Sing for you編第二話。
「「カフェラテ!カフェモカ!カプチーノ!!」」
「良いぞ!二人とも昨日より声が出てるな!」
ジークです。
今日も今日とて音楽会に向けて特訓中。
心なしか体力がついているような気がする。
「よし、最後にもう一度大きな声で…」
「待て待てー!」
「あっははは!」
「む?」「!!」
小さな子供二人が俺たちの後ろを走っていった。
このあたりは人通りが少なかったから少し驚いたな…。
「こら二人とも!周りに乱されるな!」
「あっ…すまない、少し驚いてしまった」
「恥ずかしがるなよ。
戦場では何事にも動じないメンタルが必要不可欠だからな」
「戦場ではありませんが…」
とはいえ、一理ある。
音楽会では生徒や教職員以外にも多くの人が見に来るからな。
…まあ、殆どが保護者などになるが。
「そうなると…人前で歌う特訓もしておいたほうが良いだろうか?」
「そうですね……よしっ」
・ ・ ・ ・ ・ ・
「第一回!
カラオケ大会 in 甘兎庵〜☆」
千夜…さんの掛け声とともに皆が口笛や拍手をする。
人前で歌うのに慣れる為の特訓…成る程、カラオケなら比較的自然に歌えるわけだ。
ちなみにメンバーはできるだけ多いほうがいい、とのことで。
「きっ、きょうは、お足元の悪い中…。
わっ私のためにご足労いただきっ、あっありが…」
…歌う前から既に上がってしまっているが。
それと本日は見事なまでに晴天であり、とてもお足元など悪くなりそうにもないことも補足しておく。
「私たちのことはただのうさぎだと思って!」
「それじゃあ気が散るでしょ…饅頭とか動かないものだと思えば…」
どちらにも渋い顔をされている。
錯覚などというものは残念ながら、自分で好き勝手にオンオフできるものではないからな。
「うーん…そうだ!
お手本を見たらやりやすくなるんじゃない?」
「手本?」
「うん!チサトちゃん手伝って!」
「おまかせあれ。
さぁシャロちゃんいくよー。」
「んなっ、ちょ、あんたら…。
はっ離しなさいよー!!」
抵抗虚しくシャロ…さんが店の奥に連れて行かれてしまった。
…何故だろう、ココアとチサトが何をしようとしているのか分かる気がするぞ。
「はいはーい!カフェインアイドルシャロちゃんの入場だよー!」
「いっえーい!カフェイン入れました〜☆」
だと思った。
しかし衣装まで本格的にアイドルらしいものを用意したのは少し驚いた。
見たところサイズも合っているようだが…。
「みんな〜☆ 今日は来てくれてありがとー!
盛り上がってる〜?」
「「「いえーい!!!」」」
「ん〜? 男の子たちの声が聞こえないぞ〜☆」
さながらライブのコールアンドレスポンスだ。
そしてそのまま歌に突入。いつの間に覚えたのか振り付けまで完璧に披露しきったその姿はまさしくアイドルだった…。
「凄いです!
本当にアイドルみたいでした…!」
「ああ、まさかシャロさんにこういう才能があったとは…」
「う、わ、わ………
私引退します!! 探さないでくださーーい!!」
あ、今の一曲でカフェインが抜けてしまったようだ。
セントと青山さんが追いかけていったが…大丈夫だろうか、あの衣装のまま外を走るほうが…その…。
「あの程度でアイドルとは笑わせるわね!!」
「千夜さん!?」
「いつの間に衣装に…」
いつの間にか衣装に着替えた千夜さんが飛び出してきた。
シャロさんに刺激されたのか?
……タマキもいつの間にか衣装チェンジしている。
アレは…なんだ?司会者か?
「えーどうも皆様、私本日、前口上を述べさせていただきます、遠野小路まきまろと申します。
よろしくお願い致します」
…それはアイドルって言うより演歌とかそっちの方向なのでは…。
ココアや青山さんは懐中電灯をスポットライト代わりに千夜さんを照らしている。
ミラーボールまで出てきたぞ。
「いざっ!」
千夜さんが意気揚々と楽曲を再生させる。
―――やっぱり、流れてきたのは演歌のメロディだった。
そしてタマキの前口上が始まった。
「花と乙女の命短し。なんて人は言いますが、実際どちらも意外と長いもの! 遥かな長い時を越え、千の夜を語り継ぐ!
丸い夜空の月に浮かぶ、貴方の影に想いを馳せて!
叶うならばもう一度、共に食べたいあの甘味…。
『振り向けば月、いいえ団子。』」
なかなかに小気味いい前口上が終わるとともに、千夜さんの歌が始まった。
やはりそれは演歌だったが、千夜さんには合っていたしこれはこれでいい…のか?
「ん~? コールが聞こえないぞ〜?」
「演歌でどうしろと!?」
その後もカラオケ大会は続く、女性陣から男性陣へ、更には男女デュエットなど……いつの間にか本来の目的を忘れ大盛り上がり。
俺とチノはすっかり置いてけぼりだった。
「………どうしたものだろうか、この状況は」
「そう、ですね…やっぱり、本来の目的を忘れるのは…」
「うむ…そうだな。
よし、ここは俺が……」
「………あっ、あの!」
チノの声に皆が振り向いた。
そこで本来の目的を思い出したらしく、リゼさんを中心とした面々が焦った顔。
「すっかり振り回されちゃったわ…」
「「何に?」」
「アンタたちよこの振り回し隊!!」
「そう…!私たち振り回し隊!」
「世界中を振り回しちゃうよ!いえーい!!」
ココアと千夜さん、あろうことかノッてしまった。
というかココアのぶんの衣装も用意してあったのか…。
「あたしも仲間に入りたいな〜」
「わたしも。」
「ボクも〜!!」
「増えた!!」
案の定お騒がせなメンバーが加わってしまったな。
一方振り回され気味なメンバーも集まって……シキ、なぜ俺の腕を引っ張るんだ。
「リゼ先輩!こうなったら私たちも振り回され隊で応戦です!」
「なぜ俺まで?」
「
戦力は一人でも多いほうがいいんです」
「むうっ、ジークくんが向こうに…。
ならせめてチノちゃんはこっちに!」
「チノちゃんは振り回さないでしょ!!」
今度はチノの奪い合いが始まっ…む?
なんだかチノの様子が…。
「振り回され隊は私だけで十分です!!!」
…チノから飛び出したのは、かつてない大声だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日の夜、いよいよ明日に迫った本番に備えて発声練習。
アスカとシキも付き合ってくれた。
シロウから『そろそろ明日に備えて寝ておけ』と言葉がかかり、寝る準備を始めた時。
「ねーねージーク。
ちょっと聞いときたいんだけどさ」
「む?」
突然、アスカに話しかけられた。
聞いておきたいこと、とは?
「そりゃもちろんソロパートを引き受けた理由だよ!
チノちゃんには“ラビットハウスのために役立てられれば”って建前があるにしたって、ジークには特にそういうのないでしょ?」
「……アスカ、さすがにそれはどうかと思いますよ」
「そうだぞアスカ。
俺もそれなりに店のことは大事に思っているし、それが役立つと言うなら…」
「えー!? じゃあさじゃあさ、ジークは歌で宣伝しようとかまがりなりにも思ったワケ!?」
む…そう言われると難しいな。
そもそもわざわざ奇を
「ほらほらー! やっぱり隠された本当の理由があるんじゃないのねえねえ!!」
「アスカ!しつこいですよ!」
理由……何かそれにあたるものはあっただろうか。
先生にソロパートを提案されて、その時…あ。
「チノが先に引き受けると言ったから…だろうか?」
「「?」」
「その…上手くは言えないが、チノがソロパートを引き受けると言って…。
俺も何となく頑張ってみたいと思ったんだ」
「……ふーん。
じゃあジークが頑張ろうって思った理由はチノちゃんなんだ!」
「む……そうなる、のか?」
「へぇ〜! そーゆーことなんだ〜♪」
「???」
何故かアスカが上機嫌になった。そんなに俺の返答が面白かったのか?
シキはやれやれと言った顔になっているし…どうしたというんだ。
「うん! 面白い答えも聞けたし満足かな!
んじゃおやすみ!明日はがんばろーね!」
「…私も寝ます、おやすみなさい」
「あ、ああ…おやすみ」
なんだって言うんだ。
…深く考えても仕方がないか、俺も寝てしまおう。
そして、ついに音楽会本番の日がやって来るのだった…。
ジークくんもなんだかんだメインキャラのつもりなんで今後は主役回を多めに書きたいな〜とか思ってみたり。
ちなみに本作における振り回し/振り回され隊の追加メンバーは
振り回し隊:タマキ・チサト・アスカ
振り回され隊:リンネ・ジーク・セント・シキ
となっております。
シロウは保護者ポジションのためどちらにも属しません。