NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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25.我が名はニムバス・シュターゼンである!

 赤い彗星が率いる部隊が、白い木馬に攻撃を仕掛けた頃の話だ。

 ノイジー・フェアリー隊の隊長を務めるキリー・ギャレット少佐は、遠方にて戦闘が始まった事を確認する。赤い彗星に任せられた任務は、ガルマ少将の率いる部隊が待ち伏せている場所まで木馬を追い立てる事だ。しかし、キリー少佐は遠方から見てわかる程の激しい戦闘に違和感を感じ取る。

 ガルマ少将に連絡を取る、しかしミノフスキー粒子のせいか応答はなかった。

 現場判断が求められる場面だ。北に伏せた自分達の部隊が今、飛び出せば、ガルマ少将が待ち伏せる北西から南に進路を変えかねない。即断即決が必要、しかし自分達の行動が作戦失敗に繋がる可能性を考えれば、軽率な行動に出る訳にもいかなかった。思考する。ありとあらゆる可能性を考慮し、全ての可能性に対処し得る折衷案を模索する。

 その中で陸戦高機動型ザクが一歩、前へと踏み出した。

 

『助けましょう!』

 

 アルマ少尉の告げた、その一言に決意を固める。

 キリー少佐は救援を指示、ガルマ少将への通信を断続的に送りながら木馬への攻撃を決断した。

 少なくとも赤い彗星との挟撃になる。そこまで考えての選択だった。

 

 その一方で木馬付近、イフリートを駆るニムバス少尉がモビルスーツ四機を相手に大立ち回りを見せる。

 ヤタガラスシステムと同期した際の驚異的な空間認識能力。そこに経験に裏打ちされた技術の他、ニムバス本人が持つ戦闘センスを合わせた時、敵機から向けられる銃器等の射線を可視化する事を可能とした。無論、そんなものは幻覚の類だ。だが、現にニムバスの瞳には二機のガンタンクと二機のガンキャノンが自分に向ける砲身、もしくは銃身の射線が視えていた。

 故に見切るのは容易い、放たれた砲弾を切り落とすなんて芸当も難しくはない。

 

 しかし流石に近接主体のイフリートでは、射撃主体の四機相手に攻めあぐねる。

 射線そのものに触れないようにし、どうしても触れてしまう時には素早く切り返す。相手が引き金を絞るよりも早く、射線から抜け出せば良かった。それでも躱し切れないものに関してはヒートサーベルで切り払った。だが、相手との距離を詰めるのは難しい。もどかしく思う、しかし苛立ちに身を委ねて良い事はない。

 故にニムバスは静かに耐え忍ぶ。精神統一、明鏡止水の心構えで好機を窺った。

 

 そして、その時は来る。

 自分が居る側とは反対側より、薄紫色の塗装を施したモビルスーツ部隊。ノイジー・フェアリー隊が戦場に介入してきた。

 それを確認したニムバスはオープン回線で三機に呼び掛ける。

 

『このまま突っ込め! 此処は私が食い止める、仲間の窮地だッ!』

 

 言葉を交える必要はなかった。

 陸戦高機動型ザクと狙撃型にカスタマイズされた強行偵察型ザクが戦場を突っ切り、残った陸戦型ザクが二機を援護する。

 その動きに合わせて、ニムバスもまた敵陣に突っ込んだ。

 

『ハイパーキシドー斬りだああああああああッ!!』

「元気が良い! だが耳元で怒鳴らないで欲しいな!」

 

 袈裟に落とした太刀筋は、最も近場にいたガンキャノンを両断する事は叶わなかった。

 真っ赤な右腕が地面に落ちる音。勘が良い、と舌打ちを零す。ヒートサーベルを持ち直す、距離を取る。ガンキャノンを仕留める為に突きの構えを取った。スラスターの出力を最大まで引き上げる。砂煙を上げて、全身を限界まで伸ばした打突は、確かに相手のコックピットを貫く未来を描いていた。

 しかし上空から放たれたミサイルによって攻撃を中断し、回避に専念する。

 

「チィッ! 戦闘機かッ!!」

 

 後退する自分を確実に仕留める為に真正面から突っ込んでくる戦闘機風情。安易なミサイル攻撃を切り払って、擦れ違い様に戦闘機の片翼を切り落とす。

 

『秘剣、燕返しッ!!』

 

 叫ぶヤタガラス。倒せたはずの相手を倒し切れず、場は仕切り直しとなった。

 だが、今は二機。先の一機だけだった時と比較し、状況は好転している。

 自分はノイジー・フェアリー隊の隊長殿の動きに合わせれば良い。と楽観的に構えた。

 

 上空からの機銃掃射、ヒートサーベルを盾替わりに急所を外す。

 厄介だな、とニムバスは鼻血を拭き取って、頭上を見据えた。木馬の機銃が自分を狙っている。それも素人だ。未熟な機銃掃射に意思は介在せず、ヤタガラスのニュータイプ能力を間借りする身の上では厄介な事この上なし。事のついでにいえば、敵のモビルスーツ部隊もまた素人混じりの編成であり、読み取った意思とは違う動きをする事もあるのが煩わしかった。

 攻めあぐねている。自分だけならいざ知らず、ヤタガラスも同乗する今、無茶無謀に制限が掛かる。

 イフリートでは、空を飛ぶ木馬に対する有効な攻撃手段もない。

 

「ならばッ! 私はジオンの盾としての役割を全うするだけだッ!」

 

 時間稼ぎ上等! そうと決まれば、相応の戦い方があるッ!

 ギリー少佐と連携を取り、先を行った二機とペッシェに援軍が向かわないように足止めに専念した。

 

◆

 

 ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベース、その艦橋にて。

 ブライト少尉は怒鳴り声を喚き散らしている。二ヶ所で発生した戦闘、最初の予定ではホワイトベースに攻撃を仕掛けた敵部隊をガンキャノンとガンタンクの混成部隊で防衛し、背後からガンダム二機で強襲して素早く撃破する作戦だった。別動隊をガンダム二機にしたのは、白兵戦ができるモビルスーツがガンダムだけであった為だ。ガンタンクは勿論、白兵戦用の装備を持たないガンキャノンで強襲を仕掛けるのは自殺行為だ。

 包囲殲滅を受けるよりは良い、そう考えての作戦だった。

 

 しかし今の状況は、自ら戦力分散の愚を犯してしまっていた。

 二機のガンダムが足止めを受けている今、ホワイトベースの付近で起きている戦闘は自分達でなんとかしなくてはならない。少しでも余裕のある人間を機銃に座らせた。素人でも構わない、少しでも援護になれば良い。そう思っての判断だ。幸いにもガンタンクとガンキャノンは遠中距離の支援型、混戦になって味方を撃つ危険は少ないと考えた。

 穴が多い、確かにそうだ。しかしブライトなりに最善を尽くした決断だった。

 

「最悪、ガンダムだけでも回収できれば良いのだが?」

 

 リード中尉の提案に「そんな事、できませんよ」とブライト少尉が首を横に振る。

 それは自分に部下を見捨てる非情な決断を取れない、という話だけではない。先ず最初に避難民のカイとハヤトを見捨てる訳にはいかない道徳的な問題がある。そして今後、ホワイトベースが逃げ続けるのにモビルスーツパイロットを減らす訳にはいかない戦力的な問題があった。特にリュウ曹長とジョブ伍長は、ここで失う訳にはいかない人材だ。最後に最善を尽くさずして見捨てれば、自分はホワイトベースを統率する事ができなくなる危機感があった。

 今、この場で誰一人、失う訳にはいかない。

 グフに似た公国軍の新型機に乗っているパイロットは、素人目から見ても腕の良いパイロットだ。ガンダムを助ける為に、この場を離れてはガンタンクとガンキャノンは簡単に倒される事になる。ユウ少尉とアムロを信じて耐え忍ぶしかなかった。援軍に来た薄紫色のモビルスーツ部隊も油断ならない。二機がガンダムの救援に向かうが止められず、残った一機の動きも新型機に負けず劣らずの腕を見せた。予備戦力として残していたセイラがコアファイターで出撃する。

 迎撃された、しかし緊急脱出をしたのは確認できた。

 

 この場に残った薄紫色のザクが信号弾を放った。

 ガンダムの方で戦闘を行っていた数機のモビルスーツが撤退し、ホワイトベース付近で戦闘をしていた部隊と合流する。薄紫色のザクとドムだ。公国軍の新型機は、二機のザクとドムの援護を受けてガンキャノンとガンタンクの混成部隊に突撃を仕掛けてきた。ハヤトのガンタンクを庇う為にジョブ伍長が乗っていたガンキャノンの両腕が切断された後、両脚が両断される。次にハヤトがガンタンクに装備された両腕のミサイル・ランチャーで新型機を牽制。新型機はミサイルを切り払った後、矛先をもう一機のガンタンクに変える。リュウは援護射撃を続けるザクとドムへの対処に戸惑っており、反応に遅れた。

 もう逃げられない。と思った時、ガンタンクから分離したコア・ファイターが間一髪で脱出した。

 そのままガンタンクが撃破されてしまった。

 

 まだ新型機の猛攻が止まらない。次の標的となったのは、カイが乗るガンキャノンだ。

 ヒートサーベルの凶刃がカイに襲い掛かろうとした瞬間、新型機は大きく横に飛び退いた。

 その数秒後、ビームライフルの閃光が新型機のすぐ横を掠める。

 

「あれは……ユウ少尉の方か!」

 

 ガンダム試作機1号、橙色の機体に赤いツインアイが灯る。

 通信に返事はなかった。

 

◆

 

 キリー少佐が信号弾を放った理由は、通信機が使えなかった為だ。

 事ここに至っては、事前作戦の決行は不可能。救援信号を出す事で緊急事態が発生する事をガルマに伝える。

 ガルマは通信機器が使えない事を察し、直ぐ現場の救援に動いた。

 

 この時点でキリー少佐はホワイトベースの鹵獲、撃墜を半ば諦めていた。

 ならば撤退する将兵が最後にするのは嫌がらせだ。少しでも損害を与える為、現場に残ったガンタンクとガンキャノンの排除に掛かる。二機も倒せれば重畳、そう考えたがイフリートの動きが予想以上に良かった。あと一機は仕留められる。

 そう考えた時、戦場をビームライフルの閃光が横切った。

 

 射線の向こう側に橙色の角突きが立っていた。

 先ずは緩やかに戦場全体を見渡す。そして私達を見下ろした。

 その堂々とした佇まいを見て、肌が粟立った。

 

「殿は、私が……!」

『いいや、私に任せて頂こうッ!』

 

 ニムバスが告げる。

 両手に握り締めた一振りのヒートサーベル、騎士が宣誓する時のように眼前に構えた。

 風が吹いた。砂煙が上がり、草木が揺れる。

 

『私はジオンの騎士、そしてジオンの剣! ニムバス・シュタァーゼンであるッ!!』

 

 何時もの名乗り口上、彼はヒートサーベルを正眼に構えて次の句を繋いだ。

 

『騎士として決闘を申し込むッ!!』

 

 切っ先の先には橙色の角付き、連邦の新型機はビームサーベルを手に取った。

 

『いざァッ!!』

 

 二人は今、通じているのか否か。同時にエンジンの出力を高めていった。

 熱核反応炉が唸りを上げる、空気が揺れる音がする。実際に五感で感じた訳ではない、だが二人の交錯する想いを感じ取る事ができた。戦場に生きた者として、二人が震わせる魂の鼓動が聴こえるのだ!

 出力は限界まで引き上げられており、エネルギーを溜め込んだスラスターは今にも弾けそうだ。

 

『尋常にィッ!!』

 

 横槍無用と二人から放たれる重圧に、この決闘に介在する余地はなし。と否応なしに認めさせられる。

 

『勝負ゥゥゥ……ィチィヤヤヤチェストォォォォオオオオッ!!』

 

 二ヶ所で同時に砂煙が舞い上がった。

 それぞれの砂煙の中より、橙色と黒色のモビルスーツが同時に飛び出す。

 角付きの青白い刃とイフリートが持つオレンジの刃。

 

 洗練された技術を持つ二機が衝突した瞬間、世界を支配する。

 この二機の決闘には、誰一人として介入することは許されない。

 漢の戦いが、そこにはあった。

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