温泉プール回です。
「いや〜…
空は快晴、時刻は夕刻。
されども気温はいつ何時も快適な温度。
疲れをほぐす温めの温泉に体を引き締められ運動もできる通常プールも備わっている。
最高の環境ってこういうことかな?」
「浸ってるとこ悪いけどさ、タマキ。
そりゃあ、室内ですから」
「マジのレスポンスどうもありがとうリンネくん」
どうも、衛宮リンネです。
日頃の仕事疲れを取ろう!という提案から温泉プールにやってきました。
しっかし内装は何だか品を感じると言うか…
「何でも古い建物を改装した名残りだそうだ。
この建物や内装目当てに訪れる客もそれなりにいるらしいぞ」
「ん、セント…やっぱり君はこういうのも見慣れてるのかな」
「まあな。
私の話なんてどうでもいいだろう?」
「…随分と楽しげだな、諸君。それはそれとして
―――――――なぜ私までここに居るのだ?」
と、やや不機嫌そうなお顔のシロウさん。
だって…
「流石に高校生たちだけだと色々と不安だろうし…年長者が一人はついてた方がいいだろうって、リゼさんが」
「ええい、また彼女はそんな事を…!」
「まあ、最近はシロウもいろいろお疲れみたいだし…プールはそういう意味じゃ丁度いいんじゃないかな?」
「どういう意味だっ。
私はまだ自然な腰痛が出てくるほど衰えてはいないのだが!?」
いやいや、それにしたって二十代よりは大分老け込んでるように見えますよ、色々と。
あ、ちなみに。
本日衛宮家で来ているのは僕、ジーク、タマキ、セント、チサト、そしてシロウ。
アスカとシキはというと…
「うわーん!僕も温泉プール行きたいのに〜!」
「宿題をほったらかしていたのはあなたでしょう!
遊び呆けていたツケです!僕も見張っていますから逃げようなんて考えないことですね!」
「うわーん!」
…と。
この通り、二人はお家でお留守番でございます。
まあ、また今度連れてきてあげることにしよう。
アスカはともかく、シキはちょっと可愛そうだし…
「わぁ…なんだかお城みたいだねー!」
「古い建物を改装した名残らしい。
これが見たくてくる人も居るそうだ」
む。なにやら聞き覚えのある声が聞き覚えのあるワードを…
女性陣も着替えが終わったらしい。
「じゃじゃーん!
どうかなリンネくん?お姉ちゃんの水着姿は?」
「………………」
か、かわいい。
この間買いに行っていたのはこれだったのか。
ココアちゃんの明るい性格を体現したようなよく映えるピンク色。
しかもビキニタイプ。
加えていつもと違うサイドテールというギャップに、存外発た――――――嫌待て、コレ以上考えるのはマズイ!
眼の前にいるのはお姉ちゃん、眼の前にいるのはお姉ちゃん、メノマエニイルノハ…
「うん!とっても似合ってる!かわいいよ
「!!!」
「「「「!!?」」」」
「り、リンネくんが、遂に私をお姉ちゃんって…!」
「凄いわココアちゃん…今までの努力が報われたのね…!」
「いや〜違うんじゃない?アレは…」
「タマキ!やめろ、やめてやるんだ!
男のそういうのは言ってはいけないお約束なんだっ!!」
「………随分と力説だな」
「シャロちゃんもその水着かわいい。
お兄ちゃんもそう思う、でしょ?」
「…まあ、確かに。
似合っているのは確かだが」
「あり…がと…」
シャロさん…のみならず、女の子たちの視線はチサトに向けられている。
まあ…確かにアレは驚くよね
「?みんな、どうかしたの?」
「チサト、お前…競泳水着で来たのか」
「プールとは泳ぐための場所。
ならば、泳ぎを存分に行えるのに相応しい、この水着しかない」
体のラインがピッチリと出る競泳水着でも隠しきれぬ、チサトの凶悪ないたたたたた。
ココアちゃんに耳を引っ張られました。
「…ぬるいわ!こんなの温泉じゃない…!」
「まあ、水着で入るってなったら緩めにされてるのかね〜」
「千夜さんは江戸っ子ですね」
「案外ぬるめの湯のほうが体調を整えるのには適している、と言うぞ?
熱くも冷たくもない、不感温度…とは少し違うがな」
と、ひとまず皆で湯に浸かりながらそんな事をぐだぐだと話す。
…ちなみにジークとチサトは『せっかくプールに来たのだから泳ぐ!』と飛び出していきました、ハイ。
あとシロウ、そのポージングはなんですか。
「ぬるま湯に使ってるのもいいかも…」
「ここのお湯は高血圧や関節痛に効能があるらしい。
おい毛玉、お前も年寄りなんだろ?お前にぴったりだな」
「あっちにティッピーにぴったりな桶があったわよ♪」
「あ 嫌がるなよ。
温泉嫌いなのか?」
「濡れたら普通のうさぎみたいになるのかしら?」
リゼさん、千夜ちゃん、もうやめて差し上げてくれ。
男の僕ですら見てて辛くなってくるから…!
「――――大 小 だバギィッ
「リンネくんシロウさん!
タマキくんが気絶して沈んでいってるよ!?」
「放っておいていいよココアちゃん」
「理想を抱かせ溺死させておくと良い」
「何言ってるの!!?」
「そう言えば私小さい頃銭湯で泳いだことあったな〜」
「あるある。
それでよく怒られたりしたわね」
「シャロさんでも温泉によく来るんですか?」
「親近感わくねー!」
「え゛っ。あ、その………
うん…私鼻にかけたことしたくないの」
「まあ、銭湯なら私も行ったことはあるからな。
たまに楽しみって言う意味ではそう違いもないんじゃないか?」
「なるほど、そういうことでしたか」
「そ、そうなの!
たまにはこういうのも良いなぁって…」
(…セントくん、ナイスフォローね。
本人は気づいてないみたいだけど…)
「チノちゃん何持ってきたの?」
「水上チェスです。
この温泉は強者が集まるのでおじいちゃんは対戦目当てによくやってきていました。
白熱した試合の数々も昨日のように覚えています」
「温泉に浸かりながらのチェスも良いね〜」
「…ですが今日は余り人がいませんね」
「ならわしと勝負じゃチノ」
と、ティッピーの腹話術?でわざわざ一人二役をしながらチノちゃんはチェスで対戦を始めた。
「ぷはっ。少し休憩だ…」
「ジークくんはプールで泳いでたんだ。
私たちも泳ごうよ!」
「僕は良いけど…皆は?」
「あ、泳ぐのはちょっと…」千夜
「犬かきで2m程なら…」チノ
「今日は寛ぐメインなんでパスで〜」タマキ
「右に同じ。チサトが問題を起こしたら呼んでくれ」セント
「軽い水中ウォーキングならいいが…」シロウ
「私、深いプールで泳いだこと無いんだけど…」リゼ
な、ん、ですと!?
リゼさんは運動神経も良いらしいからプールだって慣れたものかと…
「なら私が教えてあげる!
ほら、クロール!」
「泳ぎ方を覚え直したほうが良いわね」
というかクロールじゃなくて背泳ぎ…ですらないし。
浮かんで漂ってる?
そんなこんなで、僕たちはリゼさんの泳ぎ訓練?を兼ねてプールに移動することになりました。
シャロさんの提案で準備運動と柔軟を…うお!
「リゼさん凄い…!」
「まあ、身体の柔らかさにはそれなりに自身があるからな」
「肉体美の表現なら負けてられないね…!」
「え…何してる?」
「危ないからやめなさい!」
「あっちは盛り上がってるねぇ。
あたしらはここでゆったりまったりしてましょうか」
「それも良いけど…そうだわチノちゃん、チェスで一局お手合わせできないかしら?
初めてだけど感覚は将棋に近いでしょ?」
「良いですよ受けて立ちます。勝負です」
「お、じゃあ観戦させてもらいますね〜よっこいしょ」
と、ガタガタと椅子を移動させて見やすい席に移動するタマキ。
プールから戻ってきたジークも隣に並んだ。
「せっかくだからなにか賭けてみるのはどうかしら?
私が勝ったらティッピーが頭まで濡れた姿を見せてもらうのはどう?」
「私が勝ったら逆にココアさんにお姉ちゃんと呼んでもらうことにします」
「何で巻き込まれてるの!?」
一方こちらはプール組。
『なにか楽しそうなことしてる。ずるい。私も』とザバザバやってきたチサトも加え、5人で息止め対決だそうです。
泳ぎに関係ないのでは?
(そろそろ苦しい)
(肺活量には自身があるけどこれは…)
(そう言えばココアとチサトは…!?
溺れ…!?)
ココアちゃんの姿を見て驚いた僕、リゼさん、限界になったシャロさんは水面に飛び出してしまった。
…それから少し遅れて、何事もなくココアちゃんも出てきた。
「私の勝ちだね!」
「変な体勢で息止めるなよ!!」
「焦るからやめてよ…本当に…」
で、そのまま2回目。
なにやら今度はジェスチャーを…?
指を銃のように構えてみたり、なにやらカッコつけてみたり…これって…
「正解は全部リゼちゃんでした〜」
「私はそんなんじゃない!」
いや、まあでもだいたいあってる感じはしますよ。
…あれ、
「そう言えば、チサトは?」
「………一回目で沈んでから見てないな」
―――――――――――まさか?
「まさか本当に溺れて!?」
「だとしたら一大事だよ!」
「せめて足を掴むなりしなさいよ!」
僕も三人の後を追い慌てて水中へ。
そして…あ、見つけた。
水中で座禅してる。
そしてそのままスーッと上に上がって…
「ぷは。
―――――わたしの勝ち。ぶい」
「「「紛らわしい!!!」」」
「なかなかいい勝負じゃ」
「やっぱりチノちゃんに形勢は向いてるかなぁ?
経験豊富なだけあって強いねぇ」
ん。
どうやら向こうのチノちゃんvs千夜ちゃんのチェス勝負が盛り上がっているようです。
僕はよく分からないけど…
「私のお姉ちゃんとしての威厳がぁ!」
「あっ…ココアちゃん!?」
「行って何かなるわけでもないでしょうに…あ、先輩次はどうしましょうか?
ビート板でも使って…」
「それよりバタ足練習のほうが良いんじゃないです?
ほら、プールサイドに手をつくアレ」
「いや、それより…手を引いてもらうやつ、あれがやりたい!」
リゼさん、以外と年相応な所あるよね。
そういうのはちょっと安心します。
「じゃあシャロさん、よろしくお願いします」
「…ねえリンネ。
リゼ先輩はともかく同い年の私までさん付けとか敬語とかしなくていいと思うわよ」
「え?そう…かな?」
「そうだな。
この際だしココアとか千夜みたく呼んでみても良いんじゃないか?」
「えっと、じゃあ…コーチングよろしく、シャロちゃん」
「了解。
リンネは見張りよろしく」
「ん。リンネとシャロちゃんたちが仲良くなって、私も嬉しい。
私も今後とも、よろしく。」
「「「お前(アンタ)(君)はちょっと馴れ馴れしすぎ」」」
「しょぼーん。」
そういうわけでシャロちゃんがリゼさんの手を引いてバタ足のトレーニング中です。
「先輩ってスポーツ万能かと思ってました」
「チサトからの又聞きだけど…体育の成績もいいみたいだし僕も思ってたな」
「泳ぐ機会がなかったからな〜
うちの学校も水泳の授業はなかったし」
そうなのか。
リゼさんも実家はお金持ちだったし…箱入り娘、だったのかな?
まあ、好奇心の塊みたいな例外がうちに…というかそこに居るんですが。
「にしても、年下に見守られながら教わってるって何だか恥ずかしいな」
((今のこの状況は恥ずかしくないんだ……))
「シャロやリンネが溺れても助けられるくらい上手くなってやるぞー!」
「そんな迷惑かけませ…イッ!?」
!? シャロさんが突然沈んだ!?
「どうした!?早くも想定訓練か!?」
「いや、何だかマジっぽくないこれ!?」
「エマージェンシー。エマージェンシー。
お兄ちゃん。至急出動せよ」
と、チサトの声とともにセントがプールに飛び込む。
数秒後、シャロちゃんを抱えて浮かんできた。
…あれ。
「セント、いつの間に…」
「私が事前にこっそり呼んでおいた。
転ばぬ先の杖。ぶい」
「何でお前が偉そうなんだっての。
ほらシャロ。足がつったならプールサイドで休みなさい」
「ありがと…いたた」
「ん。じゃあここから先、先生役は私に交代。
さあ、リゼ先輩。手をつかんで」
「……………」
リゼさんの目が信用ならないものを見るものに…
「千夜ちゃんそこでチェストだよ!」
「島津かな?」
「チェックメイトって言いたいの?」
「そんな盤面ではない気がするが」
「ここで負けたらわしがあられもない姿に!」
「ティッピーうるさいです」
…向こうは随分と盛り上がっているご様子。
そんなに騒いだら集中できないんじゃないの。
「負けちゃったわ…流石ねチノちゃん」
「わ、私のお姉ちゃんとしての威厳が…」
「やっぱり玄人は違うってやつかな?
せっかくだしあたしとも一局どう?」
「玄人と言うほどでは…え、タマキさんとですか?」
「うん。
こう見えてチェスは母さんとメイドさんに鍛えられてるからねぇ」
「良いですよ。
お手並み拝見です」
「頑張れタマキくん!
勝利してさっきの賭けの撤回を!」
「ん〜それは面白そうだからダメ♡」
「そんなぁ!?」
「そうだね…あたしが勝ったらココアちゃんにリンネくんのこと『お兄ちゃん』って呼んでもらおうかな?」
「何で私が!?」
「では私が勝ったら私のことをお姉ちゃんと呼んでもらいましょう」
「…何だかすごい風評被害を被せられた気がする…」
「何を言っているんだお前は?」
それはそうとリゼさんはどんどん上達している。
元々運動慣れしているからだろうか、もうひとりで泳げるレベルだ。
「リゼ先輩、すごい。
やっぱり運動の才能はピカイチ」
「褒め過ぎだって。
まだクロールでしか泳げないし」
「でもきっと先輩ならその気になれば…もっと色々できるはず」
「そ、そうか?
よ、よし!ならちょっと…いっ!?」
ちょ!?
リゼさんが沈んでるんですけど!デジャブにしたって笑えないんですけど!
「!!!!!???」
ああ、溺れながら声にならない悲鳴が!
いかん、すぐに助、け――――――――?
…ざばん。と水面を打ち破るがごとく、水中から現れた、赤い髪のやや童顔の青年。
水も滴るなんとやら、とはよく言ったものでして。
普段の彼の2割、いや3割増には大人の男の色気を感じるといいますか。
そんな彼が、なぜ水の中から飛び出してきたかと言えば、まあ、理由は一つ。
その腕には、先程溺れそうになっていたお方が、まあその。
お姫様抱っこ、というやつで…
「無事か?
出来るようになって意気揚々になるのも結構だが、油断はよくないな。
兼好法師曰く、人間が最も危険なのは挑むさなかではなく終わり際の『もう安全だ』と思ったところだとあ痛!?」
リゼさんに殴られた。
顎を。
グーで。
「まあ仕方ないよね」
「これはシロウが悪いな」
「うん」
「なん…でさ……」プカプカ
「………………」
「先輩、その。
シロウさんは多分、いや、きっと本当に親切心で…」
その後、夜景の見えるテラスにやって来た。
最後はここでゆったりまったりぐだぐだり、というやつで。
「売店に行ってきました」
「一緒に飲みましょう?」
最後はお風呂上がりの定番、(コーヒー)牛乳をぐいっと一杯。
…まあ、約1名カフェインの都合上フルーツ牛乳ですが。
「お姉ちゃん!牛乳はこうやって飲むんだよ!」
「でも無理はしちゃダメだからねお姉ちゃん」
…えー。
タマキがチノちゃんとのチェス対決に負けて、僕もココアちゃん共々チノちゃんをお姉ちゃん呼びすることとなったのでした。
なんでさ。
コレで第一巻分は終わりです。
この後、ジークはチェスに興味を持ったのか学校でチノにルールを教わりながら遊ぶようになったとかなんとか。