仮面ライダーインテグラ Enhanced Episodes   作:虎ノ門ブチアナ

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#+2 結婚

 4月12日、午後12時30分。

 

 東京都北区、十条駐屯地、地下装備試験場。

 

「AAL-016、023、031、3機共にエネルギー充填完了」

 

 試験場にアナウンスが響く。

 その場に待機させられている3機の人型機械(ロボット)の様子を多くの自衛隊上官、防衛省官僚らが見つめる。

 

 そのロボットこそ、防衛省が開発した人造ラフム、

 『AAL-016 イージスラフム』、

 『AAL-023 ジャスティスラフム』、

 『AAL-031 セイバーラフム』である。

 

 金剛からの技術提供を受けて造られた新たなる対ラフム用戦力である人造ラフムらは、AIを搭載した自立思考型の戦闘ロボットとなったが、攻撃的な指向性を高めた学習が施された事を危惧した金剛によって再度調整を加えて6月以降に起動させる予定となっていたが、戦力としての信頼性をいち早く確かめたかった上層部の命令により起動日が前倒しされたのだ。

 その上、開発に関して全作業の監修を約束にして技術提供した金剛が別用にて席を外しているタイミングで起動させようとしているのだ。

 

「全機起動開始」

 

 一等陸将の指示を受け、外部電源によって人造ラフムが起動する。

 ヘルメット状の頭部に隠された一つ目のカメラアイが一瞬点灯し、それぞれが動き始める。

 

 人造ラフムの行動開始と同時に方々から期待の声が上がる。

 ―――が。

 

「…AIの独自決議により内部電源に切り替えられました」

「は? 奴らが勝手に決めただと!?」

 

 上層部が狼狽えている内に3機の人造ラフムは辺りを見回して破壊を始めた。

 

「何やってるんだアレは?」

「AIの攻撃性が暴走しています! ―――試験場の障壁及び通路側扉が破壊されました! 脱走されます!!」

「実験は失敗、直ちに迎撃用意! バディへの要請は事態が更に悪化してからにしろ…!」

「ですが奴らは”ラフム”です…バディの助力が必要なのでは―――」

「隠れて起動させていた手前、おいそれと連絡出来るか!」

 

――

 

 東京都北区、賛美聖堂教会。

 

「健やかなるときも、病めるときも。喜びのときも、悲しみのときも。富めるときも、貧しいときも…これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」

「…はい」

 

 その教会にて、ある新郎新婦の結婚式が執り行われていた。

 

 武蔵大護、榛名夫婦が純白のスーツとドレスに身を包み、お互いを見つめる。

 

「では、誓いのキスを」

 

 牧師の言葉を受け、榛名が唇を近付ける。

 一方の大護は戸惑いながら目を泳がせる。

 

「ちょっと大護君、バシッと決めなさい」

「だってよ、心の準備が……」

 

 2人が小声で相談していると、参列していた雷電に緊急連絡が届く。楓は海外留学、勇太郎は写真家としての修行の為を席を外しており、雷電がライダーの代表となっていたのだ。

 

 その緊急連絡がラフム出現の報である事をすぐさま理解した式場内のバディ職員らが表情を一変させる。

 が、状況を知る由も無い牧師は咳払いする。

 

「式を再開してもよろしいでしょうか?」

「いえ…緊急事態なので一旦式を止めてもらって……」

 

 大護がそう返すが、雷電が口を挟む。

 

「続けて下さい、この事態は俺や居残り組で対処します」

「だったら俺も付き合うぜ」

 

 雷電の方に腕を置くのは、金剛であった。

 

「…いいんすか」

「家族の為に戦いてぇんだ、分かんだろ?」

 

 雷電が頷くと、2人は式場を後にする。

 その姿に心配と申し訳無さを募らせる大護と榛名だったが、自分達の為に行ってくれた彼らに報いる為にと、式を続ける覚悟を決める。

 

――

 

 「出現したのはコードネーム…アンノウンA、B、Cと陸自より呼称。砲撃能力、子機の操作、飛行能力を有したオリジン個体と推察されます」

 

 オペレーターの指示を受けながら雷電、金剛はライドサイクロンを発進させる。

 ラフムが出現したのは目と鼻の先であったのだが、その名前と場所で金剛には人造ラフムの暴走である事が看破された。

 

「防衛のお歴々め、余計な事しやがって!」

「金剛さん、敵について何か知ってるンスか?」

「ああ…恐らく俺が開発に協力してた人造ラフムを暴走させやがった。気ィ引き締めていけよ」

 

 静かな怒りを見せる金剛に、雷電は事態のまずさを感じ取って顔を強張らせる。

 

「と言う訳で早くも敵影だ、行くぞ雷電!」

 

《Account・Thunder》

《Account・Frustration》

 

《Thunder》

《Pandora》

 

「変身!!」

 

《Change・Thunder》

《Change・Pandora・Frustration》

 

 仮面ライダー霹靂、仮面ライダーオイオノス。

 2人の戦士が荒ぶる機械を迎え撃つ。

 

「阿呆な話だが…俺も関わっちまった産物だ、ケツは持たせて貰うぜ」

「正義を貫きライドする仮面の戦士…その名もまさしく、仮面ライダー霹靂!!」

 

 名乗りを上げたライダーらはそれぞれ分担して人造ラフム1機ずつを相手取る。

 霹靂が向かうは背部大型ドローンを分離、操作するタイプのジャスティスラフム、

 オイオノスの担当は砲撃特化タイプ、イージスラフム。

 残るセイバーラフムは駐屯地から出動した自衛官、警官隊、アイアス部隊が対応する。

 

「一応俺の設計だ、弱点は知っているさ……カセット、ロープ!」

 

 イージスラフムが射撃態勢に入った事を確認したオイオノスが右手人差し指を突き立てると右腕が可変しロープを射出する。

 ロープがイージスの足を絡め、バランスを崩させる。と同時にイージスが一丁背負っている肩部砲台から火器を放つと、その反動で勢い良く地面に倒れ込む。

 

「AAL-016は火力こそ高いが、姿勢制御にやや難アリ…加えて発射までの充填時間が長く隙ばっかだ! 一番バージョンを更新して改造しまくってたがやっぱり直んねぇな、お前の悪い所は!」

 

「カセット、パワー!」

 

 続いてオイオノスは右手の親指以外を突き立て右腕を三日月状の刃に可変、イージスへ突き進む。

 と、姿勢を持ち直し立ち上がったイージスが再び砲撃態勢に入る。今度は逃がさんとオイオノスを射線から逃さないイージスにオイオノスは舌打ちする。

 

(発射態勢から砲撃まで間隔は3.27秒、それまでギリギリで引き付けて―――)

「今ッ!!」

 

 パワーアームをイージスの砲台へ突き刺し、砲弾の発射が不可能な状態になる様破壊する。

 オイオノスの予想通り、砲撃後の熱と破壊力がそのまま暴発し、肩部砲台ごと胴体から上が爆発により消滅する。

 

「悪い子ちゃんにはお仕置き…しねぇとな」

 

――

 

《Thunder・Crush》

 

 一方の霹靂は雷撃を放ち電子機器の操作を全てシャットアウトする。

 それにより大型ドローンの操作が出来なくなったジャスティスラフムは混乱し出来もしない子機操作を繰り返している。

 

「所詮は機械…電気を操る俺の敵じゃ無い」

 

《Gozu Tennou》

 

「駐屯地近くであんまり使うのも良くねぇ力だが…金剛さんいわく今回の責任はあそこの人達らしいし、多少は目を瞑ってくれるよな」

 

《Change…God・Tame・Node》

 

 大きな落雷と共に、神の性質を持った雷の戦士、凄天霹靂が顕現する。

 

「オーバーキルか? まぁいいか」

 

《God・ThunderAttack》

 

 天に手をかざした凄天霹靂に雷が落ちる。その電力は全て彼の体内に蓄積され、そのままジャスティスを指差す。

 

「ライダーブレーク!」

 

 人差し指から放たれた雷撃はジャスティスを感電させ、内部の機械が全てショートするまで焼き尽くす。

 

 

「雷電、これで一丁上がりか?」

「いや藤村さん、機動隊員らが対応していたセイバーラフムが逃亡しました!」

 

 戦闘が終了すると考えていたオイオノスだったが、セイバーが追跡を振り切ってしまったと言う報で顔をしかめる。

 

「雷電、そっちは済んだか!?」

「ウッス、状況は聞いたんで向かってます」

 

 ライドサイクロンで合流した2人が街を逃げ惑うセイバーラフムを追いかけていると、金剛がある事に気が付く。

 

「コレ教会向かってねぇか!?」

 

 金剛がそう予想するのは、人造ラフムの持つAIが独自のバイタル測定器により強い生命反応を持つ個体を選別し、攻撃対象としていると考えたからだ。

 そして、その測定により強い生命反応を示すであろう付近の生命体と言えば…。

 

「大護君、ヤツぁ大護君が狙いだ!」

 

 セイバーが向かう方向に大方予想が付いた2人は、教会へ戻ろうとライドサイクロンを走らせる。と、目の前にジャスティスラフムが操作していた大型ドローンが突撃して来る。

 2台のサイクロンを横凪ぎにする様に突っ込んで来たドローンは目前で自爆し、その爆発にオイオノス、霹靂を巻き込んだ。

 親機であるジャスティスが破壊されても尚自立行動可能な仕様が不幸いして道を塞がれてしまった。

 

 爆炎からなんとか離脱したオイオノスと霹靂だったが、セイバーとの距離を更に取られてしまった。

 

「チクショウ…! 大護君のライドツールは控室だ、式場に突入されたらマズイぞ!!」

「……金剛さん、ちょっと俺に捕まってて下さい」

 

 霹靂の指示通りオイオノスが彼の肩に捕まると、再び凄天霹靂に変身し、全身から放たれる雷を足に収束させる。

 

「なんかバチバチすんだけど」

「全身に高圧電流を流してますから……それを全部足の電気信号に変換して筋肉バグらせて走ります」

 

 凄天霹靂が言い放つと、しがみついているオイオノスに目もくれず全力で疾走する。

 

「オイオイオイ早い早い早い行け行け行け行け!!」

「全速力で…追いますッ!!」

 

――

 

 賛美聖堂協会。

 

 雷電、金剛の気遣いにより予定通り式が進められると思ったが、そうも上手くは行かないらしい。

 2人の動向が気になった大護は辛抱たまらず出て行こうとしていた。

 

「新郎さん、まだ式は途中です。主役のあなたがいなくてはならないのです」

「でも、仲間を置いてけぼりにして挙行する式なんかに意味があるとは思えねぇんです!」

 

 牧師、榛名の静止に構わず、式場を出ようとする大護に、1人の少女が立ちはだかった。

 

「! 君は……」

「暁…(ひびき)なのです」

 

 雷電の妹、響。

 彼女はかつてラフムに襲われ、暴走した兄によって意識不明となっていたが、彼の尽力により助けられたたった1人の肉親である。

 ようやく意識を取り戻し式に参列出来た響は兄への感謝と共に強い信頼を抱いていた。

 

「兄の想いをムダにしたくないなら、ここにいるべきなのです」

「私もそう思うわ、響さん」

 

 そう返すのは、榛名であった。

 彼女の兄である金剛も今、皆の為に戦っている。

 かつて金剛も世界の平和を榛名に託し姿を消していた。

 

「兄を信じる事……兄妹の絆が希望に繋がる事を知っているから」

 

 榛名の言葉に考えを改めた大護は響に礼をすると、壇上に戻る。

 ―――が。

 

 式場の壁を破壊してセイバーラフムが現れる。

 金剛の予想通り大護を狙って来たのだ。

 

「信じ…信じ……」

 

 絶句する榛名に大護も流石に狼狽える。

 まさかこの場にラフムが出現するとは夢にも思っていなかった彼はロインクロス・トループを持っていなかった為に皆を守る術が無い。が、ラフムをここから退けんと突撃する。

 

「うぉらッ!」

 

 セイバーラフムにぶつかってなんとかそこから動かそうとするが、びくともしない。

 

「ここはみんなが幸せになる場所なんだよっ! こっから消えろッ!!」

 

 大護の悲痛な叫びも虚しく、セイバーラフムは全く微動だにせず、大護へと攻撃を繰り出そうとする。

 

「待てやコラァァァアアア!!」

 

 その叫びと共に、セイバーラフムへと蹴りを食らわせる戦士が2人。

 凄天霹靂とオイオノスが追い付いたのだ。

 

「俺の妹に手ェ出すな!」

 

 丁度良く重なった兄達の思いの丈が式場に響く。

 

「今じゃ! 大護これを!」

 

 隙を見計らって席の奥にいた武蔵博士が息子である大護にアタッシュケースを投げ渡す。

 その中にはロインクロス・トループが収められていた。

 

「親父…こいつぁ」

「トイレの間に持って来ておったんじゃ」

「……サンキュ!」

 

《アイアスシステム・ブート》

 

「いくぜ雷電! お兄さん!」

「了解!」

「お兄さんはやめれ!」

 

《Palladion》

 

「変身!」

 

《ネームド・Palladion―――アクセプト・エキスパンション》

 

 仮面ライダーアイアスに変身完了し、3人の戦士が立ち並ぶ。

 暴走状態のセイバーラフムは狼狽する事無く淡々と攻撃態勢を始める。

 

《God・ThunderAttack》

《Pandora・Enigma》

《Pandora・Enigma》

《Pandora・Enigma》

《Pandora・Dogma》

 

 アイアスへと飛翔するセイバーラフムへ、彼のカウンターキックが炸裂、そして追い打ちをかける凄天霹靂とオイオノスの蹴りがセイバーラフムを破砕する。

 

「トリプルライダーキック!!」

 

 3人の合掌と共に、セイバーラフムが爆発、式場の機材を巻き込んで破壊する。

 

「あの…我らが教会が……」

「大丈夫っす、防衛省(愉快な上司ども)に責任は取らせますから」

 

 焦る牧師をよそに笑う金剛だったが、内心怒りを抑えられずにいた。

 

 一方、少し(すす)けたドレスの埃を払いながら榛名は俯いていた。

 彼女が落ち込んでいる事に気付いた大護が肩を叩く。

 

「先生、さっきはありがとうございました」

「でも、希望だのと語った上でリスクを考えないで皆を危険に晒してしまった…私が浮かれていたのよ」

「そんなこたぁねぇっす…先生が信じたお兄さんは来てくれたでしょうが。今も、あの時も」

 

 あの時…ラフムとの戦いの中で藤村兄妹が再会した時の事を大護は思い出していた。

 榛名が兄を信じてバディで戦ったからこそ、兄の力になれたのだ。

 

「先生の想いはいつだって誰かの力になってる訳ですからそう落ち込まないで下さいよ、ね?」

「…じゃあ、先生だなんて他人行儀な呼び方やめて頂戴」

 

 鳩に豆鉄砲を食らった様な顔を見せる大護だったが、照れながらも細々と言葉を紡ぐ。

 

「は、はる、榛名―――」

 

 

 その瞬間、白鳩と共に参列者の拍手が送られる。

 今、ここで、夫婦の契りが交わされた。

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