NTロリ娘、避難所   作:にゃあたいぷ。

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8.カナリアクローン

 ガデム大尉とは、端的にいえば古いタイプの人間だ。

 百戦錬磨の経験に裏打ちされた感覚派の精神論者といえば、今時の若者とは反りの合わない気質をしている事が分かるはずだ。また昔気質でもある為、言語化が極端に苦手でもあった。その為、彼は自分のやっている事を側で見て覚えさせる他にやり方を知らない。ギレンは彼の事を昔のやり方しか知らない人間だと一蹴し、キシリアは少し前の世界で考え方が止まっている古い人間だと評価する。

 そんな中でドズルは彼を評価していた。というのもドズルが彼の愛弟子であった為だ。18歳の時から戦場で指揮を執っていたドズルを隣で支えていた副官の内一人がガデムであった。現場の兵士が何を考えており、何の為に戦い、何を上司に求めているのかをドズルに教えたのも彼である。その為、ドズルは彼の有用性を理解しており、当時、尉官ですらなかった彼は40歳を超えてからドズルに引っ張り上げられる形で大尉となっている。本当は佐官まで引き上げる予定もあったのだが、それはガデムの方から断りを入れた。

 元より自分は船乗りではない。艦一隻を動かすのにも苦労しているのに艦隊指揮なんてできんよ。との事だ。

 ガデムはなんでも自分で熟すようになるスーパーお爺ちゃんではあったが、それ故に人の上に立つ才覚には恵まれていなかった。教導も人並み以上にできる、しかしその程度の人物であることをガデム自身がよく理解していた。ドズルは士官学校の教職に就くことも進めたが、それもまたガデムは断りを入れた。叩き上げの軍人である彼は、自分の能力を言語化する術を知らない。基本は見て覚えろなのだ。

 彼は現場で生きる人間であると同時に、現場でしか生きる事ができない人間だと思い込んでいる。 

 だから当然、死ぬ時も戦場だと決めていた。

 

「まあ後方の補給部隊では、死に場所もないと思うがね」

 

 老兵は死なず、ただ消え去るのみ。

 もし仮に死ぬことがあれば、後進の者を生き永らえる為が良い。ガデムにとって、その相手はドズルだった。しかし幸か不幸か彼は今日まで死なずに生きている。このまま死なずに戦争を終えた時は、戦場とは全く別の生き方を模索する事を考えた。退職金と年金で悠々自適な老後でも送ることができれば上々だ。

 それでもまあ最後は独り寂しく死ぬことになるだろう。だから戦場で死ぬことに未練がない訳でもない。

 隠居した後で、何もない人生なのであれば、誰かの代わりに死ぬのも良い。これで妻子がいれば話も変わってくるのだろうが、天涯孤独な生き方をしてきた自分が後世に残せるとしたら、それなのだ。

 あとはまあ、純粋に老後の事を考えるのは、陰鬱とした気持ちになるのもある。

 自分は老いてしまった。出来る事がひとつずつ消えていくのは恐怖だった。

 

 シャア少佐のように前線で特別任務を受ける者にとって、特急便ガデムの存在は大きかった。

 補給の手順が手慣れており、煩わしい事も嫌いなガデムの補給部隊は与えられた仕事を熟すとすぐ引き返す。必要な事だけを的確に最低限を熟してくれる為、面倒が少ないのもまた特急便ガデムの人気の秘訣であった。頼めば、融通を効かせようとしてくれる柔軟性を持ち合わせているのもガデムであるし、補給が足りない可能性を考慮し、持っていくものを増やすのもガデムであれば、明らかに申請する補給の量が多い場合は、相手の状態を確認してから物資の量を調整する腹芸を見せる事もある。

 これらのことからシャアは彼を頭の固い人間と捉えず、誤魔化しの利かない人間だと考えた。

 故にシャアはガデムに対して苦手意識を持っている。悪感情はない、ただ苦手だった。彼の仕事ぶりは称賛に値するものであると認識しているが為に、シャアからガデムに対する印象は苦手の一言になる。

 そして、この事は特急便ガデムの送り先である若者が全般的に抱くものだ。真面目にちゃんとしたつもりであっても、粗を見つけてしまうガデムの目が怖いのだ。人並み以上に熟すシャアも、ガデムを前にしては二十歳の若造に過ぎない。まあガデムの目から見れば、ベテランを自称する四十歳を超える連中よりもまだ二十歳のシャアの方がずっとしっかりしているのだが、それを顔に出すような性格をしていなかった。流石は赤い彗星と目を掛けている分だけ、他よりも厳しくなるし、つい揶揄ってしまう事も多かった。

 このガデムの心情を察するには、シャアはまだ若過ぎた。

 ちなみにカナリアはガデムの事が大好きだ。補給の手続きは艦長代理のシーマ大尉がやっている為、ガデムの口煩い部分を知らなかっただけかも知れない。

 

 さておき、

 ガデムは予めシャアと決めていた合流地点まで辿り着いた。

 サイド7は連邦軍の支配圏内。戦時である今、領宙侵犯なんてあってないようなものはあるが、それでもルナツーにある連邦軍本隊を刺激するような真似はできるだけ避けたい。補給は手早く済ませて、手早く帰る。ガデムはザクⅠを持ち出し、慣熟訓練を終えたばかりの新米パイロットを連れ出す。モビルスーツパイロットとは戦うだけでは半人前、こういう仕事も熟して一人前。だと率先して御手本を見せに向かったのだ。

 騎士のやる事ではない。というニムバスの言葉を笑い飛ばしてやるだけの器量がガデムにはあった。

 先ずは、自分がやってみせる。言って聞かせた後に自分でやらせる。最後に良くやった。と簡素でも良いので褒めてやれば、不思議と人は自分で動くようになるものだ。老人が若者にものを教えるように、先輩は後輩にものを教えて世話をする。そうやって組織は成り立っている。

 ミノフスキー粒子で満たしたクレーター内、ガデムが粛々と荷物運びを手伝うペッシェを褒めたのを見て、ニムバスもまた気合を入れて荷物を運び出した。

 そんな血気盛んな若者に対して、言うだけの事はある。とガデムは大きく笑って褒めてやる。

 

◆

 

 俺は、未だに奇襲作戦を取ってよかったのか悩んでいる。

 素直にルナツーを目指した方が良かったかも知れない。しかし今、奇襲をする事で憂いを断つことはできる。

 戦術の観点からすれば、これは正しい判断のはずだ。

 

 実際問題、現場を取り仕切っていた人間のほとんどが死んでしまっている。

 現場の仕事は出来ても現場指揮は初めて、そんな素人ばかりの現状ではまともに航行する事も難しい。のらりくらりの安全運転で追撃を受けてしまっては、今度こそ切り抜けられない。今の面子も成り行き任せで決まったのだ。後方を攻撃された時、もしくは奇襲を受けてしまった時に民間人は勿論、正規の乗組員もパニックに陥りかねなかった。

 民間人の事を考えれば、降伏する手もあるが、その手を取ることはできない。

 実際、その懸念はあったのだ。民間人の反乱で降伏を強要されるか、それを避ける為に武力で彼らを制圧をしてしまうか。

 しかし、それは杞憂で終わる。

 どういう訳か民間人はジオン公国に対して強い反感を抱いており、降伏に反対しているのだ。

 それはサイド7が比較的新しいサイドであり、移民した人間も元々地球に住んでいた者が多かったからだ。その為、地球に対する望郷の思いも強い。ジオン公国に降伏してしまっては、再び地球の地を踏むことが難しくなることを彼らは理解していた。そして、何よりもジオン公国は地球という故郷にコロニーを落とした大罪人の巣窟である。

 ただ生きていれば良いのではない。アースノイドの反ジオン感情は限界まで高まっていた。

 何よりもギレンの提唱するニュータイプ論は、宇宙を故郷にする者達の総称だ。生粋の連邦民であるアースノイドとは相容れなかった。尤も少し前まで地球に住んでいた身の上としては、宇宙移民になった時点でスペースノイドと大差ないのだが、まあこれは口に出す必要のない話だ。

 今、大事なのは、作戦の成功を祈る事だ。

 

 先陣として出したのは、ユウ少尉が乗るガンダム1号機だ。

 リュウ曹長のコア・ブースターの他にジョン伍長が乗るガンキャノンが追随する。

 私は部隊を二つに分けて、挟み撃ちを考案してみたが、それはユウ少尉に断られてしまった。

 理由は単純でシャアが出た時に離れていては、二人を守れなくなる為だ。

 

 それならアムロとカイも一緒に出せば良い。と提案したが、これも断られる。

 理由はリュウとジョンでは、アムロを守れる自信がない為だ。周りを守る余裕があるのはユウだけであり、守る為にはユウと一緒に居なくてはならない。かといって民間人は極力、戦闘に参加させたくないユウの意思もあり、アムロとカイはあくまでも後詰めとなった。そうしてユウ達がシャアの攻撃を受けた時に、アムロ達が別の位置から攻撃を仕掛ける役目を担う事になる。

 これが折衷案による妥協なのか、最善なのか、判断をしかねている。

 少なくとも自分とユウ少尉、アムロの最善は三者三様に違っているようだ。

 

 ユウ少尉が率いる小隊が、攻撃地点に辿り着いた頃合いでホワイトベースを緩やかに前進させる。

 主砲のメガ粒子砲を発射させる為、予め出力は上げてある。

 ここまでは良し。果たして、俺はあの赤い彗星に勝てるのだろうか?

 

◆

 

『ねえニムバス、聞こえるぅ~?』

 

 補給作業中、ヅダに接続した黒いハロが通信機の音声データを用いた流麗な声で語り掛けてくる。

 ハロの姿で引き取った時は言葉遣いもままならなかった。しかし彼女、ヤタガラスを用いた戦闘訓練を続けている内に徐々に言葉を覚えるし、今では勝手に俺のパソコンに繋いで情報を読み漁ることがある。機密情報は勿論、個人情報も全て彼女には筒抜けだ。俺は、騎士物語が好きだ……水戸黄門と暴れん坊将軍が大好きなのだ! 騎士道と武士道の融合、即ちジオンの騎士である! そんな娯楽小説や娯楽映像で言葉を学んだせいか、ペッシェのセラフと比べて随分と無作法となってしまった。

 教育とは難しいものだな、世界のお母さんに感謝せねばッ!

 

「なんだ」と端的に聞き返す。

『あの辺りの岩影にモビルスーツが来ちゃってるみたいでさ。というか、私のお姉ちゃん』

 

 スクリーンモニターに周辺マップを映し出されて、マーカーを打ち込まれる。

 モノアイで彼女が指定した方を見る。ニュータイプ能力を持たない自分には分からない。

 

『ニムバス行っちゃおうよ、今すぐ』

「ああ、そうだな! ジオンの騎士として、連れ去られた姫君は助けなくてはいかん!」

『ひゅ~! かっくいー! 惚れちゃいそう、行っちゃおう!』

 

 隣で作業中のペッシェに“不審な敵影アリ”と合図を送り、索敵の名目で岩影の向こう側に直進する。

 小高い丘に着地すれば、眼下には移動中のモビルスーツを2機、戦闘機1機を発見した。

 初手でバズーカを構える。奇襲など騎士道にあるまじき行為、だが!

 アンブッシュは一回まで許されるのだ!

 なにより! 騎士道に拘り、この場で攫われた姫君を見逃す方が騎士として、万死に値するッ!

 自尊心を捨てるだけで守れる命があるのであれば、犬にでも食わせてくれるッ!

 

「行くぞ、ヤタガラス!」

『ヤタガラスシステムゥ、戦闘モードをきどぉ~っ! 作戦行動を開始ィ、貴様になら……できるはずだぁっ!』

「ああ、やってみせるとも! ここで任務も、全て終わらせるのだ!」

『これが愛の核弾頭、愛してるんだあ……君達をッ! ウェヘハハハハハハッ!!』

 

 発射したバズーカの砲弾は、命中はしなかったがモビルスーツ2機の動きを止める事には成功した。

 

『さってっと! いっちょ行きますかッ!』

「ああ! 私を導けヤタガラス!!」

『……人間の可能性を証明してみせろ、ニムバス』

「急にマジになるのは困惑するのでやめて欲しいものだなッ!」

 

 敵が自分を意識した所で更にバズーカを一発、相手と自分の間に撃ち込んでやった。

 爆風に砂煙が上がる。残弾なしのバズーカを投げ捨てた後、相手の視界が遮られる瞬間を狙って機体を煙の中へと突っ込ませた。両手には騎士の武器は斧ではなく剣だと言い張って持たせて貰ったグフ用のヒートサーベル。モビルスーツは火力ではない、格闘能力だと古兵ガデムも言っていた!

 橙色のモビルスーツが居た場所の足元を狙った横薙ぎの一撃。だが、手応えはなかった。

 

「なるほど、この感覚! 確かにニュータイプのようだなッ!」

『赤いヤツと戦闘機は反応できてない、あと一歩なら踏み込める。やっちまおうぜ、ニムバスの旦那ァッ!』

「言われずともッ!」

 

 まだ立ち込める煙、その視界の隙間に後退した橙色の敵機が見た。

 

『あ、倒しちゃ駄目だからね! あれにはお姉ちゃんが乗ってるから!』

「ニュータイプ能力で、連絡を取り合う事はできないのか!?」

『感じてるはずだけど反応がない!』

「呼びかけ続けるんだ! 私はモビルスーツの動きを止める!」

『届けたいこの想い……ニムバス、どうしよう! 私、お姉ちゃんと大した思い出ないよッ!』

「赤子だったからなあッ!!」

 

 敵機はビームをサーベル状に固定した近接武器に持ち替えたのを確認する。

 ビームサーベルと仮称しておこう。安直だが、分かりやすいのは良い事だ! 退かず、スラスターを吹かせて突撃し、半歩分、遠い間合いでヒートサーベルを袈裟に振り落とした。あえて無防備を晒し、相手がビームサーベルを振り被ったのを確認した後で更にスラスターを吹かせる。ビームサーベルがこの身を割く──その前に、ショルダータックルで相手の体勢を崩す。

 改めてヒートサーベルを構え直した時、直感、後方に大きく跳躍した。

 これによって死角から放たれた赤いヤツの両肩武器の砲撃を回避する。

 

「ぐう……やはり、慣れぬな! この感覚はッ!」

 

 ヤタガラスのニュータイプ能力で得た感覚が直接、頭の中に叩き込まれる。

 本来、使わない機能を無理やり抉じ開けられるかのような苦痛があった。

 

「だがッ! 自ら欲した力ッ! この程度の痛みで守れる笑顔があるのであれば──ッ!」

 

 頭上より戦闘機から浴びせられるバルカン砲の射線を見ずとも見切り、ヒートサーベルの刀身で防ぎつつスラスターで横移動する。ズキズキと痛む頭を堪える。ターンを決めて左手を伸ばした先にはドンピシャ、狙い通りに赤いヤツの頭部があった。それを目一杯に掴んで、引き倒し、地面に頭部を叩き付けた。

 

「────これほど嬉しい痛みもないッ!!」

 

 脳を酷使した結果、噴き出す鼻血。

 ポタポタと赤い雫を落としてなお戦意は欠片程も挫けちゃいない。

 当然だ、何故ならば、私は、

 

「私はジオンの騎士、ニムバス・シュターゼンッ!」

『アタシのダーリンに勝てると思うなよ、三下ァッ!』

「騎士足る私には勝利の女神が付いているッ!」

 

 コックピットの中では二人分の高笑いが響き渡った。

 

◆

 

 ニムバスが側面に回ったモビルスーツ隊を叩きに行った。

 残った私は正面から来る敵の気配を感じた為、ガデム大尉に合図を送ってからマシンガンを片手にスラスターを吹かした。今、戦える戦力はヅダ2機。赤い彗星がモビルスーツに乗り込むまで、まだ時間がかかるはずだ。

 私は、時間を稼がなきゃいけない。

 

『あっちにお姉ちゃん、居た』

「ええ、ごめんね。艦を守らないと帰る事もできないから」

『ううん、分かってる。良いよ、邪魔な奴を追い払っちゃおう』

 

 ヅダに接続された赤いハロの頭を撫でる。

 まだムサイ級の補給が完了していない。無防備な艦船が背後に控えている今、打って出る他に仲間を守る手立てがなかった。

 だからニムバスは飛び出した。遅れて私も飛び出した。

 

『セラフシステム、パイロットとの脳波の同調を開始します』

「……何時も不思議な感覚になる。まるで私の心の中に貴女が居るみたい」

『居るんだよ、ペッシェ。今の私と貴女は一緒の存在……』

 

 そうなの? と私が問い掛ければ、そうだよ。と彼女は答えた。

 そうなんだ。と頷いて、操縦桿を強く握り締める。

 目の前から来るのは二機、同調すると一気に世界が拓けるようだった。

 

「あれが魔女相手に生き延びた連邦の白いヤツ……ッ!」

『ターゲット確認、排除開始』

「ええ、油断はできないわよ」

 

 先ずはマシンガンを掃射して牽制──殺気ッ!

 

「でも、このままで……ッ!」

 

 大型の砲弾は直進する自分の横を通り過ぎた。

 ガンタンクによる砲撃。でも、狙いが甘かった。次弾装填まで両手のバルカン砲を滅多矢鱈に撃ち続ける。あれでは斉射というよりも乱射だ。相手の射線にだけは入らないように注意しながら二機のモビルスーツに接近する。両手に持ったマシンガンで弾幕を張る、大したダメージにもならないはずなのに白いヤツは盾で弾を防いだ。ガンタンクは反撃を受けて、余計に照準が定まらなくなっている。

 これ以上、牽制する意味もないと判断し、マシンガンを左手に持ち替えて、右手でヒートホークを握り締める。

 ニムバスは見栄でグフ用のヒートサーベルを持っているけども、アレはグフの腕部パワーがあって初めて使い熟せる代物だ。グフと比べて脆弱な腕部のヅダが扱うには、重過ぎる。それこそ、ニムバスのように剣術の心得がなければ、ヅダで使い熟す事ができない武装だ。

 白いヤツのビームライフルの射線が、私と重なる。その瞬間、機体を横に捩った。

 やや遅れてビームの粒子が胴体部の装甲を掠めて溶かす。

 

「ずっとニムバスとシミュレーションして来たから、白兵戦には自信があるのよッ!」

 

 白いヤツが構えた盾の上からヒートホークを叩き付けた。

 怯む相手を盾ごと蹴りつけて、ザク用のクラッカーを相手の足元に転がす。

 そのまま自分に主砲の射線を合わせようとするガンタンクに左手のマシンガンを掃射する。

 ガンタンクは見た目ほど装甲が厚い訳ではない。

 連邦の白いヤツとは違って、マシンガンでも結構なダメージを与える事が可能だ。

 

「視えてるわよ、貴方には視えてなかったみたいだけど」

 

 連邦の白いヤツは私の背後でビームライフルの銃口を合わせる。

 でも、遅い。奴の足元に転がしたクラッカーが破裂する方が先で、大きな爆発を引き起こした。

 直撃だ。これでノーダメージという事はないはずだ。

 

「先にガンタンクを──ッ!」

『駄目! 来るッ!』

 

 機械音声に反応し、背後に視線を送った。

 爆炎の中を掻き分けて、飛び出した白いヤツ。装甲の節々に焦げ跡が見えるが機能面で問題はなさそうだった。ビームサーベルを振り上げる。突撃してくるヤツにヒートホークで迎え撃った。しかしビームサーベルの刃を受け止めきれず、ヒートホークの方が切断されてしまった。

 幸いにも機体に損傷はない。

 右手のヒートホークは相手に投げ付けて、マシンガンを斉射しながら大きく距離を取る。

 

「話に聞いていた以上に頑丈のようねッ!」

 

 マシンガンの弾が当たっても装甲に弾かれるだけだ。

 

「これなら、どうッ!?」

 

 連邦の白いヤツの眼前にクラッカーを投げる。

 セラフが協力してくれる今なら、こんな風に自分で放り投げた手榴弾を撃ち抜く事も可能だ。

 相手が逃げ出すよりも早く、相手の至近距離でクラッカーは破裂した。

 

◆

 

 ホワイトベース艦橋。出撃した2部隊は敵に捕捉を受けて、作戦は難航。

 ユウ少尉が率いる小隊は、攻撃を仕掛ける前に露見した。アムロもまた赤いヅダの襲撃を受けている。奇襲は完全に失敗だ、逆に迎え討たれる状況に追い込まれてしまっていた。頭の中が真っ白になる。俺の責任だ、俺の決断が民間人を殺す事になるのかも知れない。

 赤いヅダに苦戦するアムロ達を前に、ただ茫然と眺める事しかできずに居た。

 

「いいえ、まだです。私がコア・ブースターで出ます」

 

 通信手を務めていた民間人の女性の一人がヘッドセットを置く。セイラ・マスと名乗った彼女は、元々看護師だったはずだ。

 

「なッ!? 待ちたまえ! 操縦できるのか!?」

「そんなこと、やってみないとわかりません」

 

 プロペラ機なら操縦できてよ、と言い残した彼女は艦橋から駆け出してしまった。

 拳を握り締める。俺は何をやっている。まだやるべき事が残されている。先ずはアムロ達を収容し、ユウ少尉達もホワイトベースに戻す。出来れば、逃げる時間を稼ぐ為に相手の艦船に一太刀入れておきたかった。今の乗組員でやれるか? 細い道だ──でも、やらなければ、俺達が生き残る道はない。

 こういう時こそ冷静に、最後まで最善を尽くすんだ。ブライト・ノア!

 

「機銃を放て、当たらなくとも良い! 兎に角、敵の注意を引き付けるんだ!」

 

 鍵を握るのは一発のメガ粒子砲。

 赤い彗星が乗るムサイ級とまでは言わない。

 せめて、巨体のパプア級に当てる事ができれば、また形勢も変わるかも知れない。

 やれる事を全てやれ、思い付くことは片っ端から試すんだ。

 

「そ、そうだ! ミサイルを放つんだ!」

「さっき砲手がいないからロックオンの仕方が分からないって報告が!」

「良いから撃つんだ! ミサイルだって分かれば、相手も放っておく訳にはいかないだろう!」

 

 相手はミノフスキー粒子で満たしたクレーターの中にいる。

 そんな事も忘れて、ミサイルを発射した。直進運動で明後日の方向に向かっていくはずのミサイルが、途中で爆発する。赤いヅダが頭上を目指してマシンガンを斉射していた。釣られてくれた。ミサイルに気を取られた赤いヅダを目掛けて、アムロが乗るガンダムがビームサーベルで斬りかかろうとする。

 勝った。と拳を握り締める。そのガンダムに横から蹴りを食らわせる赤い影、彗星の如き速度で奴は飛び込んで来た。

 シャアが、来た。

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