喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

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混血。





おうまがつじ

 

あつい。さむい。あつい。さむい。

 

どっちなのか。どっちもだ。

 

 

 

あついのに、とてもさむくて。

 

ねむいのに、どこかにいきたくて。

 

おなかが、すいて、

 

のどが、かわいて………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ…!!」

 

夢中で走る。

いつもならとっくに息があがって動けなくなるのに、

 

腕も足も、肺も痛いのに。

それでも足は止まらない。

 

理由は一つ。

 

 

『今朝タマキが店先で倒れてた。今病院に運ばれたよ』

 

 

リンネくんがそう言った。

それを聞いたら、居ても立ってもいられなくて。

 

入院した病院の名前を聞き、おばあちゃんに『今日は学校を休む』と端的に伝えて家を飛び出した。

 

 

 

 

(タマキくん…タマキくん…!!)

 

どうしてこんな事になってしまったのだろう。

あの冷え性のせいなのか。

 

だとしたら、私が早く病院に行かせていればこんなことにはならなかったのではないか。

そんな今更言っても手遅れなことがずっと、頭の中でぐるぐると回っている。

 

早く、病院に行って…そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――何、これ」

 

病院についた。

街の雰囲気にそぐわぬ、少し外れたところの大病院。

 

その中は、

 

 

 

 

「今朝様子を見に行ったらうちの子が倒れてて…!」

 

「主人が、主人がここに運ばれたって!!」

 

「おとーさんが、おかーさんが…!

うぇええええ…!!」

 

…他にも何人もの人が被害を訴え、院内を騒がしていた。

医者や看護師ら病院関係者も、忙しなくあちらへこちらへと動き、懸命に対応にあたっている。

 

 

 

 

「そちらの方!どうなされましたか!?」

 

「えっ、あ―――――」

 

声をかけられた。この様相に思わず立ちすくんでしまっていた。

そうだ、私は…

 

「あの、私、今朝ここに運ばれた子の友人なんです!

心配で様子を見に来て…」

 

「搬送…お名前は?」

 

 

「衛宮です。私は宇治松で…」

 

「衛宮……衛宮……ごめんなさい、まだこちらには情報が…」

 

「そう、ですか…」

 

よくよく考えれば無理もない。

今朝倒れたのを発見されて、先程搬送されたと連絡されたばかりなのだ。

 

まだ来ていないとしても…

 

 

 

「急患です!!道を開けてください!!」

 

 

 

…あ。いた。

 

「タマキくん」

 

ストレッチャーの上に仰向けに寝て、運ばれる彼に駆け寄って。

腕を掴まれ止められた。

 

「え?」

 

「…千夜くん、学校はどうしたのかね」

 

シロウさんがいた。

そうか、タマキくんが倒れたから同行を頼まれたのね、きっと。

 

でも、それはそれ。

早くタマキくんのところに行かなくちゃ。

 

「落ち着け。タマキはこれから精密検査だ。

私が様子を見るから君は学校に…」

 

「今日は休むことにしたから大丈夫です。

それよりもタマキくんのところに…」

 

「千夜くん、心配な気持ちはわかるが…」

 

「離してください」

 

「おい、落ち着くんだ!」

 

「離して!!」

 

腕を振りほどいてタマキくんのところに向かいたいのに、シロウさんはそれを許してくれない。

早く彼のそばに行かないといけないのに。

 

 

 

 

 

 

「お願い…お願いですから…」

 

「…とにもかくにも精密検査が終わってみなければなんとも言えない。

それまでは待っているしかない。

それで納得してくれ」

 

………結局、それしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、どれくらい経つのか。

十分、二十分。

 

或いは一時間、二時間。

 

いつもならあっという間に過ぎてしまうような時間が、今はまるで永遠みたいで。

 

 

…タマキくんを診てくれたのであろうお医者さんが声を掛けてきた。

シロウさんと何かを話している。

 

 

「―――――――あの」

 

「? あなたは…」

 

「タマキ…彼の学校の友人です。

搬送されたと聞いてやって来たみたいで…」

 

「あの。 …タマキくんは、一体、どうなったんですか」

 

怖い。その答えを聞くのが。

でも、聞かずにはいられなかった。

 

彼は大丈夫だと、聞きたくて、

それで、安心したくて。

 

 

たとえ、

 

 

 

「………正直、ひどい状態です」

 

 

 

その願いが呆気なく裏切られたとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『外傷こそないのですが…それに見合わないほどに内側の傷が酷いです。

まるでなにかに切りつけられて、それを間に合わせで治したような…特に左腕が顕著です。

 

見た目だけこんなにキレイで、内側にだけこんなに傷があるなんて普通はありえませんよ』

 

…多分こんな事を言っていた気がする。

正直、最初の『ひどい状態』と言われた時点でその後の話は半分どころか一割も入っていなかった。

 

一通りの話が終わった後、タマキくんへの面会を頼んだが、

 

 

『本人の意識も戻っていない状態ですし、入院したばかりで容態の懸念もあるので…本日は面会謝絶となってしまいます。

申しわけありません…』

 

 

…それで、結局私は家に帰されたのでした。

帰るやいなやおばあちゃんが駆け寄ってきたが、私の姿を見るなり『さっさと部屋に戻って休んでな』と言った。

 

てっきり叱られるものだと思ってたのに。

 

…まあ、その答えは鏡を見るなり分かった。

一瞬、自分の姿と理解できなかったぐらいにはひどく憔悴していた。

 

これじゃあ、どっちが病人かわかったものじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

ひとまず部屋に戻って布団で横になる。

案の定、眠れるわけもなく。

 

ただ、頭の中でどうしてこんな事になってしまったのだろう、と。

それだけがぐるぐる、ぐるぐると回っている。

 

そもそも、内側への傷って何?

タマキくんは冷え性じゃなかったの?

 

そんな傷つくことがあったの?

私の知らないうちに、そんな事に巻き込まれてたの?

 

ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる。

そんなことを、ずっとずっと。

 

考えて止まらない。

 

もっと、タマキくんに気をつけてればよかったのかな。

私が病院に連れて行けていれば、こうはなってなかったのかなぁ。

 

もっと、付きっきりで居れば…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ。

 

そうか。

 

ほったらかしにしてたのがいけなかったんだ。

 

なら、いっそとじこめちゃえばいいんだわ。

 

そとであぶないことにまきこまれたからあんなめにあったんだもの。

 

なら、ずっとわたしのちかくにいれば、なんのしんぱいもないわよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あら?

 

…私、何言ってるのかしら。

 

きっといろいろありすぎて疲れたんだわ。

…明日、もう一度、病院へいきましょう。

 

今度こそ、面会出来れば良いんだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すやすや、すやすや。

女の子は眠ります。

 

近くに赤いもの。

するする、するする。

女の子に近づきます。

 

するする、するする、するする。

近づいて、女の子に触

 

『そのこはだめ』

 

離れていく。

するする。するする。するする。

 

あかいのは、びょういんのほうへ。

するする。するする。するする。

 

 









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