それは、とある姉妹の忘れ物
遠坂凛です。
本日こそは士郎のお店でゆっくり…と思ったらモカさんに『助けて』と頼まれてラビットハウスに来ました。
…なんでも、
「深刻なのは姉のほうだ」
「そうね」
「そうですね…」
もしかしてモカさんってその…シスのコン、なのかしら?
と思ったらガバッと立ち上がって、私の方を掴んで
「それは凛ちゃんが桜ちゃんとそれほど離れたことがないから言えるんだよ!!
二人も離れてみればこの寂しさがわかるはずだよ!!」
「そうかしら」「そうでしょうか」
「……姉妹にもいろいろタイプがあるんだな」
「そういえば昨日は見なかった子達がいるね。
あの子達は?」
「チノの友達だよ。中学生」
あら、アスカくんにシキくんも居るじゃないの。
昨日はたしかに居なかったけど…
「ジークくんが言うには、『ナンパにかまけて仕事や宿題を疎かにしてたからアスカは留守番で、シキはその見張り』だったって…」
「………あー。そういやそんな子だったわね」
出会って早々ナンパ食らったのも思い出したわ。
まだ小学生だってのに生意気なこと言ったもんだから強めにデコピンかまして涙目にさせてやったっけ。
にしてもこの街に来てもシキくんはアスカくんのおもりなのね。
相変わらず苦労人気質というかなんというか…
「特にこれは開幕一番にかましてやる!って思って」
「今度の集まりは戦争って聞いたから派手なの持ってきたの」
「いい皆?開幕の合図は私が指示するからね」
…なんだか物騒なワードが聞こえるわね。
モカさんも『ちびっこマフィアの抗争!?』ってうろたえてるし。
あ、でもジークくんは何がなんやらって顔だし、シキくんは呆れてるし、アスカくんはニマニマしてるわね。
そういうんじゃなさそうだわ。
で、その後はリゼちゃんが街を案内してくれるということで、モカさんと桜も一緒に木組みの街ツアーに出発…したのだけど。
リゼちゃんとずいぶん距離が離れてるような。
「多分初日にもふもふされたのが原因ですよ。
ほら、リゼさんって一応皆の中だと年上だから…」
「あーなるほど。可愛がられるのに慣れてないんだ」
「ちっ違っ…!」
「あら、また真っ赤になっちゃって。
図星だったかしら?」
「でも真っ赤になった顔も可愛いです♪」
「う、ぅあ…」
「ふふ、リゼちゃんの後ろ姿もかわいいし、この距離もよしとしましょう!」
「やややっぱり3人とも後ろはダメだ!!
というか近づくなぁぁ!!」
「「「案内は!?」」」
「今日も平和ですね〜千夜ちゃんお手製の甘味は美味しいね~」
「お粗末さまです♪」
「…シャロ、私の目がおかしいのなら遠慮せずに言って欲しいんだが…
あの二人の周りだけ景色がピンク色になっている気がする」
「大丈夫よセント。私の目にもピンク色に見えてるから」
「うーんあまいあまい。
いつもよりも甘味が数倍あまい。
なんでだろ。」
甘兎庵は本日も緩やかに営業中。
いちゃいちゃと甘い雰囲気を醸し出すゆるゆるカップルと、それを眺める幼馴染と同居人という光景が広がっております。
しかしそこに、
「たったすけてくれー!!」
「「リゼ先輩!?」」
「いらっしゃ〜い」
「なんかずいぶん慌ててるね〜」
「先輩、息も上がってるし、顔も赤い。
風邪、ひいた?」
「いや元気に走ってきたでしょうが!
いっ一体どうしたんですか先輩!?」
「命までモフられる!!」
「「こんにちは〜♪」」
「こんにちは〜ってタマキくんじゃないの。
それにセントくんにチサトちゃんも」
「あれ、凛さんいらっしゃ〜い」
「モカさんに桜さんも…何がどうなってるんだ?」
「リゼちゃんが逃げたから追っかけてきちゃった♪
逃げると追い詰めたくなっちゃうぞ〜?」
「その気持ち分かります!」
「あたしも〜」
「私も。」
「「「わかるな!!!」」」
千夜・タマキ・チサトのボケ3連にリゼ・シャロ・セントのツッコミ3連が入りました。
お見事でした。
「千夜ちゃん!その制服イケてる♪」
「本当ですか!?」
「私もそう思いますモカさん!
第一印象から思ってましたけど、やっぱり千夜さんってお着物が似合いますね!
大和撫子…って言うんでしょうか?」
「そう、まさにそれだよ〜桜さん。
あたしから見て一番なのは千夜ちゃんだけど、桜さんも似合いそうじゃない?」
タマキくんサラッと惚気けたような気がするんどけど…まあいいわ。
桜が着物かぁ…アリかも。
「シャロちゃんの働いている喫茶店の制服もミニスカでかわいいんですよ!」
「ちなみに写真はこちらに。」
「チサトぉ!写真撮影禁止だって何度も言ってるでしょうが!!
モカさんたちもまじまじと見るのやめてください!!!」
あらカワイイ。これはうっかりシャッターを切っても仕方ないわね。
フリフリのフリルスカートに、可愛らしいロップイヤーが…
「このお店も行ってみたいなぁ…私もまだミニスカで働けるかな?
どう思う?シャロちゃん」
「――――――やめましょう。トラウマになる娘もいるんですよ………!!」
………あー。なるほど。
これ、制服の形的にその…モカさんのご立派なものが…
可愛らしく見えるのはシャロちゃんが着てるからなのね。納得。
「…お互い、強く生きましょう、シャロちゃん」
「…凛さん…!!」
「………」
「『まあ一番似合うのはシャ』いででででで」
「余計なアテレコをするな」
セントくんの見事かつ瞬時なアイアンクローがタマキくんの顔面を捉えたのでした。
まあ確かにシャロちゃんによく合ってるわよね。
「モカさんも凛さんたちも明日で帰っちゃうんですね…」
「結局衛宮くんとはろくに話せなかったわね〜桜」
「なんで私に話題を振るんですか姉さん?
それを言うなら姉さんこそ大して話せてないじゃないですか」
「あら、私は二日目のピクニックでいろいろ話したけど?」
………なんだか雰囲気が悪くなっているような。
どうにか話をそらさないと…そうだモカさん。
「モカさん、この街はどうだった?
短い間だったけど楽しんでもらえたか?」
「うん!ココアにも久しぶりに会えたし、凛ちゃん桜ちゃんってお友達もできたし!
…妹に避けられてるのがちょっとだけ気がかりだけど…
ココアがグレてブラックココアにならないようにお願いね」
だからアレはお遊びなんだけどな…
でも今のモカさん相手じゃ言っても無駄か…
「
「おもてなしの
あっ。
「今のあの子にそっくり…ヒエヒエ…」
「空気読みなさいよ!!」
「用意したのはシャロちゃんよ」
「甘えん坊の妹はこの写真だけにしか残ってないのかな…」
「その写真持ち歩いてるの…」
「妹さんが大好きなのは伝わりますけど…その…」
「うぇるかむかもーん…」
「「「?」」」
振り向いた先にいたのは…うさぎ?
の、かぶりものを被った…?
「ようこそ木組みの街へ」
(((何?)))
「「サプライズパーティーの始まりだよー♪」」
店の入口からアスカくんとシキくん、ジークくん…そしてラビットハウスに居たチノちゃんとそのお友達二人が登場。
クラッカーやリボン、旗など一気にパーティームード全開に。
…やけにお客が少ない、というか見知った人以外居なかったのってこういうことだったのね。
「モカさんが元気ないから励まそうってココアちゃんが」
「突然言われてびっくりしたけどさ〜せっかくだし凛さん桜さんたちにも一緒にサプライズ仕掛けちゃおうってなって」
「ココアじゃないよ!この街のマスコットキャラぴょん」
「いや声でバレバレだよ…」
いつの間にやら現れていたリンネくんがココアちゃんにツッコむ。
なかなか姉思いの妹さんじゃないの、ココアちゃん。
…でも…
「元気ないのはあんたのせいでしょー!!」ムギュウウウウ
「ぐええっ!?」
あー。やっぱりね。
ま、なんだかんだ元気になったみたいだし良かった。
「この旗が出る銃私が買ったんだ〜♪」
「この被り物は私が選んだの」
「うん!二人ともいいセンスだ!!」
チノちゃんのお友達というマヤちゃんメグちゃんがモカさんに褒められている。
楽しそうで何よりなのだわ。
とかなんとか言ってたらアスカくんとシキくんが。
「凛さん!このスコーンボクが作ったんだよ!」
「私もでしょう。で、お味の方は…」
「とっても美味しいですよ。
2人も成長してるんですね」
ん、本当。美味しいわ。
しっかしトラブルで合流が遅れたとか聞いた時はこっちまで焦ったけど、なんだかんだ元気でやってるみたいじゃない。
「そしてなんと!お姉ちゃんがファンの小説家の青山ブルーマウンテン先生に来てもらいました!」
「あなたはあの時の!!」
青山ブルーマウンテン…あ、名前は聞いたことあるわね。
日本にちょっと帰ってきた時は期待の新人って言われてたけど…
「ほ、本物の青山先生!?
あ、あの、私もファンです!」
そうだわ。桜ってば第一作目からファンだったっけ。
モカさんに負けず劣らずテンション上がっちゃって。
「あっあの…よろしければこれにサインを!!」
「私もお願いします!
…ってモカさん、それ…」
パン作りの時にも使うめん棒じゃないの。
サインしづらそうなのだわ…色んな意味で。
「すみません、ちょっと失敗してしまいました…」
「「字がデカい!!」」
「同級生に年下に、年上の小説家さんまで…
ココアの友達は年齢層が広いなぁ」
「本当ね。どうやったらこんな交流が広がるのかしら」
「でも、ココアさんなら不思議じゃないですね。
あの明るさには不思議な魅力を感じちゃいます」
「「確かに」」
「お姉ちゃん!」
「「「ん?」」」
「見て見て!お姉ちゃんとお揃い!」
「………!ふふっ。
私もココアのまねー」
あらあら。なんだかんだ仲良しじゃないの。
良かったわね、モカさん。
…あ、そうだ。
「私も桜のまね〜なんて」
「…ふふ。なら、私も姉さんの真似です!」
「お!凛ちゃん桜ちゃんも仲良しだね!」
「私も2人の真似するー!」
楽しかったパーティーも終わり、それぞれ解散ムード。
しかし、私はとある用事のため少し遠回り。
「…姉さん。私もついて行っていいですか?」
「ん…そうね。一緒に行きましょ、桜」
「あれ、凛ちゃん桜ちゃんも帰り道一緒?」
「ええ。ちょ〜っとこっちの方に用事があって、ね?」
「じゃあ、途中まで一緒に行こ!」
そして、目的地の前に。
リンネくん達は空気を読んで裏の方から入っていってくれた。
中からはまだ少しばかり物音が聞こえてくる。
目的の相手はまだ中にいるようだ。
今日、パーティーに来ていなかったあの男が。
「―――――――本日は店じまいだぞ、遠坂」
「悪いわね衛宮くん。でも、どうしても話しておきたいことがあるのよ。
…私たちから」
「…先輩」
いい加減、ハッキリさせとかなくちゃね。
こいつの本心を。