NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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32.ガルマ散る。

 月明かりが照らす闇夜、キャリフォルニアベースから飛び立つガウ級攻撃空母に愛機のドップで合流する。

 操縦したのは僕、ガルマ・ザビだ。万が一の事態にも即応する為、郊外に自分専用の航空機を控えさせていた。ガウの後部ハッチから格納庫に乗り込んだ僕は、手早く脱いだパイロットスーツを整備員の一人に押し付け、艦橋まで足早に歩を進める。

 艦橋前、扉が自動で開いた。

 忙しなく機材を弄る将兵の中で一人、落ち着いた様子で佇む女性将校の姿を見つける。

 

「エルフリーデ少佐、状況はどうなっている?」

「はッ! 爆破自体はゲリラによるものと情報が入っています」

 

 振り返ってガルマの顔を確認した彼女は姿勢を正し、綺麗な敬礼を取った。

 ほんのり緑の入った黒色の短髪。まるで騎士のように凛々しい顔をした彼女に「そうか」と僕は手で楽な姿勢になるように伝える。

 その指示に従って彼女は敬礼を解く、しかし背筋を伸ばしたまま話を続けた。

 

「ゼロ少佐が角付きの新型機と接敵したという報告が入っています」

「やはり、木馬も出てきたか……」

 

 今年になって新しくできた可愛い妹の姿を想起する。

 一度、目を伏せる。家族の情を切り捨て、隣に立つ少佐に問い掛ける。

 

「ゲリラの方はどうなっている?」

「爆破地点にはゼロ少佐配下のシーマ大尉が向かわれました。程なく鎮圧されるでしょうが……」

「ああ、わかっている。他にも潜伏しているかも知れないって事だな」

 

 戦力は? と重ねて問い掛ける。

 キャリフォルニアベースから持ち出したモビルスーツはザクⅡが一個小隊、あとはドップとドップとド・ダイYSが各四機の編成。僕のドップも含めるとドップが五機になる。エース級のパイロットはなし。ノイジー・フェアリー隊は半壊しており、イアン中尉が率いるザクキャノン小隊は手薄なキャリフォルニアベースを守るという役目があった。

 この戦力で木馬を相手取る事はできない。

 少なくとも角付きの相手は無理だ、ものの数分で壊滅させられている未来が視える。

 

「せめて、木馬の位置が特定できれば良いのだがな……」

「絨毯爆撃で炙り出すのは如何でしょう?」

「……悪くない判断だと思う」

 

 だが、と僕は進言をしてくれたエルフリーデ少佐に向けて、首を横に振る。

 

「この街は公国軍の兵営としても活用している。地球の企業も受け入れているし、少なくない数の民間人が生活を営んでいる。それで爆撃をしてしまっては、せっかく集まりつつある人心を失う事になる」

「チョコレート配り、でしたか?」と少佐が訝しげに僕を見つめる。

「あれだって意外と効果があるんだぞ。実際、公国軍の制服を見ても怖がらなくなった子供は増えた」

 

 過去、核兵器で燃やした土地の国民を懐柔する手段として用いられたものと同じ手段だ。

 

「それで敵愾心が収まるとは思えませんが……」

「全てを許せ、とまでは言わない。不満があるのは当然だ、恨みも買っているに違いない。まだ戦争にも勝っていないのに、公国軍の為に尽くせと言えるはずもない」

 

 それで良いんだ、と強く頷いてみせる。

 子供が居る家庭は短絡的な行動を起こさない。子供を厚遇し、必要最低限の生活ができる程度に支援をすれば、親は憎悪や怨恨よりも子を取る。子を守る為に行動をする為、簡単に公国軍を攻撃しようとは考えない。逆に子供を害すれば、親は死兵となり、怨嗟の声を張り上げて殺しにかかる。

 だから民間人には手出しをさせないし、それが子供なら厳罰に処している。

 場合によっては、死刑もある。

 何故ならば、そうしなくては公国軍は負けてしまう為だ。

 数で圧倒的に劣る我々は、現地の協力がなくば、戦争を継続する事も難しい。短期決戦を失敗し、長期化しつつある現状で我々が戦い続ける為には、現地の人々を少しでも多く取り込んでいく他に道はない。

 難しい事だ。だが、戦争に勝つ為には、やらなくてはいけない事でもあった。

 

「角付きはゼロ少佐に任せる」

 

 情報を総合し、決断する。そして指示を下した。

 

「我々は木馬を叩く!」

 

 ドップを全機、発進させて索敵を急がせる。

 ザクⅡ小隊も地上に降ろし、直ぐに動けるように状態にしておいた。

 ロサンゼルスには、物資を輸送する為の港がある。

 港には少なからずの戦力があり、何機か出撃するように指示を出した。

 勿論、そこには水陸両用型モビルスーツも配備されている。

 

◆

 

 私、マリア・オーエンス准尉は今、公国軍の制服を着るのに悪戦苦闘している。

 足元には、公国軍の兵士が裸にひん剥かれた姿で倒れている。彼の手足は縄で縛られており、口には布を噛まされていた。男性用の制服である為、胸元を閉じることができない。相方のクレアはシュルッと胸元を閉じている。「ほら、急ぎますよ。中にシャツを着てるのだから良いじゃないですか」という彼女に背を押されて、胸元だけを晒した姿で表に出た。私に負けない程度には、胸が大きいはずなんだけど──なんか、納得がいかない!

 此処はロサンゼルス港。ゲリラの襲撃に公国軍の将兵が慌ただしく駆け回っており、案の定、注目を浴びる事になった。

 主に胸元、緊急時なのに滅茶苦茶見られている!

 

「逆に良いカモフラージュになっていますよ」

 

 顔を真っ赤にして道の真ん中を走る姿は確かに侵入した連邦兵だとは思われないはずだ。

 でも、やっぱり、附に落ちない! 目に涙を溜めながら将兵を掻き分けて、辿り着いた先はモビルスーツの格納庫。丁度、モビルスーツが出撃するところだ。丁度良い、とクレア一等兵は目を輝かせて、行き交う整備員の合間に飛び込んだ。皆がザクⅡの出撃準備に取り組んでいる中、彼女は端に寄せられたモビルスーツの一機に目を付ける。

 それは焦げ茶色の少し可愛らしい外見をした機体だった。

 コックピットの開いたままになっており、周りに勘付かれる前に中へと滑り込んだ。

 初めて乗るモビルスーツだ、でも……

 

「公国軍が推し進めてるという統合整備計画って本当だったんだね、ザニーと一緒です!」

 

 そう、鹵獲したザクⅡを改造したザニーと似た構造をしていた。

 これなら動かせる。ザニーと同じ手順でシステムを起動し、ハッチを閉じた。

 ギュポーン、と公国軍独特の音が鳴る。

 メインモニターが光が灯る。ここまで来ると周りも異変に気付いたようだ。

 通信機から『おい!』と怒声が張り上げられる。

 

『そこのゴッグ! 何故、起動している!?』

「ガルマ少将の命令により、危急! ゲリラ討伐の援軍に向かう次第であります!」

『出撃するのはザクだけだ! 貴様は誰だ!?』

「クレア・ヒースロー准尉でございます!」

『女性でそんな名前のパイロット、聞いた事ないわ! 止まれ!』

「ああ! ミノ粉の影響で通信障害が……! ザザピーザザザ!!」

 

 彼女は通信機を切った後、テヘペロと私の方を向き直った。

 

「にぃげろーッ!!」

「ひ、ひええええええええっ!!?」

 

 出撃準備の整ったモビルスーツが私達を捕まえようとしたけど、銃器等は使わなかった。

 それもそのはずで足元には整備士を始めとした将兵が逃げ惑っている。水陸両用型モビルスーツが外海の敵に直ぐ対応できるように隣接した海へと飛び込めば、もう誰も追いかけて来なかった。

 深い海の中、初めて環境での操縦に苦戦する私の横でクレアが人差し指を立て、蘊蓄を垂れ流す。

 

「公国軍の水陸両用モビルスーツが驚異的なのは、航続距離。戦闘行動をしないのであれば何日だって活動できるし、補給も受けずに地球を一周する事もできるって話もある。このまま北米大陸を離脱すれば、晴れて私達は逃亡兵の身分から解放されます!」

 

 パアッと明るく告げる彼女に、私はふと気になった事を問い掛ける。

 

「ここまで流れで来たのだけど……これ、どうやって現在地を把握すれば良いの?」

「それはまあ、南に進んでくれれば……」

「南ってどっち?」

 

 ひくり、とクレア一等兵の笑顔が引き攣った。

 私達は潮流と魚介類の狭間を流れる漂流物となり、何日も海底空間を彷徨うのだ。

 そして陸を見たいと思っても見えなくなった。

 また尿道と尻穴を締め付けても排泄する場所がないので、

 そのうち私達は考えるのをやめた。

 

◆

 

 北米大陸の有力者を集めたパーティー会場には、多くの将兵が集められていた。

 私は電動の車椅子を手摺りに付けられたコントローラーで操作し、少し騒がしくなった会場内から抜け出す。外に出る。屋敷の四方を装甲車で固めており、万が一の襲撃にも対応できるように備えてあった。私は、反抗期に入ったからといって出撃した義妹を見捨てる程に落ちぶれたつもりはないし、親友が戦場に出たからといって後方に控えているような大人しい性格をしている訳でもない。

 現場を仕切る士官に声を掛けて、指揮通信車の中に入れて貰った。

 数名の兵士に支えて貰って通信機前の椅子に腰を下ろす。

 ロサンゼルス市内の地図を広げつつ、片手で通信機を操作した。

 

「……繋がったかな? こちらシャア・アズナブル少佐だ」

『シャア、怪我人の君を戦場に出ることは認めないからな!』

「そうじゃない。角付きが出たのだろう?」

『……ああ、その通りだ。今はゼロ少佐が対応している』

 

 そうか。と一度、目を伏せる。少しの間をおいて、改めて口を開いた。

 

「木馬はどうなっている?」

『……まだ見つけられていない。絨毯爆撃で焙り出す案も出たが、それは却下した』

「この街は公国軍の兵士も活用しているからな」

 

 親友の判断を肯定しつつ、市内の地図を睨み付ける。

 

「あの木馬は決して小さい訳ではない。姿を隠せる場所は限られている……例えば、そうだな。大きな屋根の付いた場所とか……」

『大きな屋根? ……そうか、ドームだ!』

「ドーム?」

『地球では気候が管理されていないんだ、だから競技場やライブ会場には雨風を防ぐ為の屋根が備え付けられている場所があるッ!』

 

 ああ、なるほど。と嘗て地球を旅していた時の事を思い返す。

 徹底的に環境を管理されているコロニーでは、興行等で雨天中止の心配をする必要がない。

 天候を気にする等、生粋のスペースノイドではなかなか思いつかないアイデアだ。

 

「よく知っていたな?」

『イセリナとのデート中に教えて貰った!』

「……あの坊ちゃんがプレイボーイになったものだな」

 

 溜息を零し、広げた地図から近場にあるドーム付きの会場を探す。

 

「木馬のサイズも考慮して……恐らく、此処だな。エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイム、ここ数年で建て替えたばかりの大型球場だ」

 

 ライブ会場としても人気があった。と補足をする。

 

『助かったぞ、シャア! 恩に着る!』

「礼は、無事に生き延びてから改めて聞くことにするよ」

 

 ガルマとの通信を切った。

 そして軍の回線に繋げて、飛び交う情報に耳を傾ける。

 今、私に出来る事は多くはない。

 それでも今、出来る事はあるのなら、全力で取り組むだけだ。

 そうすることで掴める未来があると信じて。

 

◆

 

 頭部を消し飛ばし、右手すらも切断された姿のグフ派生型。

 それでも戦意は衰える事ない。左手に握り締めたヒートサーベルの切っ先を僕達に向けて、純度の高い殺意を放ち続けている。此処まで戦えば、直感抜きでもわかる。グフ派生型に乗っているパイロットは、大気圏を突入する時に助けたあの子だ。

 彼女の実力は嫌と言うほどに知っている。

 赤い彗星よりも油断のならない相手に両手のビームサーベルを握り締め直した。

 

「……見えていないはずだよな?」

『はい、見えていないはずです』

 

 メインカメラのない状態で、しっかりと自分の姿を捉えている。

 先日にあったミード湖の戦いでも頭部を吹き飛ばされた状態で戦い続けるザクは居た。でも、あれはコックピットのハッチを開けていた。肉眼で相手の姿を捉えて戦っていた。でも彼女はハッチを閉じたまま、何故か僕達の位置を把握している。僅かに姿勢を落としてみる。それに合わせて相手も構えを変えた。

 意味が分からない、理解が及ばない。彼女には一体、何が見えているというんだ。

 

「……彼女と、通信を開くことはできるか?」

『オープン回線であれば……しかし応じてくれるかは別です』

「話したい。このまま戦い続ける事に意味なんてないはずだ」

 

 分かりました。とBBがオープン回線を開いてくれる。

 

「グフのパイロット、繋がっているなら応じてくれ」

『……何?』

 

 若い、声がした。初めて耳にする想像以上の幼い声に息を飲んだ。

 

『話す事なんてないはずだけど?』

 

 敵意を隠そうともしない剣呑な気配を言葉の節々から感じ取った。

 それでも、と勇気を振り絞って語りかける。

 

「……その機体では、もう満足に戦えないはずだ」

『だからなに? 見逃すとでもいうつもりなの?』

「僕は、君と戦いたくない」

『あらそう? 貴方がそうでも私は貴方を殺したい』

 

 その瞬間、真横からビームライフルの一撃がグフ派生型を捉えた。

 カイのガンキャノンから放たれたものだ。しかし、彼女は羽虫を叩き落すかのように片手に持ったヒートサーベルで易々と防ぎ切る。

 そして、グフ派生型は横槍を入れられても僕達から視線を逸らすことはなかった。

 

『……で、これで戦いたくないって?』

「違う! 僕は、そういうつもりじゃ……っ!」

『今のが貴方の意思じゃないって事くらいは分かるっての』

 

 貴方って軍人じゃないでしょ? と溜息混じりに告げられる。

 

『でも戦場に立っている以上、殺されても文句は言わせない。戦争を強制させられているのなら逃げ出せば良い。民間人を主張するならば、降伏して捕虜にでもなれば良かった。少なくともガルマなら敵兵であっても悪いように扱わない』

 

 言葉から強い意志が感じ取れる。

 僕よりも幼い子供であるにも関わらず、流されるまま戦場に立つ僕とは覚悟が違っていた。

 人殺しをしている。そんな事は分かっていたはずだ。

 

「……君は何故、戦うんだ?」

 

 つい先程まで殺し合っていた相手にする質問ではなかった。

 どうして彼女に問い掛けたのか分からない。

 だけど、問わずにはいられなかった。どうしても知りたかった。

 

『私はね、もう既に満たされているんだよ。幸せなんだ。たくさん幸せにしてくれたんだ』

 

 だから、と彼女はヒートサーベルを構え直した。

 

『戦うんだよ。私は、私を愛してくれた皆が大好きだから人を殺すんだよ』

「そんなの、君を愛する人達が望んでいる訳じゃない! 悲し過ぎるじゃないか!」

『関係ない。私が守ると決めたんだ。だからこれは私の勝手、私がしたいようにしてるだけなんだ』

 

 グフ派生型が腰を落とす。次の瞬間には、何時でも動き出せるように彼女は身構える。

 

『私は、私の勝手で人を殺す』

 

 君もそうでしょ? と問い掛けられた次の瞬間、空から航空機のエンジン音が聞こえた。

 

『おい、アムロ! 上だ! 爆撃機に囲まれてるぞ!』

 

 カイの声が聞こえた時には対地ミサイルが発射されていた。

 辺り一面を消し飛ばすような爆撃。舞い上がる砂煙に互いの姿が隠れる。

 僕は、背中を向けた。

 迷わなかった。情けない姿を晒し、一目散に逃げだしたのだ。

 彼女と戦う覚悟が、まだ僕は持てずにいる。

 

◆

 

 カナリアが相手にする連邦の新型機との戦闘は、遠目からでもよく見えた。

 周辺の建物を破壊しながら縦横無尽に動き回る為、否が応でも目に入ってしまうのだ。あの規格外の新型機をカナリアが抑えてくれている今の内に私達は木馬を叩かなくてはならない。木馬にはシャアの妹であるアルテイシアが居るという話だ。余裕があれば、航行不能に追い詰める。余裕がなければ、その時は仕方ない。私は地球攻撃軍を統括する司令官としての責務がある。

 例え、あそこに家族が囚われていたとしても撃墜しなくてはならない相手だった。

 

 僕は、カナリアの事を信頼していた。

 彼女であれば、なんやかんやでなんとかしてくれる。

 どんな状況であってもケロッとした顔で帰って来る。

 それは無根拠な信頼だった。

 

 ガウ級攻撃空母を野球場に向けて進路を取っている時、ビームライフルの閃光が視界を横切った。

 普段の彼女であれば、当たるはずもない一撃。しかし頭部は破壊されて、片腕をも切断されてしまった。彼女が、殺されるかも知れない。二射目のビームライフルが彼女を捉えた時、僕は我慢できずに進路を変更した。あと少しで野球場に辿り着く距離で回頭し、敵がいる可能性の高い場所に横っ腹を晒してしまったのだ。

 ド・ダイYSでカナリアを援護させようとした時、野球場から放たれたメガ粒子砲の一撃がガウ級攻撃空母を大きく揺るがした。警報音が鳴り響く、オペレーターが声を荒げる。もう持たない、墜ちます。と、そんな言葉が耳に入る。判断を誤った。一時の感情でガウ級攻撃空母の乗員達を危険に晒してしまった。

 この戦いは負けだ。

 私は全員に艦内からの脱出を指示し、自分は操縦手から操縦桿を奪い取った。

 

「私とてザビ家の男だ、無駄死にはしないッ!!」

 

 その時、通信機から声がした。

 

『ガルマ! まだ残っているか、ガルマ!?』

「シャアか……フフフフ、やってしまったよ。私は……一人では、駄目な男だ。だが……!」

『早まるな、ガルマ! 聞いているか!?』

 

 親友には申し訳ないが私はガウで木馬に体当たりをするつもりだ。

 操縦桿を握り締めて、覚悟を決める。

 脳裏を過ぎるのはイセリナ、そして家族達。そこにはシャアとカナリアの姿もあった。

 ジオン公国に────

 

『……だから君は坊ちゃんなのだっ!!』

 

 シャアが怒声を張り上げた。

 

『体当たりをするだけなら自動操縦で十分だ! 此処で死ぬな! お前は此処で死んで良いような人間ではない! お前は誰だ!? ガルマ・ザビだ! ザビ家の御曹司であり、地球攻撃軍の総司令官でもあるッ! 誰が地球攻撃軍をまとめた!? 北米大陸を統治したのは誰の功績だっ!? ガルマ・ザビだ、ガルマ・ザビが居なければ、ここまで現地人を懐柔することもできなかったッ!!』

 

 早口で並び立てられる言葉の数々には焦りがあった。

 彼も焦る事があるのだと、なんだか少しおかしな気持ちになった。

 

『生きろ、ガルマ! もし自分を許せないのであれば、ここで死ぬことを許されない君の生まれの不幸を呪うがいい!』

「なに、不幸だと!? 私はザビ家の人間としての責任を取ろうとしているだけだ!」

『君は良い友人だ、だが君の父上がいけないのだよ!』

 

 通信機越しにシャアが息を吸い込む音が聞こえる。

 

『君のようにすぐ命を投げ出すような坊ちゃんを前線指揮官に置くべきではなかったのだ!!』

 

 ガウ級攻撃空母が堕ちる。

 ドーム付きの野球球場から姿を現した木馬が緊急上昇し、突撃するガウの頭上スレスレを飛び立った。

 地面に衝突したガウは大きな爆発と共に撃墜する。

 角付きの新型機が木馬の脱出に合わせて、艦船に帰還をするのを愛用機のドップから眺めた。

 隣の座席には、エルフリーデ少佐が腰を下ろしている。

 

「……どうして君まで残っていたんだ?」

 

 問い掛けると「はッ!」と彼女は威勢よく応える。

 

「私はガウ級の機長に任じられました! 故に乗組員全てが脱出するまで残る必要があったのです!」

「つまり私が脱出するまで待っていたと?」

「はい! いいえ、違います! あのままなら後頭部を殴って気絶させるつもりでした!」

「ああ、なるほど、つまり、僕は結局、死ぬことはできなかったのか」

「はい! 申し訳ありません!」

 

 僕は、大きく溜息を零した。

 既にゲリラはシーマ大尉の活躍もあって鎮圧されている。

 今後の方針を固める為にも一度、キャリフォルニアベースへ戻った。

 

 滑走路にドップを着陸させる。

 出迎えてくれたのは副官のダロタ中尉だ。

 何故か沈痛な顔をしており、重々しく口を開いた。

 

「ニューヤークが連邦軍の本隊によって落とされました」

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