喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

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旅行の合間に読んでいたら熱が再燃したので冷めやらぬうちに投稿。


1年目
ひと目見て今までとは違う世界だと理解したよ(してない)


ここは本当に日本国なのだろうか。

 

この街を何の情報も得ずに見たものならば…いや、たとえ知識だけ蓄えていたとしても、そんな考えを抱かずにはいられないことだろう。

 

それ程までに、この街の光景はおおよそ一般大衆の考えうる『日本』の姿とはあまりにかけ離れているから。

 

木組みの家が立ち並び、地面を覆うは石畳。

 

 

ここはどこぞの西洋なんでしょう?

いいえ、日本です。本当に。

 

 

 

 

 

…と、まあ。

 

何故僕かこんなことを誰に対して言ってるかもわからない考えを浮かべているのか、と申しますと。

 

 

 

 

 

他ならぬその街に、今日まさに足を踏み入れたからなわけで。

父から『ちょっとした留学ならここ』と進められ、兄弟たちとこの度引っ越して参ったわけなのですが。

 

 

「うーーーむ。

見れば見るほど日本とは思えぬ光景だ…」

 

いや、たしかに僕の住んでいた街にもこういう西洋…西洋?的な建築物が無かったわけでは無いのですが。

しかし、これほど当然のように街並みとして広まっているのは流石に…

 

 

 

「あー、ゴホン。

リンネ、君が一人街を見て黄昏れるのは絵になるが、今は荷解きを手伝ってくれるとありがたいのだがね」

 

「え…あ!

ご、ごめん、つい」

 

 

いけないいけない。

まだ越してきたばかりで荷解きが終わっていないのだ。

 

…しかし、荷物は…

 

 

 

 

「………ほとんど貴方の調理器具ですよね…」

 

「それは段ボールに収まりそうなものだからだろう?

それぞれの家具などを考えれば私の荷物などせいぜい半分くらいだ」

 

「“全体の半分”って意味ですよね?

 

それは十分多いんですがそれは??」

 

「細かいことを気にしているとモテないぞ?そら、この看板を外に置いてきてくれ」

 

「はいはい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと。コレでいいのかね…

 

しっかし、お隣が喫茶店って…思い切り被ってるじゃんね」

 

下手したら営業妨害じゃないの?

よく文句言われなかったな…まあ、ここに来る道中でも割と喫茶店らしき店がちょこちょこあったし…そういうものなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの〜すみません!」

 

「ん?ハイ、どうしました………」

 

 

 

 

 

 

 

 

振り返ったそこに居たのは、オレンジっぽい茶髪に、半分に割れた桜のような髪留め。

少し童顔な、でも整った顔立ちの女の子。

 

…ただ、何だろう。

 

ひどく懐かしいような、そんな。

 

 

「―――――――?あの…?」

 

「…あっ、す、すみません。

それで、どうしました?」

 

「ええと…香風さんって人のお宅知りませんか?」

 

「あ…ごめんなさい。

僕も今日まさに越してきたばかりなもので…」

 

「え、そうだったんだ…!

ごめんなさい!」

 

「いやいや、こちらこそ力になれずに申し訳ないです…」

 

「………ここって、喫茶店?」

 

「え。あーーー…ハイ。

まだまだ開店準備中ですけど…」

 

「ほえ〜。

お兄さんが一人でやってるの?」

 

「いやいや、流石にそれは無理がある。

あそこでイソイソと動き回ってるお兄さんと…ひい、ふう、みい…

 

四人ぐらい同居人が………」

 

「おお…大所帯!」

 

「言うほど大所帯かな…まあそんなわけで、オープンしたらよろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

 

と、女の子はペコリと頭を下げて歩いて………お隣の喫茶店の前に。

 

あの、人探しの最中では無かったのですか。

 

 

 

「いや〜折角だしちょっと寄り道を…あ、それと!

 

私ココア!保登ココアです!

この春から高校1年生です!」

 

「え。

まさかの同い年!!?」

 

「おお…!じゃあもしかしたらどこか出会うかもね!その時はよろしく!!」

 

 

 

 

 

と、その女の子…ココアちゃんはお隣の喫茶店に入っていってしまったのであった。

それで良いのか、花のJK。

 

 

 

 

 

 

「………何か…パワフルな女の子だった」

 

何かのマンガで『太陽のような女性』というものを見たことがあったが、それこそあんな人を指して使うのだろう。

と、妙な納得があった。

 

持ち前の明るさもさることながら、いつの間にか自分のペースに周りを巻き込………取り込む…いや同じか。

そんな感じがなんとも。

 

 

 

 

 

「………………んん゛。

 

リンネ。看板は設置してくれたかね」

 

「うわ!?」

 

 

しまった。

いつの間に間に話し込んでしまっていたようだ。

 

店主の表情もクールを装いつつ肩眉毛がピクピクと動いていらっしゃる。

どう考えてもお怒りです本当にありがとうございました。

 

 

 

「春先、引っ越してきたばかりの新天地。

突然現れた麗しい、それでいて華やかな少女。

 

漫画や小説の書き出しとしてはそれなりな展開だがね。

仕事に集中してくれると、本当に助かるのだが。」

 

「はいはいすいませんでしたよ………」

 

 

 

ええい。

 

一度我らが店主の皮肉が始まると面倒なことこの上ないのだ。

サッサと荷解きを済ませてしまなくては。

 

 

 

 

「………ところで。

他のみんなは果たしてどこに居るのかね。

 

これだけの荷物を二人でとなると、重労働なのだがね」

 

 

「ええと…ジークは中学に編入手続きに行ったよ」

 

 

「な…一人で行ってどうする!!

仮にも保護者である私が居なければ出来ない手続きもあるだろうに…!」

 

「まあ…ジークの事だし、『皆は忙しいだろうし子供の自分にできる事なんて限られてるし、できることは済ませてしまおう』とかそんなところじゃないのかな…」

 

「子供だという自覚はあるのに、出来るかどうかの区別はついていないのか!!

ええい、今から追いかけるとして…他は!」

 

「タマキは『折角だし街をふらふらしてみるよ』って。

 

センとチサトもだいたい同じく…」

 

 

 

「――――――――ええい、どいつもこいつも何を考えているんだ!!

 

リンネ、タマキとセン、チサトを今すぐ呼び戻しておけ!!

私は今からジークを追いかける!!」

 

 

…と、けたたましく僕に言い放つと店主殿は店の外に飛び出してしまわれたのでした。

三人を呼び戻したとして、この荷物をそれまで僕一人でなんとかしろと…?

 

「無茶言わないでくれよ…」

 

 

何だか精神的な疲れが来たので、外に出て空気を吸う。

見上げた所には、当店の店名を指し示す看板。

 

 

…しかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………店名が自分の苗字ってのはどうなのさ、父さん」

 

と、この街から離れた場所で。

 

当店と同じ名前の第1号店を経営しているであろう父にボヤいてみたのでした。

 




リンネ

CV:櫻○孝宏

金髪のショートヘア、青い目が特徴。
身長181cmの美形。
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