喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

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第十四羽です。オリジナル回です。


デートって恋人じゃなくても成り立つんですね、初めて知りました(泣)

「リンネくん!明日は一日私に付き合ってもらうよ!」

 

「…はぁ…」

 

衛宮リンネです。

とある日、もうすぐ本日の営業終了のうちの喫茶店にて。

お隣の同級生のココアちゃんに唐突にそんな事を言われました。

 

付き合ってもらうって…なんで?

 

「…この間、その…」

 

「分かりました行きますごめんなさい」

 

それは僕にとっても苦い思い出になりつつあるからやめてくれ。

しかも女の子側から掘り返されるのは割増でキツイんだ。

 

「でも、付き合うって何に?

買い物の荷物持ちとか?」

 

「ふふーん。

アタラズモトオカラズ、だね!

 

明日はお姉ちゃんとデートに行こう!」

 

…はい?

 

デート?デートってあのデートですか?

 

男と女…でなくとも、リア充がともに過ごすなり何処かに出かけるなりするあの?

 

この前のあれのお詫びがデート?マジすか。

 

そりゃあ野郎からしたらこんな素敵な女の子からお誘いしてもらえるなんて感謝カンゲキ雨あら…いや待て待て。

そもそもココアちゃんの僕に対する評価を考えるのだ。

 

彼女からしたら僕はただの友人で、恋愛感情などない。断言できる。

…ハハ、考えてて悲しくなってきたゾー(泣)

 

「まあ、それがココアちゃんのお望みなら…それで、待ち合わせとかは?」

 

「じゃあ…明日の午前9時、駅前で!」

 

「駅前?」

 

ココアちゃんの話によると少し離れたところにあるショッピングモールまで足を伸ばすとのこと。

なして?

 

「それは、当日までのヒ・ミ・ツだよ!

じゃあ、また明日!」

 

 

 

 

 

 

 

…と、嵐は過ぎ去りお家へと帰っていった。

しっかし、女の子とお出かけかぁ。

 

男と来て生まれたからには一度は経験しておきたいことがこのタイミングで叶うとは。

明日はしっかり荷物持ちを完遂せねば!

 

「待て、リンネ。少し確認したいことがある」

 

ん?なんですシロウ。

いつになく真剣な眼差しではありませんか。

 

「お前、明日は何を着ていくつもりだ?」

 

「はい?」

 

藪から棒になんだというのか。

別に服装なんて…気を使わなくて良い、とは言わないが。

 

向こうからそんな意識も向けられていないのに必要以上に気を張るのも…

 

「馬鹿者!そんなことでは好感度が“仲のいい友人男子”から“ちょっとセンスがないあの人”まで格下げされることになるぞ!

 

それでなくとも女性とは相手のファッションに敏感な生き物だ!」

 

「そ、ソウナンデスカ」

 

なんとも熱意を感じる演説。

しかし、だからって今からどうしろと?

 

「まずはコレだ!自分に近い情報を打ち込んでいけ!」

 

「えーなに…『パーソナルカラー』ですって?」

 

とりあえず打ち込んで…結果が出た。

 

「ヨシ。では次だ!

タマキ!セント!チサト!アパレルショップに連行しろ!」

 

「「へい!」」「へい…」

 

「ちょっ、何すん…わぁああああーれーーーーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒いインナーに青みがかったデニムのポレロジャケット。

下半身はデニム被りはダサい、どのことで緩めのライトブラウンのズボン。

 

そんな衣服に身を包み、私衛宮リンネは駅前で待ち合わせ中でござる。

ちなみに現時刻は8:40。

 

十分前で良かったんでないか?とも思ったのだが

 

 

『女子の行動力を舐めるな!

三十分前でも少し遅いとすら思えるぐらいだ!』

 

 

…との力説により、こうしてやや早めにお待ちしております。

しかしそれにしたって暇だぞ。

 

しばらく駅の中でも歩き回っていようかな…ん?

 

 

 

 

 

 

 

…何でしょうか。

なにやら見覚えのあるお方がサングラスを掛けて駅内に入っていったような気が…

 

いや偶然だ偶然。

だって今日は普通に営業の日だった筈だ。

 

こんなところでおサボり、それも店長がそんなことしてるわけ無いじゃないですかヤダー。

 

 

 

 

 

…と、まあそんなくだらないことを考えているうちに、待ち人はやって来た。

 

 

 

「お待たせ!

いや〜危うく寝坊しそうになってチノちゃんに怒られちゃった…リンネくん?」

 

――――――はっ。

 

いかんいかん、思考が停止してしまっていた。

普段の可愛らしさもさることながら、薄く化粧を施しているその顔つきは普段以上に…

 

「ごめん、ちょっといつもと印象違って驚いたんだ。

その服装も似合ってるよ」

 

「ありがとう!

メイクとかはよく分かんなかったんだけど、リゼちゃんが協力してくれたんだ〜!」

 

なるほど。

リゼさんはああ見えて結構そっち方向に詳しかったりするし、納得。

 

…と、そろそろ目的の列車の時間だ。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…こちらAチーム。目標が動いた。

こちらも移動する」

 

『りょーかーい。

Bチームも動きまーす』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「到着ーーっ!!」」

 

十数分、列車に揺られ目的地近くの街へと到着。

それから更に数分間歩き、ショッピングモールに着いた。

 

木組みの街じゃまずないような大きさの建物だな…

 

 

「すごいねぇ…早く行こうリンネくん!」

 

「ちょ、ココアちゃん、走らないの…!」

 

そうして駆けてくココアちゃんを追いかけ、ショッピングモールに入ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「目標が目的地に入店した!こちらも動くぞ!」

 

「『了解!』」

 

…後ろから追いかけてきていた愉快な仲間たちに気づかずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ…かわいい…」

 

「うん…かぁいい…」

 

入店早々足止めを喰らった。

でも仕方ないじゃん。入ったところにペットショップはズルいじゃん。

 

ちっこいわんこや猫がトテトテ歩き、わちゃわちゃ戯れているのを見せられたら人間足は止まるでしょ。

 

 

「うさぎさんも良かったけど、こういうワンちゃんとかネコちゃんももふもふしたら気持ちよさそうだよねぇ…」

 

「分かる…大型犬に抱きつきながらフカフカしたいよね…」

 

「ゴールデンレトリーバー…とか…?」

 

「うん………」

 

 

 

 

 

 

 

「…ココアとリンネがペットショップの前で動かなくなったんだが…二人はどうしたんだろうか、シロウ」

 

「………う、むぅ。

人間、愛くるしいものには勝てないという本能的なもの、と言っておこうか…」

 

「「………ペット、ショップ」」

 

「チノくん、リゼ。

気持ちはわかる…だが堪らえろ。作戦のためだ」

 

『こちらチームBでーす。

千夜ちゃんが抹茶系スイーツ店の前で止まっちゃったんだけどどうしよう?』

 

「…どのみちこちらも膠着状態だ。

しばらくそちらは自由行動で頼む」

 

…愉快な仲間たちはそれなりに自分たちで楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

「…うん、このペン可愛いかも…リンネくんはいいのあった?」

 

「うーん…僕は文房具にかわいさとか、よくわかんないので…あ、でもこれは使いやすいかな?」

 

ペットショップから開放された(というか動けなかっただけの)僕たちはショッピングを再開。

新しいペンを買おうと文房具屋に寄ってみたり。

 

 

 

「ううーん…小説は読んでると眠く…」

 

「こっちの短めのやつとかならどう?

ちょっと見てみたけど読みやすいかも」

 

夏には読書感想文もあるだろうと、普段の暇つぶしのための本探しも兼ねて本屋に寄ってみたり。

 

 

 

「楽器がたくさん!

私もなにか始めてみようかなぁ…」

 

「イメージなら楽しいんだけどね、イメージなら…いざ本物をすると成ると…」

 

「んん…経験者は語るってやつ?」

 

「まあ、そういう感じです…」

 

青春を生きるものの憧れ、ギターを始めとした様々な楽器を取り揃える楽器屋に寄ってみたり。

 

僕とココアちゃんはデート?を楽しんだのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うん、今のところ特に問題も起こってないようだな」

 

「もとよりデートとは名ばかりの友人同士でのショッピングのようなものだったからな。

わざわざ尾行する必要もなかったか」

 

「何を言っているんだ!

そうやって油断して二人が道を踏み外したらどうするつもりだ!」

 

「道を踏み外すと言ってもね。

少なくとも私の知る限りのリンネは真っ当な倫理観を持った好青年だし、ココアくんも魅力的に映るであろう少女とは言えそんな妙なアピールをするタイプではないと考えているのだが、そこのところは?」

 

「…むぅ、まぁ、それはそうかも知れないが…

だが、やはり友人としては心配だ!」

 

「まあ、それは自由だと思うがね…

ところで、我々以外のメンバーは既に尾行を放棄して遊んでしまっているようだが?」

 

「な、にぃ―――――!?」

 

「チノくんとジークは二人で新作の本と思い出の本探し。

 

タマキと千夜くんはその後和菓子の研究…という名目のお茶休憩。

 

シャロくんはチサトに連れられこの夏を楽しく過ごすためのファッションめぐり、Withセントだ。

 

いっそ、我々も二人で何処かで楽しむとするかね?」

 

「なっ…誰がお前なんかと!」

 

「…随分嫌われているな、私は。

と、また動くようだ、尾行を再開するぞ!」

 

「お前のほうがノリノリになってきていないか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん…このクロワッサンすごい…外がサクサクで、中はこんなにモチモチで…」

 

「流石パンには詳しいね。

…ん、このスープも美味しいな」

 

時刻はお昼少し過ぎ。

遅めの昼食のため入った喫茶店にて、パンとスープ、それと飲み物を楽しんでいるのでした。

 

「むむ…チェーン店でもこれだけの味とは。

私たちも負けていられないね」

 

「だね。…とはいえ、うちの料理担当はもっぱらシロウなわけですけど」

 

「シロウさんの料理すっごく美味しいよね!

プロの料理人レベルだよ!…あれ、でも喫茶店の店長ならプロみたいなものなのかな?」

 

「うーん…あれは特殊な方だと思うよ?」

 

 

 

 

 

 

 

「特殊…なのか…私は…」

 

「まあ、あれは…正直一喫茶店には惜しいレベルだとは思う。悔しいが」

 

「なぜ君が悔しがるんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

「ココアちゃんは実家もパン屋さんだっただけあって、やっぱり将来的にはそっちを手伝うの?」

 

「お店はお姉ちゃんが居るからな〜私はまだまだ実家のレベルには遠いよ。

まだ目標も決まってないし」

 

「えっと………街の国際バリスタ弁護士?それ+パン屋が目標?

どれだけの資格が必要になるのか…」

 

「えへへ。

でも、『お姉ちゃん』って呼ばれればそれで良いんだ〜」

 

「…関係あるのかなぁ…」

 

それにしてもココアちゃん、すごく『お姉ちゃん』にこだわるよなぁ。

お姉さんが居るのは話に聞いてるけど…

 

「やっぱりお姉さんへのあこがれからなの?」

 

「うん。なんたって四姉弟の末っ子だからね」

 

「そんなに姉弟が!?」

 

「そんなに驚く?リンネくんだって皆のお兄さんみたいなものでしょ?」

 

「いや、まあそうなんだけど…

 

僕らの場合はちょっと、特殊だからさ…」

 

「あ…そっか。

衛宮家の子たちって…」

 

「まあ、ね。

事情があって預けられたり、親が亡くなったり…他ならぬ僕だって例外じゃないわけだし」

 

「…ごめんね、そんなつもりじゃ」

 

「そんなに気にしなくてもいいよ。

僕は今の家族のみんなが好きだし、一緒に居られてよかったと思ってる。

 

今の父さんだって、本当の父親みたいに思ってるからさ」

 

「…そっか。すごいね、リンネくんは」

 

「いや、僕は別に…ってココアちゃん、なぜに僕の頭を撫でてるんですかね」  

 

「いいからいいから。今日はお姉ちゃんに甘えてくれていいからね?」

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「同情なら不要だぞ」

 

「…そういうんじゃない」

 

「ならいい」

 

「…でも、人からの優しさは素直に受け取っておけ」

 

「…そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

思ったより長いこと居座ってしまった…

遅めの昼食も終わり、長いようで短い一日もそろそろ夕刻。

 

そろそろ帰宅かな…

 

 

 

 

 

 

「…こちらチームA。

そろそろターゲットも帰宅するようだ。

 

我々も帰還の用意をするぞ」

 

『はーい。

チームBは結局録に尾行してなかったね』

 

尾行チームこと愉快な仲間たちも目標に合わせて帰宅するようです。

かくして今回の話はおしまい…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、まだ終わりじゃないんだよリンネくん!」

 

「ん?」

 

まだ寄るところがあるんだろうか?

もう一通りめぼしいところは見て周ったはず…

 

 

 

「今日は今から…新しい水着を買いに行くからね!」

 

「な―――――――」

 

 

「「「「「「にぃ――――――――!!?」」」」」」

 

「「「?」」」

 

…と、後方から(・・・・)ガタッ、と音がするとともに小さな声が聞こえた。

まだバレていないと思っているのだろうか、あの愉快なお方達は。

 

にしても、

 

「あの…ココアちゃん?念のためお聞きしておきたいことが」

 

「うん?」

 

「水着ってその…授業で必要になるやつ?」

 

「ううん!プールとかに来ていけるオシャレなやつだよ!」

 

あ、そうですか。

じゃあ、僕は店の外で待っていますので!

 

「というわけでリンネくんも選ぶの手伝ってね!」

 

「なんでさ!!」

 

いかん、ついシロウみたいなことを言ってしまったぞ。

でも仕方がないだろう。

 

だって、それはすごくマズイじゃないですか!

 

「あのね、ココアちゃん。

そういう女物の多いお店に男が入るのはよろしくないんだ。

 

本人も気まずいんだ」

 

「?私は全然良いけど?」

 

「僕とか周りは良くないんじゃないかなぁ!?」

 

「一応水着売り場なら男物のも置いてあるだろうし、そんな心配しなくても〜

それに、見てくれる人がいないとね!」

 

…チクショウ。どのみちコレで行かないという選択肢は無いんでしょうね。

仕方ない、行くか。

 

 

 

 

 

 

 

「…こういうのは、『流れ変わったな』と言うんだったか?」

 

「変わっちゃだめだろ!!良いから行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ふふーん、これとか…あ、コレも良いかも!

ねえ、リンネくん的にはどっちがかわいいかな?」

 

「え、あー…うーん。

こっちかなぁ…色的にもココアちゃんにあってると思うよ」

 

「本当!?あ、でもそれならこっちも…」

 

…そんなわけで、僕はココアちゃんの水着ショッピングにお付き合い中です。

何だか視線を感じるなぁ、いやあ、注目されちゃって辛いなーハハハハ!(ヤケクソ)

 

「よし、思い切って試着してみるよ!」

 

「お」

 

そうですか、思い切って試着室で…それは良いじゃないですか。

そのまま気に入ってくれて一刻も早く買い物を切り上げてくれたなら尚の事よし。

 

それでは、僕は大人しく待つとしましょう。

 

 

 

「…リンネくん、どうして試着室からそんなに離れるの?」

 

察して下さい。

 

 

 

 

 

「うん…うん!

これにしよう!」

 

よし、気に入ってくれたようだ。

コレで買い物も終わり、この場を離れられる。

 

いやあ、ひと安心ひと安心。

 

「あ、そうだ!

リンネくん、ちょっと水着見てもらえる?」

 

「…はい?」

 

「やっぱり、他の人から見た感想も欲しいなぁって。

だからこっちこっち!」

 

え、いや…あかん(アカン)。

それは駄目でしょうココアちゃん。

 

年頃の男子のあれこれを分かってなさすぎませんか。

 

「―――――――待った!やっぱり見せるの無し!」

 

「え?」

 

「見せるのはまた今度ね!その時までのお楽しみ!」

 

…良かった。考え直してくれたようです。

…また今度?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ただいま」

 

「お帰りリンネ。今日は随分と楽しんで…」

 

「あのねシロウ。

そんな『お土産話を待ってました』みたいな感じ出してもダメだから。

尾行バレバレだったから」

 

「…どの辺りで気づいていた?」 

 

「それも今度にしてよ。

今日は一日大変だったよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっだいまー!」

 

「お帰りなさい」

 

「チノちゃんただいま!

今日はね〜」

 

 

 




ココアちゃんは少なくとも今は天然で行動してます。
リンネくんは根は真面目なので振り回され側です。
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