この話の世界も夏真っ盛りなので暑いです。
いよいよ夏も本格化してきた暑い連休初日。
衛宮さんちも繁盛を見せております。
「相変わらず人気だねぇ…衛宮一家を誘うのは無理かなぁ」
「ココアちゃん?いらっしゃい」
麦わら帽子に虫取り網とは。
虫取りにでも行くのかな?
「せっかくだリンネ。少しココアくんに付き合ってやると良い」
「え?いやでもお客さんまだまだ…」
「なに、お前は普段からよく働いているからな、たまの休暇だよ。
それに…普段怠けている連中に喝を入れられるいい機会にもなるだろう?」
あー、なるほど。店長には店長なりのお考えがあると。
さすがはシロウ。まあ、そういうことでしたら。
「じゃあちょっと用意してくるよ、待っててくれる?」
「りょうかーい!」
そういうわけで着替えて出発です。…しかし、こうしてココアちゃんと出かけるのもずいぶん久しぶりな気が。
「リンネくん?どうかしたの?」
「ん?…あーいや、こうして2人で出かけたのはいつぶりかなあって…」
「? 2人じゃないよ?ティッピーも一緒にいるもん」
「え?でもどこにも…あ、まさか麦わら帽子の中に!」
「ぶっぶー!正解はここ!」
って虫かごの中かよ!!
妙にすっぽり収まってるけど可哀想だよ!!
「可哀想だから出してあげようね…両手が塞がってるなら僕が引き受けるから」
「えー!」
その後、上手いことティッピーを僕の頭の上に乗せて散歩は続きます。シャロちゃんと家の前にやって来ました。
「シャーローちゃん。あーそーぼー♪」
「しんでしまう…」
「私と遊ぶと!?」
「いやこれ暑さでやられてるでしょ!?」
その後、シャロちゃんのピンチを感知した(本人談)チサトによってシャロちゃんは救助されました。
しばらくうちに避難させるそうです。ワイルドギースも一緒に。
で、その足で甘兎庵へ。
「甘兎庵はただいま浴衣週間で〜す♪」
「千夜ちゃんも遊べないかぁ〜。甘兎も忙しそうだね」
「浴衣の着こなしも流石だね。タマキが見たら大絶賛間違いなしなんだろうけど…今はシロウが見張ってるだろうしなぁ」
「あらあら…それにしても2人で仲良く来てくれるだなんて。
夏デートの真っ最中だったかしら?」
そんなだいそれたものじゃないと思うんだけどなぁ。
まあ1年くらい前にも『デート』と称して買い物に付き合ったことがあるし、それで言ったらコレもデートになる…のかなぁ?
「…デート…?」
「あら?ココアちゃんったらどうしたの?
ずいぶん顔が赤くなってるけど」
「…えっ!?あ、あれ、そうかな!?」
「大丈夫?さすがに外も暑かったし…ちょっと休んでいこうか?」
「だ、大丈夫大丈夫!全然そういうのじゃないから!大丈夫だからね!?」
「ますます顔が赤くなってますよココアちゃん!?」
「あらあら…♪」
デート?は続き、今度はリゼさんの家の前に。
うーん、話には聞いてたけど大きいなぁ…お嬢様っていうのは伊達ではない。
「リゼちゃーん!あーそーぼー!」
「………反応がないね。
聞いてた話だと見張りの人もいるらしいけど、今日は…」
「うーん…留守なのかな?
リゼちゃーん!」
と、ココアちゃんがチャイムを連打し始めました。
迷惑だからやめなさいってば!
「ココアちゃんちょっとストップ!」
『ちょっ、ちょっとお待ちくだせぇ!』
『お嬢様は明日の準備で忙しく…』
ってアレ。留守ってわけでもなさそうです。
ん?準備?
「準備ってなに!?抗争!?
いいよ!私もお手伝いするよ!」
「何言ってるのココアちゃん!?」
「結局皆忙しそうだね…あとはマヤちゃんかメグちゃんかなぁ…」
「うーん、あの二人ってそう言えばなかなか会わないよね。
アスカたちに聞けば分かるかな…あれ?」
「あら、ココアさんにリンネさん。
ちょっと付き合ってくれませんか?」
「付き合う?」「もしかして青山さんも暇なの?一緒にあそぼ!」
「見つけましたよ先生!また逃げ出しt「あのっ、私ココアです〜」…………」」
青山さん、そりゃあちょっと無理がありますよ。
その後の
「結局みんな何だかんだ忙しいんだねぇ…」
「まあ、僕だってシロウの許可があったから抜けてこられた身ですし。
連休なんて接客業関連の店には書き入れ時だから余計にね…」
「おおう、そっか…
本来ならラビットハウスにも凄まじい数のお客様が押し寄せてきてもおかしくなかったわけだね…」
「………」
「小僧!!何故黙る!?」
あれ!?ティッピーの声ってチノちゃんの腹話術だったのでわ!?
「チノちゃん!?もしかしてお姉ちゃんが心配でついてきてくれたの!?」
あからさまにテンションが上がってますよココアお姉ちゃん。
そんなに首をブンブン振ったら痛め…うお、ちょっと風が…
「わっ、とと…ああーっ帽子が!!」
「おっ、と…!」
間一髪キャッチ!しっかしこの帽子そんな軽くないんだけどな。
そんなに強かったかな今の風…?
「はいどうぞ」
「えへへ…ありがとうリンネくん。助かりましたっ!」
…かわいい。
これで背景がひまわり畑なんかだったら、それはそれはもう景色も相まって美少女に見えるんだろうな…っていやいや、何を考えてるんですかね僕は。
「…?リンネくん顔赤いよ、大丈夫?」
「いや、大丈夫です。なんでもないから…」
思わず顔を腕で隠し、ココアちゃんを直視しないように答える。
当の本人は何が何やらといった感じに首を傾げている。可愛いなチクショウ。
「うーん…こうなったら二人で遊んじゃうしかないね!
リンネくん行こう!」
「…うん」
こうして僕はココアちゃんとともに街を歩くのでした。
古本屋さんで本を探したり、気になっていたという飲食店に調査と称して食べに行ったり。
楽しい一日はあっという間に過ぎました。
…あと、2人じゃなくてちゃんとティッピーもいました。
ちょっと忘れてたけど。
「ただいま〜」
「おかえりリンネ。
その分だとココアくんとのデートを楽しめたようだな」
「あのねシロウ、君と良い千夜ちゃんすぐそういう言い方をするのはどうかと思うんですよ。
『男女が2人でいたらカップル』ぐらい短絡的だよソレ」
「そうか?それにしては2人は距離が近いと思うがね。
本当にカップルでも何ら違和感がないほどには」
「………一方的に意識してたって、相手から好かれてなきゃ意味ないんだよ。
君とリゼさんだってそうでしょ?」
「…ふむ。まあいいか。
それよりそのリゼからの伝言だが…明日から一泊二日の泊りがけで山に遊びに行くそうだ。
お前もある程度準備をしておけ」
「…聞いてないんですけど。
それ、皆は知ってるの?」
「当然、本人から全員に連絡済みだ。
リンネにもメッセージが送られているはずだが…?」
…ホントだ。わざわざ僕にも送ってくれてるよ。
「今の今まで気づかないとは、よっぽどお楽しみだったようだな?」
「…もうソレでいいですヨ。
じゃあ僕は早く休みたいんでお風呂に行ってきますね」
「明日の準備を忘れるなよ?」
・ ・ ・ ・ ・ ・
翌日。
ラビットハウスの前にはご立派なリムジンと、呼ばれていた面々が集まっていたのでした。
…とは言ってもそんなに変わらないメンバーなんですけどね。
まあ別にいいか。
「ん〜?皆、この集まりは何かな?」
「あれ、ココアちゃんおはよう。
まだ着替えてなかったの?」
「ココアの事だからまた忘れて寝てたんでしょ。
早く着替えてきなさいよ」
「今から泊りがけで」「山に遊びに行くんでしょ?」
と、マヤメグちゃんの楽しげな問いかけにココアちゃんは『私のテレパシーが通じた!』と喜んでいます…やっぱりなんかおかしいな。
「ココアちゃん、リゼさんからのメール見てないの?」
「…メール?リゼちゃんから?なんで?」
ことの経緯をココアちゃんに説明。
…あれ、なんでそんなプルプル震えだしてるんですか。
「わ、私が誘っても皆全然乗らなかったのに…リゼちゃんの呼びかけはこんな…
もー!!なんなのみんな!!もおおおおーーー!!!」
「ココアちゃん!?」
「ココアちゃんが牛みたいに!」
「おいリンネ、一体何の騒ぎだ!!」
「あっシロウ、今ココアちゃんが…ってなんですかそのフル装備は!?」
「万が一の備え、転ばぬ先の杖というやつだ。
それで、ココアくんがどうしたと言うんだ」
「それが…」
「今日のことを知らなかった、だと?」
「まさかココアにだけメッセージを送り忘れたのか!?」
リゼさんに限ってそんなうっかりなんてないと思うけど…ってアレ、チノちゃんが携帯電話を持ってやって来ました。
…これ、ココアちゃんのじゃね。
「更衣室にずっと置きっぱなしで…」
「見てなかっただけか…」
「で、でも私も昨日は顔も見ずに誘いを断っちゃったし…」
いや、それは仕方ないんじゃないのシャロちゃん。
あのまま外に出かけてたら涼む前に熱中症になってたかもしれないし…
「ココアちゃんココアちゃん、どうか気を静め出てきてください」
「………反応が返ってきませんね」
「やっぱ生贄が必要なんじゃね?」
「生贄ってどんな?」
マヤメグちゃんに加え、こっちにやってきたアスカとシキも一緒に祈り?を捧げています。
しかしこの4人からの呼びかけにも応えないなんて…
「生贄…じゃ、じゃあ私を好きなだけもふもふしていいぞ…」
「よーし、なら1人ずつ部屋に入っておいで!」
「全員かよ!!?」
「そういうことならボクが代表してっ」
「ダメですよアスカ。」
シキ、ナイス。
流石にそれは健全な学生としてアウトだものね。
「も、もうココア!本当に出てきてよ!
あんたがいないと逆に落ち着かないんだから!」
「そっそうだ!私だってココアがいなきゃこんな計画思いつかなかったんだぞ!」
「でも私が一番ココアちゃん大好き〜♪」
「私もみんながだいすき〜」
「「なら出てこい(きなさい)!!」」
うーんむ。ココアちゃんもアレでなかなか強情なところがあるからなぁ…これだけ言っても機嫌が直らないとなると…ん、チノちゃん?
「こ、コーコアさん…あーそーぼ…♪」
……………。
「リンネさんお願いします」
「なんでさ!!」
「私からも頼むリンネ!
チノまでだめとなったらもうお前ぐらいしか頼れない!」
「ええ〜……」
…まあでも、ここまで来たらそうなのかなぁ。
うちの他のメンバーはそんなに…もし説得できるとしてもタマキぐらいしかいなそうだし。
「…ココアちゃん。その、僕もごめん。
ちゃんと昨日のうちに僕からも連絡しておけばこんな事にならなかったかもしれないのに」
「ケータイ置きっぱだったなら意味なくない?」
「アスカ、今は黙ってなさい。」
「…んん。その、たった今シャロちゃんも言ったけどさ。
やっぱり僕もココアちゃんがいてくれないと寂しいんだよ。だからその、出てきて、くれません、か…?」
…あ、アレ?なんか僕、受け取り様によってはめちゃくちゃ小っ恥ずかしいことを言ってませんか。いやいや違う。これは説得だから。
純粋にココアちゃんが居ないと寂しいってだけで…
「………」
「「「「「「ココア(ちゃん)(さん)!!」」」」」」
ココアちゃんが出てきてくれました。
…何故か顔が赤いんですけど。
「え、えっとね…実はみんなが話してる間にこっそり準備してて…チノちゃんの時点で出る用意はできてたんだけど…
まさかリンネくんまで出てくるとは思ってなくて…」
「……………」
「そ、そっかー。リンネくん私がいないと寂しいんだ〜えへへ」
「〜〜っ。そうだよ、ココアちゃんがいないと寂しいんですよ!
ほら、早く行こう!」
「わっ…!?」
「おや、無事に説得できたのリン、ネ…!?」
「わーお。大胆だねぇリンネくん」
「リンネ…お前、お前なぁ…」
「ん、ふたりとも、顔まっかっか。」
店の前に出てきていた外野の声は聞かないふりをする。
やたらと心臓がうるさいし顔だって熱いけど、それは外が暑いからだ。断じて夏のせいだ。
と、まあそんな初っ端からバタバタしながらも。
ひと夏の山旅行が幕を開けたのでした。