喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

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第三羽です。


あなたが私の御主人様ですか?

ふと、母の言葉を思い出す。

 

一度きりの青春時代を己の家のために費やし、自分が幼少の頃からずっと病床に臥せっていた母の言葉。

 

『好きになった相手は何があろうと手に入れなさい。

どんな手を使ってもよ。

 

…気がついたときには、遅いんだから』

 

常日頃から周りにも、何より自分自身に厳しかった母が。

まるでそれが己のことのように、いつになく寂しげな目で語ったその言葉を思い出した。

 

 

 

好きになるとはどういうことなのだろう。

母の『好き』とは誰に対しての、どういう形の『好き』なのだろう。

 

子供な自分には、そんな物は到底理解出来なかった。

 

 

 

母が病床に臥せ、まだ子供の身の上ですべてを背負った兄を利用することしか考えていない大人や、あろうことか兄を虐げようとする者ばかりの世界で、

人を愛することなどできるはずもなかった。

 

 

 

 

 

自分の身を案じてくれた兄や母には家族としての情はある。

だがそれだけ。

 

必要以上に人に関わらず、他人も自分に関わらせない。

 

そんな生活を数年間。

 

 

しかし、あの家(・・・)に預けられてからはある程度軟化したと思える。(自分で言うのもどうかと思うが)

 

 

 

 

…まあ、どうでもいい身の上話はこの辺りにして。

 

なぜ、自分がそんな母の言葉を思い出したのかというと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ああ、目が覚めた…良かった…!

あの、大丈夫ですか!?」

 

「……………」

 

自分はベンチに寝かされていて。

目の前には、着物のよく似合う女の子。

 

…ああ。

 

そうか、これが。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「…?あの…本当に大丈夫…」

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが、私の御主人様ですか?」

 

「えっ?」

 

 

 

母さん。

 

今、貴女の言葉を“頭”ではなく“心”で理解できました。

 

 

 

人を愛するって、恋するって。

こんなにも簡単なことなんですね。

 

 

 

「ええと…御主人様って、あの?」

 

「あ、その…すいません。

ただ、貴方様の魂の色がとても素敵な…そんな気がして…」

 

「う、ううんと…スピリチュアル的なアレかしら…」

 

「んにぁ…私もよくわからないんですよねぇ。

何分、こんなキモチ、初めてで…」

 

(何だか少女漫画でよく見る感じのアレに…!)

 

「あの、よろしければ貴方様の事をもっと教え」

 

 

 

そうやって、その麗しい女の子の手を取ろうとした、直後。

 

まるで『ナンパヤロウシスベシフォーウ!!』と言わんばかりに黒いなにかが、顔面に向かって飛んできて。

 

 

 

「ドフォーーーウ!? ぎゃん!?

 

デコの獣臭い痛みの直後に、後頭部に鈍い痛み。

ああ、どうしてこうなってたのか思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

引っ越しして当日。

 

街に暇を潰せそうなところはないじゃろげーとふらりふらふら散歩中。

 

空から何やら黒いものが落ちてきた。顔面に。

 

 

 

「ふごぇ」

 

思わず体制を崩しそうなところをなんとか堪え、顔にへばりついたふわふわしてるそれを剥がす。

 

「……………」

 

「黒い…うさぎ?」

 

 

やけに黒目の大きな、人形のような無表情なうさぎ。

 

「…お前、どうしてお空から振ってきてんだい。

ご主人はどうしたの?」

 

「……………」

 

(当然だが)うさぎは何も言わず、こちらをじーっと見つめ続けるだけ。

ちょっと不気味だけど、これはこれで…

 

 

「かわええ…かも…ヨスヨス」

 

「……………」

 

 

と、少し撫でてみたものの、何の反応もなし。

これがうさぎらしい反応なのか、はたまたこの子がそういうタイプなのか。

 

いずれにしてもずっと抱き上げるわけにはいきませんわよね〜っと…

 

「ホイ。離してやるからご主人の元にお帰り。

野生なら仲間のとこに…」

 

と、見送ってやろうとしたのだが…

ぴょん、と黒いうさぎが跳ねてこちらに…!?

 

「くぶぇ!? ぎゃあ!?

 

眼の前が暗転し、気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんこ!良かったわ、こんなところに………

 

…ぎゃーーーーー!?し、死んでるーーーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先程はどうも失礼いたしました」

 

「その、そんな…土下座までしなくても」

 

「いえ、古来日本より申し訳立たぬ折には土下座がキのホンでございますれば…

申し訳ございません」

 

「ええと…あんこ、その人はいつもの台じゃないのよ〜降りなさ〜い」

 

…そういや何だか頭が重てぇですね。

あんこって…さっきのうさぎ?

 

そんなにわたしの頭(顔)が好きになったのか、あんこ

 

 

 

と思ったら頭が少し軽くなったような。

後頭部になにかが触れている感触もなくなったので頭をあげェッ」

 

「あら、また顔に…」

 

「ムゴモゴモゴゴゴ(そんなにあたしの顔に何かあるんですかねぇ)」

 

「ううーん…何かしら、あんこがここまで執着するのなんてシャロちゃんぐらいだし…」

 

「ムング…取れた。

シャロちゃん?」

 

「あ、ええと…私の知り合いで、よくあんこに飛びつかれてるの」

 

「へえ…」

 

 

 

と、世間話に花を咲かせようとしたその時でした。

 

腕の中に収まっていたあんこがピクン!となって突然飛び出して行ってしまったのだ!

 

 

「あれ…?」

 

「あんこ!?まさか遠隔でシャロちゃんの気配を!?

待って〜!」

 

と、チョー素早く跳ねていくあんこを追いかけてその子は夕焼けの中に消えていきました…

…あれ、戻ってきた。

 

「あ、これも何かの縁かと思って…うち、喫茶店なんです、良かったら!

それじゃあ!」

 

「……………」

 

しっかりしてんですねぇ。

うちも喫茶店なんですが。

 

ある種…ライバル?




「ぎにゃあーーーーーー!?アンタなんで突然現れぇええええーーーーーーーー!!」

哀れ。






衛宮タマキ(旧姓???)

CV:津田健○郎

残念なイケメン。いや、本当に。
顔はいい。声もいい。

キャラ探し真っ最中。

身長174cmに黒髪と水色の瞳が特徴。
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