喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

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実はサブタイを回収するまで3話くらい描き直してます(事後報告)
どうして…?




世界はそれを愛と呼ぶんだぜ

 

どうも、衛宮リンネです。

現在山に遊びに来た僕は…コテージの中で正座させられています。隣には…つい昨日、晴れて両思いになったココアさんが。

 

…どうしてこうなったのだろう。昨日は…

 

 

 

   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇ 

 

 

ココアちゃんからの告白を受け、そしてこちらも告白を返し。

晴れて僕らはお付き合いをすることとなった…のはいいのですが。ココアちゃんがあまりの喜びに抱きついてきてバランスを崩し、二人仲良く川に倒れ込んでびしょびしょに。

 

これからどうしたものか…と思いつつ、さっさと身体を拭かなければと戻ろうとしたとき。

 

『ちょっと…二人で抜け出しちゃおっか』

 

…そんな魅力的な提案に、年頃の男子の理性はあっけなく砕け散る他なかったのでした。

とはいえさすがに手ぶらというわけにも参らず、こっそりと着替えやタオルの入った荷物を回収し、書き置きを残して移動することに。

 

 

 

「…抜け出すって言ったって、結局来るのはコテージじゃん」

 

「えへへ…でも、外でそのまま寝るよりはまだ風邪ひかなそうじゃない?

その、着替えとかも…」

 

あーうん、そうですね。

僕が悪かったのでそれを詳しく言うのは勘弁してください。

 

「…とりあえずこれタオルね、早く身体拭いて。

それとココアちゃん着替えは…」

 

「………」

 

この状況で目をそらすのは勘弁してくれないかなぁ。

…状況が状況だし仕方ないよね。シロウのアドバイスを聞いておいてよかった。

 

「僕のパジャマの代えでよかったら着る?

念の為と思って余計に持ってきたから」

 

「…!きっ、着ます!」

 

なんでそんなに赤くなるのさ。たかだか着替えだぞ…

…ココアさん?なんで服を抱えたまま動かないんですか。

 

「…その、リンネくん。

着替えるから…えっと」

 

「……ごめんなさい」

 

もう…夏の暑さの次は恋の浮かれで頭が働かなくなってるじゃないですか。我ながらちょっと嫌になってきた。

とりあえず適当な部屋に移動し、自分も着替えつつココアちゃんの着替えを待つことにしたのでした。

 

 

「…一応服もこれで…朝まで少しでも乾けばいいけど」

 

まあ日光もないこんな状況じゃ生乾きがせいぜいかな。

帰ったらもう一回ちゃんと洗わないと…

 

「あ、あの…リンネくん?」

 

「ん?」

 

「その、着てみたんだけど…ね。

えっと、ズボンのほうがぶかぶかで…」

 

………あー、うん。

冷静に考えたらそうだよな。僕とココアちゃんの身長差とか体格とか考えたら…

 

「まあでも、一応そっち紐付いてるやつだからさ。

頑張って締めれば着れないことは…」

 

「え、えっと、そう思ったんだけど…ね?」

 

ガチャ、と部屋の扉が開かれる。

その向こうには顔を赤らめ、明らかにオーバーサイズなパジャマの上着を来たココアちゃんが………!?

 

「ばっ!?」

 

視線をココアちゃんの下半分まで移動させ…直後に逸らした。

だって、それは僕の目が確かなら、明らかにその、履いて…

 

「いっ、一応下着は履いてるよ…?」

 

「当たり前でしょ!!そうじゃなくて、なんで下のパジャマ…」

 

「えっとね、私も紐を縛ってみたんだけど…それでもちょっと緩かったし、どのみち裾丈も明らかに余るし、正直上だけでも十分隠せるかなぁって…」

 

「………」

 

ココアさん、だからってその格好で男の前に出てくるのはどうかと。

しかも今日たった今付き合うことになったばかりの男ですよ?理性がまだ本能を押さえつけているからいいものの、変な気を起こしたらどうするつもりなんですか。

 

…まあ本人がそれで良いなら無理強いはしない。

どのみち僕らも別々の部屋で寝るのだ、服装にいちいちケチを付けるのもどうかという話だろう。

 

「…ココアちゃんがそれでいいなら良いけどさ。布団はちゃんと被って寝るんだよ。

それじゃ…」

 

「…あの!」

 

「?」

 

「い、一緒のベッドで寝てほしい、な、って…」

 

…なん、です、と。

何を言ってるのか分かってるのかこの娘は。

そりゃ恋人ならその、同衾なんて普通なのかも知れませんけど、いやでも、今日付き合ったばかりでそんな…

 

「…いや?」

 

「嫌じゃないです」

 

ばか。バカ。お馬鹿。

ココアちゃんもココアちゃんだよ、本人の性格的に天然でやって言ってるんだろうけど末恐ろしいよ。

 

というわけで同衾…することにはなりましたが。

流石に正面向き合って寝るのはその…色々ダメな気がしたので。

背中合わせで寝てます。

 

「………」

 

「………」

 

えー、当然ながら、眠れません。

ココアちゃんの方からも寝息が聞こえないあたり、眠れてないな。落ち着け、こういうときこそ平常心が大事なんだ。

窓の外から聞こえる風とそれに揺れる木々と草葉の擦れる音、たまに響く家鳴りと寝返りを打つ音…ん?寝返り?

 

と、胸の方に腕を回され、背中に柔らかい感触…

 

「…ッ!!!」シュバッ

 

「あっ…」

 

とっさにベッドから抜け出し床を転がった。

上を見れば、名残惜しそうに両手を伸ばし…ゆっくりと起き上がったココアちゃんの姿が。

…さすがにコレはダメだ、ちゃんと言わなきゃ。

 

「…ココアちゃん」

 

「はい」

 

「過度なボディータッチはダメ」

 

「…どうして?」

 

「どうして…と、言われましても、その。

僕らは今日付き合うことを決めたばかりで、それでこんなにくっついたりされるとその…僕が色々困るというか」

 

って、結局僕の私情じゃないですかヤダー!

…あれ、ココアさん、なんでそんな俯いて…

 

「リンネくんは…私に触られるの、嫌ですか」

 

「え」

 

どうしてそういう話に。いや、というかその、男としてはですね…ちょっと待って、涙目になってませんか!?

 

「私は、その。好きな人に、抱きついたりとか…触ってもらいたいって、思うけど…リンネくんは、嫌なの…?

その、正直に、言ってくれたら…やめるから」

 

…何やってんだ僕は。せっかく両思いになったってのに、いきなり恋人を泣かせるつもりか。

自分が困るとかどうとかよりも…もっと大事にしないといけないことがあるだろ。

 

「だから、リンネくんが駄目だって言うならっ!?」

 

「………」

 

「え、えっと、リンネくん…?

あの、これ、ハグ…」

 

「…ココアちゃん、ごめん」

 

「えっ?」

 

「ココアちゃんの気持ちも考えないで、自分の事ばっかり言って」

 

「えっ、で、でもそれなら私も…」

 

「ううん、僕もね、ココアちゃん…その。

恋人として、こういうことはしたいって気持ちは、あるんだよ。

…ただ」

 

「ただ?」

 

「…その、えっと。ココアちゃんは、すっごく可愛いから。

そんな、こんな状況でハグとかされたらいろいろ、歯止めが効かなくなっちゃいそうで…ごめん」

 

「……っ」

 

服の胸元をぎゅっ、と掴まれた感触が。

ココアちゃんも僕の言いたいことを理解してくれたらしい。

 

「だけど、さっきも言った通り、僕も嫌ってわけじゃないから。

ちゃんと、決心がついたらこういうこともしたいし…その先(・・・)だって、考えてないわけじゃないよ」

 

「…あ、ぅ…」

 

あ、とうとう背中に手を回して抱きつかれました。

ちくしょう、可愛い。やっぱりどうしようもなくココアちゃんは可愛いのだ。

でも、顔は見せてくれない。耳が赤いと暗闇でも分かるくらいなので、まあ真っ赤なんでしょうけど。多分僕も。

 

「だからさ、ココア」

 

「…えっ。リンネくん、今ココアって呼んっ」

 

 

……………。

顔を離した。ココアは唖然とした顔で固まったまま、こちらを見上げている。顔が熱くなってきた。

 

「…今は、これで、我慢してください…

 

だんだんと羞恥心が顔を出してきて、声が萎んでいく。

あーやっばい、今すぐ布団を顔に被って寝ないと悶えるぞ。

絶対悶えるぞ、すぐ悶えるぞ、ほら悶えるぞ。

 

「…もういっかい」

 

「へっ?」

 

もう一回ちゃんとやって!!

 

なんでさ!!

 

「なんでじゃないよ!!今の私のその、ふぁ、ふぁーすと…

と、とにかく初めてだったの!!それをあんな不意打ちでなんて許しませんからね!!」

 

「えっ…あっ…」

 

まじすか。ココアならそういう相手の一人くらい今までいてもおかしくないと勝手に思ってたけど…この感じだと完全に初めてなのか。

…いや、自分で考えといてなんだけど嫌だな。

 

「ほらリンネくんもう一回!ちゃんと私を見る!んー、んー!!」

 

「あっあの、ココアさん分かりました!!分かりましたからグイグイするのやめて!!」

 

「こらー!さっき呼び捨てで呼んだでしょ!

これからはずっとココアって呼んで!!あと敬語も禁止!!」

 

「う、わ、分かりましたよ…」

 

覚悟を決めて向き直った。

ココアも恥ずかしくなってきたらしく、目を逸らしてもじもじしていた…が、こちらを向いて目を閉じた。

 

 

 

どちらのものかも分からない小さな声が漏れる。

自分のものとは明らかに違う華やかな香りがして、そうしてせいぜい数秒経って。またゆっくり息を漏らして離れて。

…目を開くと、赤い顔で、潤んだ目で、それでもこちらを真っ直ぐに見ていた愛しい人の顔があった。

 

「…リンネくん」

 

「…はい」

 

「え、えっと…ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

 

「…はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

もう一度ゆっくり、互いに抱きしめ合って、顔を見て綻んで。

…今度こそ、夢の世界へ…

 

 

 

   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇   

 

 

 

で、現在。珍しいチノちゃんの大声に飛び起き、後をつけてきていたらしい他の面々に現場を押さえられ、そして。

 

『『…………』』

 

『え、えっと、リゼちゃん…』

 

『シロウ、ちょっと待って。とりあえず話を』

 

『『二人とも、正座』』

 

『『えっ、ちょっと待』』

 

『『せ・い・ざ。』』

 

有無を言わさず年長者二人組に正座させられたのでした。

くそ、浮かれずに早起きしとくんだった…!!

 

「…えっと、それで、だな。

まず、二人はなんで同じベッドに?」

 

「…なんで、と、言われましても、その」

 

「やっぱエッチなことしてたの?」「エッチな本みたいに?」

 

「「してません!!」」

 

マヤちゃん&アスカの発言を思わず即刻否定した。

いや、確かに見ようによってはそう見られるのかも知れないけど、そんな18に足を突っ込むようなことではないです!

 

「で、でも同じベッドで寝てたじゃないですか!

しかもココアさんなんて、リンネさんに、だ、抱きついて…ふっ不純です!!」

 

「チノちゃんそんな言葉どこで覚えたの!!?」

 

「ん〜?でもココアちゃんって割と色んな人にスキンシップするよね〜別に一緒に寝るのも珍しくないんじゃないの〜?」

 

タマキから思わぬアシストが!

これでチノちゃんも少しは落ち着いて…

 

「女の子同士と男女間でスキンシップするのはわけが違います!!」

 

ですよねー。まあ僕も男だ、いい加減腹をくくって本当のことを…

 

「あっ、あの!!」

 

「ん…なんだココア、弁明があるなら聞いてやるぞ」

 

「べ、弁明っていうか…えっと、うん!

 

わ、私は…保登ココアは、こちらのリンネさんと…お、お付き合いをさせていただくこととなりました!!」

 

 

………沈黙。ココアの唐突なカミングアウトに、みんな驚きやら喜びやらで黙ってしまいました。

 

「だからその、同じベッドで寝ていたのは…えっと、私がわがまま言ったからで…リンネくんは悪くなくて…」

 

「う、む、むう…そうは言ってもな…」

 

「でも本当はリゼちゃんもシロウさんと添い寝してみたいとか思ってるんじゃないかしら?」

 

「ちっ千夜!?お前急に何を」

 

「それに、リゼちゃんだってココアちゃんがリンネくんのことを好きなのは気づいてたんでしょ?

二人の関係に私たちがあれこれ口出しするなんて無粋じゃないかしら?」

 

「う…それは、確かに」

 

「だが。それはそれとして、取り返しがつかないことになる可能性もあるわけだ。

リンネ、お前も今後は気をつけるように」

 

「………はい」

 

まあ、それはそのとおりなので仕方ない。

でも、今回の選択は間違ってないと思うので、それは…

 

「…と、言いつつも。ひとまず祝福はしておかなくてはな。

おめでとう、二人とも」

 

と、シロウからのおめでとうを皮切りに、その隣のリゼさんや見守っていた千夜ちゃんにタマキ、少しへそを曲げていたチノちゃんからも祝福の言葉をいただいた。

少し気恥ずかしいけど、何より認めてもらえたことが嬉しくて。

 

…こうして、騒がしい夏の一幕は終わりました。

 

 

 

「ふぅ」

 

片付けや荷物のまとめを済ませ、適当な岩の上に腰掛け一休み。

日差しはあいも変わらずジリジリと照りつけてくるものの、涼やかな山風がいい具合に暑さを中和してくれていた。

 

「リンネくんお疲れ様。よいしょ、っと…」

 

「ん…ココアも片付け終わったの?」

 

「うん。もうすぐ帰るからリンネくんを呼んできてくれってリゼちゃんに言われてるんだけど…」

 

ぽす、とココアがもたれかかってきました。

そして上目遣いにこちらを見て…

 

「…あとちょっとでいいから、二人でゆっくりしたいなぁって」

 

「………いいよ」

 

「…やったー」

 

そんな可愛い仕草で頼まれたら断れないじゃないですか。

と、更に追い討ちをかけるようにこっちの手に自分の手を重ねてきて…

 

「リンネくん」

 

「ん…」

 

「これからは…その、恋人として、よろしくお願いします」

 

「…こちらこそ」

 

…また、しばらく無言になって、ふとココアの方を見た。

案の定、また目があって。互いに顔がほころんだ。

 

 






ED『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』サンボマスター

この話が書いてて一番楽しかったかもしれない。
ちなみに他のカップル組の女子たちは(まさかココア(ちゃん)に先を越されるなんて…)とか考えてます。

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