NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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43.威力偵察。

 中央アジアの砂漠地帯を飛行機の影が翔ける。

 頭上の青空で太陽に照らされるは、公国軍が開発したルッグン偵察機。地上を走る二隻のギャロップ級高速陸戦艇に情報を送る。それを受け取る通信機を操作するのは新米の公国兵、口にブロック型の携行食を咥える青年はバーナード・ワイズマン。階級は伍長。開戦後に徴兵された彼は短い促成教育を受けた後、モビルスーツパイロット候補生としてサイクロプス隊に配属されている。

 教えられた手順通りに暗号を解読機に通した彼は、別艦に乗る直属の上官に通信を入れる。

 

「隊長、ルッグンより連絡が入りました」

『よぉし、思っていたよりも手際が良いな』

「ありがとうございます!」

『それで内容は?』

「はい! 木馬は1時の方向、20キロ先。との事です!」

『受け取った。任務御苦労、そのまま待機せよ』

 

 艦橋にて、新米からの情報を受け取ったシュタイナー大尉は通信機の受話器を戻す。

 その彼の隣に立っていたニット帽を被った中年男性が「まるでままごとだな」と笑いかける。「新米だった頃を思い出すな」とシュタイナーは返し、ギャロップ級が進む先を見据える。

 

 偵察機による情報提供はラル大佐の配慮だ。

 水陸両用モビルスーツが主体のサイクロプス隊に新しく陸戦型モビルスーツを配備してくれるだけではなく、ドムという高性能機まで用意してくれた。何も言わずとも作戦に必要なものを揃えてくれる上官には、感謝しかない。

 しかし、それ故に浮き彫りになる事実もあった。

 作戦で失ったパイロットの補充要請に対し、与えられたのは養成学校を出たばかりの若造だ。これは公国軍の人材が不足している事を意味している。また開戦直後の快進撃も鳴りを潜めていた。北米大陸を占拠し、半年以上が過ぎた今もまだジャブロー基地の位置を特定する事ができていない。ニューヤークを攻め落とした連邦軍の中には、新型の量産型モビルスーツの姿が確認されており、インド戦線では、数日前に連邦軍の高性能機が発見されている。

 公国軍の優位性が、徐々に脅かされつつあった。

 モビルスーツを実践運用している事が唯一、公国軍が連邦軍に勝るアドバンテージであった。かつて地球で起きた世界大戦でドイツが高性能な戦車で敵国を蹂躙した時のように──しかし連邦軍がモビルスーツの開発を終えて、同じ土俵に立てば、有利なのは国力で圧倒する連邦軍の方だ。練度だけでは限界がある、サイド3と地球ではマンパワーに差があり過ぎる。

 極東の島国が巨人国家に真っ当な手段で敵うはずもないのは明白な事実なのだ。

 

 かつて敵将のレビルが口にした「ジオンに兵なし」という主張が、いよいよ以て真実味を帯びてきた。

 ジャブローを攻略しなくては、連邦軍の心を折る事ができない。どれだけ領土と拠点を奪い取っても敵の本拠地を抑えなければ意味がない。連邦軍が量産体制を整えて、数を揃えてしまう日がタイムリミットだ。

 とはいえだ。キシリア機関の活躍もあり、少しずつだが確実にジャブロー基地の位置を特定しつつある。時間の問題である。公国軍がジャブロー基地を特定するのが先か、連邦軍の反攻作戦の準備が整うのが先か。

 いずれにしても戦争の勝敗が決するのは、そう遠い話ではない。

 

「とはいえだ。今は先の事よりも目先の難事だな」

 

 幸いにもラル大佐は、木馬の撃墜を望んでいる訳ではない。

 木馬による被害を抑える事がサイクロプス隊に与えられた任務であり、その為の手段は一任されている。作戦に期限はない。とはいえだ、このまま木馬の好きにさせるつもりはない。いざという時に万全の状態で戦わせない為にも妨害を徹底し、少しでも消耗させておく必要がある。

 それにしても、と偵察機からの報告を思い返し、疑念を口にした。

 

「木馬というのは、随分と足が遅いようだな」

 

 既に察知されている事は、木馬の連中も承知のはず。砂漠地帯を突っ切るつもりであれば、もっと速度を上げても良さそうなものだ。

 

「もしかすると故障しているのかも知れないな」

「ほう?」

 

 ニット帽の中年、ミハイル・カミンスキー中尉の言葉に耳を傾ける。

 

「連中はミード湖に加えて、ロサンゼルスでも戦っているんだろ? それ以前からずっと戦い詰めだ、何処かしら問題を抱えていると考えた方が妥当だよ」

 

 北米の連中も、そこまで無能じゃねえよ。と彼はスキットルに入った酒を呷る。

 確かに、そうかも知れない。

 可能性のひとつとして頭に入れておくことにした。

 兎も角、今後の作戦の為にも先ずは、木馬の練度を確かめる必要がある。

  

◆

 

 ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースの艦橋にて、

 俺は乗組員から定期的に伝えられる敵機発見の報告に耳を傾けている。

 アジア大陸に侵入してから周囲に付いて回っていたルッグン偵察機。その動きが活発になってきている。まだ襲撃はない、警戒していた沿岸防衛の備えもなかった。かといって、敵も俺達の事を何時までも放置し続ける訳ではない。無視されている、と考えるのは些か楽観的、というものだ。もうすぐ敵も仕掛けてくる頃合いなのかも知れない。嫌な予感は当たるものだ、と気を引き締める。

 今の内にパイロットを二班に分けて、警戒態勢に入らせておくべきか。

 リュウ曹長とジョブ伍長は別の班に入れておくべきだ。相性を考えるとリュウ曹長とカイを一緒にした方が良いだろう。アムロ、ジョブ伍長、ハヤトのA班。リュウ曹長、カイ、シスのB班。とりあえず、今はこの組み合わせで様子を見るとしよう。

 通信機に手を伸ばし、リュウを呼び出す。

 指示を出し、ひとまず、やるべきことを終えて息を吐いた。こういう時に規律を知る人間が居るのは助かる。ジョブ伍長は実戦向きの人間ではない、ユウ少尉が居なくなった今、リュウ曹長の存在は有り難い。

 まあ尤も今、早急に解決しなくてはならない問題が他にある訳だが。

 

「カチュアちゃんレーダーに反応あり! 右手の方向に敵機ひとつ!」

「……オペレーター?」

「あ、はい。当たってます。凄いですね、この子。ちなみに4時の方角です」

 

 艦長席の少し後ろにある副官用の椅子に座る赤髪の少女、どやっとした顔で腕を組んでいる。

 艦橋に居る事を許可した訳ではない。しかし何度、追い出しても人の目を掻い潜り、気付けば艦橋内に居座っている。もう注意するのも面倒になり、少し前までリード中尉が座っていた席に彼女を座らせている。

 自分は、超能力を始めとしたオカルト的なものは信じていなかった。

 しかし、彼女、カチュア・リィスと時間を共にしていると、その信条が揺らぎつつある。

 

◆

 

 けたたましい警報音が鳴ったのは、警戒態勢に入ってから程なくしての事だ。

 ホワイトベースにバズーカ砲が撃ち込まれたようだ。パイロットスーツを着て、待機していた俺はホワイトライダー? とかいう奴の新型機に乗り込んで、カタパルトから艦外へと射出される。さて、このホワイトライダーの事を先程は新型機と言ったが、実際には新入りといった方が正しい。砂漠に着地する際に、砂に足を取られて少し姿勢を崩す。戦闘シミュレーターで触れてみたが、この機体。ガンキャノンと比較して、運動性は高いが機体性能が劇的に向上している訳ではなかった。試作型シェキナーと銘打たれた銃器からなる高出力ビーム砲だって、アムロが乗るガンダムのビームライフルと比べれば、銃身の大きいばかりで取り回しが悪い。

 まあ機体の性能上、前に出なくて済むのは有り難いっちゃ有り難いのだが────

 

『敵の気配は感じます。でも、カチュアのようにはっきりとは……前に出ます』

 

 ──トリコロールカラーのガンダム試作機2号に乗ったシス・ミットヴィルが盾を構えて前進する。

 

「ま、待ってよシスちゃん! 無暗に出るもんじゃないさ」

 

 自分よりも年下の女の子に前を歩かせるような男にはなりたくないもんだ。

『どうするの?』と胡乱な声で問い掛ける彼女に「ちょっと待ちなって」と俺はホワイトライダーに搭載された機能を起動する。ホワイトライダーには、特殊なシステムが搭載されている。それはペイルライダー計画の根幹を為す戦闘用オペレーティング・システムの試作品であり、ホワイトライダーのソレは火器管制補助システムとして機能する。元はムラサメ研究所で開発されていたEXAMシステムを参考に作られたシステムであったようだが、EXAMシステムのコピー品を作れなかった為、代替品として用意する事になったようだ。そのシステムの名称は、ゼウス。ZEUSでゼウスだ。

 代替品の試作品に大層な名前を付けるもんだって、僕ちゃん感心しちゃうね。

 

「ま、システムなんて便利に使ってなんぼって訳よ」

 

 EXAMシステムとZEUSシステムの最大の違いは、EXAMシステムは基になる人格データからシステムが作られているが、ZEUSシステムは膨大な学習データから人格を生み出している。

 そして、俺がこれだけホワイトライダーについて、詳しい事にも理由があった。

 

『のお、カイよ。吾輩に対する態度ってものがなっておらんのではないか?』

 

 手元のモニターに映し出されるのは、ホワイトライダーを模した王子様風のコスプレ娘。

 3Dにモデリングされた少女が眉間に皺を寄せている。彼女曰く、製作者の趣味を詰め込んだ最高傑作。ゼウスと呼ばれるシステムそのものである。先程、語っていたのも全て、このゼウスって奴からの受け売りって訳だ。

 便利な道具だ、便利に使って何が悪いんだ。と口には出さず「すまなんだ」と代わりに指示を飛ばす。

 

「ミノフスキー粒子が濃くて、レーダーが使えない。索敵できるかい?」

『レーダーが使えなくて、機械にどう判断しろというのだ。まあ良い、バズーカの入射角から大まかな位置を割り出すとしよう』

「良いね、任せるよ」

『お主も頑張るのだ。所詮、吾輩はプログラムされた事しかできんからの』

 

 ああ、それと。とゼウスがやけに人間味のある仕草で、思い出したように続ける。

 

『砂煙を感知した。カイよ、あれをどう見る?』

「ああん? ……見えねぇよ」

『拡大してやる』

 

 メインモニターの一ヶ所が拡大される。

 砂漠の中、確かに砂煙を立っているのが見えた。

 それは大きく横へと移動している。

 

『自然に発生した訳ではないと思うのだが……』

「あんなん敵に決まってるでしょ! 見た感じ、結構な数が居るじゃねぇか!」

『おお、そうか。学習した。次からは積極的に報告するとしよう』

「そうしてくれると助かるよ!」

『EXAMなら人の思念とやらを感知するというが、全く以て原理がわからんな』

 

 うんうん、と頷くゼウスを無視して、試作型シェキナーを展開する。

 メガ・ビーム・ランチャー形態。銃身をまるで弓のように変形させて、左肩の放熱板を大きく開いた。

「9時の方向に敵影ありだ!」とコア・ファイターに乗るリュウとシスに報告を入れる。

 しかし、シスから『え?』という疑問の声が上がった。

 

『違う、そっちは一人! もっと別の方角から多くの人が……!』

 

 砂煙のある場所とは別の方角からバズーカ砲の弾が降り注いだ。

 爆風に砂漠の砂が撒き上げられて、一時的に有視界が塞がれてしまった。

 くそっ、あれは囮だったのか。

 試作型シェキナーをガトリング形態に戻し、周囲を警戒する。

 

『ふむ、音がするな。カイよ、ヒート・レイピアに持ち替えた方が良いかも知れんぞ?』

 

 ゼウスの声がした数秒後、砂煙を掻き分けて、公国軍の青い機体が目の前に突っ込んで来た。

 

『ああ、すまん。遅かったな』

「んもお!」

 

 振り被られたヒート・サーベル。もう近接武器に持ち替えている余裕はなく、これまでか。と死を悟った時、横から飛んできたバルカン砲の弾がグフの機体を大きく揺らした。

 

『大丈夫?』とシスの短い言葉が通信機に入る。

「……おかげさんで」

 

 左手にヒート・レイピアを持って、砂煙から脱出する為にスラスターを吹かす。

 接近戦は不利だ。機体性能の問題ではない。

 実際に訓練されたパイロットが相手では、近接戦闘で敵わない。

 シスを守るつもりで、前に出過ぎた。

 それでシスに庇われているんだから格好悪いったらありゃしねえ。

 

 砂煙の中から脱出すると、真正面にはマシンガンを構えたザクⅡの姿があった。

 迷っている時間はない。アムロにもできたんだ。と覚悟を決めて、ガトリング砲で牽制しながら突っ込んだ。

 ゼウスが火器管制補助システムというだけあって、自分でも驚く程に弾が当たる。

 その補正の力は、まるでゲームのビギナーズモードだ。

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