが乗っている。

 

 軍人として生きた数年が、作戦に私情を挟む愚かさを教えてくれた。

 だからこそ言い出せない。

 ガルマは友人として心を砕いて協力してくれるはずだ。

 しかし、それを分かっているから私は、協力を申し込むことができなかった。

 それは国益の為、公国の命運の為に命を使う司令官にあってはならない私情である為だ。

 自分達の家庭事情に、ガルマを巻き込む事はできなかった。

 親友を、愚かな指揮官にする事は耐え切れなかった。

 

 だから、私が、私の勝手で、軍規を乱すのだ。

 

「もう少し上手く生きられたら良かったのだがな」

 

 自嘲し、艦橋を後にする。

 

◆

 

 ガンペリー輸送機が飛んだ。

 民間人を解放する為、公国軍が指定した場所まで飛んでいく予定が白い煙をもくもくと上げて、近場に不時着してしまった。これを見ていたルッグン偵察機はガルマに報告する。しかし、この情報がガルマ少将に届くことはない。通信機の不調、ルッグンの操縦手はミノフスキー粒子のせいだと判断し、一先ず、ガルマに報告する為に対岸まで偵察機を飛ばした。

 これを見ていたホワイトベースの艦長、ブライト少尉は舌打ちを零す。

 

「対岸に敵が待ち伏せている」

「ラスベガスに戻っただけじゃないのか?」

 

 リード中尉の反論にブライト少尉が答える。

 

「もし、そうだとすれば今、監視の目がなくなるのはおかしい。おそらく通信機の不調……」

「そうか、おい! ミノフスキー粒子の濃度はどうなっている?」

 

 オペレーターの一人がミノフスキー粒子の濃度が特別に濃い訳ではない事を伝える。

 

「偵察機に問題が起きたんじゃないのか?」

「そんな都合よく事故なんて起きませんよ」

「事故は都合よく起こすものだからな」

 

 白煙を上げるガンペリーが湖岸に着陸し、避難民がゴムボートを出す姿が見えた。

 どうやら湖の上を移動するつもりのようだ。

 

「西はラスベガス、北西は待ち伏せ。北か南、どっちが良いです?」

「よし、南東に舵を取り、メキシコ湾から抜けよう」

「キューバやドミニカは公国軍の支配下ですがね」

 

 思い付きを口にするリード中尉をジトッとした目で睨み付ける。

 

「連日連夜の空爆に艦体もガタが来てますし、船員の体力も持ちませんよ」

「ユウ少尉のタフさには、感謝するばかりだな」

「それで北と南、どちらにしましょう?」

 

 ふむ、とリード中尉が少し考え込んだ。

 

「そのふたつなら南一択だな」

「それは何故?」

「湖の北から回り込めば、敵の作戦が破綻するだろう?」

 

 二手、三手先を読む策士なら必ずなにかが仕掛けてある。と彼は告げる。

 

「南西にはキャリフォルニアベースがあるからな。南に抜けられたなら相手にとっても取り返しがつく失態だ」

「追い詰められているだけのような気もしますが……では、南で良いですね?」

「私はそう思うというだけの話だ」

 

 リード中尉は、食えない男だった。

 今更、責任云々をいうのも面倒臭いと考えて、南に進路を取るように通達する。

 

「作戦の準備は!?」

「もうすぐにでも実行可能なはずです!」

「停戦時間までのリミットは!?」

「あと12分です!」

「いや、もう数分でリミットは経過するんじゃないのか?」

 

 だってほら、とリード中尉は十分進めた腕時計を見せる。

 

「ミノフスキー粒子のせいかな。開戦して以来、電波時計がいまいち機能しないんだよな」

「……それも、事故ですか?」

「あとで腕時計メーカーに問い合わせてやらなきゃいかんな」

「ここを切り抜けた後で幾らでもクレーム付ければいいと思いますよ!」

 

 ブライト少尉が怒鳴り散らすように微速前進の指示を出した。

 

「艦長代理。敵が南からくれば、伏兵は確信的だ」

「分かってますよ、そんなこと!」

 

 ホワイトベースが艦体を浮かせた時、南側から敵モビルスーツが姿を現した。

 その先頭を駆るのは、赤色のザク。赤い彗星だ。

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