喫茶店『衛宮さんち』は、本日もそこそこの繁盛。
お客様の波は一旦収まりを見せ、現在はぐだぐた休憩タイムです。
「んん〜ここ最近でお客様も増えてきたねぇ~その分疲れるけどさ」
「やはりシロウの料理は魅力的だからな。
翌日には足を運びたくなってしまう」
「それはどうも。
それよりも昼からの第二波に備えて各々気を引き締めてだな…」
ダァンッ!!と店の扉が勢いよく開かれ、思わず皆でそっちを向く。
そこには…ココアちゃん?
「衛宮一家に救援要請だよ!」
「…救援、要請?」
「男ではあって困るものでもないからな!!」
「…すまない二人とも、状況が飲み込めない…察しが悪くてすまない…」
「ジークさんが謝ることでは…」
「「「「「「シャロ(ちゃん)(くん)がいかがわしいお店で働いてるかもしれない?」」」」」」
…待て。
セントとチサトは納得してるけど、僕はその人のこと知らない…これでも主人公のつもりなんだけどなぁ…
「あー…その、このフルール・ド・ラパン?
に調査に行くためにうちの人間を何人か借りたいと、そういうことでいいのかね?」
「はい!これも私の親友を救うためと思って…」
まあ、それが事実だとしたら確かな大変な事態ではあるけど…そもそも高校生がその…そういうお店で働けるものなのかな?
面接の時点で爪弾きにされるんじゃ…
「………ねえ、そもそも広告で意味深な感じだしてるけどさ、フルール・ド・ラパンってただの喫茶店じゃなかった?」
「え、そうなのタマキ?」
「私も少し前に見たな。
ハーブティーがメインどころの喫茶店らしい。
しかし、わざわざあんな広告まで打つとは…余程のこだわりがあるのだろうな」
どうやら千夜ちゃんの勘違いだったようです。
でも、千夜ちゃんの性格的に言っても止まらないだろうなぁ…
「まあ、調査にいくというなら止めはしないさ。
精々早めに調査を済ませて帰ってきてくれ。
一人で店を回し切るのは無理があるからな」
「ここみたいだね」
「外観からして普通の喫茶店っぽいけど…」
「いや、外見は安全と見せかけて中身は恐ろしい魔境というパターンかも…」
「近づいて覗いてみるか」
「いいか?慎重に覗くんだぞ」
「「「「「「「せーのっ…」」」」」」」
と、
…そこに居たのは、
「いらっしゃいませ〜♪」
…可愛らしいロップイヤーが特徴のメイド服風の制服を着て接客に励む、可愛らしいお嬢さんでした。
あの子がシャロちゃん?
千夜ちゃんの幼なじみだって聞いたけど…?
「…別にいかがわしい感じとか、そんなのはなさそうだけど?」
「だねぇ。
それはそうとリンネくん、あたしらなんか少なくない?」
え?
何言ってるんだタマキは。
僕、タマキ、ジーク、ココアちゃん、チノちゃん、リゼさん、千夜ちゃん…あれ。
何だか、約2名ほど足りないような。
『シャロちゃん、その制服、可愛い…!』
『ち、チサト!?それにセントもどうしてここに…ってあー!あんたたちもなんでいるの――――――――!』
…チサト。潜入を忘れて突っ込んで行ってたんだ。
見事にバレてしまった。
「ここはハーブティーがメインの喫茶店なのよ
ハーブは体に良い色んな効能があるの」
「『心も体も癒やす』ってそういうことだったんだね」
「大体こんなチラシで勘違いしたの誰よ…」
「私たちシャロちゃんに会いに来ただけだよ?」ココア
「「いかがわしいってどういう意味です(だ)?」」チノ&ジーク
「「まあこんなことだろうと思った」」リゼ&セント
「大体そんないかがわしい店が大体的にビラなんて巻かせないでしょ」タマキ
「シャロちゃん可愛い。制服似合ってる」チサト
「……………」
シャロちゃんがこちらを見た。
しばらくジーッ…と眺めた後千夜ちゃんの方に向き直った。
「その制服すてき!」
「あんたか…」
「シャロちゃん可愛いね〜ウサミミ似あ〜う」
「店長の趣味よ…ジロジロ見ないで!」
「「……………」」
(はっ!!?チサトはともかくリゼ先輩とセントにまでこんな格好見られるなんて…あれは軽蔑の目よ!!)
「…セント、どうして黙ってるんだい?」
「いや、なんだ…普段はキッチリした学校の制服姿しか見ていないから新鮮でな。
うちもお隣も制服はシンプル寄りだし」
「確かに…ああいう制服も華やかでいいかもね。
…うちだと着そうなのがチサトぐらいしか居ないけど」
「………そういえばあんたたちなんで揃いも揃って制服なのよ」
「あ!ホントだ!」
「つい急いじゃって…」
「「「店員さーん、注文おねがーい」」」
「「「はーい♪」」」
と、ココアちゃん千夜ちゃんチサトがお客の方に…!
「紛らわしいことやめてよ!」
「営業妨害だよ!!」
「せっかく来たからお茶していってもいいかな?」
「しょうがないわね…人数多いからテーブル分けるわよ?」
「あ、僕たちは帰るよ。
店シロウに任せっぱなしだし…」
「ええ〜!一緒にティータイムしようよ!」
「いや、そう言ってもね…」
これでもし遅くなったりしたらシロウにどれだけグチグチと嫌味を言われるか分かったもんじゃないしなぁ…
そりゃハーブティーはまぁ…興味はあるけど、それなら今度ゆっくり…
「良いんじゃないかたまには?
お前らだって普段よく働いてるんだし、一回ぐらい」
「リゼさん…でも…」
「それに…『可愛らしいお嬢さんに付き合わされてた』とでも言えばアイツも納得してくれるだろうさ。フフフ…」
…シロウ、すっかりリゼさんに嫌われてしまったようだ。
『なんでさ!』とか今頃店で叫んでるんだろうな…
「ハーブティーね〜あたしも実家に居た頃はメイドさんが庭で採れたやつで作ってくれてたっけな」
「自家製ハーブ!?凄いな…」
「まあお味が子供の舌に合うかって言われれば…まぁ…って感じだったけどね」
「あー…確かに。
あの鼻に通る匂いが僕も何だか苦手だったね…」
「しかし…そうなるとどんなものを頼んだら良いのかさっぱりわからないな」
「迷うならそれぞれに合ったハーブティーを私が選んであげるわ。
ココアとチサトはリンデンフラワーね。
リラックス効果があるわ
千夜はローズマリー、肩こりに効くのよ
チノちゃんとリンネは匂いが苦手だって言うなら甘い香りで飲みやすいカモミールはどう?
セントはチサトの事もあって気を張りがちだからトゥルシーとか良いんじゃない?
タマキとジークくんはオーソドックスなミントティーとかどうかしら。
リゼ先輩は最近眠れないって言ってましたからラベンダーがオススメです」
「あ、ティッピーには難聴と老眼防止の効能があるものをお願いします」
「ティッピーそんな老けてんの?」
「おお…お湯を入れたら赤く染まったよ!」
「不思議だ…」
「いい香りですね」
「なんかスーってするね」
子供の頃はこの感じが苦手だったけど…確かにカモミールは甘い香りがする。飲みやすいな…
シャロちゃんに感謝だ。
ジークやタマキ達も各々オススメしてもらったハーブティーを楽しんでいる。
「良かったらハーブを使ったクッキーはいかがでしょう?
私が焼いたんですが…」
「シャロが作ったのか?どれどれ…ん、美味しい!」
「本当ですか!?良かった…!」
折角なので僕も一枚…ん、確かに美味しい。
シロウにもお土産用に買っていこうかな…
「…あれ?このクッキー甘くない…」
「?そんなことないわよ?」
「普通に甘くて美味しい…」
「ハーブの風味と甘さがいい感じに相乗してるよね〜」
「え、あれ…甘くないの私だけなの?」
「…ココアちゃん、そう言えばさっき何か違うハーブティー頼んでなかった?
もしかしてそれが…」
「フフフ…察しが良いじゃないリンネ。
ココアはギムネマ・シルベスターを飲んだのよ」
…あ、それ聞いたことがある。
確か前にスーパーで買ってもらったガムにそんなのがあったような…
「それを飲むと一時的に甘味を感じなくなるのよ!」
「なるほど、だからあのガムには『味が消えちゃうガム』って…」
「糖分を取らないためにもダイエット目的で飲む人も居るらしいよ〜?」
「ええ♪シャロちゃんも前にダイエットのためによく飲んでて…」
「言うなバカー!!」
「このお茶レモンを入れたら色が青からピンクになりました!」
「えっ?ほんとだ!」
「おお…!」
これは面白い。
うちの紅茶は基本一般的な“紅茶”とイメージされるものとかミルクティーぐらいしか無いからこういうのは新鮮だ。
でもどういう仕組みでこうなるんだろう…
「面白い…うちのメニューにも、採用、する?
シロウがやればきっと良いパフォーマンスに、なる」
「営業妨害もいいとこだからやめとこうよ…」
「にしてもシャロ…さんは一人で俺たちの応対をして大変じゃないか?」
「私たちにも何かお手伝いできることがあったら言ってくださいね」
「ありがとう…今はその気持ちで十分よ。
チノちゃんもジークくんも年下なのにしっかりしてるのね。
弟か妹にほしいくらいだわ」
…チノちゃんもジークもまんざらでもない表情だ。
と思ったらココアちゃんが急に立ち上がって「チノちゃんもジークくんも私の妹と弟だよ!」と言った。
少なくともジークはうちの子ですが!?
「たくさん飲んじゃった」
「お腹の中でお花が咲きそうだよ〜」
「ん…ふわふわのお花畑の中にいる気分…」
気がつけば結構な時間フルールに居座ってしまったようで。
いくらリゼさんが協力してくれるとは言えシロウの堪忍袋にも限度がありそうだし、そろそろ帰ることに。
「そう言えば何だか肩が軽くなったような気がするわ」
「少し元気になったような気がします」
「まあ、確かにリラックスはしたな。
すぐに効果が切れないことを祈りたいが」
「まあそりゃあリラックスはしたけど…流石にプラシーボ効果だろ。なあココア…って寝てる!?」
「チサトも寝てるよ…そんなにハーブティーって効くものだっけ?」
まあ、お陰でセントはハーブティーの効能がすぐ切れることも無くなったって安心できてたけど。良かったね。
「そう言えばシャロちゃん、タマキくんも言ってたんだけどハーブティーって自分の家でも作れるの?」
「そうね…自家栽培する人も居るわね」
「せっかくだしうちのメイドさんにどんなの使ってるか聞いてみよっか?
どーれピポパポーンと…」
プルルルルル…プルルルルル…ガチャ
「もし「はいどうも〜コハクちゃんです!ただいまお電話に出られませんのでメッセージをどうぞ〜!!!」………」
「「「「「「「「「「…………………………」」」」」」」」」」
「…ハーブティーはまた今度の機会にってことで」キンキン
「それよりもアンタ耳鼻科に行ってきなさい」
この後、リゼとシロウがなんやかんやあって口論になりましたとさ。