NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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39.セイラ出撃。

『……アムロは如何しましたか?』

 

 手元にあるモニターを起動すると青色の大きな文字でBBと書かれた画面が表示される。

 機械音声の基になっている音声は、カナリアが5歳だった時のものと酷似していた。電話回線を使って、少し音質を悪くすれば、無感情のカナリアがそこに居る。彼女の才能を基にした戦闘支援ユニット、彼女の支援があればこそ、ユウ少尉も、アムロも、あれだけの戦果を叩き出すことができた。

 それだけの可能性が、カナリアにはある事を、私は幼い時から知っている。

 

「そう、カナリアは何時だって、特別だったわ……」

 

 自分よりも年下なのに私よりも精神が成熟していたし、時には達観している事もあった。あの完璧に見えた兄をも翻弄する程の奔放さで周りを振り回し、なのに持ち前の元気っぷりと明るさで周りの大人達を次々と魅了する。こうやって並べると嫉妬しているように思われるかも知れないけど、私自身、彼女の事が大好きだった事を忘れて欲しくない。

 

『カナリアが、何か?』

「いえ、なんでもないわ」

 

 首を横に振る。

 

「アムロは今、外出中よ。彼が帰るまで私達でホワイトベースを守らないといけないのよ」

『他のパイロットは?』

「カイもハヤトもアムロを迎えに行ってるし、リュウはコア・ファイターに乗っているわ。ジョブはガンキャノンで援護してくれる」

『……分かりました、戦闘システムを起動します』

 

 機械の起動音、駆動系の軋む音を全身に感じ取る。

 メインモニターに光が灯り、整備員の指示に従って射出口に歩み出す。

 その時から少し、違和感があった。

 僅かに崩れた体勢を、機械による自動補正が立て直す。

 そして、外に飛び出した時に、それは顕著となった。

 

「感度が……早過ぎる……ッ!」

 

 着艦していたホワイトベースのハッチから外に飛び出した。

 しかし押し潰されそうになる重力の影響に加えて、想像していた以上の反応の速さに翻弄される。

 これではただ歩いているだけでも苦労する。

 

「……設定、間違えてない?」

『ユウ少尉の設定と同じです。試作機2号も同じ設定になっていると思いますよ』

「…………そう、もう少し扱いやすくできないかしら?」

『了解、幾分か感度を低く設定しておきます』

 

 それでもまだ敏感であり、ふらついてしまった。

 

『設定をビギナーモードに移行します』

「ねえ、本当にユウ少尉とアムロは最初からこれで操作していたの?」

『ユウ少尉は初搭乗の際に感度を引き上げていました。アムロは引き継いだ時から一緒です』

 

 自分の見込みが甘かった事を痛感させられる。

 しかし今更、帰る訳にもいかない。作戦は既に開始されており、目の前には敵が居るのだ。

 自分に課された使命は、アムロ達が帰る前、この戦線を持たせる事にある。

 

「……御兄様、私に力を…………」

 

 神には祈らない。代わりに私を置いて、勝手に死んだ兄に祈った。

 何処かの星から見守ってくれているはずの兄を願って、この戦場を生き抜く覚悟を決める。

 

『心拍数上昇……落ち着いて、補佐はします』

「……ねえ、もっと軽口で喋れないかしら?」

『軽口、ですか?』

「……いえ、忘れて頂戴」

 

 大きく深呼吸をする。落ち着け、と自分を鼓舞する。

 ランバ・ラルの事を思い出す。彼が兄とチェスで遊んでいた時の事を想起する。

 勝負事とは自分だけが戦っているのではない。必ず相手がいる、自分の思い通りになるように戦うだけでは二流。相手をじっと見据えて二手、三手先を読み取り、そこに罠を張るのです。また隙を見逃してはならない、踏み込む時は躊躇してはならない。踏み込んだなら確実に相手を葬り去れる一撃を。ま、ゲリラ屋の理屈ですがな。

 そんな彼の野太い声を思い出す。

 彼はカナリアに勝ち続けられた唯一の人間だ。兄にだって、ドズルにだって勝ち越すことはできなかった。

 尊敬できる人だった、信頼もしている。

 

「私にだって、戦えるわ!」

 

 カナリアを捕獲する為には先ず、カナリアに勝たなくてはならない。

 それなのに、ここで躓いてなんていられない!

 

『敵機確認、あの岩の影です』

「何処?」

『マップに表示します』

 

 視界の端に敵の位置を確認する。

 開けた場所、私はビームライフルを構えて、その岩を目掛けて放った。

 メガ粒子の閃光が、岩を破壊する。

 黒煙の中、焙り出した敵に目掛けてスラスターを吹かした。

 ビームライフルを腰に、ビームサーベルを握り締める。

 

 今、はっきりと分かる事がある。

 あの優しかった御兄様、復讐を考えるような人ではなかった。

 なのに、何故、殺した。何故、私から兄を奪った。

 私は、ずっと、ジオン公国が、強いてはザビ家が憎かったのだ。

 理屈じゃない、政治なんて関係ない。

 父を殺した、兄を殺した。義妹を奪った。

 だから私は戦うのだ。

 復讐心を糧に、自らの意思を以て、

 旧ザクの胴体部を両断した。

 

「退きなさい! 貴方達のような人間は、地獄に落ちるのが相応しい!」

 

◆

 

「なに、木馬だと!?」

 

 香港にて、書類整理に忙殺されていた儂は副官からの報告に声を荒げる。

 連邦軍の木馬に関する情報はガルマ少将から聞かされている。太平洋の方面に逃がしてしまった、との事であり、充分に注意をするように言い聞かされていた。実際、ガルマは相当な痛手を被っており、彼が所有するエース部隊を半壊されるまで追い込まれている。

 その木馬が、日本列島で発見されたとの事だ。

 実際には、木馬が抱えていた戦闘機。そして角突きの新型モビルスーツ。木馬そのものはまだ見つけられていないが、近場に身を潜めている事は間違いなかった。

 警戒するに越したことはない。

 なんせ、あの自分が鍛え上げたガルマ少将が小さくない被害を被った相手だ。

 カナリアとシャアの追撃を振り切ったのも大きい。

 

「ガルマ少将から頂いた情報によるとエース以外はぶつけるだけ無駄だ。下手に刺激せず、遠くから監視するだけに留めておけ」

「はッ、そのように」

「あとはそうだな。サイクロプス隊は今、どうなっている?」

 

 サイクロプス隊は開戦初期から活躍する少数精鋭の特殊部隊だ。

 今は水陸両用モビルスーツの扱いに長けており、東南アジアにある諸島を次々と落とす活躍を見せた。

 儂が抱えるエース部隊のひとつだ。

 

「東南アジアの占領も終わり、沖縄の侵攻計画に参加させる予定になっています」

「まだ参加は決まっていないな?」

「はい、確定はしていません」

 

 よし、とサイクロプス隊の召還を決意する。

 

「しかし彼らは今、陸戦用のモビルスーツが足りていないのでは?」

「追加でザクとグフ、それから数機のドムを融通するつもりだ」

「良いので? ドムは確か、娘に与える予定だったのでは?」

 

 今、此処を目指しているカナリアは対木馬戦でモビルスーツを失っている。

 だから新しいモビルスーツを融通して欲しいと可愛くおねだりをしてきたのだ。最近は少し壊し過ぎだと思いはするも、カナリア程の戦力を遊ばせている余裕はないし、カナリアがモビルスーツを壊されるのであれば、他の誰が戦っても同じ結果になっていたはずだという考えもあった。

 なので宇宙から送られてきたばかりの新型機を、そのままカナリアの部隊に引き渡す予定であった。

 

「チベットの研究所からドム・トロピカルなんとかってのが送られてきていただろう?」

「ああ、確か、実戦でのデータを取って来て欲しいと言われてましたね」

「あれを娘に預ける。なあに、ゼロ少佐が扱うならギニアスも文句は言わんだろうよ」

「彼女は、最高のテストパイロットでもありますからね」

 

 ああ、それと。とクランプが言葉を続ける。

 

「サイクロプス隊から要請されている人員補充の件ですが……」

「余っている熟練のパイロットなんて何処にもおらんよ」

 

 インド方面でも角付きの新型機が出現したという情報が入っている。

 木馬の角付きと比べると幾分か性能が落ちているようだが、それでもザクやグフと比べると優秀な機体だった。そして、それが三機も居る。今はヴィッシュ中尉の部隊が抑え込んでいるが、戦線は完全に膠着してしまっている。

 本来ならば、自分がグフを駆って出ている所だ。

 

「万が一という事もある。チベット基地のノリス大佐にも連絡を入れておくか」

「はい。しかし彼程の男が後方に留まり続けているのは公国軍の損失です」

「仕方あるまい。男が仕えるべきを自分で見定めたのだ」

 

 呟きながら空を見上げる。

 海の向こう側を眺めて、もうすぐ来る愛娘の事に想いを馳せた。久しぶりに会う娘の事を早く可愛がりたくて仕方ない。

 そして拳も何発か叩き込むのも忘れずに。

 

◆

 

 一方でガンダム試作機1号は苦戦を強いられていた。

 不意打ちで一機を倒したまでは良かったが、ザクⅡと旧ザクは警戒して徹底的に距離を取っており、空からは援軍のド・ダイYSを始めとした戦闘機が空爆する。そして足を止めている隙を突いてバズーカを始めとした武装で攻撃を浴びせられるのだ。セイラはビームライフルで応戦するも当てられず、相手との距離を詰めようとしても上手く逃げられていた。ホワイトベースを守らなくちゃいけない為、行動が制限されていた事もある。

 しかし、それにしても良いようにやられてしまっている。

 

「……やはり、少尉とアムロは特別か」

 

 戦況を見守る俺は苛立ちに貧乏揺すりを始める。

 無理をしなくても良い、相手を食い止める事だけを考えるんだ。

 そう伝えても焦りはあるのだろう。

 セイラは執拗に相手を倒そうとしては失敗を繰り返している。

 ガンダムの装甲がなければ、三度は死んでいるところだ。

 

「ブライト、アムロが帰ってきたみたいよ」

 

 ミライからの言葉に「そうか!」と思わず叫んでしまった。

 周りからの視線を感じ、コホン、と咳払いをする。アムロにはノーマルスーツの着用後、直ぐガンダム試作機2号で発信するように指示を出した。ガンキャノンは出払っている為、ガンタンクにカイとハヤトを乗り込ませる。

 そして残る一機、ホワイトライダーだが……

 

『艦長、私も出る』

 

 ホワイトライダーのコックピットからノーマルスーツを着用したシス・ミットヴィルが通信する。

 

「いや、君はまだ子供だ……!」

『アムロやカイも、まだ子供……大丈夫だよ。戦うために作られたお人形、それが私』

 

 それに、と彼女は無感情に続ける。

 

『研究所に戻るのは、死ぬよりも、嫌だから』

 

 そう言って彼女はアムロ達の後に続いて射出口から飛び出した。

 ガリガリと頭を掻き毟る。出てしまったものは仕方ない、そして彼女の腕が立つのも事実だ。

 俺は死んだら地獄で済むのか? と若干、逃避した事を考えて彼女達を見送る。

 指示を飛ばした。

 ホワイトベースを発進の準備をさせる。

 

「えっ? さっきは敵に見つかるからって……」

「あんな子供を戦場に行かせておいて、我々だけが後方でのんびりできる訳がないだろう!?」

 

 ミライの言葉を食い気味に遮った。そして準備が整った時、改めて指示を下す。

 

「ホワイトベース、発進する!」

 

 全く、寒い時代だよ。本当に!

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