オリジナル回です。
天使にラブ・ソングを…見ると楽しめるかもしれない。
作者は見ました。モロに影響を受けてます。
「皆さんに頼みたいことがあるのですが…」
「ええと…君は…」
「
アスカさんとマヤさんメグさんは知ってますよね」
…そうか。
体育の時間のバトミントン対決でアスカと決勝で勝負したんだったな。
たのみごと、とは…
「実は私の世話になっている教会で…」
「といわけで、俺たちは聖歌隊の手伝いをすることになった。
すまない」
「む、そうか」
シロウからは案外すんなりと了承を貰えた。
クリスマスは繁盛期だと思ったが…
「なに、どのみち人では普段から有り余っているぐらいだ。
お前も普段からよく働いている方だろう。たまには友人たちと気分転換も兼ねて行ってくるといい。
…まあ、聖歌隊がそれで良いのかと問われればその…答えにくいのだが。
ともかく、普段から緩んでいる連中に存分に働いてもらうとするさ」
というわけでやって来た、木組みの街の教会。
そこに俺、アスカ、シキ、チノ、マヤ、メグはやって来た。
しかし。
「俺達はともかく、チノたちも来てよかったのか?
仕事は…」
「幸いうちにも代打の店員さんたちはいるので。
…まあ、代打がいるほどお客が来るのかと言えば…」
………すまない…
「私たちも特にバイトとかしてるわけじゃないからね~」
「お手伝いできるならって…」
マヤもメグも案外乗り気だ。
…一方、こちらは一人意気消沈してるが。
「ドウシテ…ドウシテ…」
「アスカ、何を落ち込んでるんですか。
あなただって聖歌隊と聞いたときはノリノリだったじゃないですか」
「こんな寂れた教会で、しかもメンバーはほとんど孤児院の子供なんて聞いてたら来なかったよ!!
せっかくかわいいシスターさんとお近づきになれると思ったのにぃ…!」
「…なるほど。幹也がアスカに情報を伏せていたのはこのためだったのか」
「ぶーぶー!だいたいシスターなんて何が楽しいのさ!
可愛い女の子ともカッコいい男の子ともお近づきになれない、毎日毎日神様にお祈りして働いて、それなのに美味しいご飯もお付き合いもチューもできないなんてそんなひどいことあるもんか!」
「自分からお近づきになりたいと言っておいてその態度はなんですか!!
ヤケになるのは勝手ですがこの場で言うのはやめなさい!!」
「うわーん!なんだよなんだよ皆いじわるだなぁ!!
ボクもう帰る!
こんなところで歌なんて歌ったとこで誰が来るってのさ!!」
「少なくともこの教会の関係者や、気まぐれな人々は来るだろうさ」
「「「!」」」
声の聞こえた方向には、ロングコートを着た男性が。
この教会の関係者だろうか。
「浅上幹也から話は聞いている。よく来てくれた、少年少女よ。
この教会で神父を務めさせていただいている言峰というものだ。
わざわざ寒い中外にいるのもおかしな話だろう。
中に入るといい」
…神父に促されて中に入る。
その途中で隣を歩いたが、なかなかに背丈がある。
シロウよりも大きいのでは…
「皆さん!来てくれてありがとうございます」
「幹也。それは…聖歌隊の服か。
似合っている」
「ありがとうございます。
皆さんの衣装も用意してありますよ」
そういうわけで、早速着替えた。
…着るのは初めてだが、案外悪くないな。
「良かったじゃないですかアスカ。
貴方好みの可愛らしいものもあって」
「………これで可愛いシスターさんも居たら完璧なんだけどなぁ」
まだ言うかアスカ。
可愛らしい女の子なら周りにいるだろう、3人も。
「あら、君たちが幹也くんの呼んだお友達?
来てくれてありがとう」
…と。
銀髪の車椅子に乗った女性が、白夜に押されてやって来た。
あの人は…
「クラウディアさん!
わざわざ出てこなくても…」
「これでもあなた達の母親代わりなのよ?
ご挨拶ぐらいしておかなくちゃ。
…クラウディア・オルテンシアです。
よろしく。幹也に白夜、紫織と仲良くしてあげてね」
「「「「「よ、よろしくお願いします」」」」」
柔らかな微笑みに、ついつい慌てて頭を下げてしまった。
何だろう、女神さまというものが居るのなら、きっとこんな人なんだろうと思わされる。
「…ねえ、幹也。
あの人っていくつなの?」
コラ。
「30とちょっと…ですかね。
神父様もそれぐらいですし」
「全然ありだよ!あんなきれいな人なら…
待って。なんで神父様の話が出てくるの?」
「あの人が神父様の妻だからですよ」
「」
…アスカが石になって動かなくなった。
久しぶりだな。
「あ、アスカさん!?
どうして石になってるんですか!?」
「チノさん、お気になさらず。
現実逃避したい時の常套手段ですから…さ、行きましょう皆…」
ズル…ズル…ズル…ガコン!
バキィッ!!
「か、身体が欠けてるんだけど…」
「だ、大丈夫なのかなぁ…?」
「大丈夫です。後で勝手に治るので…ふぬ…
………重っ」
シキもそれなりに腕っぷしはあるはずなんだが…
そして聖歌隊の練習に入った…のだが。
正直に言わせてもらおう。
これはひどい。
音程はバラバラ、声のボリュームも揃っていない。
今までよく文句やお叱りが出なかったと称賛したいレベルだ。
「今までも聖歌隊で歌を歌うことはあったが、所詮そんな物は形式的なものだ。
形だけ揃っていればどうとでもなる」
「加えて教会の関係者方も大して気にかけている様子もありませんでしたからね…
教会として機能さえしていればそれでいい、と」
「そんなお硬い、そのうえつまらないものでは子供たちもやる気が出るわけがないってことです。
皆さんならこの状況をどうにかできないかと思ったんですが…」
孤児院出身であろう白夜、紫織、幹也の3人息子が語った。
どうにか…と言われてもな。
俺たちは特段歌に技術的なものを持っているわけでもないんだ…すまない…
「………」
「…アスカ?」
「ちっがーーーーーーう!!!」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
「歌ってのはもっと楽しく歌ってなんぼだろ!?
こんなつまんなそーに歌ってたらそりゃあ人も来やしないよ!!
もっとパーッとやるんだパーッと!」
あ、アスカがこんなに意気揚々と…
「はい!まずそこの女の子!」
「はっ、はいぃ!」
「君は声が出ていない!
せっかくきれいな声してるんだからもっと大きな声出さなきゃ勿体ないよ!
ちょっとこっち!チノちゃんとシキも手伝って!」
「「「はっ、はい!」」」
いつの間にかアスカが先頭に立って指揮を取り出した。
女の子に色々と話している。
「いい、まず目を閉じて。そうそう。
君は歌手、シンガーなんだ。
眼の前にはたくさんのお客、キラキラのステージの上に立って『こいつはどんな声してんだ?』って耳を澄ましてるお客に向けて歌うんだ。
後ろの席にだって届くように大きな声でね。じゃあ行くよ…
さん、はい!」
「アァ〜」
(チノちゃんそこでお腹を押して!)
(は、はい!)
「Arr〜!」
…!通った大きな声が…!
「よーしその調子!
じゃあ次は…」
「随分と盛り上がっているな。形式的なものはどこへやら、だが」
「でも皆楽しそうだわ。
やっぱり子供たちはあんなふうに笑ってるのが一番よね」
「………店の方に行ってくるとしよう」
「あら、今日は定休日じゃないの?」
「仕込みついでだ。
この場にいてはやかましい本部の連中に言い訳も立たないのでな。
それに…年寄は子供を大事にするものだ。
子供たちの純粋な行いを頭ごなしに叱りつけはしないだろう」
「まあ」
そして、聖歌隊の発表当日。
教会には関係者の神父やシスター、訪れたお客達で一杯だ。
そして…いよいよ聖歌隊の出番だ。
『それでは次は…わが教会の管理する孤児院の子供たち、及びその友人による聖歌隊の出番です。
本日のために努力を重ねてきた彼ら彼女らの歌をどうぞお楽しみください』
神父の言葉。
それが終わると同時に、整然と歩き位置につく。
指揮を取るのは幹也、ピアノによる伴奏は紫織。
それ以外の助っ人は白夜共々歌唱メンバーだ。
…始まった。
[MUSIC:Hail Holy Queen]
我ながらいい調子だ。
最初の声も音程もバラバラの、あの酷い有り様はどこへやら。
緩やかに美しく奏でられる伴奏に合わせ、聖歌隊とともに歌い上げた。
教会からは思わず拍手が飛んでくる。
―――――だが、これでおしまいではないのだ。
幹也がにっ、と口角を上げてこちらにだけ見えるように笑う。
そして紫織に向けて指揮を取り、それを見て笑みを浮かべた紫織が伴奏を始める。
ただし、先程とは打って変わったアップテンポだ。
歌と音楽に合わせ、聖歌隊の子どもたちとともに手拍子しながら歌う。
アスカの指導を受けていた子供たちも各々のパートで大活躍だ。
今日の盛り上がりに合わせ、幹也の指揮の動きもノリの良いものになっていく。
アスカの提案で入れたシキとチノのソロパートも完璧だ。
そして、そのまま何の問題もなく、むしろ最高の出来で、
教会からは拍手が巻き起こる。
『皆さん、ありがとうございます。
本来ならこのひと曲でおしまいなのですが…特別にもうひと曲あるのです。
お聞きいただけますでしょうか?』
幹也の言葉に、人々が拍手で応えた。
…いつの間にか、人が増えている。
『ありがとうございます。
それでは、お聞きください。
『天使にラブ・ソングを…』より、『 I Will Follow Him [Chariot]』です』
[MUSIC:Finale: I Will Follow Him [Chariot]」
緩やかな伴奏から始まる。
再び聖歌隊は息を合わせ、一糸乱れず各々のパートを歌唱する。
そして曲はアップテンポに。
始まりからすぐに、幹也のソロ歌唱が入る。
それが終わると、前にチノとシキ、そしてアスカ直々に指導した女の子が。
歌唱に合わせてふりを入れ、更に曲を盛り上げる。
そしてチノとシキが下がり、女の子のソロパート。
練習ですら声の出ていなかった彼女の姿はどこへやら。
プロの歌手に立って負けないほどの圧巻の歌いっぷりだ。
そして…長いようで短い、聖歌隊の歌は幕を下ろした。
「皆さん、本当にありがとうございました…まさかここまで盛り上がるとは」
「お礼ならアスカに言ってくれ。
あいつの指導がなかったらここまでにはならなかっただろう」
「でもビックリしたよ。
まさかお硬い聖歌隊の歌をあんなノリノリにしちゃうなんてさ」
「ふふん、分かってないねぇマヤちゃん。
神様って、年がら年中人々を救うために頑張ってる存在なわけじゃん?
そんな神様へのお祝いで贈る歌がいつもどおりのお硬いやつなんてつまんないよ。
神様だってたまにはノリの良い曲で思う存分盛り上がりたいだろうさ!!」
「とかなんとか言って、本当は自分がそのお硬いやつがつまらなかっただけなんじゃないですか?
まあ、結果的には良かったんですけど」
「そうとも言う、ってやつだね!
ま、終わりよければってやつさ!!」
「教会の関係者に言わせれば『雨降って地固まる』と言ったところだろうが、俺たちが気にすることでもない。
孤児院の子供たちも感謝していた。
俺たちからも感謝する」
白夜と紫織も戻ってきた。
「それで、一つ提案なのですが…
後日、こちらでクリスマス会を開こうと思っているんです。
よろしければ、みなさんも出席していただけませんか?」
俺たち6人は顔を見合わせた。
そして…
「「「「「「ごめん(なさい)!もう予定は埋めてあるんだ(です)!」」」」」」
その言葉とともに一礼し。
俺たちの家、或いは憩いの場へと帰路についた。
「あの子達のおかげで聖歌隊は大盛りあがりだったわね。
…教会のご老人たちの逆鱗には触れたけど」
「とはいえ、あれだけ人々の気を引いたのだ。
子供たちも喜んでいた。特段咎めることもないそうだ」
「良かった。子供たち、『また歌いたい』って楽しそうだったもの。
これからの恒例行事にしましょう♪」
「…お前にそのように言われてしまっては、どうしようもないだろうな
…しかし」
まさか、あの少年がこの街に来ているとは。
会うのは、赤ん坊の頃以来か。
衛宮ジーク、か。
あの男、存外父親としての責務を全うしているようじゃないか。
時系列は自分でもよくわかってないです。
とりあえずクリスマス回よりは前ってことで。