ひっでぇタイトルなのだわ
「おはよう衛宮くん!お客様が来たわよ!!」
「―――――――万が一、いや億が一にでもというほんの僅かな可能性の奇跡を何処かで期待していた自分が居たことに気づいてしまった…」
「なーに小難しいこと言ってるのよ。
店員さん♪メニューくださいな」
「テーブルのとこにありますよ…」
案の定朝一番にやって来た凛さんと桜さん。
ノリノリだ。
メニューを鼻歌交じりに眺めている。
「なんだか色々あって迷うわね~桜?」
「そうですね~姉さん。
すみません、おすすめはあったりするんですか?
よろしければ料理担当の方にお聞きしたいんですけど…」
…わざとらしい棒読みで、この上なく愉快そうな笑みを浮かべながらわざわざシロウからメニューを聞こうとしている遠坂姉妹。
哀れシロウ。
「…ん。着信…あれ、モカさんです」
「いつの間に連絡先交換してたのよ…
それで、なんて?」
「―――――――『パンが山ほどあるから今からご一緒にピクニックでもどう?』だそうです」
「――――何がどうしてそうなったのかしら」
「というわけでやって来たわよモカさん。
ついでに腹をすかせた野郎どもも連れてきたのだわ」
「助かる〜!私たちだけじゃ不安だったから!」
わざわざお店を臨時休業までして来ましたとも、ええ。
しかしなしてこんなに大量にパンを…
「お姉ちゃんとどっちがチノちゃん好みのパンを作れるか対決したんだ…
2kgの小麦粉から自由に作るってルールで…」
…つまりココアちゃんとモカさんが各々2kg分ずつのパンを作ったわけだ。
そりゃこんな沢山にもなるよ。
「まあ、それほど気にすることもないだろう。
我が家のみならず、現在のメンバーは食べ盛り育ち盛り揃いだからな。
―――――――で。なぜ私はここに居るのだろうな」
はい。すっかりシロウの鉄板ネタですほんとうにありがとうございました まる
「そりゃあ男手なんていくつあっても困るものじゃないもの。
それも成人男性の胃袋なんて心強いじゃない?」
「既に多くの食べ盛り共が居るが!?
わざわざ私が出張る意味も必要も感じられないが!?」
諦め給えシロウ。
この二人に目をつけられたが最後、どうしたって僕らに勝ち目はないのだ。
とはいえ、天気は快晴。
冬の寒さも軒並み消えた、絶好のピクニック日和であることは違いない。
「それじゃあパン大食い大会はっじめるよー!」
「「爽やかな雰囲気が台無しだな…ん」」
「お、ハモったわね」
「ハモりましたね♪」
「いいハモりだね〜!」
「「………」」
シロウとリゼさんが押し黙ってしまいました。
本当つくづく似た者同士だよなぁ…
「ただしこの中に一つマスタード入りスコーンが!」
「ブッ!!」
あ。ティッピーが当てたな。
それを聞いた千夜ちゃんがノリノリで「私もロシアンルーレット牡丹餅持ってきたの」って。
和やかな雰囲気が吹っ飛んだよ。
とはいえまあパンは美味しいです。
ココアちゃんの作ったものは勿論、パン屋を本業とするモカさんのももちろん…うん。美味しいね。
「シャロちゃん、これも食べて。あーん」
「いやもういいってば…チサトが自分で食べればいいじゃない」
「ん…シャロはもう食べないのか?」
「いえ、さっきからチサトにいっぱい押し付けられてますし…
それに食べすぎるとすぐお肉がつく体質なので…」
「そこまで気を使いすぎることもないと思うぞ…
それに、今食べておかなかったら後々…」
「う゛…それは、そうだけど、でも…ふえっ!?」
突然モカさんがシャロさんを後ろから抱きしめて…!?
…なんだろう。『ふーん、ふん、うん…』って呟いてるだけだし。
「うん!もっともふもふしててもいいと思うよ!」
「なんですかその判断基準!?
………でも、もっと食べていいなら…」
「ん。シャロちゃんそうと決まればこれも。あーん」
「これも美味しかったぞ。
ほら、食べてみてくれ」
「アンタ達は自分で食べなさいっての…私のことはいいから…」
「そうだよ~二人とも。
食べ盛りなんだからもっと食べて!特にそっちの男の子!妹さんの食べっぷりを見習ったほうがいいよ!」
「アレはあまり見習いたくないが…まあ、美味しいのは事実だし、遠慮なく」
「イヤアァァ!!私の友達が次々とお姉ちゃんの弟や妹になっていくよ!!」
「ふむ…昨日も食べたけどモカさんのパンってやっぱり美味しいわね」
「ココアさんのも美味しいですよ。
さすがパン屋の娘なだけあって、鍛えられていますね」
「これは負けてられないんじゃない?衛宮くん」
「…なぜオレに話題を振るんだ」
「あら、料理に関しては一家言持ってる衛宮くんだもの。
負けてられないって情熱を燃やすところだと思ったんだけど?」
「今桜も言ったが、パンに関してはモカさんやココア君に一日の長があると弁えている。
わざわざ相手の得意分野に真っ向から向かうような真似はせんさ」
「な〜にカッコつけたこと言ってるのよ。
昔は日が暮れるまで棒高跳びやめなかった負けず嫌いのくせに」
「な、おい遠坂、それは…!」
「私も見ましたよ?一生懸命飛んでる先輩、格好良かったです♪」
「桜まで…ああもう、いいから二人とも、自分の眼の前にあるパンを片付けろって!」
「ふふ、ようやく口調が昔に戻ったわね、士郎?」
「…………………………」
「リゼ先輩?」
「シロウのこと、じーっと見て、どうかした?」
「ん!?い、いやなんでもないぞ!!」
「………」
そしてパンは片付いたところで、モカさんの案内を兼ねて公園を散歩タイム。
その途中、ボート乗り場を見つけました。
「そういえばボートって乗ったことないです」
「私たちもないわね。
この機会にちょっと乗ってみる?」
「じゃあくじ引きで分かれてあの岸まで競争するのはどう?」
「それは構わないが…俺たちが被ったりすると不公平にならないか?」
「ならいっそのこと、男女ペアで分かれるようにしましょうか?」
「いや、それなら我々野郎集は見学させてもらうことにしようか…
皆もそれで構わないな?」
「なら純粋な競争でも問題なさそうね。
一位になった人は何でも命令できるっていうのはどうかしら?」
((また雰囲気壊すルールを…))
「なら悪いけど皆私の言う事聞いてもらうことになるから!!」
ココアちゃん、ノリノリである。
ちなみにくじ引きの結果は…
モカさん・チノちゃんペア。
ココアちゃん・シャロちゃんペア。
凛さん・リゼさんペア。
桜さん・千夜ちゃんペア。
以上の結果に相成りました。
「ふふ、よろしくお願いするわね、リゼちゃん?」
「よ、よろしくお願いします…」
「…おい遠坂。
念の為言っておくが、リゼに妙なことを吹き込んだりするなよ」
「あら、何よその言い草。
私がそんな良からぬことを言う輩に見えるってことかしら、士郎には」
「ああ。高校時代、お前のおかげで何度苦杯を舐めさせられるような思いをしたかこっちは数知れないからな…」
「安心なさい?士郎相手ならともかく、いたいけな少女相手にそんな真似をする女じゃないわ、私」
「『オレならともかく』って…それを出来ることならやめてほしいんだがな」
「……………」
「リゼちゃん?どうかしたの?」
「えっ、あ、な、なんでもないぞ!
早く乗ろう!」
「えーいよいよ出走のお時間が近づいてまいりました、木組みの街中央公園池内ボートレース。
実況を務めますは私チサト・アニムスフィア。
解説は――――」
「衛宮シロウ、よろしく頼む………
チサト、やはりこれは必要ないだろう」
「何をいうか、シロウ。この手のイベント、熾烈な争いが繰り広げられるのは必定。
ならば必然、実況解説は付き物」
「ついたところで誰が聞くとも思えんがな。
と、それはそうと発走の用意が整ったようだ」
「さあ!全員所定の位置につきました!
今、タマキの持ったシグナルが赤から………
青に変わった!各走者一斉にスタート!」
「私に追いついてごら~ん♪」
「チノちゃんが連れ去られる〜!」
「私、そんなに体力がなくて…その分桜さんを一生懸命応援するわ!
ふれー!ふれー!」
「ふふ…ありがとうございます。
可愛い声援に答えて頑張っちゃいますね!」
「ふふー。なんだかデートみたいだね!」
「あのねえ…一応勝負なのよ?
そんなゆるい感じでいいの?」
「大丈夫!いざとなればこのコーヒーでスピードアップ間違いなしだよ!」
「私に頼る気!?」
「…ココアのやつ、思いっきりシャロに頼る気満々か…
他力本願にもほどがあるだろ」
「意気揚々と出ていった割にね~。
どれ、ちょっと本気出して発破かけてやろうかしら!」
「む…凛さんの本気…」
「そうよ?しっかり掴まっててね!!」
「おっと!ここで飛び出しましたのは、凛さん&リゼ先輩ペア!
ボートを漕いでいるのは凛さん…すごい速さ!」
「確かに凄まじいな。これは一着となっても不思議ではないだろう…まあ」
「り、凛さん!方向がおかしいぞ!
どんどん向こうの岸…どころか皆からも離れて…!」
「おりゃあああああああああああああああああああ!!」
「は、話を聞いてくれ〜!!」
「…その方向が正しければ、の話だが」
「あーっと凛さん&リゼ先輩ペア!
どんどん本来の方向を外れていく!
リゼ先輩の呼びかけも届いていない模様だー!」
「――――――――っと。
だいぶ離れちゃったわ…」
「と、止まってって、何度も…言った…」
「ゴメンゴメン。
でも、これでやっとお話できるわ」
「?」
「ねえ、リゼちゃん。
あなた、士郎のことどう思ってるのかしら?」