Dear my sister編、第二話です。
前回から少し話を遡ったりします。
リンネです。
電車に乗り最寄りの駅まで来た後、バスに乗り換え更に街を行きココアの実家を目指しています。
「全然変わってないなぁ〜昔のまんまだよ!」
「いやいや昔って。
言うて1年じゃあそんなに変わらないでしょ」
「こういうのは楽しむのが大事なの!
リンネくんたちの所にも帰ってみたらおんなじこと言いたくなるよ?」
「…そうかなぁ」
ま、確かにココアは楽しそうだしいっか。
その後バスも降りてさらに進みます。
森の中を進み、小川の上の橋を渡り…本当に凄いところにあるんだなココアの実家…
「あ!見えたよ!」
「…ホントだ」
『Hot Bakery』と書かれた看板のあるパン屋さんが。
あれがココアの実家かぁ…
「えへへ…きっとお姉ちゃんもお母さんもびっくりするよ!
リンネくんも早く!」
「ちょ、待ってココア…!」
まあ確かに嬉しいのは分からなくもないけど。
そしてドアノブに手をかけ…
「たっだいま~!!」
「いらっしゃいませ~!」
「ラビットハウスへようこそ〜♪」
………???
何故かそこにはラビットハウスの制服っぽい衣装を身にまとったモカさんと、もう一人…恐らくココアのお母様らしき人がいました。
「さあさあお客様、こちらの席へどうぞ!」
「ウェルカムドリンクのカフェラテで〜す♪」
…美味しい。
「って二人とも何してるの!?」
「逆サプライズ大成功!いえーい!!」
「モカさんその衣装自作ですか?」
「そうだよ!なかなかの再現度でしょ〜!」
「わざわざティッピーのぬいぐるみも作ったのよ?」
本当だ。お母さんも器用に頭の上に乗せてるな…
本物に比べるとちょっとヘタれてるけど、コレはこれで可愛い。
「…お母さん」
「ふふっ。おかえり、ココア」
「…うん!ただいま!!」
思わず目に涙を浮かべながらココアはお母さんに抱きついた。
普段はお姉ちゃんとして振る舞おうとしてるけど、やっぱり親の前だと一人の子供になるんだなぁ…なんて。
…僕も父さんに会いたくなっちゃったかな。
「あら…?あなたがもしかして、噂のリンネくんかしら?」
…あー、うん。そりゃあ僕の話もしなきゃですよね。
でも親子の感動の再会に水を差すみたいで悪いような…
「あ!…そうだ、もう一つあるんだったね!」
「「…?」」
ココアさん?もう一つってなんですか?
僕はともかくモカさんも頭に?が浮かんでますけど?
そしてココアのお母さんはなんで笑ってるんですか?
「実は…私!リンネくんとお付き合いしてます!
サプライーズ!」
「」
「えっへへ…どうどうお姉ちゃん!さすがにこれにはびっくりでしょ!?
…あれ?お姉ちゃん?」
「」
き、気絶してる…そんなに驚いたのですかモカさん。
あるいはショックだったのか…
「はい。リンネくんはこの部屋を使ってね」
「おお…ありがとうございます」
ココアのお母さんに綺麗に整理された部屋に案内された。
こんないい部屋を使わせてもらえるなんて良いんでしょうか。
「大丈夫よ!お父さんからはちゃんと許可をもらってるから♪」
「えっ」
ココアのお父さんの部屋!?そんな所使って本当に良いのか…まあ本人に話してるなら良いのかな。
そうだ、一応無事についたことを連絡しておこう…あれ、圏外になってます。
「うち山奥だから携帯の電波が届かないのよ…」
なん……だと……!?
まさかそこまで山奥だったとは、恐るべしココアの実家…
電話で話したければ街に降りるしかないとのこと。余裕があれば観光がてら行ってみるかな…
「それかうちの置き電話を使えばいいわ。
そっちなら繋がるから」
「ありがとうございます、色々と…」
「気にしなくてもいいわよ。将来的には本当に親子になるわけなんだから♪」
「……はい?」
「あー、そろそろ夕食の準備しなくちゃ。リンネくんもちょっと手伝ってもらえるかしら?」
「え、あ、はい…」
なんかとんでもないことを言われたような気がするんですがそれは。…とはいえ今気にしても仕方がないので大人しく手伝いに向かうのでありました。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「…ふぃ〜」
風呂上がりです。中々良いものでありました。
…ココアとモカさんが入ったあとだと考えなければもっとゆっくりできたかもしれません。明日からは無理言ってでも先に入らせてもらおう。
と、廊下を歩いていると置き電話が。そういえばこれで連絡すれば良いんだっけ…
「………」
やめとこう。今日ももう遅いし、シロウたちにも迷惑がかかりそうだ。どうにか明日に隙を見て街に降りてみよう。
そうしてその日は眠りについたのでありました。
そして翌朝。当然と言えば当然ですがご実家の手伝いをすることに。
まあ僕にパン関連の知識なんてないので大人しく店番や会計の手伝いを…
「リンネくんもこっちの手伝いをしてくれるかしら?」
「え゛」
「そうそう!覚えておいて損はないよリンネくん!」
「パン作り三銃士ならぬ四銃士だよ!」
あーこれは勝てませんね。大人しく従うしかありません。
どうにかこうにか必死こいて手伝いをしたのでありました。
で。その後ココアとモカさんは配達に向かいました。
僕は店に残ってお母さんと開店準備です。
「ふふ。客足も落ち着いてきたし…そろそろ聞かせてほしいことがあるんだけど」
「?」
「ココアとの馴れ初めを聞かせてくれるかしら?」
…おお。そういうところに切り込んできますか。
なんというか、ココアとはまた違った意味でグイグイきますねお母さん。
「ええ、と。街に越してきたばっかりの日に会って…いや、正確に言うと昔会ってたんだっけ?でもそれはお互いに覚えてなかったわけで…
とにかくそれがココアとの出会いでした」
「ふむふむ。それで今まで過ごしてきて…ココアを意識しだしたのはどのくらいかしら?」
「…正直、僕もよく分かってないです。でも…まあ、やっぱりココアはすごく可愛くて、一緒にいて楽しくて…でも、その“楽しい”が友達のままじゃなくて、もう一歩先に進もうとしたっていうか…
まあ、結局ちゃんと説明できるような理由とか、そんなものは無いんですけどね」
「…でも、それでいいんじゃないかしら。
だってリンネくんと一緒にいる時のココア、とっても幸せそうな顔してたもの。
もちろんリンネくんもね」
「………」
「リンネくん。どうかこれからも、
「…はい」
「…なんだか湿っぽくなっちゃったわね!
さ、お仕事お仕事!」
「あ、ココアお帰、り…?」
「……ただいま」
「………」
ココアたちが配達から帰ってきました。…が、なんだか様子がおかしい。
ココアはあからさまにご機嫌斜めですという態度だし、モカさんはモカさんで明らかに落ち込んでるし…
で、話を聞いてみましたところ。モカさんがココアの昔話で思い出し笑いをした…のですが、ココアはバカにされたと思ったとのことで。それで『お姉ちゃん嫌い』と言われたのが堪えたのだそうな。
「そんなつもりじゃないのに…嫌いって…」
「大丈夫よ、ココアは照れ隠しで言っただけでしょ?」
「そうですよ、怒るのはともかくそのぐらいで本気で嫌ったりしませんよ」
「あの目は本気だったもん…!
ココアにとっての姉妹はもうチノちゃんだけなのかなぁ…」
うーん。すごい落ち込みようです。
前に凛さん桜さんから聞いた話だと木組みの街に遊びに来てたときにもこんな感じの事があったらしいけど…まさかここまでとは。
「お母さんに任せなさい!
元気の出るご飯を作る?お風呂沸かしておく?それとも…
私が代わりに妹になる?」
「「無理があるよ(ありますよ)!!」」
まあ、そんなこんなで朝の用意は完了。
…何か騒がしいな。この感じは…
「お客さんたちが来たのね。お手紙にも書いてあったでしょ?
ココアがいない間にちょっとお客さんが増えたって。隣町からも来るようになったのよ?」
「この騒がしさはちょっとどころじゃないよ!?」
「始まる!本日の
「雰囲気がおおよそパン屋さんに似つかわしいものじゃないんですけど!!?」
そうだ、この騒がしさはアレだ。
クリスマスに味わったあの大量のお客様の気配だっ――!!
「では開店前にお母さんから一言!!」
「さっきうっかり手首をひねっちゃったの。
病院に行ってくるわ〜」
「「「えーーーっ!!!?」」」
ちょっと!僕達以外に店員さんの姿が見えないんですけど!?
まさか3人でこの状況をなんとかしろと!?
「どうしよう!?リンネくんも含めて4人いるからお手伝いさん呼んでないよ!?」
「うぐぐ…こうなったら3人でなんとか乗り越えるしかないよ!ココア!リンネくん!!」
「ま、まじですか…」
こうなったら腹を括るしかない。
こっちだって普段から接客業で鍛えられてるんだ、遅れは取らないぞ!!
いざ開店!!
「……………」
「あれ…リンネくん?」
「ココアちゃん僕もう衛宮家に帰りたいよ」
「諦めが早すぎるよ!!!」
その後はとにかく接客…と思いきや、僕とココアはひたすらパンの袋詰め作業に追われていました。
会計作業などはモカさんが素早く…というか長蛇の列の並んでるお客さんの分まで即座に計算してます。出番がない。
「二人とも袋詰めはもっと手早く!!
3秒以内を心がけて!!!」
「こっちのフォローまで完璧!」
「隙がない…!!」
で、どうにかこうにか大量のお客さんを捌き切ることに成功したのでした。客足も落ち着きちょっと小休止。
「ラビットハウス一ヶ月分くらい働いた気がする…」
「
「二人ともよくついてこれたね。しばらく休んでていいよ」
「いやいや、そういうわけには…ん?」
「さぷらいずのおねえちゃ〜ん!」
あら、いつの間にやら新しいお客さんたちが。
『サプライズのお姉ちゃん』とは…?モカさんのことなんだろうけど。
「来たね〜さあ今日のサプライズパンの中身はなんでしょう?」
? 中身のわからないパンなの?
こんなところにまでその手のネタを仕込むとは…
「わぁ!ぱんのなかにちっちゃいぱんがはいってる!」
「こっちには赤い飴玉が…」
「赤い飴玉は大当たり〜!
お好きなパン1つプレゼントで〜す!」
…もしかしてあのパン、中身全部違うのかな…
僕らも知らなかったってことはみんなモカさんが用意してたってことだよね。
「あのね、このまえはぱんにりんごがはいってたんだよ!」
「へえ…!」
「サプライズのお姉ちゃん凄いね!」
「うん!すごい!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして1日の仕事は終わり。
僕はココアとともに街に降りてきています。
ココアは僕のとなりでラビットハウスのチノちゃんに電話中。
一方僕は…
『もしもし、喫茶『衛宮さんち』ですが、ご予約の電話で…』
「こんばんはシロウ。というか電話のとこに僕の名前出てるんだから分かるでしょ」
『なに、ちょっとした遊び心だよ。そちらでは上手くやれているのか?』
「ん…まあね。ジークたちは元気?」
我が家に電話してます。ちゃんと元気化を確認したり、互いの近況を話したり…まあそれ以外特に話すこともないんですけど。
あ、そういえば。
「もうすぐそっちで夏祭りがあるんだっけ?
シロウは何か出店とかやるの?」
『いや、特にそんなつもりはないが?』
「ふーん…冬木にいた頃は屋台の手伝いに駆り出されてたりしてたじゃん?ここでもそういうのやるのかなって」
『さすがにこちらでは楽しむ側に回るさ。
うちの若い面々もこういう祭りはそちら側のほうが良いだろう?』
「あのね。何度言ったか分からないけどあなただって充分若いからね。
まだ二十代でしょあなた」
『ふ、まあお前たちの親代わりのようなものだからな。
精神的には成熟している、とでも言えば聞こえは良いだろう』
「………リゼさんにおじさん扱いされても知らないからね」
『な…おい、なんで急にそういう話』
ぷつり。最後にちょっと言ってやりました、ざまあみろ。
これで少しは年相応らしく若々しさを取り戻すでしょうハハハ。
「リンネくんもお話し終わった?」
「ん…うん。そろそろ戻ろうか」
「うん!あ、それでリンネくん…その」
「ん?」
「……何でもない!早く帰ろ!」
「あ…うん」
最後に何か言いかけたココアの背を追って軽く走る。
…まだ時間はあるんだし、その時に聞こう。