はい、今回から5巻に入ります。
ちょっと流れを変えたり加えたりしてDear my sister編です。
「みんなと過ごした日々は忘れないよぉぉぉ!!
今まで本当にありがとおぉぉぉぉ!!!」
「私だってココアちゃんのこと忘れないわ…!」
「千夜ち゛ゃん〜!!今日は泣かないって決めたのに〜!!」
「こ、ココア、これ…ハーブクッキー…
向こうに行っても、連絡ぐらいしなさいよ…!」
…えー。皆様、衛宮リンネです。
現在、僕たちは街の駅にいます。
何故ココアちゃんや千夜ちゃん、果てはシャロちゃんまでもが泣いているのかと言いますと。
「リゼ〜!?一体何なのこの状況!?」
「ココアちゃん転校しちゃうの!?」
たった今やってきたマヤちゃんメグちゃんが何事だと言わんばかりに慌てています。
…一方、それを尋ねられたリゼさんやシロウは呆れ顔で
「「…1週間帰省するだけだ」」
とあっけなく返答したのでした。
いやまあ僕も呆れはせずとも驚いてはいますよ。離れるとはいえ1週間でここまでとは…
「だって寂しいんだもん!リンネくんは寂しくないの!?」
「え、いや、うーん…まあ寂しくないわけでは…」
「ま〜ココアちゃんは感受性豊かですしおすし?
あたしらとは感覚が違うだけだからリンネくんも気にすることないんじゃないの〜?」
「とはいえ、ここまで長く留守にするのはリンネたちが中学校で修学旅行に行って以来か。
ほぼ丸々1週間となると今までよりも長くなるわけだな」
…そう。当然のように話を進めていますが、僕もまたココアちゃんの帰省についていくことになっているのです。
話は昨日に遡り。ココアの元に新たにモカさんからの手紙が届きました。
『ココア、元気?チノちゃんやリンネくんたちと仲良くできてる?実は最近うちの店がすごく忙しくなってきちゃって。
でもココアは帰ってこなくていいからね。本当に大丈夫だから。本当よ?
お姉ちゃんたちでなんとかするからね!
モカより!』
「…遠回しに帰ってきてほしいって言ってるのか、これは」
「そうなんだよセントくん。
まったくお姉ちゃんも素直に言えばいいのにね!」
「でもさ、なんでココアちゃんの帰省にリンネがついていくの?」
「そうですね。お手伝いさんというわけでもなさそうですし…」
あー、アスカもシキも聞いちゃいますか、それ。
隠してても仕方ないし正直に言っちゃうか。
「まあ、仮にもお付き合いし初めたわけですから僕らは。
僕としてはご両親の方に挨拶しておくのが良いかなぁって思っただけですよ」
「…ん〜?あたし千夜ちゃんのお父さんとかお母さんに挨拶してなくね?」
「あら、そういえばそうね。でも二人とも今は街にいないから仕方ないのかしら」
「……シロウ?」
「いやなんだ、その。私も一つの店の店長である以上業務だなんだと時間が取れなくてだな…」
「今度ちゃんと挨拶しに行こうな?」
「ハイ。」
「私の方は…シャロの両親もこの街を離れているんだったか…」
「ま、そんなに気にすることでもないわよ。お付き合いに親がどうのこうのなんて昭和かって感じだし」
ありゃりゃ。どうやら恋愛関係の先輩たちはちゃんと挨拶とかできてなかったようです。
ということは実質的に僕が最初になるわけか。
「あ、チノちゃん!私がいない間はこの子を私だと思ってね!」
「いや、これ私の人形じゃないですか…」
「私がいなくても元気でやってね!」
「くるしいです…」
「心配しないでココア!私たちが寂しくさせないから!」
「お店のお手伝いもしに行くね〜」
「では俺たちも暇を見て遊びに行くとしよう」
「中学校組の絆ってやつだね!」
「とはいえ私たちも仕事がある以上はなかなか行けそうにも無いですが…」
「うんうん…頼れる妹弟たちで安心だよ!
リゼちゃん!私が留守の間のお姉ちゃんの座は任せたよ!
シロウさんも
「なっ、わ、私か!?」
「…お父さん、か、ううむ」
戸惑いつつも嬉しそうな雰囲気を隠せていないリゼさんに対し、あからさまに複雑そうな表情を浮かべるシロウ。
一応まだ二十代なんですよ、彼。
と、発車時刻を告げるベルがなった。
名残惜しいけど早くいかないと。
「ココア、そろそろ乗らないと」
「うん!チノちゃん、毎日電話するからね!」
「毎日は駄目です。せっかくの帰省なんですからゆっくりしてきてください」
「そ、そんなぁ!
うう…みんな、チノちゃんのことよろしくね!
きっと一人で眠れないと思うから、あと好き嫌いもしないようにちゃんと注意してあげてね!あとそれからそれから…」
「いいからさっさと行ってくださーーい!!」
「せっかくの休暇だ、ゆっくり楽しんでこい」
「土産話はよろしくね〜」
「うん。…あ、出発時間だ!」
「いってきまーーす!!」
こうして列車は走り出し、みんなに見送られて僕たちは出発したのでした。
そして、走り出してしばらく。時間つぶしも兼ねて今までココアが撮ってきた写真を見ていると…
「わぁ…!リンネくん見て、いい景色だよ!」
「おお…!」
まさしく大パノラマと呼ぶにふさわしい景色が、列車の動きに合わせゆっくりと流れていく。
ココアが車窓を開けると、気持ちの良い風が流れてきた。
「風が気持ちいいね〜」
「本当ですね~」
あれ。何やら聞き覚えのある声が後ろから…
「青山さん!」
「こんにちは。ココアさんとリンネさんは旅行ですか?」
「私は実家に一時帰省で、リンネくんはその付き添い!
青山さんは?」
「ふふ…私は自分探しの旅に。
街ではもうすぐ花火大会ですが、そこであえてバカンスというのもなかなか乙なものですね」
花火大会かぁ…知らなかったな。
実家の方でも夏祭りはあったけど、木組みの街のはどんな感じになるんだろう…
「去年は残念ながら雨で中止になってしまったので。
きっと皆さん楽しみになさっていますよ」
「おお〜!帰ったらすぐにでもいかなくちゃねリンネくん!」
「行く前から帰った後の話をするの…?」
「ふふっ。私も今から見知らぬ街に思いを馳せて見ましょうか…」
「その前に小説のネタを考えてください先生!!」
うお、突然誰かが…あれ、あの人見たことあるような。
確かシロウに仕事の話を愚痴ってた…
「あ、凛ちゃんさんだ」
「凛ちゃん…さん…?」
なんかものすごーく聞き覚えのある名前です。
別の意味で。
「ほら!次の駅で降りますよ!
ついでに取材していきましょう!」
「あらら〜。二人ともお元気で〜……」
青山さんは連行されていったのでした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方その頃ラビットハウスでは。
マヤとメグに加え、ジーク・アスカ・シキの三兄弟が遊びに来ていました。
「にしても今から1週間か〜割と長いね」
「あっという間だよ〜」
「でも、ココアちゃんがいないといつもより割増で静かだよね」
「まあ、寧ろ喫茶店としてはこういう雰囲気のほうが正しいのでしょうがね」
と、楽しげに雑談する4人とは裏腹にジークはカウンターで心配そうにチノを見ています。
「チノ、大丈夫か?」
「何がですか?」
「いや…ココアがいない分やはり静かになったと思ってな。
寂しくないかと思ったんだが」
「問題ありません。むしろ喫茶店としては少し静かすぎるほうがちょうどいいんです」
「そうか…それならいいんだが」
「あ、そういえばさ!さっきシストの地図見つけたんだよね!」
「後でみんなで一緒にやろうね〜」
「そうですね。
…ジークさんどうぞ、アイスコーヒーです」
「ん、ああ。ありがとうチ、ノ…?」
ジークは一瞬困惑した。
目の前に出てきたのは、アイスコーヒーというよりもアイスココアだった。
いや、もしかするとサービスでミルクを入れてくれただけかも知れない。そう思い一口飲んだ。
それはやはりアイスココアだった。
「チノ、これはアイスコーヒーじゃなくてアイスココ、ア………」
「ん〜どうしたんだよ〜ジーク!」
「チノちゃ〜ん。これアイスコーヒーじゃなくてアイスココア…」
「「「「全部アイスココア!?」」」」
チノは無自覚にアイスココアを作り続けていた。
それもジークやマヤたちが注文した分だけでなく、誰がこんな量を飲むんだという程の数であった。
「も、もしやこれが噂のココアシック?」
「だからって物理的にココアを作りますか普通!?」
「こ、ココアシックって何のことですか…?」
「自覚してないよ~…」
「ココアがいない静けさがそうさせるのか!?」
「……思いの外重症みたいだな。
それよりもこの大量のアイスココアをなんとかしなくては…」
「こらお前らっ!休日をだらだら過ごすな!!」
「「「「なんか来た!!」」」」
リゼ…さんは妙に気合が入っているな。
ココアに色々任されたからか?
「お前たち来年は中学生だろ!」
「高校生だよ!?」
「どっちも変わらん!!」
「大違いです!」
「リゼさん、すまないが今はちょっと待ってほしい…」
「というかリゼちゃんも手伝ってよ〜。
ボクたちのお腹ココアでいっぱいになっちゃうよ」
「なんだこの大量のアイスココアは…!?
っていや、前にもこんな事があったような」
その後、どうにかアイスココアを飲みきったジーク達はチノたちともどもラビットハウスの掃除を手伝うこととなったのでした。
「こんなに疲れる掃除初めて…」
「だいぶ徹底的にやったよね。
シロウとおんなじぐらい厳しかったんじゃない?」
「わざわざ終わった後に確認していくあたりも同じでしたからね。裏で打ち合わせでもしていたんでしょうか」
「ありえない話ではないのが恐ろしいところだな…ある意味そういう点でもお似合いだということか」
「そこ!変な話に持ち込んで誤魔化そうとしても無駄だからな!」
「「「聞かれてた!!!」」」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「すまないリンネ、シャープへンの芯が…あ」
そうだ、今日からリンネは居ないんだったな。
いつものクセでつい…
「あんれ〜ジークってばリンネくんシックかしら?」
「タマキ…?なんだそれは」
「んにゃ〜適当に言ってみただけですヨ。
聞いた話じゃチノちゃんもココアちゃんシックみたいだし、千夜ちゃんもそうだったからさ〜」
…千夜さんも?
確かに二人は仲良しだがそこまでとは…
「もうメニューがココア味のもんばっかなの。
名前だっていつものと違う直球だし、ほらこの文字のとこ」
…ココアの髪飾りらしき物が描かれている。
チノはともかく千夜さんも相当重症だな…
「ま、寂しかったら連絡の一つでもしてみればいいんでないの?
あたしは寝るけど。おやすみ〜」
「…おやすみ」
部屋に戻った。試しに電話をかけてみた。
『電波の届かない場所にいる』と言われて繋がらなかった。
そういえばココアの実家は山の方にあるんだったか…
思えば、俺が物心ついたとき、衛宮家にはほとんどリンネの姿があったと思う。リンネの中学の修学旅行で少し離れたぐらいで、それ以外はほとんど同じ時間を過ごしていた気がする。
…俺も、チノや千夜さんの事を言えないな。
「…寝よう」
また明日、都合がつきそうな時に電話してみよう。
そう思い、その日は眠りについた。