喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

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今回からはSing for you編です。
また長くなりそうですが頑張ります。




Sing for you①

 

衛宮ジーク、中三…現在俺は、同居人二人を含めた同級生四人と共に全力疾走している。

背中には…同級生が一人。

 

目的地はラビットハウス…! 見えた!

 

 

 

「メディック!メディッーーク!!」

 

「支援要請だリゼさん!

横になれる場所を確保してくれ!」

 

 

「「ナニゴト!?」」

 

 

店内にはいつも通りココアとリゼさんの姿が。

飛び込んできた俺たちに一瞬驚き、慌てて椅子をいくつか並べ水を1杯用意してくれた。

 

椅子の上に背負っていた同級生…チノを横たわらせる。

 

 

「とりあえず水を!

それともコーヒーの方が良いかな!?」

 

「誰にやられた!?敵はどこだ!?」

 

 

当然ながら二人とも大慌てだ。

ココアは手が震えて水が零れそうになっているし、リゼさんはモデルガンを取り出し臨戦態勢だ。

 

 

「二人とも落ち着いてくれ。

慌てさせてすまないが…そうじゃないんだ」

 

「ど、どういうことだ…?」

 

「敵とかそういうんじゃないんだってば。

ほらチノ、言ってあげなよ」

 

 

マヤの声かけでチノが正気に戻る。

そして、恐る恐る口を開き…

 

 

「わ…私…」

 

「「私…?」」

 

「音楽会の……合唱のソロパートに選ばれてしまいました…」

 

 

「「えぇぇぇ〜〜〜〜!?」」

 

 

まあ、そうなるか。

かく言う俺たちも学校では驚いたものだからな…。

 

 

「凄い凄い!おめでとうチノちゃん!!

音楽会って私たちも見に行って良いのかな!?」

「大丈夫かチノ!?人前でちゃんと歌えるのか!?」

 

「ひとりずつしゃべってください…

できれば来ないでください…」

 

「チノちゃんアカペラのテストで選ばれたんだから!

先生のお墨付きだよ〜」

 

「で、ですが先生の前で歌うのと大勢の前で歌うのは違うと言いますか…。

思わず引き受けてしまいましたけど…」

 

「イヤなら断ることもできるんだよ?」

 

「一緒に先生に言いに行く?」

 

 

ふむ…確かに無理は良くないな。

だが……ここは、俺からも一言言っておくか。

 

 

「どうしたいかはチノ次第だ。

チノの本心でどうしたいと思うか…それが大事なんじゃないか?」

 

「ジークさん…。

……私…やってみます!」

 

 

「チノちゃん!!」

「チノ!!」

 

 

「保護者のほうが騒がしい!」

 

ティッピーも嬉しそうに跳ね回っているな。

これは当日が騒がしくなるぞ…。

 

 

「…ってゆーかさ。

何ジークは他人事みたいな言い方してるの?」

 

「そうですよ。貴方も2曲目でソロパート頼まれていたでしょう?」

 

 

―――――あっ。

完全に忘れていた。

 

 

「嘘!? ジークくんも!? Really!?」

 

「大丈夫なのか!?」

 

「あ、ああ…チノがこうして決心したんだ。

俺が引き下がるわけにもいかないな」

 

「今すぐリンネくんに連絡しなきゃ!」

 

 

…なるほど。皆にはすまないがチノの気持ちが少しだけ分かった気がするぞ…。

心配されることは必ずしも喜ばしいだけでは無いわけか。

 

 

「…あの、リゼさん。

本番に備えて特訓をお願いできますか?」

 

「特訓?ええと…発声練習とかそのあたりか」

 

「はい。できればジークさんも一緒に…」

 

…む、俺もか?

 

「その、ジークさんがよければですけど…。

一人でやるよりも頑張れそうな気がするといいますか」

 

「……分かった、そういう事なら…一緒に頑張ろう、チノ」

 

「…はい!」

 

「うん、二人ともやる気充分なようだな。

それじゃあ…トレーニングコースを選べ!」

 

 

リゼさんがトレーニングの内容を書いたものを見せてきた。

…まさかと思うが持ち歩いているのか、これ。

『てくてくうさぎコース』と『よちよちうさぎコース』の2つか…。

 

 

「…なんか内容に明らかに差があるような…」

 

「『ような』というか確実にありますよ。

『よちよち』はランニングと発声練習、『てくてく』はそれプラス筋トレにうさぎ跳び…潜入訓練?」

 

 

むう。正直に言うと『よちよち』の方で充分事足りそうな気はするんだが…

 

 

「てくてく うさぎコースでお願いします」

 

「「厳しめの選んだ!」」

 

「気合入ってるな!

ジークもそれでいいのか?」

 

「……分かった、俺もそれでいこう」

 

 

チノが本気で頑張ろうとしているんだ。

なら俺も楽な道を選ぶことはしたくない…。

 

 

「しかしそうなると…俺たちはしばらく店番には出られないわけか」

 

「そうですね…ココアさん、私たちが留守の間は…」

 

「うん。二人がお店を空けるのは寂しいけど…チノちゃんたちは今が頑張りどきだもんね」

 

「ココアさん…」

 

「留守の間の喫茶店(ラビットハウス)はコマメ隊に任せて!」

 

「………」

 

 

チノが急に不安そうな顔に…。

と、こちらも人のことを言えないな。シロウに連絡をしておかなくては。

 

 

 

 

 

   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   

 

 

 

 

 

そして翌日の放課後から、リゼさん…もといリゼ教官の指導のもとトレーニングが始まった。

ランニングから始まり、うさぎ跳び、各種筋トレの整地ローラーとタイヤ引き、丸太の上でのバランス…これは意味があるのか?

 

そして最後に街の高台で発声練習。

 

 

「「カフェラテ!カフェモカ!カプチーノ!」」

 

「うん…いい感じだな。

チノも昔より声が出てるぞ」

 

 

ん、そうなのか。

確かに会ったばかりの頃は声のボリュームが控えめだった…か?

 

 

「それにしても…今回のことは本当にびっくりしたな」

 

「まさか私もこんな大役に選ばれるとは思っていませんでした…」

 

「そっちじゃなくて。

チノがソロパートをやるって決心したことだよ」

 

「そ、それは、その…。

すっ、少しでもお店の宣伝に役立てられればと思っただけです!」

 

「千夜みたいなこと言ってるぞ!?」

 

 

まあ、何にせよすごい決心だとは思うが。

…ん、待てよ。

 

 

「つまり、俺がソロパートをやることはあまり驚きではなかったと言うことだろうか…?」

 

「そっそんなわけじゃないぞ!!

ただまあ…ジークはこれで結構肝が据わっているように見えるからな。

ほら、チノを運んできた時自分のことを言われても動じてなかったじゃないか」

 

「アレはチノが倒れた驚きが勝っていただけなんだが…」

 

 

 

 

何にせよ、その日の特訓はこれにて終了。

俺たちは帰路についた。

 

 

……帰ってみると、ラビットハウスがチノの影響であれやこれやと飾り付けられていたのは少々驚いた。

うちもアスカとチサトが飾り付けようとしたが、シロウに『やめろ』の一言で止められたらしい。

 

シロウに感謝だな…。

 

 

 





一話にまとめようとすると物凄い長さになるので分けます。
次回以降もお楽しみに。

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