喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

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第二十一羽です。


シンデレラの本当の意味って忘れがちです

「明日はラビットハウスでパン祭りをやるんだそうだ」

 

「パン祭り?」

 

「商品を一定値以上食べたらお皿が貰えんの〜?」

 

「いや、どうやら明日はパンが食べ放題らしい。

チノ達がチラシを作ってわざわざ宣伝をするんだそうだ」

 

「もうラビットハウス喫茶店からかけ離れてきてないかな…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう」

 

「あ、セントおはよう」

 

何を集まってるんだこいつらは?

パンがどうとか言ってたが、うちで大して使うわけでもないし…

 

「明日ラビットハウスでパン祭りやるんだって。

パン食べホーダイだってさ〜」

 

「パン食べ放題ねぇ…」

 

前々から思ったが、もはや喫茶店じゃなくなってるなそれ。

…とはいえ、ココアの作るパンはなかなかどうして美味しいものだ。

 

明日か…

 

 

「お兄ちゃん、シャロちゃんも誘って一緒に、行こう」

 

「チサト…お前どこから出てきてるんだ」

 

屋根の一枚をカパッと開き、そこから逆さまの姿勢で出てきた。

長い髪が垂れ幕みたいに垂れてんぞ。

 

「でも〜シャロちゃんって普段からバイトたくさんしてるじゃん?

明日はお休みだし忙しいんじゃないかな~?」

 

ん。確かにそうだな。

多趣味が高じてとはいえ、それほどまでにバイト尽くしとは…

 

「なら今から誘いに行こう」

 

「は?いやでも本人がどこにいるのかも分からないのに」

 

「いいから。善は急げ。ごーごー。」

 

「ちょっ…」

 

…腕を引っ張られ、店の外へと連れ出されたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くんくん…シャロちゃんセンサーに反応、アリ。

こっちこっち」

 

「前から思ってたけどそれ気持ち悪いぞ」

 

くんくんってなんだくんくんって。

警察犬かお前は。いやそもそも警察犬だって地面の匂い嗅がないといけないし、ある意味それ以上…

 

「いた。」

 

「居たかぁ…」

 

出来れば見つからなくて帰りたかったけどな。

仕方ないから同行して…本当に居たよ。

 

「どいてくださいお願いします!お願いします!お願いします…!」

 

…ノラうさぎに向かって土下座してる。

そんなにうさぎが嫌いなのか、シャロ…

 

と、横から出てきたリゼ先輩がノラうさぎをひょい、と抱え退かした。

もしかして例のパン祭りの宣伝か?チラシ持ってるし。

 

「リゼ先輩、シャロちゃん、おはおは〜」

 

「ん?チサト。それにセントもおはよう」

 

(二人にまで見られてた!?)

 

「おはようございます。

先輩のそれは…パン祭りの?」

 

「二人とも知ってるのか。

ココアとチノが作ったチラシ配り…つまるところ宣伝担当に任命されてな。

この間フルールで働いた時の経験を活かすチャンスだし」

 

…そう言えば父の日の贈り物のためにフルールや甘兎、果ては衛宮さんち(うち)でまで働いていたんだったな、先輩。

 

写真をチサトに見せられたが、なかなか様になっていた。

 

「フルール・ド・ラパンをよろしくお願いしま〜す♪」

 

ってフルールを意識しすぎてフルールの宣伝しちゃってるし。

大丈夫なのかリゼ先輩…ん?

 

「チサト…これ、スペルが間違ってないか」

 

「………ホントだ。

これHouse(ハウス)じゃなくてHorse(ホース)だ」

 

兎と馬ってなんだよ。

コレ確かココアとチノちゃんが作ったって言ってたよな?

 

「確かココアちゃん、文系はあんまりだったはず。

チェック、忘れてた?」

 

だろうなぁ…リンネやタマキの又聞きだが、もともと結構うっかりな一面があるらしいし…

 

って、そうじゃない。早いとこ伝えないと…!

 

 

「あら、桐間さんと天々座先輩。

それにセントルシアさんとチサトさんも」

 

「面白い格好をなさっているわ」

 

…クラスメイトとバッタリ出会ってしまった。

 

「桐間さんたちも今度開くお茶会ご一緒しない?

皆でお菓子を持ち寄るの」

 

「ま、またいつか…」

「シャロちゃんが居ないならパス」

「それほど菓子に詳しい訳でもないから私も遠慮しておく」

 

「先輩もよろしかったらいかがですか?」

 

「ふーん…それならクレープやケーキのレーションを持っていこう。

サバゲーやりながら食べるときっと楽しいな」

 

先輩。お茶会だって聞いてました?

まあそういうところが先輩らしいといえばらしいが。

 

 

 

「じゃあ私はあっちで配ってくる。

三人も良かったら来てくれ」

 

「まあ予定が空いたら…」

 

「私は行く」

 

と、リゼ先輩と別れた。

…あ。チラシのスペル間違い!!

 

「ちょっと待った先輩!!」

 

「セント?いきなり駆け出してどうし…」

 

「あの…すみません。

このお店はいかがわしいお店なのでしょうか」

 

「おーいえす」

 

「普通の健全な喫茶店です!!

チサトも適当な相槌打つなぁ!!」

 

「ちっちっちっ。

シャロちゃん。いかがわしいとは何もエ…な意味ばかりじゃない。

 

例え服を身に纏っていても隠しきれない妖しさや色気…それもまたいかがわしいに値する。

それで言えばシャロちゃんも」

 

「違うって言ってんでしょうが!!

アンタは私をなんだと思ってるのよ!!!」

 

「なるほど…耳をつけた少年少女を拝みながらお茶をする…

こういった趣向もあるんですね

 

近日伺いますので何卒よしなに」

 

「太ももに向かって話さないでください!

挨拶する姿勢じゃない!!」

 

「その気持ち、わかる。じー」

 

「分かるな見るな顔近づけるなぁ!!」

 

 

 

 

 

「リゼ先輩ストップ!スペル間違えてますよ!!」

 

「え…?

本当だ!?見落としてた…!!」

 

「リゼちゃーん!チラシ配るのストップー!」

 

どうやら書いた本人たちも気がついたようで、慌てたココアとチノがやって来た。

 

「しょうがない、残りは書き直して…」

 

と、その時強い風が…

案の定、チラシの大半が空を舞った。

 

「このままじゃ馬も置かなきゃいけなくなっちゃうよ!!」

 

「「何でだよ!?」」

 

その後、シャロにも協力してもらい皆でチラシを拾い集めた。

…途中でリゼ先輩の頭に大きめの虫が落ちてきて、シャロが何事もなく払ったのは驚いたが。凄いな。

 

「虫なら私も捕まえたこと、ある。

庭でカブトムシを捕まえては、使用人さんたちやお母さんを涙目にさせたのはいい思い出」

 

「自慢してるつもりか知らないが私はお前を女子だとは思ってないぞ」

 

「なにげに酷いわね…どっちも」

 

「シャロさんの足をうさぎがぺろぺろしてます」

 

「ギャーーーーーーーーーー!?」ゾワゾワッ

 

虫はいいのにうさぎはだめなのか。

そんなにトラウマが…?

 

 

 

「このちっちゃい子なら大丈夫じゃないかな?

千夜ちゃんのところの大福だと思って」

 

「か、噛まないなら…えぇと…

き…きゅうきゅう…」

 

…何だそれ。

うさぎって鳴くのか?

 

「そんなはっきりとは鳴かないかと…」

 

「シャロちゃん。うさぎって声帯、ない。

だから、普通は鳴かないし、キューキューっていう声は、うさぎにとって命乞いの声」

 

「………うそ」

 

「ほんと。」

 

良く知ってるな、チサト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、翌日。

 

「総員!用意は良いか!!」

 

「「「「イエッサー!」」」」

 

「…なんだコレ」

 

「いまからみんなでお隣に突撃、する」

 

「『ここまで大々的に告知してるんだからどうせ今日のお客は隣に持ってかれる。

だったらいっそ自分たちも客として乗り込んで、パンを研究してやろう』ってさ〜」

 

「それで皆張り切ってるのか…?」

 

「既にSNSでも本日休業は告知済みだ!

行くぞ!!

 

――――――――――ついて来れるか」

 

「「「てめぇの方こそついて来やがれ!!!」」」

 

バダン!と扉を開いてリンネ、ジーク、アスカ、シキ。

そしてシロウが飛び出していった。

 

…その後を、私、チサト、タマキで追いかけるのだった。

パンはめちゃくちゃ美味しかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして1日の終わりも近づいた頃。

 

甘兎庵まで私とチサトは足を運んでいた。

…正確にはラビットハウスのお三方も居たのだが。

 

結局1日バイトとのことで来ることが出来なかったシャロにパンのお裾分けに来たのだ。

 

と、隣の物置の扉が開いて…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――え?

 

 

「千夜ちゃんちの物置からシャロちゃんが出てきた」

 

…お、おおおおおちちおちつおちてつてとち落ち着け。

まだあわあわあわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ

 

「それでシャロちゃんのお家はどこ?」

 

「この物置よーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ、えと…あの。

セント…チサト…黙っててごめん…」

 

「ん。気にしなくて良い。

私はなんとなく気づいてたし。

 

そんなの関係なくシャロちゃんのこと好きだし」

 

「…ブレないわね…セント、ごめ…あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…き、気絶してる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に翌日。

 

 

 

 

「いぇーーーいたのもーーーー!!」バァン!!

 

「シャロちゃん!?」

 

衛宮さんちにシャロちゃんが突撃してきました。

確かチサトの話だと昨日お嬢様じゃないことが判明したとかなんとか言ってたけど…

 

「庶民バレした恥ずかしさに耐えられないって言うから…

ヤケコーヒー巡りを勧めてみたの」

 

確かシャロちゃんコーヒー…というかカフェインで酔うんだっけ。

にも関わらずコーヒーを勧めるとは…

 

「あー!セント(しぇんと)だぁー!おはよぉー!」

 

「!!!」

 

セントがビクぅ!と反応して…どこかに逃げ去っていってしまった。

なして?

 

「ああー!こらぁーどこいくのよぉー!まちなさーい!!」

 

で、シャロちゃんはそれを追いかけていってしまいました。

…大丈夫かな、あの二人。




大丈夫じゃないです。
次回はオリジナルです。
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