地上を吹き抜ける風の中に垣間見えるは六連星、舞い上がる砂の中で描かれる模様は銀河。
巡り廻る歴史の中で誰かに見送られる事なく、姿を消す命の灯火。地上に生まれた命の名を、誰にも知られる事もなく、生きた証が誰かの記憶に残る事もない。草原を駆ける白馬を見ず、街角に立つ美女にも目をくれず、人は皆、宇宙を見上げていた。
ペイルライダー計画~挑戦者達。
宇宙世紀0079年。宇宙からの亡命者、宇宙史に突如として生まれた一人の人間。
プロト・ゼロ。人類の革新『ニュータイプ』。
地上で命を燃やす星々を誰も覚えていない。
彼らは何処に行ったのか、人は宇宙ばかりを眺めている。
燕よ、遥か頭上を飛んでいる燕よ。編纂された歴史を眺める観測者よ。
教えてください。人類の行く末、彼ら一人一人の生き様を。その意味を。
彼らが歩む、地平線の果てを。崖の向こう側、水平線の先まで。
EXAMシステム。
高度な人格プログラム、独立型戦闘支援ユニット。
鬼才クルスト・モーゼス博士。
やはり凡人では天才には勝てないのか。
歴史に名を連ねる名立たる者達の後を追って、
幼き頃に見た輝く夢を追いかけて、人は氷ばかりを掴んでいる。
情熱に溶ける氷ばかりを掴んでいる。
歩みを止めず、何処ぞへと歩き出す。
見送られる事もなく、次の舞台へと歩き出す。
燕よ、その高い空から彼らの行く末と教えてください。
この果てない宇宙の向こう側に、今も彼らは歩み続けているのでしょうか。
◆
Hyper
Animosity
Detect
Estimate
System.
通称、HADES。
これは次世代型モビルスーツ開発計画「ペイルライダー計画」の中核を為すシステムの事である。
V作戦を立案した時から連邦軍はパイロットの質を補う為にプログラムによる補助を重要視しており、学習型コンピュータに膨大な戦闘データを学習される事を急務としている。そこでクルスト博士が開発するEXAMシステムの存在を知り、システムがパイロットを補佐し、機体を制御する事によって、疑似的な機体性能を向上されられる可能性を見出した。
しかしEXAMシステムの情報が開示されてもコピーする事は敵わなかった。ブラックボックスと思しきものも含めて、全てまるっと複製しても同じ効果が表れなかったのである。連邦軍はクルスト博士がまだ情報を隠している可能性を疑ったが、クルスト博士自身もこの現象に対して理解できていなかった為、ペイルライダー計画にEXAMシステムを流用することはひとまず断念する事と相成った。
これは、まだ連邦軍は純粋なモビルスーツ開発では公国軍に敵わない。そう思われていた時の話になる。
故に連邦軍は次世代モビルスーツの開発と銘打ったペイルライダー計画にEXAMシステムを欲したのだ。よってEXAMシステムの流用が不可能だと知った後、代替品を求めるのは当然といえば当然の話。そして、そのシステムの開発者がEXAMシステム、強いてはシステムに組み込まれていたBBという人格データの虜になっていた事は、まあ浪漫を知る研究者としてはあり得ない話でもないだろう。
男が研究者を志したのは、AIに心を奪われた為だった。
電子の歌姫が世を席巻していた時代があった。
それ以前にも様々な成長を経て次々と心回路を起動させるロボットの少年少女、戦いを経て良心回路をインストールするロボットバトル。ロボットの心を題材とした物語は古来より数多ある。そして、それは多くの人間の心を穿ち、性癖を歪ませている。そして少年達の心に大いなる浪漫を育んできた。人格を持ったAIが自分をナビし、生活の一部とする。それは大いなる野望であった。
そして、その人格は女性でなくてはならない。と男は強く決意をしていた。
人類は宇宙に出て、まだ、可愛い女性型メイドロボットを人生のパートナーにする夢を果たせていない。だが可能性を見た。メイドロボットはまだ駄目かも知れない。電子の歌姫を現実世界に呼び出す事は、未だ不可能なのかも知れない。だが、しかし、ネットナビなら、可能性があるのではないか? EXAMシステム。即ち、BBには、その可能性があったのだ。
現物がある。ならば、人類の英知を結集し、執念とド根性で実現してのけるまでだ。
男は計画を私物化する。
どうして宇宙世紀に生きる研究者と科学者は、計画を私物化してしまうのか。
理由はない、理屈もない。ただ浪漫を追い求めているだけである。皆が皆、こんな事もあろうかと。等とふざけた事を口にする為に研究を続けているような連中なのだ。
傍迷惑な事、この上ない。
ヒトラーの尻尾と揶揄されたギレンが持て余す連中である。
毒には毒を以て制さねば、奇抜な水陸両用型モビルスーツが大量に生産される事になっていた。
ギニアス技術少将は、まさしく英雄であった。
さておき、男は計画には段階が必要だと考えた。
完璧な人格プログラムを打ち込む事は、たった一度の開発では不可能だ。
学習させる必要がある。多くを学び、経験させる。
ZEUS、AREUS。THEMIS。
疑似的に人を作ろうというのだ。ならば神の名を冠するのが当然だ。
支配や武を冠するなど、建前の理由に過ぎない。
三種を統合したHADESも途中だった。
人のように感情で物事を考える人工知能を作れた。と確信した時、人の名を与えようと考えている。
今はまだ戦闘用の支援ユニットでしかない。
しかし人に寄り添えるように組み上げたつもりだった。
愛着を持って貰えるように3Dモデルも製作した。
多くを知り、多くを学べ。
人類と機械は分かり合えるのだ!
ペイルライダー計画の責任者であるグレイヴは、
この計画の私物化を、設計の変更が不可能になった段階で知らされる事になる。
解任する事は簡単だ。しかし今からでは進捗が間に合わない。
法の穴をすり抜けるように仕様規定を満たしており、
きっちりと成果を出していることが心底、腹立たしかった。
なによりも、これをレビル大将の前でプレゼンをしなくてはならない事が憂鬱だった。
オタク趣味を拗らせた男は営業力が壊滅的である為、その辺りは上官のグレイヴに丸投げなのだ。
◆
射撃戦では連邦軍の新型に逆立ちしたって敵わない。
その為、木馬と戦う時はまず如何に相手の射撃を封じるのか。という事から考える必要がある。
わざと立てた砂煙の囮に相手が気を取られている内に奇襲を仕掛けられる距離まで接近し、ザクバズーカとクラッカーで砂煙を舞い上がらせる。ミノフスキー粒子散布下の環境では、索敵機能の大半を有視界の映像に頼らざる得ない。
砂塵に身を潜めつつ接近し、精鋭四人で切り込んだ。
その中にバーナード・ワイズマン伍長は含まれていない。
砂塵の外でザクⅡに乗った彼はザクマシンガンを両手に警戒を払っている。現場での促成教育をする為には先ず、実戦を知って貰わなくてはならない。そのような理由で彼は戦場に駆り出されている。勿論、今回の彼は戦力として数えられていない。戦場の空気を吸わせる為だけに出陣させられていた。新型機に有効打を与えられないザクマシンガンを持たされているのも、狙って当てる武器よりも適当にバラまく方がまだ生存率が高いと思われた為である。
そんな彼が敵と直接、切り結ぶのは想定していない事だった。
砂塵から飛び出した純白の機体、その真正面に居たのがバーニィの乗っていたザクⅡである。彼は照準も定め切れていないまま、マシンガンの弾を斉射する。ルナ・チタニウム合金の装甲を持つホワイトライダーでは、豆鉄砲も良い所ではあったが、それでもこの機体で直接、弾を弾いた事のないカイは無意識の内に怯んでしまった。ホワイトライダーがヒートレイピアで相手の腕を斬り上げる──つもりであったが半歩分の踏み込みが足らず、マシンガンの銃身のみを斬り飛ばした。
バーニィは咄嗟に銃を捨てる。空中で爆破するマシンガンを尻目にヒートホークを右手に持った。
そして、左手にクラッカーを握り締める。
ヒートホークの加熱された橙色の刀身、それを前に突き出す事で近接武器を意識させた。
近接が得意ではないカイは、遠距離からガトリング斉射で仕留めてやろうと試作型シェキナーに手を伸ばす。その一瞬、ホワイトライダーのカメラアイが右肩の大型銃器に向けられたのを感じ取ったバーニィは、左肩のザクシールドを前にスラスターを吹かして突貫する。その唐突な行動にカイの反応が一瞬、遅れた。咄嗟に構えた試作型シェキナーによるガトリング掃射。火器管制補助システム「ZEUS」の補正もあり、ザクⅡのシールドが破壊される。左腕にも何発かの弾が刺さるが、破壊するには届かない。叫ぶバーニィ、軋む駆動。スラスターを唸らせて、スパイクによる体当たりはコックピットを保護するルナ・チタニウム装甲を欠けさせた。
それだけだ。それだけだが、相手のコックピットを大きく揺らすことができた。
カイは揺れる座席の中、相手が右手のヒートホークを振り被っているのを辛うじて見る。「こんにゃろお!」と自棄になって払ったヒートレイピアが偶然、ヒートホークの刃とかち合った。馬力はホワイトライダーの方が上だ。カイは体勢不利の状況からザクⅡを弾き返す。
ザクⅡは追撃もせず、そのまま相手が距離を取る。
どうして、ここで距離を取るんだ?
カイは僅かな違和感を察したが、しかし戦場での迷いが命運を変えることを知っていた為、試作型シェキナーのジャイアント・ガトリングの砲口を敵機に向ける。ザクⅡのコクピットの中、バーニィが目を見開いたまま笑みを浮かべる。彼が乗るザクⅡの左手は、ぶらりと下げられている。体当たりをした後に、左腕は故障でまともに動かなくなってしまった。だから踏み込む必要があった、ヒートホークで切り掛かる必要があった。ザクⅡの左手は今、何も握られていなかった。
クラッカーは今、王冠付きの足元にある。
「ザクでもやりようはあるんだ! 機体性能の差が勝敗を決定付ける訳じゃないって事さ!」
カイが照準内に収まったザクⅡを目掛けてガトリング砲の引き金を引こうとした時、足元が破裂する。
ルナ・チタニウム装甲。その程度で破壊する事はできなかった。しかし乾いた砂を巻き上げることはできる。爆破によって掘り返された穴にホワイトライダーは足を取られて、そのまま地面に倒れてしまった。それを見た、バーニィは欲が出た。ザクを反転させる。ヒートホークを振り被って、横に敵の新型を目掛けて突っ走った。
吠えるバーニィ。その時、通信機から怒声が張り上げられた。
「屈め、バーニィッ!!」
ニット帽を被った男の野太い声にバーニィは咄嗟に地面へ滑り込んだ。
頭上を掠める閃光。ビーム兵器が放たれた方を見れば、そこには藍色の角付きが自分にビームライフルの砲口を合わせていた。視界の端をバズーカ砲の弾が横切り、角付きと自分の間に着弾する。舞い上がる砂煙の中、すぐ隣まで誰かが歩み寄って来る。黒色の機体、ドムだった。その機体は地面に倒れていたザクⅡの壊れた左腕を掴んで持ち上げた。
『撤退だ』と仲間内からミーシャとの愛称で知られるベテランパイロットが通信機で指示を出す。
『相手の戦力は掴んだ。作戦目的は達成した』
「くそっ!」
あと一歩で倒せた。バーニィは歯がゆく思ったが、素直に先輩達の指示に従った。
サイクロプス隊は本来、自分なんかが入ることができない精鋭部隊だ。まだ入隊して短い時間だが、バーニィは先輩達の凄さを肌身に感じ取っていた。それに上官の指示は絶対だ、と促成教育で何度も言い聞かされている。それが結果的に自分の命を救う事にも繋がる。と先輩達の自分に対する扱いから、なんとなく察してもいた。
だからバーニィは悔しく思っても、撤退に反対なんて考えもしなかった。
ZEUS開発者「ドリキャスは政治に、そしてデマゴーグに敗れたのだ! 決してプレステになどに劣っていてはしない!」
ミズ・ルーツ「道化ね。結局あなたも」
ZEUS開発者「専務や三四郎はゴーストファイターなどではない。この重大な局面で、確かに戦っている。この独立戦争に、厳然と存在しているのだよ──」
ミズ・ルーツ「いや、流石にもう解放してあげなさいよ」
ZEUS開発者「アルカディアだって最近になって年に一度、新作ゲームが開発されているではないか!」
ミズ・ルーツ「あれは、違うのよ。ダメなのよ」
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著者が過去嵌ったゲームのトップ3の一つはドリキャスのもっとやきゅつくです。
残りふたつはプレイ時間的にFFTと三国志9だと思います。