喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

29 / 71
第二十九羽です。

そんな装備で大丈夫か?


私が、私たちが、サンタムだ…!

本日はクリスマス。

街は普段よりも鮮やかに彩られ、輝きを増す聖夜。

 

店の外には雪が降っている。

ホワイトクリスマス、というやつですね。

 

そんな誰も彼もが浮かれ騒ぎな街並みとは裏腹に、普段それなりの繁盛を見せる衛宮さんち(当店)は、しかし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普段よりも何割増しかというお客でごった返していたのだった…!

 

「バカな…

 

ど う し て こ う な っ た」

 

「シロウちゃん前々からSNSも含めて告知してたんだもん。

『クリスマス限定のメニューを大幅に用意してお待ちしております』ってさ。

 

そりゃ来るでしょ〜」

 

「まあ、普段からあれだけの料理を出してくれる料理人の料理でクリスマスディナーなんて、注目を惹かれるだろうからな…

 

それで、その本人はどこに行ってるんだ?」

 

「さっきから厨房に籠もってるよ〜

料理5つ並行して作ってるの見えたときは流石に引いたケドね」

 

「お兄ちゃん、リンネ、タマキ。

喋ってないで、接客接客」

 

「「「了解!」」」

 

そして僕たちはいつも以上に賑やかで慌ただしい仕事をこなすのでした。

頑張れ、負けるな、コレを乗り越えればパーティーなのだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ありがとうございました〜!」」」

 

最後のお客様も退店。

これにて本日の営業は終わり!!!

 

さあパーティーの時間だ。ヒャッホウ!!

 

「あ、パーティーはお隣でやるからね〜皆移動いど〜」

 

え。そうなの?

タマキ曰く招待状が来てたとのことだが…

 

「ホラこれ」

 

『さぁ聖なる夜の時間だ来るがよい!』

 

なんですかコレ。

まあココアちゃんが書いたんだろうなぁ…

 

「待て、リンネ」

 

「シロウ?」

 

「コレも持っていくと良い。

クリスマスパーティーには、料理とケーキが必要不可欠だろう?

 

まあ、向こうでも用意ぐらいはされているだろうが…

こちらとしてもやれることはやっておきたいのでな」

 

ん、そっか…

じゃあ、ありがたく持って行かせてもらうとしましょう!

 

「あ、ちなみにシロウちゃんも招待されてるからね〜早いとこおいでよ」

 

「了解だ。レジと戸締まりが終わったら向かうとしよう」

 

そして、シロウ以外のメンバーは衛宮さんちを飛び出した。

…アレ。

 

「チサト、いつの間にサンタ服に!?」

 

「仕事の途中で、着替えておいた。

みんなへのクリスマスプレゼントも、バッチリ。確保済み。」

 

い、いつの間に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「走れソリよ〜かぜのよおに〜木組みの街を〜ぱどるパドル〜」

 

チサトの歌とともにラビットハウスに来訪。

チサトさんタにココアちゃんマヤちゃんメグちゃんは大盛りあがりだ。

 

「おまたせメリー!

衛宮一家、さんじょー!」

 

「皆!そっちも忙しそうだけど来れたんだね!良かった〜」

 

「んん。こっちもお疲れ様。

というわけで、チサトさんタが頑張った皆にプレゼント。

 

まず、ココアちゃんにはこれ」

 

『素晴らしいお姉ちゃんになるためにやっておく百のこと』」

 

「わあ!素晴らしいプレゼントだよ!

これでまたお姉ちゃんに近づくね!」

 

「そう…かなぁ…」

 

「チノちゃんにはコレ。

ボトルシップ&ジグソーパズル、『封鎖終局四海オケアノス』仕様。

 

特にボトルシップは船一つ一つのパーツまで細やかに再現されている上、荒波に至るまで精巧に作り上げられた最高仕様。

 

…難易度も、最高」

 

「き、気長に楽しませてもらいます…」

 

「…俺は手助けできそうにない。すまない」

 

「リゼ先輩にはコレ。

『目指せ良妻賢母!』&『一通りの家事をこなすための家裁道具セット』」

 

「あ、ありがとう…」

 

「千夜ちゃんは、肩こりに効く首巻き式特性マッサージマシン。

それと、メニューを考えるのに役立ちそうな百科事典」

 

「ありがとう!

これでしばらくメニューの名前には困らなさそうだわ♪」

 

「マッサージ機は〜?」

 

「シャロちゃんには…これ。

それとコレ」

 

「…貯金箱、ねぇ…まあ、一日十円貯金でも始めてみようかしら。

…それと、コレ何」

 

「うちの店の一品無料券。期間は向こう一年間」

 

「シロウさんに迷惑だからやめなさいよ!!」

 

「店長からの許可は取ってあるぞ。

友人からの好意だ。素直に受け取っておけ」

 

「マヤちゃんにはこれ。

最新格闘ゲーム『BLOOD VERSUS NIGHTMARE』」

 

「やったー!これほしかったんだよね!

皆で対戦しよーっと!」

 

「いいな〜マヤちゃん。ボクにも遊ばせてよね!」

 

「メグちゃんにはこれ。

最新式ヘアアイロンと、ケア用品セット」

 

「ありがとう〜!

でもヘアアイロンうちにもあるの…」

 

「まあ…自分用と家庭用、みたいにしたら良いんじゃないでしょうか」

 

「衛宮家一同は尺的な問題で一気に行かせてもらう。

行くよ。

 

これとこれと、これとこれとこれとこれ!」

 

と、チサトが袋から僕たちに対してポンポンとプレゼントを取り出しては渡し、取り出しては渡し。

手早くプレゼントが手渡された。

 

ちなみに中身は…

 

 

リンネ(僕):女の子にモテるためのヒケツ

 

ジーク:ミュージカル『ニーベルングの指環』DVD&特性伊達メガネ

 

タマキ:安眠枕

 

セント:便箋と万年筆(文房具屋で変える普通のもの)

 

アスカ:水色のフリルドレス

 

シキ:銘酒『弟ごろし』

 

 

 

「……………チサト?」

 

「ん。それぞれ合いそうなものを考えてみた。

リンネはまあ多分お察しの通り。

 

ジークは最近ミュージカルにハマってるって聞いたから、それを用意した。

メガネはブルーライトはもちろん、その他諸々悪影響の有りそうなものをカットする優れもの。

もちろん、普通のオシャレアイテムにもできる。

 

タマキはお昼寝用。寝るときにも申し分なし。

 

お兄ちゃんは、またそれでお手紙でも。

 

アスカはこの間一緒に洋服屋に行った時に見てたやつ。

…厳密に言うと同じのじゃないけど。

 

シキは普段の苦労を飲み飛ばすっていう心意気で送った。

…年齢的な問題は考えてなかった、ゴメン」

 

「ふふ、お気持ちがとても嬉しいので大丈夫ですよ、チサトさん。

何より銘がいいです♪」

 

「…ねえメグ、あの『弟』ってさ」

 

「マヤちゃん!しーっ!!」

 

「…なあ」

 

「ん?どうしたのリゼ先輩」

 

「シロウのやつのプレゼントはないのか?」

 

「ん…ある。これ」

 

そういうチサトが袋から取り出したのは…調理器具。

包丁を始めとした、和食、洋食、中華、ありとあらゆる料理に対応可能なように様々な調理器具が用意されていた。

 

…それと、黒い執事服とモノクル、白手袋が…

 

「まあ、それ執事セットかしら?」

 

「ハハ、まあ、シロウのやつにはよく似合うんじゃないのか?

喫茶店の店長にしては若すぎるってもっぱらだし、リゼ先輩の家に住み込みの執事(バトラー)なんて面白そうじゃないか」

 

「お〜いいね~それ。

一本面白い話しかけそうじゃない?」

 

「お、お前ら何勝手なことを…!!」

 

思わず赤面するリゼさん。

それを皮切りにその場の皆が楽しげに笑う。

 

楽しいパーティーの和やかな雰囲気が場を包む…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、会場は暗転した。

 

「チサト、お前は間違っている!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「無闇やたらと自己主張し、自分好みの感性でものを押し付ける……そんなものはサンタではない!」

 

これはシロウの声!?

と思ったらスポットライトが…!

 

「サンタとは世を忍び影から影へと渡り歩く、

姿なきウォッチメン!

 

見るがいい、これが正しいサンタの姿だ! とう!」

 

と、スポットライトに一人の人が降り立つ。

そこには、赤いサンタ服をまとったシロウ…あれ。

 

何でしょう、赤い外套なのはそうなのですが、明らかにサンタではない…

 

 

 

「私が、私たちがサンタムだ……!」

 

「お前が一番いろいろ間違えてるだろ!!」

 

 

 

リゼさんの鋭いツッコミが炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すまない、どうかしていたようだ。

まだ記憶がだな、ハッキリしないというか…

 

初めは普通のサンタの格好で登場しようとしていたのだが、通りかかった教会の神父殿が、“そんな装備で大丈夫か?”と聞いてきたのでつい、“一番いいのを頼む”と…」

 

「それでどうしてあの格好になるんだ?」

 

「神父って…あの教会の神父さんですよね?

 

その…なんというか、意外とお茶目?さんなんですね」

 

「チノ、今回のはお茶目とか、そういうことは違うと思うんだ」

 

「まあまあ皆!何はともあれ揃ったし!改めてパーティーを始めよー!」

 

ココアちゃんの呼びかけに皆がおー!と応え、そのまま流れるように乾杯。

その後はタカヒロさんとシロウの料理を楽しんだり、一年の思い出を振り返ったり。

 

夢のような一夜は、長いようであっという間に過ぎていったのでした。

 

 

 

もうすぐ今年も終わり。

また新しい年が始まります。

 

緩やかなこの街で、穏やかな日常が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時まではそう思ってた。

 

でも、僕たちは知らなかったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そろそろ環たちがあの街に行って、1年経つのかしら」

 

「少し気が早いですよ〜秋葉様。

環様が街に引っ越したのは四月なので、もう少しばかり後です」

 

「あら、そうだったかしら。

いやね、歳をとったら年月にも疎くなるのかしら…」

 

「お言葉ですが秋葉様。

秋葉様のその容姿でお年を召したと言われますと、一部のお方々から反感を買いかねないかと」

 

「ふふ…そうね。

それにしても。最近のあの子の手紙は楽しげな内容も増えてきたわね。

 

…せっかくだし、一つ会いに行ってみるのもいいかしら?」

 

「まあ!それは良いお考え!

私も久しぶりに環様にお会いしたいです〜!ね、翡翠ちゃん!」

 

「ふふ…そうですね、姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………それで、あの子に縁談の話が?」

 

「う、うん…お父さんが家のことを考えてってさ…どうしようか、愛歌…」

 

スパコォンッ!!

 

「ひぎぇ!?」

 

「断るに決まってるでしょう、そんなもの。

あの子の決めた相手以外なんて認めないわ。

 

それと、何黙って言われた通り伝えに来てるの?

 

そういうのは先んじて断ってから伝えるのがあなたの役目でしょう?

わかったらさっさと断ってきなさい」

 

「は、はひぃい…」

 

と、少女…?に引っ叩かれた男性はずこずこと情けなく走りながら部屋を退出した。

…若干嬉しげな顔をしていたのは見ないふりをして差し上げて欲しい。

 

「…お姉ちゃん、流石にそろそろ無理があるんじゃないの?

アスカくんはうちの一人息子じゃない…」

 

「ならこんな会社有能な跡継ぎを見つければいいだけの話じゃないのよ。

いつまでも自分たちの一族に継がせる方針なんてみっともない。

 

昭和のドラマかってのよ」

 

「お姉ちゃん…」

 

「綾香も綾香じゃない。

わざわざ私からあの子を引き離しといてそんなこと…ああ、やっぱり一度本人の口からはっきりさせておかなきゃダメかしら。

 

そのためにも会いに行かなくちゃね…ああアスカ、私のアスカ…私の可愛い息子…」

 

(ああ、またスイッチが入った…こうなるのが嫌だからアスカくんの話題は出したくないのよ…!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふーん。

父から名を受け継ぎ新天地で…ねぇ」

 

「姉さん、それ…」

 

「ん?ああ、あいつの今いる街の情報誌よ。

ねえ桜、せっかくだし今年中にあいつの喫茶店に行ってみない?」

 

「ふふ…そうですね。

私も久しぶりに先輩に会ってみたいです!」

 

「クっクク…きっと驚いて腰を抜かすわよ〜アイツ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あなた、私決めたわ」

 

「なんだいマリー、藪から棒に…」

 

「今年中の何処かでセントとチサトに会いに行くわよ。

これは決定事項ですから」

 

「マリー。それは…」

 

「勘違いしないで。別に連れ戻そうだなんて考えてないわ。

 

…親として、あの子達の様子が気になるだけよ」

 

「手紙なら送られてきているじゃないか」

 

「それだけで安心できるもんですか!!

直接会わないと分からないこともあるでしょ!?」

 

(…いろいろ言ってるけど、結局自分が一番会いたいだけなんだよね…

と言ったらまたヘソを曲げてウジウジしながら怒るのは目に見えているから言わないのであった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この一年が、僕たちにとって、

 

激動のものになることに。

 




3巻分おしまい

次回からオリジナルも交えつつ4巻に入っていきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。