NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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間幕.ニューヤーク奪還作戦・上

 ニューヤーク奪還作戦。序の段において、ティアンム中将は後方で珈琲を嗜んでいる。

 連邦軍全体が紅茶色に染まる中で彼は数少ない珈琲派閥の人間であった。彼はプルエトルコ産の珈琲豆を堪能しながら全48機の先行量産型ジムと全12機のミデア級と共に先行部隊の報せを待ち続けている。奪還作戦は三段階に分けられており、序の段は先行量産型ジム12機による奇襲作戦。海岸沿いに設置された防空設備を破壊し、橋頭堡を確保する事が奇襲部隊に与えられた使命であった。

「閣下!」と背後に控える通信手が立ち上がり、上官の名を呼んだ。

 

「フジニタイヨウ! ワレ奇襲ニ成功セリ!」

 

 叫ぶ男にティアンム中将は珈琲を飲み干して、周りに指示を出した。

 

「闇は晴れる! これが地球連邦の夜明けだ!」

 

 作戦は序の段から破の段に移行する。

 通信暗号はタカノワタリ、ジム48機を乗せたミデア12機がプルエトルコからニューヤークに向けて飛び立たせた。その中の一機にティアンム中将も乗り込んでいる。奇襲は成った。此処から先はスピード勝負、公国軍が体勢を立て直すよりも早くニューヤークを掌握する必要がある。その為に連邦軍の俊英が現場に乗り出した。

 未だホワイトベース隊の相手を務めるガルマ少将に向けて、彼は珈琲を片手に挑発的な笑みを浮かべる。

 

「さあ、お手並み拝見と行こうかね」

 

 未だにガルマはニューヤークが奇襲を受けた事を知らない。

 ロサンゼルスの夜、ホワイトベースの襲撃を受けていたガルマがニューヤークからの救援要請が耳に入る前に同都市は陥落する。

 

◇

 

 ニューヤークの奇襲作戦には、攻撃型潜水艦Ⅷ型を改修したものが用いられている。

 これは公国軍が東南アジア侵攻中に見せた潜水母艦によるモビルスーツ部隊の奇襲上陸で次々と拠点を落とした事が発端となっており、その戦術の有用性を知ったティアンム中将がジャブロー基地に残された攻撃型潜水艦Ⅷ型をモビルスーツの搭載を可能とした潜水母艦に改修させたのである。そうして完成した4隻のMS用潜水母艦が今回の作戦に用いられている。

 そして、奇襲作戦はティアンム中将が想定した以上の戦果を叩き出す。

 

「こいつはもう、上手く行き過ぎて逆に罠を疑うくらいだな」

 

 奇襲部隊の隊長を務めるテネス・A・ユング少佐が愛機のジムを駆りながら呟いてみせる。

 全12機のジムは奇襲で浮足立った敵機を次から次に返り討ちにし、防空施設の破壊に成功した。手持ちの武装が実弾兵器であれば、もっと制圧に苦労もしただろうが、ビーム兵器の火力を以てすれば、防空施設の破壊も苦労する事はなかった。次から次に陥落し、防空能力を無力化した後、後詰のミデア大隊に援軍を要請する。

 奇襲と後詰で部隊をふたつに分けた事には理由がある。

 地球圏における制海権は、今や公国軍の手にある為だ。空から攻めるにはニューヤークの防空設備が邪魔だ。海中から攻めるのに公国軍が誇るU型潜水艦やマッドアングラー級潜水母艦、豊富な水陸両用モビルスーツの目から逃れながらニューヤークまで辿り着く必要があった。故に少数精鋭、潜伏の規模として4隻のMS用潜水母艦が限界だとティアンム中将が判断した結果である。

 そしてユング少佐率いる奇襲部隊は見事、ティアンム中将の期待に応えてのけた。

 作戦の成功を受けたティアンム中将は、多少の被害も省みず、迅速果断にジム48機を搭載したミデア大隊をニューヤークまで送り届ける。この大胆な行動にキューバやドミニカの防衛に着いた公国軍は追撃する事もできず、東海岸沿いにミデア大隊が飛び立ったことを伝えるだけに留める。

 この味方からの情報が結果的にニューヤークを守る司令官の心を折り、主力部隊を撤退させた後の降伏に繋がってしまった。

 

 以上が夜明けまでの話。

 撤退した主力部隊からの情報でガルマ中将はニューヤークの陥落を知った。

 漸く公国軍が動き出す。

 同時に連邦軍もニューヤーク以東へ侵攻を開始した。

 

◆

 

 連邦軍の奇襲が大成功を収めた事には幾つかの理由がある。

 ひとつは、この時の公国軍は通常兵器に対する備えはあってもモビルスーツに対する備えが十分ではなかった事だ。この時はまだ連邦軍がモビルスーツの開発に成功した事が知られて、一ヶ月も過ぎていない時期。ニューヤークの防衛に着いていたモビルスーツは全て、対通常兵器用装備に換装されており、バズーカを始めとした高火力の装備を十分に揃えていなかった。奇襲による混乱は勿論、初めてお披露目される連邦製モビルスーツの存在に公国軍は的確な対処ができなかったのだ。

 続いて、ふたつ目は、ニューヤークに駐留する将兵の質だ。

 先行量産型といってもジムの性能は、ザクは勿論グフをも大きく上回る。そしてモビルスーツの性能差を覆せるだけの精鋭は最前線に送り込まれており、ニューヤークには残されていなかった。それでも重要拠点ではあった為、それなりの司令官は配置されていた。しかし彼の配下となる将兵まで優秀であるとは限らない。また前線から遠のいていた事もあり、緊張感も薄れていた。

 故に奇襲を受けた時に統制が取れず、司令官が事態を掌握した時にはもう防空設備が破壊された後であった。

 この状況でプエルトルコよりミデア大隊が飛び立ったという情報が入り、ニューヤークを守る司令官は、降伏を決意。主力部隊を逃し、殿としてニューヤークを攻める敵部隊に抗った。ミデア大隊が敵と合流し、計60機のジムによる蹂躙が始まるすぐ後で白旗を上げる。

 こうしてニューヤーク攻防戦は幕を閉じ、戦闘は次の段階に移行した。

 

◆

 

 ナス・ナス・ナス。ワレ作戦ニ成功セリ。

 開戦以後、初めての戦術的勝利に連邦軍司令部は大いに盛り上がった。

 ゴップ大将は手筈通り、公国軍の反撃に備える為の援軍を送る指示を出す。この援軍は先のモビルスーツとは違って、戦車や戦闘機といった通常兵器。戦場の主役がモビルスーツになった現在、それでも通常兵器には戦力的な価値が残されている。とティアンム中将は考えていた。空の主役は未だに戦闘機であるし、戦車も防衛や援護射撃で役に立つ。まだモビルスーツの数で劣る連邦軍、その差を埋めるのに通常兵器は十分に有用的であった。

 ここで足の引っ張り合いはない。今の連邦軍には危機感があり、連日連敗の鬱憤がある。なによりもコロニー落としに対する義憤もあった。この時ばかりはジーン・コロニー中将を始めとする保守派も、ジョン・コーウェン少将を始めとする改革派も、いがみ合いつつも手を取り合って事に臨んでいる。

 共通の敵は、結束を高めるのだ!

 こと此処に来て足並みを乱す連中は、予めゴップ大将とワイアット中将が排除していた事もあってティアンム中将がニューヤークで孤立無援の状況に追い込まれる事はなかった。

 

「戦果は最大限に拡大する。古代からの習わしだ」

 

 ティアンム中将の快進撃は、止まらない。

 彼の用兵術の要は部隊運用にある。ニューヤークを制圧した後、手早く部隊を再編した彼は周辺地域の制圧に乗り出した。目標はワシントンとデトロイト、ピッツバーグ。此処が攻勢限界だとティアンム中将は見定めた。同時にボストンも抑えることで後方に対する備えとする。このみっつの目標を制圧し、防衛線を構築した後でじっくりと後方を確保すれば良いのだ。

 実際、この考え方は正しい。これが通常兵器の攻防であれば、彼の戦略は見事に当て嵌まっていた。

 基本的に連邦軍は戦争は勿論、外交や技術、その他諸々で公国軍を大きく上回っている。西暦以前から培ってきたノウハウが彼らにはある。そんな連邦軍相手に公国軍がひとつだけ上回っている点があった。

 それはモビルスーツの運用である。

 まだ二十歳の若造であるガルマ少将には、ティアンム中将の相手は苦しいものがある。

 しかし、モビルスーツへの理解だけは、ガルマ少将が上回っていた。

 

「今の御時世、少数が戦争の行く末を変える事はないとされている」

 

 だが、とガルマ少将は告げる。

 

「戦場の主役がモビルスーツである以上、モビルスーツの勝敗が戦場を支配するのも道理」

 

 戦争の勝敗において、数は重要なファクターであることは認める。

 無駄を排し、洗練された世の中に置いて、個の力は淘汰される。しかし革新的な技術が世に生まれる度に、個の力が戦場において絶大な力を発揮するようになる。鉄器然り、騎馬然り、戦車然り、戦闘機然り、戦場の価値観は逆行し、個の力が数の力を超えてゆくことが確かにあるのだ。

 ガルマ少将の命に従って、緊急的に送り出されたノイジー・フェアリー隊。サスクエハナ川を渡河する連邦軍の小隊を確認するとザク三機を以て戦闘を開始した。この時、連邦軍の戦力はジム8機。モビルスーツの数と性能だけで語るのであれば、惨敗必須。しかし陸戦型ザクⅡに乗ったアルマ・シュティルナー少尉の鬼気迫る奮戦により、5機のジムが撃破される。命からがらに逃げ出した残りのジムも大破が2機、中破が1機と散々な結果であった。

 数を凌駕する個の力に、ティアンム中将は頭を抱えるのであった。

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