NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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47.名付けて、砂漠のオアシス作戦だ!

 中央アジア砂漠地帯を二隻のギャロップ級高速陸戦艇が駆け抜けていた。

 木馬と一戦を交えたサイクロプス隊は今、木馬の追跡を続けたまま次の戦いを始める為の準備を続けている。木馬は敵地で満足に補給を受けることができない、そんな相手に戦力的に劣るサイクロプス隊ができる事は消耗戦だ。明日も戦いを仕掛けて、明後日も戦闘する。日に二度も仕掛ける時もあれば、自部隊の状態に応じて丸一日の休暇を取らせる。その為にもモビルスーツの整備は何時も以上に神経を使って行わなくてはならない。

 バーニィもまた自分の愛機の面倒を見る為、壊した左腕の修理に取り掛かっている。

 だが、彼は開戦後に速成教育を受けたパイロットである為、モビルスーツで戦うのに必要最低限の技術しか叩き込まれていない。その為、自分でモビルスーツを整備する方法すら知らずにいた。サイクロプス隊は所属する全員が一流の特殊部隊、モビルスーツの整備は勿論、パーツから機体を組み立てる事すらできる。同じ隊の先輩であるガルシア軍曹の助言を受けながら応急処置に明け暮れていた。

 しかしバーニィには機械弄りの経験はある。

 学生時代、何度か自分でバイクを弄っていた事があった。バイクとモビルスーツだと勝手は違うが、慣れはある。ガルシア軍曹の言葉に耳を傾けながら、素人にしては良い手際でザクの左腕を修理する。「次はどうしましょう!」と爽やかな笑顔を向ける後輩にガルシア軍曹は、引き攣った笑みを浮かべていた。

 そんな新旧後輩のやり取りを遠くから見ていた白人男性が笑みを浮かべる。

 アンディ・ストロース少尉。先の戦いでは、グフに乗っていた。

 

◆

 

 同日同時、ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースにて。

 ホワイトライダーのコクピットに同年代の若いモビルスーツパイロットが集まっている。

 コックピットのシートに座っているのはカイ・シデン。横から割り込むようにアムロ・レイとハヤト・コバヤシが詰め寄せており「そんなに引っ付くなよ!」とカイが怒声を張り上げる。そんな二人を夢中にさせているのが手元のモニターに映るのは、頭に王冠を乗せた騎士風のバーチャルな美少女であった。彼女は戦闘用オペレーティング・システムであるHADESの試作型を自称し、尊大な物言いと共に火器管制補助システム「ZEUS(ゼウス)」と名乗り上げた。本来のHADESは戦闘全般を補助するものだが、試作型である彼女は精々射撃攻撃を補佐する程度の代物だと三人は説明を受ける。

 これを聞いたハヤトはよく分かっていない顔でポカンと口を開けており、アムロは訝しむように考え込んだ。その足で隣のデッキに立たせてある青色に塗装されたガンダムのコックピットを開けた。そんな彼らの様子を見て「何を企んでいるのかしら?」と声を掛けたのはセイラ・マスだ。

 カイとハヤトが愛想笑いを浮かべる横でアムロはBBの起動を始める。

 

『おはようございます。戦闘行動を開始します』

「しなくていいよ。起動毎に何時も言ってるけど、それって言わなきゃいけない規則でもあるのかい?」

『決まりはありませんが、お約束ではあります』

「相変わらず、高度なAIだな」

 

 何食わぬ顔でAIと会話を始めるアムロに「おいおいおい!」とカイが話に割り込んだ。

 

「なんだよ、お前のガンダムにもAIが詰め込まれていたのかよ!」

「それがどうしたっていうんですか?」

「これまでずっと活躍してきたのはAIのおかげだってのか!?」

 

 カイが不満を口にすると『それは違います』とBBが回答する。

 

『アムロは最初、試作機2号に乗っていました。私は試作機1号でユウ少尉と共に戦い続けており、ロサンゼルスの戦いで初めてアムロと共に戦場に出ています。勿論、ガンダムの性能もありましたが今日までの戦果は彼自身の能力によるものです』

「しかしなあ……」

「あってるわよ、私じゃ彼女を使いこなせなかったもの」

 

 いまいち納得し切れないカイに口を挟んだのはセイラである。

「恥ずかしいところを見せてしまったわね」と素っ気なく告げる彼女に「あ~、いや~……」とカイは誤魔化すように頭を掻いた。事実、セイラではガンダムの性能を引き出すことができなかった。カイと同じ事を考えて、短絡的にガンダムに乗り込んだのだが、BBの補助があってもまともに動かす事が出来なかった。結局、あれはアムロが凄いという事を再認識するだけだった。今、彼女は余ったガンキャノンの戦闘シミュレーターでの訓練を受けているが、ガンダムとは扱いやすさに天と地ほどの差がある。

 元々ガンダムは初心者に扱えるような機体ではないのかも知れない。

 

「それでHADESに関して、何か知っているのかい?」

 

 周りの言葉を無視して、アムロがBBに問い掛けた。

 

『検索します……いえ、私のデータベースにHADESに関する記述はありません』

 

 だが期待した答えは返ってこなかった。

 

『私の大元になったシステム……EXAMシステムはクルスト博士が開発した独立型戦闘支援AIの事です。HADESとは、また別の系列のシステムだと推測します』

 

 BBの言葉にアムロは当てが外れたと小さく息を零す。それを隣で聞いていたカイは「いや」と少し考え込んだ後に再びホワイトライダーのコックピットに戻り、ZEUSを起動する。

 

『むう……カイか? どうしたのだ。つい先程、スリープにしたばかりではないか?』

 

 頭に王冠を乗せたパジャマ姿になったアバターのゼウスを見て、カイは問い掛ける。

 

「EXAMシステムってのは知っているか?」

『ああ、知っておるとも、HADESの前身になったシステムの事だな』

「やっぱりHADESはEXAMシステムの後継なんだな」

『いや、それは違うぞ』

 

 画面の中のゼウスは腕を組み、眉間に皺を寄せた少し難しそうな顔をする。

 

『HADESの元になったのがEXAMシステムだが、本来はEXAMシステムを本機に搭載する予定だったのだ。しかしEXAMはコピーができず、完全な再現が不可能なシステムであった。故に妥協案としてHADESが開発が決まり、EXAMを目指した全くの別物が作られる事に相成った』

 

 吾輩が知っているのは、姉妹機が二機存在しているところまでだな。とゼウスが告げる。

 

「EXAMって奴に関しては、なんもわかんねえってことだな」

『まあ、そうかも知れんな。実際、EXAMってのは科学的に解析不可能な代物らしいからな』

 

 しかし、とゼウスは少し重くなった声色で問い掛ける。

 

『EXAMシステムは軍事の最高機密だぞ。カイ、民間人の貴様が何処で知ったのだ?』

 

 その問いにカイは引き攣った笑みを浮かべることしかできない。

 まあ良い。とゼウスはそこで話を打ち切った。ひらひらと手を振った後、モニターの電源が落とされる。

 コックピットの中に独り、カイは冷や汗を流しながら考え込んだ。

 もしかすると、あのEXAMシステムってのは、とんでもない厄ネタなんじゃねえかな、と。

 あまり深くは考えないことにした。

 

◆

 

 サイクロプス隊の襲撃は連日連夜で繰り返される。

 相手に襲撃を慣れさせない為に、あの手この手と手を変える。作戦の最終決定は隊長のシュタイナー大尉だが、必ずしも彼だけが作戦を考えている訳ではなかった。ミハイル・カミンスキーことミーシャ中尉やアンディ少尉も作戦を立てている。時にはミーシャ中尉が作戦の指揮を執り、木馬を翻弄する事で物資だけではなく精神的にも追い詰めていった。

 とはいえだ、木馬を追い詰める策なんてポンポンと思いつくものではない。

 接敵するだけで危険な相手、何度も襲撃を繰り返している内にサイクロプス隊にも少なからずの被害が出てしまっていた。消耗しているのは木馬だけではない。ビーム兵器という一撃必殺を持つ木馬のモビルスーツを相手に毎日、神経をすり減らしながら襲撃を繰り返していた。

 最早、此処まで来ると根競べだ。

 戦力を消耗しない事を第一に今日も今日とて木馬に襲撃を仕掛ける。

 

 何時もと違うのは、本作戦を思い付いたのは先に上げた三人ではない。

 立案者、バーナード・ワイズマン伍長。それはシュタイナー大尉を以てして笑うしかない奇天烈な作戦、しかし効果があると見込んで今回の襲撃に取り込んだ。成功すれば、それで良し。もし仮に失敗したとしても大きな被害を被る事はない。試してみる価値はあるか、と軽い気持ちで踏み切った。

 そんな事とは露知らず、今日も今日とて襲撃を受けたホワイトベース隊はモビルスーツ部隊を迎撃に出す。

 先行したのは、シス・ミットヴィル。ガンダム試作機2号で乾いた砂地の上に立つ。

 

「……警戒、されてる。ちゃんとしたニュータイプなら方角まで分かるんだろうけど……」

 

 レーダー機器の確認、ミノフスキー粒子の影響で使用は不可能。

 まあ分かっていた事だけど……それにしても、戦闘シミュレーションで練習した時よりもガンダムの動きが悪い。ずっと戦い詰めで応急処置の連続という話だ。正式なメカニックもいない為、仕方ないといえば仕方ない話ではある。幸いにも、それでも公国軍のモビルスーツよりも良い性能は出ている。今となっては、ビームライフルよりもハイパーバズーカを用いている方が出力関係が安定する。

 でもまあカチュア程ではないが、明確な殺意なら出処も分かるというものだ。

 大きく背後に跳躍する。すぐ足元をバズーカ砲の一撃が着弾、爆風に砂煙が舞い上がる。「……また!」と相手の常套手段に舌打ちし、接近戦に備えてバックパックのビームサーベルを手に取った。まだ光刃を出す必要はない。出力に不安が残る今、エネルギーはできるだけ節約しておきたい。

 ……周囲を警戒する。近付いてくる気配はない、遠くから射撃武器で闇雲に撃たれている。クソッ、何処に来るのか分からない。ちゃんと狙いを定めた攻撃よりも厄介だ。どうする? 待つよりも攻め込む方が良いか?

 判断に迷っているとホワイトライダーに乗るカイから通信が入る。

 

『お相手さんは砂丘の先から撃ってやがるな。何時もと違うみたいだ』

「……射撃戦は不利なはずなのに」

『この砂煙じゃあ映像解析を利用した火器管制も役に立たないけどね』

「どれだけ弾薬が残っているのか分からない、でも……」

『ま、俺達よりかは潤沢だろうさ』

 

 モニターの映像に映るカイの肩を竦める飄々とした姿を横目に決断する。

 

「攻め込んでみます」

『おいおい……あの感じ、どうもキナ臭いぜ? 誘われてるのかも』

「だからって、このまま何もせずに死ぬなんて……!」

『わーった、わーったよ! ホワイトライダーは近接向けの機体じゃねえんだ、援護しかできないからな!』

「……お願いします」

『ガンダムから見て、2時の方角だ!』

 

 ハイパーバズーカを片手に砂煙の中から飛び出す。

 砂丘から上半身だけを出して、射撃をしてくる機体が3機。ドムとザクが2機だ。ハイパーバズーカで彼らが身を隠す砂丘を吹き飛ばし、砂塵に隠れて距離を詰める。背後から試作型シェキナーのメガ・ビーム・キャノンが更に援護、敵機は砂丘の向こう側へと逃げた。索敵の意味も込めて、ビームサーベルを片手に砂丘の頂点に身を乗り出した。

 すると、その先には──────

 

「大穴、こんなところに!?」

 

 ──奈落の果てまで通じてそうな底の見えない大穴がモニターに映し出された。

 

◆

 

「確かモビルスーツのモニターに映し出される映像ってCGに補正が掛けられているって話だったよな?」

 

 数日前の事、食卓を共にするアンディ少尉とガルシア軍曹を前にバーニィが思い付きを語る。

 ザクのメインカメラはモノアイだ。即ち、メインカメラで写した映像だけでは、遠近感が捉え難いという欠点があった。この問題を解決する為に機体の到る場所に取り付けられたサブカメラの情報と統合し、補正を入れた情報をコックピットのモニターに映し出している。他にも敵機と背景を判別しやすくする為の補正などがあり、パイロットが戦闘を優位に進められるような工夫が凝らしてあった。

 この事をバーニィが気付いたのは、モニターで見た木馬の姿が妙に綺麗だった為だ。

 遠視で映像に補正が掛かっていたのだろう。バーニィが試しにコックピットのハッチを開けて、双眼鏡で見た木馬は随分と傷ついていたように思える。

 このモビルスーツの特性を活かして立てられた作戦が今回のものであった。

 地面に広げられたのは、砂漠に大穴が空いているように見えるトリックアートである。シートに丸めていたものを、その場で広げたのだ。それは巨大であるが故に、子供でもすぐ見破れるようなお粗末な出来栄えであった。しかし、公国軍のモビルスーツでこれを見た時、モニターにはまるで本物の大穴であるかのように映し出されてしまうのだ。

 無論、連邦軍のモビルスーツも同じように映し出されるかは分からない。

 しかし、試す価値はある。と本作戦は決行された。

 そして連邦の白い奴は、大穴が描かれた絵を見て、確かに動きを止めたのだ。

 効果はあった。

 一箇所だけ穴が開けられたシートの裏から放たれるザクバズーカ、何もない場所から唐突に映し出される弾頭を前にシスは反応を遅らせた。

 如何にニュータイプと云えど、知らないものは避けられない。

 

「よしッ!」

 

 バズーカの弾頭は、確かに角付きを捉えた。

 その光景を傍目から見ていたバーニィが拳を握り締める。

 それはサイクロプス隊がガンダム相手に初めて、一矢を報いた瞬間でもあった。

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