喫茶『衛宮さんち』   作:山崎五郎

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前回からちょっと時を遡って文化祭準備編です。
話の都合上、オリ男子同級生が何名か登場します。

あと、今回の話も長めです。
というか、これから数話は長くなる予定です。

あらかじめご了承ください。





来たれ文化祭①

 

「えー、という訳で。

文化祭の出し物は喫茶店に決定しました!

実行委員長は実際に喫茶店で働いている千夜さん、副委員長はココアさんに決定です!」

 

 

リンネです。本日は文化祭での出し物とその実行委員決め。

結果は先ほどの通り、テーマは喫茶店、実行委員はココアと千夜ちゃんの二人に決まったのでした。

 

 

「しっかし意外だな、喫茶店経験者ってんならリンネとタマキの二人が真っ先に候補にあがるもんだと思ってたぜ」

 

「ふむ、同意見だな。

日和見主義のタマキはともかくとして、リンネならば誰もが反対することなく実行委員長に任命されていたことだろう」

 

「ま、あたしはそんなご立派な役職につくのは勘弁なんで立候補しなかっただけなんだケドね〜。

リンネくんも名前が挙がらなかったのは意外かも」

 

 

んー、こういうイベントはみんなを引っ張る勢いが大事と言いますか……そう考えたら千夜ちゃんやココアが向いてるって思っただけなんだけど。

 

 

「あのー、皆…」

 

「「「「ん?」」」」

 

「なんか、実行委員の二人が燃え上がってるけど…大丈夫かな?」

 

 

「私たちが実行委員に選ばれた以上…」

「妥協と敗北は許されないわ」

 

 

「「今年の文化祭は、戦争ですっ!!」」

 

 

「まずい!放ったらかしたら確実によろしくない方向に突っ走る流れだコレは!」

 

「止めろ!あの二人を止めろ衛宮共!」

 

 

えー。流石に信用なさすぎでは。

まあちょっと大げさって気はするけど…。

 

 

「あのー…男子の意見としましては補佐役をつけた方がいいと思います…同じ喫茶店経験者の…」

 

「んー…確かに私たち的にも脇を固めてくれる子がついてくれてたほうが安心かな。

―――リンネくん、タマキくん、頼める?」

 

「………まあ、そこまで心配なのであれば」

 

「あたしたちにお任せあれ〜」

 

 

 

「そういえば…今年は他のクラスも飲食系が多いって聞いたわ」

 

「そうなの!だからなおさら負けられないんだよ!」

 

「はいはーい!

リンネはともかく、ココアたちが働いてるとこ想像できませーん!」

 

 

あれ、そうなの?

そういえばクラスの皆ってラビットハウスとか衛宮さんち(うち)に来たことってなかったのか…。

 

 

「ふっふっふ。

どうやら私たちの別の顔を知らない子がたくさんいるみたいだね……。

 

千夜ちゃんのお盆三刀流は達人の域だよ!!」

 

「仕事関係ない!」

 

「つーかお盆三刀流ってなんだよ…」

 

「ココアちゃんの日向ぼっこぶりはお客さんも褒めるほどよ!」

 

「こっちはただのサボりじゃねぇか!!」

 

「……リンネ、念のため聞いておくが。

タマキ(そいつ)は何か優れた点などはあるのか?」

 

「…………真面目にやれば仕事はきっちりこなせる所かな。

……甘兎に通ってばっかだから滅多に発揮されないけど」

 

「おい!今すぐリンネ以外の実行委員を変更しろ!!」

 

「えー、皆酷くな〜い?」

 

「決定打はお前だよ!!」

 

 

 

 

   ・   ・   ・   ・   ・   ・   

 

 

 

 

その後、どうにかこうにかクラスの皆には認めてもらえたのでした。

千夜ちゃんの司会進行能力でなんとか繋ぎ止めた…って感じだけど。

 

 

「千夜ちゃんの司会進行すごくよかったよー!」

 

「うんうん、さすが未来の女社長だねぇ。

溢れ出るカリスマの片鱗が見え隠れしてたよ〜?」

 

 

溢れてるのか隠れてたのかどっちなんだ、と聞くのは野暮なのだろう。 タマキは単に恋人を褒めたい(惚気たい)だけだ。

……あれ、千夜ちゃんの様子がなんかおかしいぞ。

 

 

「わ…私…皆を仕切るのなんて初めてで……。

ぶ……無事成功できるのかしら……?」

 

「「今更!?」」

 

「まー、我に返って自信なくなるってよくあるよね〜。

でも千夜ちゃん甘兎で普段から頑張ってるじゃん?自信もって良いんじゃないの〜?」

 

「それは…甘兎庵が私が最も力を発揮できる場所だからで……。

うう―――こんなんじゃ将来甘兎庵社長としてやってけないわーっ!!」

 

「千夜ちゃん!?」「あらら〜…」

 

 

とうとう泣き崩れてうずくまってしまった。

なんか千夜ちゃんって普段から堂々としてるから、こういう姿を見るのは新鮮だったり。

 

 

「こんなにプレッシャー感じるなんて思わなかったのぉ…うぅ……」

 

「よーしよし。頼れる友達がいるのを忘れちゃいけないよー」

 

「頼れる彼氏くんもね〜。

三人寄れば文殊の知恵、四人集まりゃ何とやらってね〜」

 

 

おい。

それだと僕がオマケみたいじゃないか。

 

 

 

 

   ・   ・   ・   ・   ・   ・   

 

 

 

 

「ふむ…文化祭の準備期間か。

例によってその間は出られそうにない、と」

 

「うん…クラスのみんなとの話し合いとか、教室の装飾とかもあるし…ごめんね」

 

「気にすることはない。このシーズンならありそうな事だ、既にシフトは調節済みだよ。

他ならぬ私も、似たような経験がある」

 

 

あ、そうか。

そういえば冬木にいた頃も、シロウが文化祭準備で店を空けたときがあったっけ…。

 

 

「いいなー。 うちの学校に文化祭ないから。

提案したらこっちもやったりするかな。」

 

「ありえない話ではないのが恐ろしいところだな。

……まあ、リンネたちがいない分は私たちが頑張るさ」

 

「セント…ありがとう」

 

「その代わり招待券はよろしく。」

 

 

ですよね。

まあもちろん渡す気はあったけど。

 

 

 

 

   ・   ・   ・   ・   ・   ・   

 

 

 

 

「ん〜…この設計図の配置だと風水的に良くないわね。

気の流れはこっちから来てるから、それを遮らないように…」

 

「そうなの?結構難しいわね…」

 

「まあ、修正の方は私たちでやっておくから心配しないで」

 

「大道具はうちの居候先が大工だからまかせろ〜」

 

「千夜は色々一人で抱え込みすぎ!」

 

「皆…」

 

 

クラスメイトの皆が少しでも良いものにしようと進んで行動してくれている。

これもコッソリと千夜ちゃんの心中を皆に話してくれた誰かさんのおかげなのだろう。

 

 

「ね、皆頼りになるでしょ?」

 

「こうやって遠慮せず仕事を投げつけるのも社長だよ!」

 

 

「………うん!

素晴らしい社員たちに恵まれて幸せ!」

 

 

「いつ社員になった!?」

 

 

 

ツッコミの声が上がりつつも、その後に上がるのは笑い声。

千夜ちゃんの緊張も緩み、文化祭準備は和やかな雰囲気ですす――――

 

 

 

 

「大変だーーーっ!!!」

 

 

 

―――まず。

 

空気を震わす声が、再びクラス内を緊張に包む。

その張本人である駆け込んできた男子…『他クラスの様子を探る』といっていた大黒(おおくろ)吉永(よしなが)その人は、どうにか息を整えて告げた。

 

 

「大変だぞ社長!

例の葡萄館がC組と組むって話が……!」

 

 

ええ、と驚きの声が上がる。

 

無理もない、話に上がった葡萄館の葡萄ジュースはこの街でもかなりの知名度を誇るものであり、ソレを獲得できたとあればネームバリューとしてもメニューとしても他クラスより有利を取れる(アドバンテージとなる)のは言うまでもない。

 

 

「うそー!?あそこの葡萄ジュース狙ってたのに…!」

 

「他のクラスも人気店と協力してるんだって…」

 

「このままじゃ没個性な喫茶店になっちゃうよー!」

 

 

クラスにも動揺が広がっていく。

この雰囲気をどうしたものか、と思考を巡らせるが…。

 

 

(シロウに協力してもらう、は……無理だよなあ、やっぱ)

 

 

脳裏に浮かぶのはひとつ。

僕が考えうる最強にして唯一無二のワイルドカード。

 

だがそれを無理と断ずる条件がひとつ。

 

 

 

あの料理の数々は、他ならぬ衛宮シロウが腕を振るうことによって完成するものであること。

衛宮の家において多種多様という言葉では生ぬるい需要(ニーズ)に適応してみせ、かつそれらを日常的に提供してきた彼だからこそあの味が生み出せる。

 

というかこの時点で、『学生が作る』という前提がクリア出来ていないのでそもそもアウトなのだが。

 

 

 

 

「ううん…メニューが地味なら内装や装飾の個性で勝負ね…」

 

「あ! お嬢様学校から備品借りるとかどうかな?」

 

「それナイスアイディア!」

 

 

確かにあの学校なら、内装に使えそうな装飾品やオブジェが揃っていることだろう。

…チサトに聞いた話からの推測でしかないけど。

 

 

「よし!クラスを代表して委員長!行ってきてくれ!」

 

 

「………あの学校第一志望だったんだよね」

 

「「「委員長ーーー!!!」」」

 

 

撃沈。

仕方がないので、実行委員である僕・ココア・千夜ちゃん・タマキの四人で向かうこととなったのでありました。

 

 

 

 

そして、たどり着いたはお嬢様学校。

生徒会あたりの人にでも話して、使えそうな備品をピックアップして帰ればいい…と思っていたんですが。

 

 

「……あの、なぜ僕らはこの学校の制服に?」

 

「あら、この学校で備品集めの対決をなさるんでしょう?

でしたらふさわしい服に着替えないと」

 

 

それはつまり、自分たちの制服は戦闘服だと言っているようなものでは。

いやまあ、これもある種の歓迎の形…なのかな?

 

 

とにかくそういうことで部活動を巡っては対決を繰り広げたのでした。

新体操部、吹き矢部、けん玉部……そこ、それは部活動と呼んでいいのかとか言わない。

 

ココアと千夜ちゃんが勝ち取った備品たちを、僕とタマキが運ぶ…まあ、分かりやすい役割分担でした。

しっかし、これならうちの学校の男子共を何人か引っ張ってくるべきだったか…。

 

 

 

 

「ごきげんよう〜」

 

「あ、どうも…」

 

「ごきげんよう〜」

 

生徒さんに声をかけられ、思わず返事を返すがうまく言葉が出ない。

こういう時にサラッと挨拶を返せるあたり、やはりタマキも名家の血筋というわけか…。

 

 

「「聞き覚えのある声が!?」」

 

 

ん? 向こうから聞き覚えのある声が。

……あれ、リゼさんにシャロちゃんじゃん。

 

その他、こっちの学校に通う同居人(セントとチサト)をはじめとして、見覚えのある面々がそこには居た。

 

 

「お前らなんでここにいるんだ?

というかその制服どうした」

 

「あーまあ…話すと長いんだけどね…」

 

 

 

「……はあ、そういうことか。

しっかしそこまでするとは…ずいぶん気合入ってるな」

 

「ま、千夜ちゃんがあんだけ頑張ってるわけですしー?

彼氏くんとしてはなんとかしてやりたいと思っちゃうわけデスヨ」

 

「クラスの皆もやる気になってくれてるしね。

後悔しない様にやれることはやりたいんだ」

 

「………当日は楽しみにしておく」

 

お、珍しくセントから前向きな意見を貰えました。

こっちに来た意味がまた一つ増えたかな、なんて思ってみたり。

 

 

「リンネくーん!タマキくーん!

そろそろ戻らなくちゃー!!」

 

「飾り付けの打ち合わせもしないと!」

 

 

おおう、社長と副社長からのお呼ばれです。

急いで戻らねば。

 

 

「それじゃあ、僕らはこれで」

 

「あ、待ってくれリンネ」

 

 

ん?ジーク?

 

 

「俺たちも、文化祭!

楽しみにしている!!」

 

「…うん!」

 

 

こうして、僕たちは僕たちの学校へと帰っていく。

 

 

 

 

 

………などと、いい話風に言ってみたものの。

 

 

 

「―――どーすんだ、これ」

 

 

それはそれは独特なセンスを感じる備品の数々を見て、思わずそんな言葉が漏れたのでした。





おかしい…長くなるから分割しようって決めたのに…。
次回も例によって長くなりそうですが、応援していただければ幸いです。
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