喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

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第十八羽です。

思いつかなかったとこは飛ばしたりしてます。
申し訳ねェ


父の日のプレゼントって中々思い浮かびません

 

「もうすぐ父の日だね」

 

「今年は何を送ろうか…」

 

と、本日も衛宮さんちはそこそこの繁盛を見せております。

なので、空いた時間にはこんな感じの談話。

 

「去年は乗っているだけで運動したことになる振動マシーンを送ったんだったな」

 

「一昨年は血圧計…って健康関連のグッズしか送ってないね…」

 

 

「それもこれも親父の不健康な食生活が原因だろう。

自業自得だ」

 

 

「「シロウ」」

 

「なんだい店主さん。

そんなにお宅の親父さん食生活がアレなのかい?」

 

「ええ。

 

本人は“将来の成長のためにたくさん、バランスを考えて食べなきゃダメだぞ”と言い聞かせているくせに、少し目を離したらすぐにジャンクフード。

 

あげくそれを指摘したら『でもなぁ…これが一番手っ取り早いし、僕は皆が健康ならそれで良いから…』などと…

 

ええい、医者の不養生ではせっかくの心配も台無しだと分からんのか!!」

 

おお、流石の怒りっぷり。

伊達に衛宮家の長男ではないな。

 

「確かそれでシロウが料理をするようになったんだっけ。

それで父さんのためにあれやこれややっているうちにここまでの成長を…」

 

「まあ…一番の理由としては、自分の身の周りに他に料理ができるものも居なかった、ということだろうな。

 

親父は先程のとおりだし、ふ…近所の友人の女性もまあ…アレだったからな…」

 

 

…故郷の騒がしいお姉さんを思い出す。

ちょこちょこ家に乗り込んでは、どっちが子供が分からないようなほど遊び呆けて『シロウー!ごーはーんー!』とねだっている姿が今でも目に浮かぶようだ。

 

 

「失礼する」

 

「ん…?

 

あれ、リゼさん?こんにちは」

 

「こんにちは。短期間だが、しばらくここでもバイトをすることにした。

よろしく頼む」

 

…リゼさんが、うちのバイトに!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、お父さんのワインを…」

 

「ああ。だからできるだけ多くバイトを入れようと思って…

とは言え、結局良く知ってる店ばかりなんだが」

 

リゼさんの話では他に甘兎、フルールでもバイトをしているらしい。

着物やフルールのメイド服風の制服のリゼさんかぁ…

 

「その雄姿が気になるなら。」

 

「あたしらが撮影済みですよ〜」

 

「……………」

 

まあ、出てくるとは思っていましたヨ。

にしても、

 

「タマキ、チサト。

他の喫茶店に行くのは自由だけど、流石に最近頻度多すぎるんじゃない?

 

そりゃ甘兎の甘味は美味しいし、フルールのハーブティーとケーキも美味しいのは事実だけどさ…」

 

「やーね?あたしらもそれはちょっと思ってるんですよ?

でも〜」

 

「気がつけばそこに足が向いてる。

やはり人間、好きなものの魅力には、勝てない」

 

「……………」

 

なんだろう。

基本人手が有り余るはずの衛宮さんち(うち)に、なぜリゼさんが採用されたのかわかった気がするぞ。

 

この分だと本当にリストラされるんじゃ…

 

「まあ、流石にこの調子だとお給金(こづかい)に響きますし〜そろそろあたしらも真面目に働かなくちゃね〜」

 

「…ん、タマキ。

もしかしたら、私たち、本当に必要、ないかも」

 

「んぇ?」

 

 

 

 

 

「5番テーブルの注文!」

 

「それならいま上がった!持っていってくれ!

それと、ラテアートのサービスならそこにあるミルクを使ってくれ!

 

あと…」

 

「コーヒーとホットサンドのセットならこっちで上がってるぞ!」

 

 

 

 

 

「「……………私たち(あたしら)いらない?」」

 

「多分…」

 

それにしたってどうなってるんですかあのコンビネーションは。

以心伝心と言うのか、呉越同舟というのか…

 

とにかく二人のお陰で、ハードなお昼時も乗り越えたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ったより疲れたな…」

 

「まあ、お昼時はやっぱりお客も多いですからね。

忙しい時間に入ってもらえた分、給料も弾んでくれると思いますよ」

 

「それならありがたいが…私達は休んでいて良いのか?

ピークが過ぎたとは言えまだお客は…」

 

「それならご心配なく。

僕たちが休む間はどこかに行っていた方々に入ってもらってますので」

 

「ああ、そういう…」

 

と、ぐだぐだ談話中、眼の前に料理がコトン、と小気味よく音を立てて置かれた。

これは…当店の店長兼料理長の作られたオムライスだ。

 

「まかない飯、というやつだ。

良ければ食べてくれ」

 

「…いただきます」

 

と、リゼさんがスプーンを手にとって一口。

…表情が綻んだ。

 

本当に美味しそうに食べるよなぁ、などと感心しつつ僕も一口。

…うーん、やっぱり美味しい。

 

そんじょそこらの料理店なんて刃が立たないレベルです。

小さい頃引き取られて以来、料理をする姿を何度も見てきたけど…やっぱりシロウに料理で敵う気がしない。

 

「〜〜っ!」

 

…リゼさんや、あなた本当に美味しそうに食べますねぇ。

シロウもそれを見て満足気にうんうん頷いちゃって。

 

あの一件(第五羽)以来リゼさんはシロウを若干敵みたいにしてるけど、これだけ見てたらその…

 

 

 

「「…ごちそうさまでした」」

 

「お粗末様でした。

それで、本日のお味のほどは?」

 

「………美味しかった。悔しいが」

 

「喜んでもらえたのなら何より。

バイトの時間にもよるが、期間中はできるだけ賄いは出すつもりだ」

 

「…!

 

…だ、だがそれで味を盗まれたらどうするつもりだ?」

 

一瞬喜びましたね。

まあ、確かにラビットハウスの料理担当はほぼリゼさんだけど…

 

「人に一朝一夕で盗まれるようでは料理人など務まらんさ。

まあ、『盗めるものなら盗んでみろ』とでも言っておこうか?」

 

「…いや、やめておく。

ここから客を盗るのは可哀想だからな」

 

「フッ、そうか」

 

やっぱり仲良いですよねあなた達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだリゼさん、ちょっと相談が…」

 

「ん?」

 

リゼさんのバイト期間も終わりが近づく頃、なんとなく父さんへのプレゼントの相談を持ちかけた。

 

「なるほど、健康のためのものか…」

 

「それで、今年は何をあげようかって…正直、そっち関連はいい加減ネタ切れ感が否めないっていうか…」

 

「…なら、私とは少し違うけどいい酒でも送ってやるのはどうだ?」

 

「バカを言うな!

向こうの店員の皆さまや周りの人々のお陰で少しは改善してきたとは言え、ただでさえ不安定な親父の食生活にアルコール類など…」

 

うわ。シロウが飛び出してきました。

まあシロウは父さんを小さい頃から見てきたのは事実だし、仕方ないのかなぁ…

 

「…なぁ、シロウ。

 

確かにそっちの親父さんの健康を思うのは良いことだけどさ…それだけを頑なに通すのは良くないんじゃないか?

 

そりゃ健康でいてくれるのは大事なことだし否定はしない。

でも父の日って父親への感謝の気持ちを送る日だろ?

 

なら、たまには羽目を外させてやってもいいんじゃないか?」

 

「「……………」」

 

それは、何と言うか。

 

青天の霹靂というのか、冷水をぶっかけられたというのか。

そんな根本の大事なところを、すっかり忘れていたことを、思い知らされたのでした。

 

 

 

 

「…オレもまだまだだな。

まさか、キミに説教されて初めて気づくことになろうとは…

 

…仕事が終わったら見に行ってくる。

悪いが片付けは任せてもいいか、リンネ」

 

「分かった。そういうのはシロウの方が詳しいからね」

 

「それと…ありがとう、リゼ」

 

「例ならもので返してくれてもいいぞ?

例えばワインとか」

 

「それではキミがなんのためにバイトを掛け持ちしたのか分からなくなってしまうぞ?

それに、そういうのは自分の気持ちを送るものだ。

 

他人からの譲り物など、キミ自身納得しないのではないのかね?」

 

「フフッ…それもそうだな」

 

「フッ」

 

…やっぱり仲良いですよね、お二人共。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『衛宮さ〜ん。お届け物ですよ~』

 

「はいはい、いつもどうも…お。

今年は何か違うな…どれどれ…」

 

 

 

『親父へ 

 

このところ健康を気遣うものばかりだったので趣向を変えてみました。

もしそっちに一時戻った時には一緒に酒でも飲みましょう

 

衛宮家一同より』

 

「…ふふ。

楽しみだなぁ」

 

 




うちの父は酒飲みなので毎年とりあえずお酒を送ります。
そろそろ健康に気を使わせたほうがいいかしら。

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