想いに気づいた私は
………緊張する。
今からその、セントのお見合いの相手がやって来て…それで、私はセントのこん…
「シャロちゃんりらっくす、りらっくす。
今まで頑張ってきたことを思い出せばできるよ。」
「簡単に言ってくれるわねアンタは…」
「シャロちゃんが頑張ってたの、いっぱい見てるから。
だから分かるの。えへん」
「なんでアンタがそういう態度になるのよ。
あと胸を張るな」
「あなた達談話もいいけど少しのんびりしすぎよ。
もうじきに来るから席についていて頂戴」
「は、はい!」
「シャロちゃん、ふぁいと!
終わったらよしよししてあげる。」
チサトのエールを受け、オルガマリーさんに連れられ、席につく。
今までやってきたこと、思い出して…うう、緊張で頭が働かない…!!
「心配するな。いざとなったら私がどうにかする」
「セント…?でも、アンタが一人で話してても…」
「人の顔色をうかがうのは得意な方だ、心配するな。
いざとなったらキリシュタリア達も助けてくれるさ」
「………」
「さ、そろそろ相手の方がやって来るわ。
よろしく頼むわね」
「へっ?」
オルガマリーさん?どこに行くんですか?
「お相手の方から頼まれてるのよ。『まずは子供たちだけで印象を確かめてから』ってね」
「え…それで良いんですか」
「勿論よ。そもそも成立させるつもりなんて無いし、本当のお見合いならシャロさんの親御さんにも同席してもらうところよ?」
「……………」
そういえば、そうかも。
突然その…アレのフリをすることになって、いろいろゴタゴタしてたから忘れてたけど。
「…ん!向こうの親の方が入られたわね。
それじゃあ私は移動するわ。
セント、シャロさん、しっかり頼むわね
それとチサトは控室で大人しくしてるのよ」
「はーい。シャロちゃん、またあとで。」
「「………」」
部屋が静まり返る。
いち、に、さん…じゅう、じゅうご、にじゅう。
ひたすら待って、何秒数えたか忘れたころ。
こんこん、と音が鳴る。
隣のセントが「どうぞ」と一言返すと、ドアの向こう側から「失礼いたします」とまた一言返ってきて…
ドアをゆっくりと開き、綺麗な人が…部屋に入ってきた…
ヤバい。思ってたよりずっときれいな人だ。
なんか自信なくしそう。
「――――初めまして。エリーズ・レベリーネ・ユグドミレニアです。
本日はよろしくお願いいたします」
しかも私のことに触れられない。
まあ、仮にもセントとの結婚の話をしに来たんだから当然かもしれないけど…
「初めまして。
セントルシア・クラウディオ・アニムスフィアです。
こちらが…」
「あっ、き、桐間紗路です。
よろしくお願いします…」
「………」
む、無言で着席された…
やばい、なんか泣きそう。
そういえばチサトが『よしよししてあげる』とか言ってたような…いつもなら即刻断るけど今だけはものすごく恋しい…
…それからどれくらい時間が経ったのでしょう。
セントとエリーズさんが身の上話だとか、趣味だとか当たり障りのない話を続けて…
「…ところで。そちらのお方は一体?」
「「!!」」
ついに来た。
多分相手も意識して触れないようにしてたんだろうけど…
「え、ええと…その、私は」
「彼女は私の婚約者です」
!!
「婚約、者…それは、事実なのでしょうか?」
「へ、あ、はい!」
「………そうですか」
や、やばい。
フリとは分かってても緊張して…!
どうしよう、絶対怪しまれてる…!!
「当然です。
何故そのようなことを?」
「………質問返しのようになりますが。
お二人がご婚約を結ばれたのはいつの話なのですか?」
「……一年前です」
「それにしては随分とこわばってらっしゃいますが。
この様な場には慣れていらっしゃらないのですか?」
「まあ、その、ええと…」
「この様な席には私だけが出ることが殆でして。
彼女に余計な気苦労をかけさせたくありませんのでね」
あ、危ない。セントからのフォローがなかったら余計なこと言ってたかも…うう、普段ならもっと上手く誤魔化せるのに…!
「………アニムスフィアといえば『時計塔』の名門。
仮にもその家の当主の妻たる者がその様な場に出ない?
それは少しばかり無理がないでしょうか」
…んん?ええっと、よくわからない単語が出たような気がするけど。
とりあえず、何となく言ってることは分かる。
確かに、そういう立場なら夫婦揃って出るものかも…
「失礼を承知で申し上げますが…そちらのお方は本当に婚約者なのですか?
この場をやり過ごすために雇われただけでは?」
………!
ば、バレた…!
「そのようなことはありません。
私は彼女を真剣に愛したうえで婚約を申し出たのです」
「…え」
「あら」
「確かに私と彼女がともに過ごした期間は周囲から見れば短いものでしょう。
ですが時間など関係ありません。彼女がどんなに素敵な女性かは、私がよく分かっています。
料理上手で、器用で、やりくり上手で。
…素直になれないだけで、友人想いの優しい人であることも。
身分も、過ごしてきた世界も関係ない。
…私は、心から彼女を愛しています」
「……………」
「…セントルシア様は、シャロさんの事を本気で愛していらっしゃるのですね」
「はい。ですから…貴女との婚姻は受けることはできません。
この場まで出向いていただいたのに、申し訳ない」
…セントが頭を下げたのに数秒遅れで気づいて、慌てて頭を下げた。
でも、これで本当に大丈夫なんだろうか。
エリーズさんはずっと黙ったままで…やっぱり怒ってるんじゃ…
「………よかったぁ〜〜〜!!
これで今回も断るための口実が出来ました!」
「「………え」」
「いや〜お父様ってば私が今まで根回ししていたことに感づいて連絡の取りようの無い『アニムスフィア家を相手に選んだ』なんて言われた時はどうなることかと思いましたが…
そういうことならば安心致しました!
そんなに真剣に愛し合っているのならば流石にお父様も折れてくれる事でしょう!
なにげにお人好しなので!」
「え、えっと、エリーズさん?」
「はい?」
「『
「はい!ですが私、望まぬ婚約なんてまっぴらごめんですので!
ですから今までは私の方からコンタクトを取ったり、弱みを握ったりで上手くやってきたのですが…今回は徹底的に監視されていた上、連絡など取りようもない立場のお方が相手だと聞かされ焦っていました…が!
そういうことならば仕方ありませんよね!
さすがの父も折れてくださることでしょう!!」
…でも。
そこまで何度も何度もお見合いの話が来てるなら、きっとこの次も…
「…お二人が言いたいこともわかります。
今まで上手くやってきましたが、流石にそろそろ潮時でしょうか…」
「でも…!」
「それに、父の焦る気持ちも理解できますから。
衰退した我がユグドミレニアの家を再興させるには、他の家に取り入るしか…」
「―――――あの」
『無理して親の言葉に従い続ける必要は、ないと思います』
『…セントルシア様?それは…』
『…私の親も昔はそれはそれは過保護でして。
私が傷つかないように…と言えば聞こえは良いですが、私の生活や生き方の全ては母が握っていました』
『そう、なのですか…』
『それを止めてくれたのは父でした。
そして家を離れて、新しい場所で…私はもう一つの大切な家族と、愛する人に出会えたのです』
『!!』
『まあ…』
『確かにお父上を大切になさる貴女のお気持ちは尊いものです。
ですが…本当は、貴女がそれを望んでいないのなら、それを伝えるべきだと思います
その先に待っているものが何であれ…動かなければ何も変わらないのですから』
『――――――。』
…何も、変わらない。
どこかで分かっていたはずだった。分かっていて、知らないフリをした。
望まぬ婚約などと言っておきながら、その実その現実の流れに流されるままでいることを望んでいる自分は確かにいたのだ。
…それでも、私は。
「失礼いたします。お父様、お話が――――――
―――――え?」
それから数時間。
結局セントとエリーズさんの婚約は反故になりエリーズさんの想いも受け入れられたとのこと。
とはいえ、まだ私たちとそんなに変わらない年齢のエリーズさんが新しく家のことを背負うのは大変なんてもんじゃないので、オルガマリーさんたちがそれを暫く助けると聞かされた。
…ええ、結局セントやチサトからの又聞きなので詳しい話は知りません。
終わった後にチサトが飛んできてむぎゅ~ってされました。
頭をなでながら何か言ってたけど大きな2つのものに埋もれてたのでな~んにも聞こえてません(怒)
「…お疲れ、シャロ」
「あんたもね。まさかここまで来て自分の家の問題に巻き込まれるなんて」
「まあな。
でも、これからは母さんたちの方から上手く手を回してこういう事は無いようにしてくれるらしいし、ひとまずは安心か」
「…いい演技だったわよ。
私もうっかり本気になっちゃいそうなくらいには」
「………そうか」
「まあ、今度からああいう台詞はちゃんと好きな人に言うのよ?
あんたはその…見た目もいいし、中身もちゃんと優しいんだから」
そう。所詮私の思いは一方通行なんだから。
まあ、いくら演技だったとはいえ、好きな相手にああいうこと言われるのは嫌な気分じゃ…
「演技なんかじゃない」
「――――え」
「演技じゃない。あの時言った言葉は、全部本心だ」
「――――うそ」
「嘘じゃない。
お前のことを素敵な女性だって思ってることも、好きなことも。
全部本当だ。
あの時…キリシュタリアがお前と話してたときに無理矢理割り込んだのも、引き剥がしたのも、お前のことをとられると思って…嫉妬したからだ」
「………」
「シャロ。私はお前が「待って…!!」……」
「だって、待ってよ、そんなの…」
「嫌だ。待たない」
「なんで…!!」
「もう、伝えられなくて後悔するのは嫌だから」
「………ずるい。
それ言うのは、ずるでしょ」
「それでも良い。
言いたいこと言えなくて、ずっと後悔するよりマシだろ」
「……………」
「シャロ。
…私は、お前のことが好きだ。
友人としてじゃない、一人の女性として。
だから、だから…私の恋人になってくれ」
「……………」
シャロは顔を赤らめて、俯いて。
でも、一歩近づいて。セントの服を、指先で弱々しく掴む。
「…セント。
私もあんたと同じなの」
「同じ?」
「うん。
あの時…あんたがオフェリアさんと話してたときね。
私も…嫉妬してたの。
あんたが、私じゃない、私の知らない女の人と楽しそうに話してるのを見て…苦しくなったの」
「…シャロ」
「……………わたしも。
―――私も、好き、です」
「――――ぁ」
「だから、その。
ええっと…こんな、私でも良ければ…よろしく、お願いします」
「……………!!
っ、は、はは…!!」
がばっ!と音がしそうなほど。
勢いよく、セントはシャロを抱きしめた。
「ちょ!?ま、あ、ああんた何やって!?」
「シャロ!大好きだ!!」
「………!!っ、ふふ。うん…!
私も、大好き…!!」
二人は今度こそ、心から笑いあい、愛を誓ったのでした。
ED『Love so sweet』嵐
ユグドミレニアやオルガマリーの話はまたいつか。
今回には入れません。
あの世界の話は彼女らには関係のない話ですから。