NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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6.超弩級って響きに浪漫を感じませんか?

 ガデム大尉、ジオン公国が共和国の時代から前線に立ち続けた老士官だ。

 長い軍歴を誇るベテランであり、ドズルの下で反ザビ派の討伐に参加していた経験も持っている。高齢ではあるが新技術に対する食いつきは良く「これからの時代、前線指揮に携わる者はモビルスーツの一機も動かせるようにならんとな!」と五十歳を超えるかどうかの年齢でありながらもモビルスーツの適性試験に合格し、若者に混じってモビルスーツの訓練に参加するスーパーお爺ちゃんでもあった。

 その後、短い間ではあるがモビルスーツ部隊の指揮を執っている。

 そんな彼も歳による衰えはあった。部隊を指揮する時に、周りが体力のない自分に合わせて待つ光景が増えた事を実感した時、彼は後方への転属願いを出す。これはあっさりと受理される事になった。旧型のパプア級戦艦を補給艦に改装したパプア級補給艦の艦長に彼は任じられる。

 時には補給艦を狙ってきた敵艦を愛機のザクⅠで追い払う活躍も見せており、今もなお宇宙を飛び回る運び屋として活躍し続けるハイパーお爺ちゃんであった。

 特急便ガデムは公国軍でも屈指の人気を誇る老舗だ。

 

「赤い彗星が補給を欲しがるとはなあ……ドジを踏んだのか?」

 

 顔髭の凄いお爺ちゃんが顎を撫でる。

 ジオン公国の赤い彗星といえば、誰もが知っている公国の英雄だ。小生意気なところはあるが、彼もまだ二十歳。若い内はそんなもんで良いとガデムはおおらかな気持ちで補給任務に従事する。前線に立つ老兵は若者の道標に、前線を退いた老兵は若者の尻拭いをするのが仕事だとドズル中将から託されたザク1機とヅダ2機をパプア級に搭載した。

 そして、荷物が更に二人分。男女のヅダパイロットが自分の前で敬礼する。

 

「ニムバス・シュターゼン准尉であります!」

「ペッシェ・モンターニュ准尉です」

「短い間になるだろうが、よろしく頼もう!」

 

 ニュータイプ研究所から派遣された二人のパイロットだ。

 その二人の片腕にはハロが抱えられていた。

 

◆

 

 ルウム戦役の時、私は予備戦力としてドッキングベイに数週間も待機していた。

 しかしルウム戦役がジオン公国の圧勝で終わり、私はニュータイプ研究所に出戻りとなる。

 同じくドッキングベイで待機していたニムバス准尉は非常に不満そうな顔をしていた。

 

「また子守りに逆戻りか! 軍人の仕事ではない!」

「一応、私達って軍事研究の手伝いをしているはずなので……」

「私は戦場に立つ為に軍人になったのだ!」

 

 キシリア機関の送迎用の車の中、ニムバスの愚痴をうんざりと聞き流す。

 ニュータイプ研究所。待っていたのはクルスト博士ではなくて、フラナガン博士だった。

 フラナガン博士の足元には、二機のハロが転がっている。

 

「クルスト博士は逃げたよ、BBも一緒だ」

 

 そう言うとフラナガン博士は二機のハロを私達に手渡した。

 赤と黒、赤いハロは私だ。黒いハロはニムバスが受け取る。

 

「これは……なんだ?」とニムバスが困惑しつつ問い掛ける。

「クルスト博士の研究は途中でね。残っていたデータを復元して、再現性があるか確かめていた」

 

 実験には成功したが、封印せねばならんな。とフラナガン博士は零す。

 

「あれが採用されてしまっては、私の被験者が道具として使い潰され兼ねない」

『ペッシェ、ペッシェ……』

 

 ハロが妙に人懐っこい仕草で私に身体を摺り寄せてくる。

 それはニムバスのハロも同じようだ。

 ニムバスは黒いハロを大事に抱えながら、その瞳を見つめている。

 

『ニムバス、ニムバス……パパ……ママ? ニムバス……パパ……』

 

 機械音声に混じる不穏な言葉、ニムバスは歯を食い縛ってフラナガンを睨み付けた。

 

「カナリアのクローンはBBの他にも二人、居たはずだな?」

「ああ、そうだね。実験に使わせて貰ったよ」

「フラナガン! 貴様、人の心はないのかッ!?」

「人の心は持ち合わせているとも、私には人道的ではない実験に人を使う決断を下せない」

「なら、どうして二人を実験に使った!?」

 

 カナリアクローンは今、三体までいる。

 BBが宇宙に放流された後、人為的にニュータイプ能力を向上させるマニュアルを作る為に更に追加で二体のクローンを作った。BBと同じように髪の色は変わってしまっていた。私達からすると見分けが付きやすくなるから良いのだけど……名前は、世話係に任命された私とニムバスで決めた。天使のように可愛かったのと、髪の色が赤かったからセラフ。髪の色が黒い方は、ニムバスが自分の導き手となる意味を込めて、ヤタガラスと名付ける。ニムバスがクルスト博士のニュータイプ能力を機械的に再現する研究の恩恵を優先的に受ける事を条件に研究を協力していた事情があっての命名だ。

 赤と黒のハロ。私をママと呼び、ニムバスをパパと呼ぶ。二人と最も接してきたのは私達だった。

 

「まだ赤子ではないか!」

「クローンだ、人ではないよ。それとも成人してから使えば許してくれたのかね?」

「許さんッ!」

「だろうね」

 

 しかし、とフラナガンが続ける。

 

「こういう研究をする為に作った子だという事は最初から説明してあったはずだがね」

 

 瞬間、ニムバスが拳を振り上げる。も、背後で待機していた黒服に右腕を掴まれてしまった。

 

「二人の肉体はどうしたっ!?」

「生きとるよ」

「……はあっ!?」

 

 フラナガンは両手を上げながら一歩、ニムバスから距離を取る。

 博士の説明によれば、二人の赤子は植物人間と同じ状態になっているとの事だ。今は培養液の入ったカプセルの中に入れてある。この培養液は胎児から赤子になるまで育てるのに使ったのと同じものとの話。また赤子の全身にはチューブが繫げてあった。「この状態でも生かし続けられるのであれば、効率化の為に成長促進の研究をするのも良いかもな。いや、それだと精神的な成長に影響が……」とフラナガンが零す。

 ニムバスは、ぶち切れ寸前だ。今も必死に堪えている。

 

「フラナガン、今すぐ二人を戻すんだっ!」

「戻せと言われてもな。再現性は確認できたが、理屈も原理も分からないままだ。不確かな方法になるが構わんかね?」

「ふざけるな! 確実にやれ!」

「この世界には、絶対なんてものはないのだが……まあ、元に戻す手段を模索するのも良いか。何が研究の発展に繋がるかも分からないものだ」

 

 でもまあ、とフラナガンが零す。

 

「この研究の責任者であるクルスト君を連れてきた方が早いんじゃないかね?」

「よし、引っ張り立ててやる!」

「その為には今、カナリア君が従事しているというV作戦の調査に当たると良いかも知れんな」

「何故だ!?」

「クルスト君の研究は、モビルスーツに役立てるものだからだよ」

 

 よし! とその翌日にニムバスはカナリアの部隊へとドズル中将に転属願いを出した。

 しかしカナリアの部隊は定員が決まっており、シャアの部隊にも空きがないとの事だ。極秘任務なのに何故知っている、と逆にドズル中将に問い詰められる始末であった。その話を聞いたフラナガンが「残念」と小さく零したのを私は聞き逃さなかった。来たるべき時の為、私とニムバスはシミュレーション訓練は勿論、ダーク・コロニーで行われる実施訓練にも積極的に参加する。

 そうして半年が過ぎた今、漸くV作戦の調査任務への参加が認められた。

 

 特別仕様のヅダが二機、他のヅダと区別する為に塗装されている。

 赤いヅダに黒いヅダ。この二体のヅダのコックピットには、ハロ用の台座が取り付けられていた。これによってハロに搭載されたEXAMシステムを起動可能にしている。

 またヅダを赤く塗装する時、整備士に頼んで左肩にエンブレムを付けさせた。

 勝利を祈願したビリヤードのナインボールだ。

 

◆

 

 母艦の改ザンジバル級機動巡洋艦リリーマルレーンを目指して渡航中のコムサイ。

 仮面は取ってある。私は操縦を自動に切り替えて、隣に座るミアをチラリと眺めた。シーマ麾下の海兵隊が私の指揮下に入った時、それまで私のヅダを整備してくれていた彼女を引き抜いた。そんな彼女は今、手書きのノートにファルメルで見たモビルスーツを書き留めている。勝手に押しかけた事もあってファルメルでは、ベッドが一つしかない個室に二人一緒で押し込められていた。艦橋に居る時以外は、何時も一緒だった。それこそ寝食を共にすると言っても過言じゃない。

 まあちょっとしたお泊り会みたいで楽しかったけど、と彼女に問い掛ける。

 

「ミア、あの白いヤツを撃ち抜ける強い武器に心当たりってない?」

「え? あ、はい。えっと、マシンガンをものともしないんですよね? 火力が高いといえばバズーカが上がりますけど……当たるかどうかはさておいてクラッカーなんかも悪くないかも知れません、後は新しい兵装として期待されているシュツルムファウストとか?」

「シュツルムファウスト?」

「使い捨てのロケットランチャーです」

「使い捨てかー」

 

 う~ん、と腕を組んで頭を悩ませる。

 あの白いヤツが連邦の主力になった時の事を考えると、こちらもちゃんとした武装として火力の高い武器が欲しい。贅沢を言えるならビーム兵器が良い。

 火力だけを求めるなら、とミアは自前のノートをペラペラと捲る。

 

「ヅダにヒルドルブの砲身を付けてみるのは?」

「……それ、ヅダでやる必要なくない?」

「まあ、やるならザクですよね~」

 

 どちらにせよ、反動がえげつない事になりそうだ。

 心底がっかりと溜息を零すミアを横目に、やっぱりバズーカしかないかな。と宇宙空間を見上げる。

 ミアは技術士官であると同時にパイロットでもあった。

 というか、私の相方だ。後方支援担当の。

 

「そのままヒルドルブを持ってきた方が良くない?」

「ヒルドルブは宇宙空間では使えないじゃないですかー! それにヒルドルブがモビル形態になれるのは初期型だけです、後期型である今は変形機能が取っ払われてますよ!」

「あー、あくまでモビルスーツね」

「当然です!」

 

 鼻息を荒くするミアに「ごめんごめん」と平謝りを返した。

 モビルスーツが戦場の主役となった現在、宇宙では艦船が砲兵の役割を担う事ができる為、あまり砲兵は重要視されて来なかった。しかし開戦以降、地球戦線では艦船を使う事ができない為、砲兵の存在が再評価され始めるようになる。如何にモビルスーツといえども後方支援がない状態で戦線を押し上げる事は難しい。

 この事を受けた技術本部のギニアス技術大佐が、超弩級戦闘車輌として開発されたヒルドルブの存在を思い出す。モビルスーツのように汎用性が高い訳ではないし、モビルスーツを相手に戦う事もできない。しかし連邦軍にガンタンクがあるようにヒルドルブにも価値があるのでないかと考えを改めたのだ。

 新しくモビルタンクというカテゴリーを作り、ヒルドルブの設計に関わった技術者を集めた。

 その中にモビルスーツ開発の黎明期に関わっていたヨハン・スウィネンの名もあった。彼はギニアスの指導の下でスウィネン社を立ち上げて、ヒルドルブの量産化に携わっている。先行量産型として、何輌かのヒルドルブが前線に送られた後、自走砲として再設計し直したのがヒルドルブ後期型となる。

 モビルスーツにも有効な火力を持つ戦車というコンセプトである為、ザクよりも幾分か安価になるまで抑える事ができた。

 なお初期型のコストはザクの三倍である。ヅダよりもずっと高い!

 その頃、ジオニック社はザクキャノンの開発に勤しんでいた。

 

「あ、見えて来たね」

 

 機械任せの自動操縦、私が指で差した前方に母艦であるリリー・マルレーンの姿が豆粒ほどで見えた。

 私はコムサイのライトで合図を送ると、リリー・マルレーンからもライトで返事があった。合流した後は直ぐに転進してファルメルと合流する予定だ。その移動時間でヅダの修理、壊したパーツを全とっかえになるけどもミア達なら間に合わせてくれる。

 さあリベンジだ! と復讐に燃える本日のカナリアちゃんだ。

 次は部隊での本気を見せてやる!

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