NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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46.そして、デュバルは泣いた。人知れず。

 チベット基地は、地球が技術本部の想定していた以上に過酷な環境にあり、戦線に立つモビルスーツの故障が相次ぐことから現地改修の拠点として建てられた秘密基地である。技術本部が動くよりも先にガルマ少将がキャルフォルニアベースにて、モビルスーツを地球用に改修する設備を整えてしまったが、地球上に配備する全てのモビルスーツを評価、検証する為の施設として機能する事と相成った。

 基地の責任者には偉大なる英雄ギニアス技術少将が選ばれている。

 これは碌な後ろ盾もなしに立身出世を果たしたギニアスが、各企業に対して明確な繋がりを持っていなかった為だ。実際、彼の判断は公正であり、一言、文句を口にすれば「素人質問ですが」という前置きの後でメンタルが崩壊するまで相手を追い詰めてくる。基本的に彼が口出しするのは「これは良いものだ!」と思い付きで開発したモビルスーツばかりだ。用途は作ってから考える。作ってしまったからには、使わなくては勿体ない。そんな感じで生産ラインに組み込ませようと資料を作るのだが、それでギニアスの目を騙し切ることはできなかった。この事態にメンタル崩壊を起こす開発者を横目に各企業の偉い方も頭を抱えた。開発した機体が採用されなければ、赤字になる。故に多少、強引な手段を使ってでも産廃機体を買い取らせる為にギニアスに賄賂を送りつけようとした。

 ギニアスは賄賂額に目を通した後で「この程度の金額で本当に買収できるとでも?」と金額だけを書いたメモ用紙と共に突っぱねる。各企業が彼に提示した金額は、一個人に支払う分には十分過ぎる金額だ。しかしギニアスが提示した金額は、この取引によって得られる会社の純利益と類似した金額であった。

 これを見た各企業は彼の懐柔を諦めて、彼の排除を働きかけるようになる。

 しかし、これもすぐ頓挫した。

 

「我らが英雄ギニアス閣下を失脚させるだと!?」

「奴らはヤーポン法を復活させるつもりなのか!?」

「そんな……折角、共通規格を持てるようになったというのに!」

「畜生! 世界から共通語を取り上げるのに等しい悪行だぞ!」

 

 別に、そのような意図はなかった。

 自社にとって利益になる者を要職に付けたいだけなのだ。少し考えれば、分かる事だ。だが企業が思う以上に民衆は愚民であった。単位の行進の立役者であるギニアスを失脚するのは、それはそのまま共通規格の否定に繋がった。彼らは見落としていたのだ。企業が自社の利益を第一に考えるように、国家の利益を第一に考える存在が居ることを忘れていた。これが民主主義であったのであれば、話は別だったかも知れない。共和国時代に起業した企業にとって、政治家は個人の利益と財産を守る者が多かった。事実、国家そのものを大事に捉える者は少なかったのが実情である。

 しかし独裁体制の現在、国益が御家の利益に直結する者達がいる。

 ザビ家である。ギニアスの存在は、国益に直結する。故に総帥府とキシリア機関が彼を守る為に手を回すのは、当然の流れであった。つまり企業連は政治とデマゴーグに敗れたのだ!

 ジーク・ジオン! ジーク・サハリン!

 

 閑話休題、

 今、チベット基地の成り立ちはさほど重要ではない。

 重要なのは今、この基地で新兵器の開発に成功した事である。

 モビルスーツが携行できるビーム兵器。

 即ち、ビームライフルの事だ。

 

「尤もビーム兵器の基礎研究はMIP社が継続していたのだがな」

 

 公国軍もビーム兵器の研究を進めていなかった訳ではない。

 連邦軍よりも先に公国軍の方が先に艦艇にメガ粒子砲を搭載しているし、ビーム兵器の小型化にも余念がない。実際、水陸両用型モビルスーツの標準装備であるし、ドムにもビーム兵器を搭載する予定があった。こればっかりはミノフスキー博士の愛弟子であるレイ博士の頭脳を称賛する他にない。

 ただ勘違いしないで欲しいのは、公国軍のモビルスーツの開発技術は決して、連邦軍に劣っている訳ではないという事だ。戦車の武装がまだ機関銃や榴弾砲の時代に戦車砲が登場した時と同じように、大艦巨砲主義の時代に空母が登場した時と同じように、戦場に現れた新しい概念にまだ公国軍が対応できていないだけである。

 元々開発を進めていたモビルスーツ用のビーム兵器、現物を真似するだけならば訳はない。 

 

「まだまだ解明していく必要はある」

 

 チベット基地の開発用ドッグ、新兵器を持たせたモビルスーツを見上げながらギニアスが呟いた。

 公国軍が初めて実現した試作型ビームライフル。といえば聞こえは良いが、実際は連邦軍が開発したビーム兵器の模造品だ。プロト・ゼロ少佐が鹵獲したビームライフルと性能比較をすれば、全ての面で劣っている劣化版といっても過言ではない。しかし、これはまだ試作段階。ブレイクスルーとも呼べる技術を導入した結果、初めて試作したにも関わらず、モビルスーツが携行できるビーム兵器という項目を突破することができた。

 正解を知った。今後、ビーム兵器に関する研究速度は飛躍的に加速する。

 開発を進めれば進める程に技術は向上していくことになる。

 

「しかし、一番の問題点はザクに搭載できないことですね」

 

 ギニアスの隣に立つ白衣の男が口を開いた。

 ビーム兵器の運用には高出力のジェネレーターが必用であった。型落ちのザクは勿論、グフでもまだ足りない。ドムで漸く、といった所である。次期主力機と目されるジオニック社のゲルググとツイマット社のギャンであれば、ビーム兵器にも耐え得ることもできるだろうが、それでは配備の方が間に合わない可能性がある。かといってドムのコストは高い。ザクのように数を揃える事は難しかった。というよりも今あるザクも戦前の十分な準備期間があったので何千と揃える事ができたのだ。戦時中の今、同じことができるはずもない。

 だが、ドムには搭載できる。その一点が重要だった。

 

「まさか、この機体を量産しておいて良かったと思える日が来るとはな……」

 

 ギニアスは改めて、ビームライフル搭載機として改修を受けたモビルスーツを見上げる。

 青い塗装が施された機体。高機動型モビルスーツという触れ込みで生産ラインに組み込まれたが、推進力を重要視した設計はパイロットを選ぶ機体となってしまった。ザクと比較して、信頼性と整備性に劣る機体は現場からの評判も悪い。そもそもだ。ピーキーな性能をしているおかげで素人に乗せる訳もいかず、教習用としても使えないので今も各地の基地で埃を被っている事も多い機体であった。ビームライフルを搭載するのに必要なのは、高出力のジェネレーターだ。ドムのジェネレーターは土星エンジン、これと同じものが当機にも搭載されている。

 ツイマット社に対する救済の意味合いもあって量産された機体は今、公国軍を救う切り札となる。

 ヅダは長い時を経て、漸く日の目を浴びるのだ。

 

「それでも、現状ではビームライフルを運用する時はエンジンの出力がビームライフルに持っていかれる為、ヅダの特徴である推進力と機動力に制限がかかってしまう弱点が残ってしまいますが……」

「そこは仕方あるまい。連邦の新型機の方が出力で上回られているようだ。まあ、それも今後の開発で改善されるとは思うがな」

 

 しかし、とギニアスは笑みを浮かべる。

 これで同じ土俵に立ったのだ、と。戦車砲には戦車砲、空母には空母。今はまだ連邦軍に性能で劣っていたとしても、同じ武器を手に入れられた事実こそが重要なのだ。この研究成果は盗聴される事も厭わず、即日でサイド3の各企業と共有されることになる。

 さあ、開発したからにはデータを集めなくてはならない。

 実際に動かして問題点を洗い出し、改善に改良を重ねて完成度を高めなくてはならない。ジオニック社とツイマット社、MIP社の技術者を招集し、情報の共有に勤めるべきだ。そして各企業の力を集束し、実戦運用に耐え得るビームライフルの開発。また一刻でも早くビーム兵器の配備を進める為に、試作型の段階から量産を進める必要があった。それだけの価値が、この兵器にはある。

 そこでギニアスは、とある筋から得た情報のひとつを思い出す。

 

「プロト・ゼロ少佐がアジア圏に来ているのだったな」

「ああ、確か、そのような話がありましたね」

「すぐに呼び出せ」

「はあ?」

「国家の大事だ。ラル大佐には、そう言っておけ」

 

 プロト・ゼロ少佐、その正体をギニアス技術少将は知っている。

 というよりも、ある一定以上の地位にいる者達の間では有名な話だ。

 特に技術職の間では、よく知られた名である。

 プロト・ゼロ少佐の正体は、ひよこ頭の幼子。カナリア・ザビである。

 これは国家の重要機密である為、表に出して口にする者はいない。

 知れ渡った当時は、まだ箝口令が敷かれる前の眉唾な話であった。

 

 まだ10にも満たない少女がモビルスーツ開発に関わっていたなんて、誰が信じられる。

 しかし、その話に信憑性が知られる事になるのは、技術職の間でプロト・ゼロの名が知られるようになった後の事だ。ツイマット社が抱える天才テストパイロット、それが幼い少女である事は公然の秘密であった。

 故にギニアス技術少将は、彼女を本研究のテストパイロットにする為に召喚する。

 

「ヅダのテストパイロットは、プロト・ゼロ。それ以外には考えられん」

 

 そうだろう? 彼は隣に立つ研究者に問い掛けた。

 彼もまた浪漫に属する人間である。

 愛娘に休暇を与えたかったラル大佐との思惑と合致し、カナリアはチベット基地に貸し出される事になる。




総帥府「……何故(こうも簡単に扇動されるの)だ」
キシリア機関「(ヤーポン法に対する)奴らの恨みの深さ、なんなんですかね……」
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